令和 8 年 改定(確定)|退院時リハビリテーション指導料の要件見直しを現場運用で読む
退院支援は「誰に・何を・どこまで」を先にそろえるほど、実行率と引き継ぎが安定します
PT キャリアガイドを見る退院時リハビリテーション指導料は、退院後の生活で起きやすい「つまずき」を先回りし、患者・家族が実行できる行動に落とし込むための評価です。制度が動く局面ほど、暗記よりも「誰に・何を・どこまで」を院内でそろえることが重要です。
令和 8 年 改定では、退院時リハビリテーション指導料の対象患者が明確化されました。本記事は、確定した要件を前提に、対象患者の線引き・指導の最小セット・記録の型を実務向けに整理します。全体像は 令和 8 年 改定|リハビリ領域まとめ(ハブ) を参照してください。
先に全体像をつかむと、各論の判断がぶれにくくなります。
令和 8 年 改定リハ領域の全体像を見る最終更新:2026-03-05(告示・留意事項 反映)
結論:対象の線引きと指導の最小セットを固定すると回る
今回の確定点で最も大きいのは、退院時リハビリテーション指導料の対象患者が、当該保険医療機関の入院中に、疾患別リハビリテーション料等を算定した患者に限定されたことです。現場では、①対象の線引きを先に決める、②指導内容を最小セット化する、③記録を短い定型にそろえる、の順で整えると運用が安定します。
説明を長くするより、実行される内容に絞ることが重要です。チームで同じ判断軸と記録フォーマットを共有すると、退院調整・引き継ぎ・確認作業が軽くなります。
確定した要点( 1 枚 )
| 論点 | 改定後(確定) | 現場への影響 | 先に決めること |
|---|---|---|---|
| 対象患者 | 当該保険医療機関での入院中に、疾患別リハビリテーション料等を算定した患者に限定 | 「入院患者なら誰でも」では運用できない | 対象判定ルールを 1 枚化する |
| 算定時点 | 退院日に 1 回に限り算定 | 説明日と算定日のズレに注意が必要 | 退院日運用と交付の流れを固定する |
| 指導者 | 主として医学的管理を行った医師又はリハ担当医。医師の指示下で PT / OT / ST が保健師・看護師・社会福祉士・精神保健福祉士とともに行う場合も可 | 「誰が説明したか」の記録が重要 | 職種別の役割分担を明文化する |
| 指導内容 | 体位変換、起座・離床、起立、食事、排泄、生活適応、対人関係、家屋改造、介助方法、在宅保健福祉サービス情報など | 情報過多より、実行可能な指導が求められる | 最小セット(安全・負荷・継続先)を固定する |
| 記録 | 指導(又は指示)内容の要点を診療録等に記載 | 長文より、要点が読める定型が必要 | 3 行テンプレで共通化する |
同日算定で詰まりやすい点:退院時共同指導料 2 との整理
制度変更期に詰まりやすいのが、退院時共同指導料 2 との関係です。入院中の保険医療機関の PT / OT / ST が指導等を行った場合、同一日に退院時リハビリテーション指導料は別に算定できません。
つまり、現場では「誰が共同指導に入ったか」を退院前に確認しないと、あとで請求と記録がずれやすくなります。先に確認フローを決めておくと混乱を防ぎやすくなります。
| 論点 | 先に決めること | 最小の記録 |
|---|---|---|
| 共同指導の有無 | 同日に退院時共同指導料 2 を算定するか | 算定の有無を事前確認 |
| 参加職種 | PT / OT / ST が共同指導に参加するか | 参加職種名 |
| 摘要対応 | 同日算定時の職種・年月日を摘要へ記載するか | 共同指導を行った者の職種と年月日 |
対象患者の線引き:取りこぼしと広げすぎを同時に防ぐ
今回の改定後は、まず「入院中に対象となるリハ関連点数を算定しているか」が入口になります。その上で、実務では病名や ADL だけで決めるのではなく、退院後の再現性、支援体制、リスクの 3 軸で絞ると、取りこぼしと広げすぎを防ぎやすくなります。
とくに制度変更期は、会計・病棟・リハ部門で判断がずれるため、判定理由を短文で残せる設計にしておくと運用が安定します。
| ステップ | 判定軸 | 具体例 | 記録に残す 1 行 |
|---|---|---|---|
| ① 算定歴の確認 | 入院中に疾患別リハ等を算定しているか | 疾患別リハ、リハ・栄養・口腔連携体制加算、早期離床・リハ加算 等 | 「入院中に対象点数算定あり」 |
| ② 退院後の再現性 | 病棟でできた動作を在宅で再現できるか | 入浴、段差、屋外歩行、服薬管理 | 「退院後の再現に課題あり」 |
| ③ 支援体制 | 家族・サービスで補完できるか | 独居、介助者不在、導入前 | 「支援者不在/役割未確定」 |
| ④ リスク | 再転倒・再入院につながる因子の有無 | 転倒歴、起立性低血圧、低栄養、嚥下 | 「再入院リスク因子あり」 |
指導内容は最小セットで固定する(長文化しない)
退院時指導は情報量を増やすほど実行率が下がります。まずは「明日からできる行動」に絞り、説明をシンプルにする方が結果につながります。
最小セットは、①安全な動作、②負荷の目安、③継続先の 3 項目です。毎回そろえるだけで、退院後の行動変容と引き継ぎの質が安定します。
| 項目 | 伝える内容 | 提示形式 | 1 行例 |
|---|---|---|---|
| 安全な動作 | 転倒しやすい場面と回避行動 | 具体場面 + 行動指示 | 「浴室立位は手すり使用、立位開始前に 3 呼吸」 |
| 負荷の目安 | やりすぎ・不足を避ける基準 | 数値 1 つ + 主観 1 つ | 「歩行 10 分 × 2 回、息切れは “ややきつい” まで」 |
| 継続先 | 外来・訪問・通所の導線 | 時期 + 窓口 | 「退院後 1 週で外来フォロー予定」 |
記録は 3 行テンプレで統一する
監査・引き継ぎで強い記録は、「なぜ対象か」「何を指導したか」「どこにつなぐか」が短く読める形です。長文よりも、判定と行動が追える記録が有効です。
部署内で 3 行テンプレを共通化しておくと、入力のばらつきが減り、是正も速くなります。
| 行 | 記載内容 | 例文 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 1 行目 | 対象理由(算定歴 + 再現性・支援・リスク) | 「入院中に疾患別リハ算定あり。独居で転倒歴あり、退院後再現に課題」 | 対象根拠の明確化 |
| 2 行目 | 指導内容(具体行動) | 「立位前 3 呼吸、屋外歩行は杖と休息を併用」 | 行動変容の促進 |
| 3 行目 | 継続先(次の導線) | 「外来予約済み、家族へ段差対応を共有」 | 退院後の接続 |
現場の詰まりどころ/よくある失敗
制度変更時は、対象判定・指導内容・記録方法の 3 点で詰まりやすくなります。先に「NG → OK」を共有すると、運用の立ち上がりが速くなります。
| 論点 | NG | OK | 最短の直し方 |
|---|---|---|---|
| 対象判定 | 「とりあえず実施」で根拠が残らない | 算定歴 + 3 軸(再現性・支援・リスク)で判定 | 判定シートを 1 枚化して周知 |
| 指導内容 | 情報過多で実行されない | 最小セット 3 項目に固定 | 配布文面を共通テンプレ化 |
| 記録 | 長文で要点が埋もれる | 3 行テンプレで統一 | 定型文登録して入力時間短縮 |
| 同日算定 | 共同指導と役割分担が曖昧で請求がぶれる | 同日算定の確認フローを先に固定 | 退院前カンファで参加職種を確認 |
| 日程 | やること | 担当 | 成果物 |
|---|---|---|---|
| Day 1 | 対象判定ルールを合意 | リハ責任者 + 病棟 | 判定シート |
| Day 2-3 | 最小セット文面を統一 | PT / OT / ST | 説明テンプレ |
| Day 4-5 | 3 行記録テンプレを実装 | 記録担当 + 会計連携 | 定型文 |
| Day 6-7 | 5 症例で試行し是正 | チーム全体 | 運用版 v1.0 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. これは確定情報ですか?
A. はい。退院時リハビリテーション指導料の対象患者は、当該保険医療機関での入院中に疾患別リハビリテーション料等を算定した患者に限定される形で整理されました。運用準備は先に進めて問題ありません。
Q2. 対象患者の判定でいちばんぶれにくい方法は?
A. まず「入院中に対象点数を算定しているか」を確認し、その上で再現性・支援体制・リスクの 3 軸で判定し、1 行で根拠を残す方法が実務的です。
Q3. 退院時共同指導料 2 との関係はどう整理すべきですか?
A. 入院中の保険医療機関の PT / OT / ST が共同指導を行った場合は、同一日に退院時リハビリテーション指導料を別に算定できません。誰が共同指導に入るかを先に確認する運用が重要です。
Q4. 記録負担が増えないか不安です
A. 長文化をやめて 3 行テンプレに統一すると、むしろ確認時間が減ります。定型文登録まで行うと、入力負担を抑えたまま質を担保できます。
次の一手(この順で進める)
まずは全体像を確認し、次に実装手順をそろえると、改定対応の手戻りを減らせます。
運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう
無料チェックシートを確認する参考資料(一次情報)
- 厚生労働省.令和 8 年度 診療報酬改定の概要 13.重点的な対応が求められる分野(医学管理・リハビリテーション).PDF
- 厚生労働省.診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(別添 1).PDF
- 厚生労働省.令和 8 年度 診療報酬改定について(関係法令・通知等).掲載ページ
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


