リハ栄養診療ガイドライン2026|変更点とPT実務

栄養・嚥下
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リハ栄養ガイドライン2026は「疾患別」から多職種・生活背景まで対象が広がりました

「リハビリテーション栄養診療ガイドライン2026」では、脳血管疾患、大腿骨近位部骨折、がんといった疾患別のリハ栄養に加えて、COPD、嚥下障害、運動療法、栄養ケア、口腔管理、薬剤介入、入院関連サルコペニア、社会的決定要因まで扱う11領域へ対象が広がりました。

PTが押さえたい結論は、運動療法と栄養療法を別々に考えず、嚥下・口腔・薬剤・入院中の筋機能低下・退院後の生活環境まで同じ治療計画の中で確認することです。

ただし、2026年版ですべての介入が強く推奨されたわけではありません。大腿骨近位部骨折に対する強化型栄養ケアは強く推奨されていますが、脳血管疾患、COPD、がん、嚥下障害などの多くは弱い/条件付き推奨です。また、低栄養患者への高強度運動療法は、現時点では有効性・安全性について十分な根拠がなく、Future Research Question(FRQ)として位置づけられています。

この記事では、2026年版で何が変わったのか、推奨をどう読めばよいのか、PT・OT・STが日々の評価や多職種連携で何を変えるのかに絞って整理します。

リハ栄養そのものの評価→診断→目標設定→介入→モニタリングの流れを確認したい場合は、リハ栄養の進め方|スクリーニングから5段階・記録までをご確認ください。

2026年版は4領域中心から11領域へ再構成されました

2018年版と2020 updateでは、脳血管疾患、大腿骨近位部骨折、がん、急性疾患の4領域が中心でした。2026年版では脳血管疾患、大腿骨近位部骨折、がんを更新し、急性疾患は独立領域として引き継がれず、新たに8領域を加えて計11領域へ再構成されています。

リハ栄養ガイドライン2026でPTが押さえる5つの変化。11領域への拡張、栄養と運動の統合、嚥下・口腔管理、薬剤・入院関連サルコペニア、社会的決定要因を整理した図版
リハ栄養ガイドライン2026では、疾患別の栄養療法だけでなく、運動、嚥下・口腔、薬剤、入院関連サルコペニア、退院後の社会的決定要因まで対象が広がりました。

「4領域から11領域へ」という変化は、単純に疾患が増えたという意味ではありません。栄養状態と運動負荷の関係、食べる機能と口腔環境、薬剤、入院中の筋機能低下、退院後の社会環境まで扱うことで、リハ栄養を多職種で機能回復につなげる枠組みがより明確になっています。

CQ・BQ・FRQを分けて読むと「推奨」と「情報」を混同しません

2026年版では、12のClinical Question(CQ)、5つのBackground Question(BQ)、3つのFuture Research Question(FRQ)の計20項目が設定されています。

CQ・BQ・FRQの役割
区分 役割 臨床での読み方
CQ 特定の介入について推奨を示す 推奨の強さとエビデンス確実性を確認する
BQ 診療の背景となる知識を整理する 推奨ではなく判断の前提情報として使う
FRQ 根拠不足で今後の研究が必要な問いを示す 「推奨された介入」として扱わない

たとえば「栄養療法を受けている低栄養患者に高強度運動療法を行うべきか」はFRQです。2026年版で高強度運動が推奨されたという意味ではありません。

全12 CQの推奨強度とエビデンス確実性を確認します

2026年版では、大腿骨近位部骨折に対する強化型栄養ケアのみが強い推奨で、その他のCQは弱い/条件付き推奨です。推奨の強さとエビデンス確実性は別々に確認します。

リハ栄養ガイドライン2026の全12 CQ
CQ 対象・介入 推奨 確実性
CQ1 急性期脳血管疾患への強化型栄養ケア 弱い/条件付き C
CQ2 回復期脳血管疾患への強化型栄養ケア 弱い/条件付き C
CQ3 大腿骨近位部骨折への強化型栄養ケア 強い C
CQ4 COPDへの強化型栄養ケア 弱い/条件付き C
CQ5 がん患者へのリハ+栄養療法 弱い/条件付き C
CQ6 嚥下障害への運動療法 弱い/条件付き D
CQ7 嚥下障害への運動療法+栄養療法 弱い/条件付き D
CQ8 嚥下障害への栄養療法 弱い/条件付き D
CQ9 管理栄養士による栄養評価 弱い/条件付き C
CQ10 管理栄養士による栄養指導 弱い/条件付き D
CQ11 専門的口腔管理+リハ 弱い/条件付き D
CQ12 薬剤師による薬学的介入 弱い/条件付き D

一覧で重要なのは、推奨の有無だけで介入を自動的に決めないことです。対象患者、病期、栄養状態、患者の価値観、利益と害、実行可能性を踏まえて個別に判断します。

「強い推奨」と「エビデンス確実性が高い」は同じ意味ではありません

2026年版を読むうえで特に注意したいのが、推奨の強さとエビデンス確実性の違いです。

大腿骨近位部骨折への強化型栄養ケアは、推奨の強さ1=強い推奨ですが、エビデンス確実性はCです。

つまり、「確実性の高い研究結果が多数あるから強い推奨」と単純に読み替えることはできません。機能回復、合併症、在院日数などの重要なアウトカム、利益と害、患者の価値観、臨床での実行可能性などを総合して推奨の強さが決められています。

推奨の強さとエビデンス確実性は必ず別々に確認することが重要です。

大腿骨近位部骨折では強化型栄養ケアが強く推奨されました

大腿骨近位部骨折患者がリハを受ける場合、2026年版では強化型栄養ケアが強く推奨されています。

統合されたRCTでは、ADL、握力、BMIの改善、在院日数の短縮、合併症の減少が示され、死亡率についても改善が期待されています。一方でエビデンス確実性はCであり、患者ごとの病態、摂取状況、希望、実行可能性を踏まえる必要があります。

PT実務では、歩行練習や活動量を増やす一方で、実際の食事摂取量、補食・ONS等の実施状況、体重、筋力、疲労の変化がどう推移しているかを多職種で共有します。

大腿骨近位部骨折に絞った評価・介入・再評価は、大腿骨近位部骨折のリハ栄養|2026年版ガイドラインと栄養介入で詳しく整理しています。

脳卒中・COPD・がんは栄養状態と運動負荷をセットで確認します

急性期・回復期の脳血管疾患、COPD、がんでは、強化型栄養ケアまたはリハと栄養療法の併用が弱く推奨されています。

ただし、「対象患者全員へ同じ栄養補助を追加する」という意味ではありません。疾患、病期、低栄養リスク、実際の摂取量、筋力・体組成、運動耐容能、患者の希望を踏まえた個別化が必要です。

脳卒中・COPD・がんでPTが共有しやすい情報
対象 PTが観察しやすい変化 多職種へ共有したいこと
脳血管疾患 活動量、筋力、ADL、疲労、嚥下状態 摂取低下と離床量増加が重なっていないか
COPD 体重、筋力、運動耐容能、呼吸困難 低体重・食欲低下と運動負荷の関係
がん 筋力、体組成、疲労、活動量 治療副作用、摂取状況、運動継続可能性

低栄養の診断まで進める場合は、GLIM基準の使い方|診断フロー・重症度・記録シートをご確認ください。

嚥下障害では「訓練」と「栄養確保」を一続きで考えます

2026年版では嚥下障害が独立領域となり、運動療法、運動療法と栄養療法の併用、栄養療法の3つがCQとして設定されました。いずれも弱い/条件付き推奨で、エビデンス確実性はDです。

これは「嚥下筋を鍛えること」と「必要な栄養量を確保すること」を別々に進めない、という臨床判断につながります。

嚥下障害で同時に確認する4領域
領域 確認すること 次の判断
嚥下機能 安全性、効率、食形態、一口量 どの条件なら経口摂取できるか
栄養状態 摂取量、体重、低栄養、筋量 現在の条件で必要量を確保できるか
運動療法 嚥下関連筋、呼吸、全身機能 問題に合った負荷になっているか
栄養経路 経口、経腸、静脈、ONS等 安全性と栄養確保を両立できるか

嚥下機能だけが改善しても、栄養摂取量が不足したままでは身体機能の改善につながらないことがあります。ST、管理栄養士、看護師、医師、PT・OTなどが同じ目標を共有して介入します。

口腔管理と薬剤介入もリハ栄養の対象になりました

2026年版では、専門的口腔管理と薬剤師による薬学的介入もCQとして扱われています。

リハ入院患者では、専門的口腔管理をリハと併用することが弱く推奨され、嚥下機能、栄養状態、経口摂取、ADL、在院日数、在宅復帰などへの好影響が期待されています。ただし、エビデンス確実性はDで、観察研究を含むため因果関係の解釈には注意が必要です。

薬剤師による介入も弱く推奨されており、QOL改善や薬物有害反応の減少への寄与が期待されています。リハ中に眠気、食欲低下、ふらつき、血圧変化などが続く場合は、運動負荷だけでなく薬剤の影響も共有します。

リハ・栄養・口腔を院内でどうつなぐかは、リハ×栄養×口腔連携チェックリスト2026で整理しています。

低栄養患者への高強度運動は現時点でFRQです

PTにとって特に重要なのが、低栄養患者への高強度運動療法です。

2026年版では、栄養療法を受けている低栄養患者へ高強度運動療法を実施することについて、有効性と安全性を支持する十分なエビデンスがないとされています。

さらに、高強度運動療法そのものの定義が明確ではなく、どの疾患、どの栄養状態、どの時期、どの運動内容で実施すべきかについて結論を出せません。そのため、推奨ではなくFRQに分類されています。

したがって、「栄養介入を始めたから高強度運動へ進める」と機械的に判断しないことが重要です。運動量を調整する場合は、摂取状況、病態、筋力、疲労、運動後の回復、安全性を個別に確認します。

必要エネルギー量を簡易推定式だけで個人決定しないことも重要です

65歳以上のリハ患者におけるエネルギー消費量はBQとして整理されています。

間接熱量測定による安静時エネルギー消費量には幅があり、Harris-Benedict式など複数の簡易推定法が検討されています。一方、2026年版では、個人レベルで推奨できる特定のエネルギー消費量推定法は示されていません。

PTが簡易式の数値だけから必要量を決めるのではなく、管理栄養士・医師等が設定する栄養目標と、実際の摂取状況、身体活動量、機能変化が釣り合っているかを共有することが重要です。

管理栄養士による栄養評価・栄養指導もCQとして整理されました

2026年版では、高齢者、要介護高齢者、フレイル高齢者などに対する管理栄養士による栄養評価と栄養指導が、それぞれCQとして扱われています。

栄養評価は弱い/条件付き推奨・確実性C、栄養指導は弱い/条件付き推奨・確実性Dです。対象研究では運動やONSなど複数の介入を組み合わせたものも多いため、「評価だけ」「指導だけ」の効果として過度に解釈しないことが必要です。

PTは管理栄養士へ、筋力、歩行、ADL、持久性、疲労、実際の運動量などを提供しやすい立場です。栄養介入前後で機能や活動がどう変わったかを同じ時系列で共有します。

入院関連サルコペニアは「入院後に筋力が落ちた理由」を考える入口です

Hospital-associated sarcopenia(入院関連サルコペニア)は、2026年版で独立領域として取り上げられました。

この領域はBQであり、特定の評価法や治療法が推奨されたわけではありません。一方、入院中に新たにサルコペニアを発症・進行させる可能性を意識し、原因やリスク因子を確認する視点が示されています。

PTが入院後の起立、移乗、歩行、筋力などの低下を認めた場合は、「原疾患の影響」だけで説明せず、長期臥床、活動量、栄養状態などを含めて多面的に整理します。

退院後に栄養・運動を続けられる環境まで確認します

Social Determinants of Health(SDH:健康の社会的決定要因)も2026年版の新しい領域です。

適切な運動・栄養計画を立てても、経済状況、移動手段、家族支援、買い物、食事準備、住環境などによって退院後に継続できないことがあります。

ただし、SDHスクリーニングの有用性と、SDHを考慮した介入の効果はいずれもFRQです。現時点で「特定のSDHスクリーニングを全例必須とする」という推奨ではありません。

臨床では、退院後に予定している運動・食事・通院・サービス利用が実際に継続可能かを確認する視点として活用します。

PTは「摂取」「機能」「負荷」「阻害因子」「生活」をつなげます

リハ栄養ガイドライン2026は、PTが栄養処方を単独で行うためのガイドラインではありません。

PTの強みは、患者が実際にどれだけ活動し、その負荷に対して身体機能や疲労がどう変化しているかを継続的に観察できることです。

リハ栄養ガイドライン2026をPT実務へ落とす5つの確認
確認 見ること 次の対応
1.摂取 食事・補食・ONS等が実際に摂取できているか 不足が続けば管理栄養士等へ共有する
2.機能 筋力、起立、歩行、ADLがどう変化したか 栄養介入と機能変化を同じ時系列でみる
3.負荷 運動量を増やした後の疲労・回復 負荷の増量・維持・調整を検討する
4.阻害因子 嚥下、口腔、薬剤、疼痛、疾患活動性など 食べられない・動けない原因へ戻る
5.生活 退院後も栄養・運動計画を継続できるか 家族・多職種と実行可能な方法へ調整する

リハ栄養全体のケアプロセスを確認する場合はリハ栄養の進め方へ、低栄養診断へ進む場合はGLIM基準の使い方へ進むと役割を分けて確認できます。

2026年版では3つの読み違いを避けます

リハ栄養ガイドライン2026で避けたい読み違い
読み違い 正しい整理
強い推奨=エビデンス確実性も高い 推奨の強さとエビデンス確実性は別に確認する
低栄養なら高強度運動を積極的に行う 高強度運動はFRQで、現時点では推奨が示されていない
リハ栄養=栄養補助を追加すること 運動、嚥下・口腔、薬剤、生活背景まで統合して考える

よくある質問

2026年版で最も大きく変わった点は何ですか?

対象が従来の4領域中心から11領域へ再構成されたことです。疾患別の栄養療法だけでなく、嚥下障害、COPD、高強度運動、栄養ケア、口腔、薬剤、入院関連サルコペニア、SDHまで扱うようになりました。

大腿骨近位部骨折では栄養療法を必ず行うという意味ですか?

強化型栄養ケアは強く推奨されていますが、患者個人の病態、栄養状態、摂取状況、希望、実行可能性を踏まえた判断は必要です。すべての患者へ同一の栄養補助を行うという意味ではありません。

低栄養患者には高強度運動を行わない方がよいですか?

「実施してはいけない」という推奨ではありません。一方で、有効性・安全性を支持する十分な根拠もなく、現時点ではFRQです。疾患、栄養状態、運動内容、疲労、回復、安全性を踏まえて個別に負荷を設定します。

PTが必要エネルギー量を簡易式で決めてよいですか?

2026年版では、65歳以上のリハ患者について個人レベルで推奨できる特定の簡易推定法は示されていません。PTが単独で栄養処方を完結させるのではなく、管理栄養士・医師等と栄養目標、摂取量、活動量、機能変化を共有します。

2026年版ガイドラインの全文PDFは無料で読めますか?

2026年9月時点では、日本リハビリテーション栄養学会の公式サイトで表紙・補足図表が公開され、JMA Journalで英語Executive Summaryを全文確認できます。学会は日本語ガイドライン本文PDFについて、書籍刊行後6か月を経過した時点で公式サイトに公開する予定と案内しています。

次の一手は「運動量と摂取状況のずれ」を確認することです

リハ栄養ガイドライン2026を臨床へ落とすために、12 CQを暗記する必要はありません。

活動量が増えているのに摂取が追いついていない、栄養介入を行っているのに機能改善が乏しい、嚥下・口腔・薬剤・生活環境が摂取や活動を妨げているといったずれに気づき、必要な職種へつなげることが重要です。

全体のリハ栄養ケアプロセスから確認したい場合はリハ栄養の進め方へ、低栄養をGLIM基準で確認する場合はGLIM基準の使い方へ進んでください。

参考文献・公式資料

  1. 日本リハビリテーション栄養学会.リハビリテーション栄養診療ガイドライン.2026.
  2. Yoshimura Y, Yasumoto Y, Matsumoto T, et al. Clinical Practice Guideline for Rehabilitation Nutrition 2026: Executive Summary of the Japanese Association of Rehabilitation Nutrition Guideline 2026—A Secondary Publication. JMA J. 2026;9(5):1360-1378.
  3. Yasumoto Y, Matsumoto T, Nagano A, et al. Clinical Practice Guideline for Rehabilitation Nutrition 2026. Journal of Japanese Association of Rehabilitation Nutrition. 2026;10(1):110-190.
  4. Nishioka S, Aragane H, Suzuki N, et al. Clinical practice guidelines for rehabilitation nutrition in cerebrovascular disease, hip fracture, cancer, and acute illness: 2020 update. Clin Nutr ESPEN. 2021;43:90-103.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

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