結論|電解質異常は「数値の暗記」より「症状と当日判断を結びつける運用」を先に固定すると新人教育が進みます
Na・K・Ca の異常は、検査値そのものより「当日の介入をどう調整するか」で新人が迷いやすい領域です。PT・OT・ST の実務では、原因を断定するより、症状・バイタル・心電図所見を照合し、安全に実施可否を決めることが重要です。本記事は、現場で再現しやすい最小フローを示します。
まずは「症状確認 → バイタル再測定 → Na/K/Ca の確認 → 通常/軽負荷/延期の判断 → 記録と相談」の 5 手順を固定してください。総論は 生化学検査値ガイド、心電図との接続は 心電図の読み方 で補強できます。
まずは評価と判断の型を先にそろえる
新人向け 5 分フロー|Na・K・Ca で迷ったらこの順で確認
電解質異常の対応では、数値単独で判断しないことが基本です。最初に症状と全身状態を確認し、次にバイタルと検査値、必要時に心電図を照合すると、過負荷や見落としを防ぎやすくなります。単独判断を避けるため、相談トリガーを先に決めておくことが重要です。
以下の手順を毎回同じ順序で運用し、迷ったら安全側へ倒して相談する方針を徹底してください。
- 症状を確認する(筋力低下、しびれ、けいれん、意識変化、動悸)
- バイタルを再測定する(心拍数、血圧、SpO2、呼吸数)
- Na/K/Ca の値と前回値の差を確認する(単発よりトレンド)
- 当日介入を「通常 / 軽負荷 / 延期」で判断する
- 所見・判断・対応(相談先含む)を記録する
Na・K・Ca の使い分け早見表|PT 実務でまず見る点
新人教育では、詳細病態より先に「何を見て、何を返すか」をそろえると実務に乗りやすくなります。下表は、介入判断に直結する最小比較です。施設基準・主治医指示がある場合はそちらを優先してください。
関連:心電図所見との接続は 心電図総論 を併読すると、判断精度が上がります。
| 項目 | 主な注意症状 | 実務でまず確認する点 | 当日介入への反映 |
|---|---|---|---|
| Na 異常 | 意識変化、倦怠感、けいれん、ふらつき | 急な変動の有無、神経症状の有無 | 症状ありは軽負荷〜延期、相談優先 |
| K 異常 | 筋力低下、不整脈症状、動悸 | 心電図変化の有無、脈拍の不規則性 | 不整脈疑いで延期含め安全側判断 |
| Ca 異常 | しびれ、筋けいれん、脱力、意識変化 | 神経筋症状、循環動態の安定性 | 症状強い場合は中止・相談を優先 |
当日判断テンプレ|通常・軽負荷・延期の 3 区分
検査値の教育で効果が高いのは、判断区分を固定して記録を標準化することです。「この値なら必ず中止」と機械的に決めるのではなく、症状・バイタル・経時変化を合わせて判断する運用にしてください。迷った症例は軽負荷または延期を選び、早めに相談する方が安全です。
| 区分 | 判断の目安 | 実施の要点 | 記録例(要約) |
|---|---|---|---|
| 通常 | 症状なし、循環安定、急な悪化トレンドなし | 通常プログラム実施、定時観察 | 症状・バイタル安定のため通常実施 |
| 軽負荷 | 軽症状あり、または注意すべき変動あり | 強度/時間を下げ、再測定頻度を上げる | 電解質変動のため軽負荷で実施 |
| 延期 | 症状増悪、意識変化、不整脈疑い、循環不安定 | 介入見合わせ、安静確保、速やかに相談 | 安全性優先で本日延期し報告 |
中止・相談トリガー|先に決めると見落としが減る
現場で最も重要なのは、どこで止めて誰に相談するかの共通化です。トリガーが曖昧だと、同じ検査値でも対応がぶれます。新人教育では、所見の網羅性より判断の再現性を優先してください。
- 意識変化、けいれん、胸部症状、強い呼吸苦を伴う
- 脈の不規則性や心電図異常を疑う
- 再測定でバイタルが不安定、または悪化傾向が持続
- 検査値の急変と症状が一致している
- 担当者が継続可否を判断できない(迷いがある)
よくある失敗|数字だけ見て判断してしまう
電解質対応の典型的な失敗は、検査値のみで継続/中止を即断することです。症状・バイタル・経時変化の照合が抜けると、過小評価にも過大評価にもつながります。以下の NG を避けるだけで、初動の質は大きく安定します。
| NG パターン | 起きる理由 | 改善策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 数値だけで判断する | 症状確認が後回し | 症状→バイタル→検査値の順を固定 | 症状の有無を明記 |
| 前回値と比較しない | トレンド評価不足 | 当日値と前回値をセットで確認 | 変化幅を記載 |
| 相談が遅れる | トリガー不明確 | 中止・相談条件を部署で明文化 | 相談時刻・内容を記録 |
関連リンク|検査値と心電図・画像をつなげる
電解質異常の判断は、検査値単独より他情報との統合で精度が上がります。以下のページを往復して、判断の型を固定してください。
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 電解質が異常なら必ずリハ中止ですか?
A. 必ずしも中止とは限りません。症状・バイタル・経時変化を合わせて判断し、安定していれば軽負荷で実施できる場合もあります。迷う場合は安全側で相談してください。
Q2. K 異常では何を優先して確認しますか?
A. 不整脈症状(動悸、めまい)と脈の不規則性、必要時の心電図所見を優先して確認します。循環不安定や異常疑いがあれば延期を含めて判断します。
Q3. Na 異常で注意すべきポイントは何ですか?
A. 急な変動と神経症状(意識変化、けいれん、強い倦怠感)です。数値単独より症状とトレンドを重視し、異常時は早めに相談します。
Q4. 記録は何を残すと申し送りしやすいですか?
A. 「症状・バイタル・検査値トレンド・当日判断(通常/軽負荷/延期)・相談対応」を 1 セットで残すと、次担当へ共有しやすくなります。
次の一手|今日からできる運用
まずは 1 週間、電解質異常を伴う症例で「5 分フロー」と「3 区分判断」を固定して運用してください。確認順がそろうだけで、新人の報告品質と安全性は大きく安定します。
続けて、心電図との統合判断は 心電図総論 と ST 変化記事 を併読すると実践しやすくなります。評価全体の導線は 評価ハブ から確認できます。
運用を整える中で「教育体制・記録文化・人員配置」の詰まりがある場合は、環境面の点検も有効です。無料チェックシートは こちら から確認できます。
参考文献
- 日本腎臓学会. エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン. 最新版.
- 日本循環器学会. 循環器診療ガイドライン(不整脈・心不全関連). 最新版.
- 日本集中治療医学会. 集中治療における電解質管理関連の提言・指針. 最新版.
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


