- 廃用症候群では「評価・離床・再評価」を一続きで考えます
- 最初に今日の離床レベルを決めます
- 廃用症候群の対応は6段階で整理します
- 廃用症候群とは活動低下による多面的な機能低下です
- 評価は安全域・合併症・ボトルネックの順に行います
- 全身状態とバイタルから当日の安全域を決めます
- 呼吸・循環は離床の上限と回復時間を確認します
- 筋力と関節可動域は動作を止めている原因まで確認します
- 動作・ADLでは介助が必要な場所を具体化します
- 転倒・認知・意欲も活動量を左右します
- 栄養と皮膚は離床と並行して確認します
- 介入はボトルネックに合わせて組み立てます
- 再評価では「できた量」より条件と反応を比較します
- 廃用症候群の記録シートPDF
- よくある質問
- 廃用症候群は反応を見ながら段階を調整します
- 次に確認する記事
- 参考文献
- 著者情報
廃用症候群では「評価・離床・再評価」を一続きで考えます
廃用症候群のリハビリテーションでは、評価項目を増やすことより、安全確認から当日の離床レベル、介入の優先順位、実施後の反応、次回の条件までを一続きで判断することが重要です。本記事では、病棟から回復期で廃用症候群の患者を担当する理学療法士に向けて、「今日どこまで離床するか」「何を優先するか」「何を記録して次回へつなげるか」を整理します。
廃用症候群に関連する評価・介入記事をまとめて確認できます。

基本の流れは、安全を確認する → 今日の離床レベルを決める → ボトルネックを1つ選ぶ → 短時間で実施する → 反応から次回を決める → 記録する、の6段階です。疾患や病期を問わず同じ運動量を当てはめるのではなく、当日の反応と回復状況に応じて、進める・維持する・戻す判断を行います。
最初に今日の離床レベルを決めます
最初に決めるのは運動種目ではなく、患者が安全に実施できる離床レベルです。ベッド上、端座位、立位・移乗、歩行のうち、当日の全身状態で無理なく実施できる段階を選びます。
| 判断 | 患者の反応 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 進める | 症状がなく、実施後の回復が早い | 時間、回数、動作の難易度のいずれかを少し上げる |
| 維持する | 軽い症状がある、または回復に時間がかかる | 同じ段階を短時間・複数回で反復する |
| 戻す | 症状が強い、反応が悪化する、回復しない | 負荷を下げ、中止や医師・看護師への相談を検討する |
血圧、脈拍、呼吸数、SpO2などの数値だけでなく、めまい、悪心、呼吸困難、胸部症状、意識状態、疼痛、顔色、会話の変化を確認します。実施後にどの程度で元の状態へ戻ったかも、次回の進行条件になります。
具体的な中止・再開判断は、施設基準や対象疾患によって異なります。判断基準をチーム内でそろえる場合は、離床の中止基準と再開基準を確認してください。
廃用症候群の対応は6段階で整理します
廃用症候群では、すべての問題を一度に解決しようとせず、当日のボトルネックを1つ選ぶことが重要です。次の順番で確認すると、評価と介入が分断されにくくなります。
- 安全を確認する:意識、疼痛、呼吸状態、バイタル変化、発熱・感染、DVTを疑う所見などを確認します。
- 離床レベルを決める:ベッド上、端座位、立位・移乗、歩行のどこまで実施するかを決めます。
- ボトルネックを1つ選ぶ:呼吸・循環、筋力・関節可動域、動作・ADL、栄養・皮膚、認知・意欲から、当日最も影響している問題を選びます。
- 短時間で実施する:最初から長時間続けず、反応を確認できる量から開始します。
- 反応から次回を決める:進める、同じ段階を反復する、段階を戻す、のいずれかを判断します。
- 条件を記録する:体位、動作、実施時間、症状、バイタル変化、回復時間、次回の開始条件を残します。
廃用症候群とは活動低下による多面的な機能低下です
廃用症候群は、臥床、安静、不活動などが続くことによって生じる、全身の機能低下をまとめて捉える概念です。筋力低下や関節拘縮だけでなく、循環調節、呼吸機能、運動耐容能、栄養状態、皮膚状態、認知・情動、ADLにも影響します。
原因疾患の治療が必要であっても、必要以上の不活動が続けば、さらに動けなくなる悪循環が生じます。そのため、廃用症候群への対応では、原疾患の安定性を確認しながら、可能な範囲で活動を再開し、反応を継続的に確認することが基本になります。
評価は安全域・合併症・ボトルネックの順に行います
評価の目的は、検査項目を網羅することではなく、今日の安全域と介入の優先順位を決めることです。初回評価では、次の順番で確認すると、その後の再評価にもつなげやすくなります。
| 順番 | 評価領域 | 判断すること | 記録すること |
|---|---|---|---|
| 1 | 全身状態・バイタル | 当日の安全域と離床の上限 | 安静時、体位変換後、運動中、回復時の変化 |
| 2 | 呼吸・循環 | 酸素化、循環調節、運動耐容能 | 息切れ、起立性症状、脈拍、呼吸数、SpO2、回復時間 |
| 3 | 合併症リスク | DVT、褥瘡、感染、誤嚥などの可能性 | 下肢所見、皮膚、発熱、咳、痰、食事状況 |
| 4 | 筋力・関節可動域 | 起居・移乗・歩行を妨げる身体機能 | 左右差、疼痛、制限因子、動作との関係 |
| 5 | 動作・ADL | 現在の介助量と次に練習する動作 | 介助が必要な場面、症状、疲労、補助具 |
| 6 | 栄養・認知・意欲 | 回復を妨げる背景要因 | 摂取量、体重変化、理解、注意、拒否、不安 |
全身状態とバイタルから当日の安全域を決めます
離床の可否は、単独の数値ではなく、安静時から体位変換後、運動中、回復時までの変化で判断します。同じ血圧やSpO2でも、症状の有無、変化の方向、回復までの時間によって対応は異なります。
| 項目 | 確認する場面 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 意識・反応 | 実施前・実施中 | 覚醒状態、返答、注意、急な変化 |
| 血圧・脈拍 | 臥位・座位・立位・回復時 | 変化の大きさ、症状、不整脈、戻り方 |
| 呼吸数・SpO2 | 安静時・離床時・回復時 | 呼吸困難、会話、低下の持続、酸素投与条件 |
| 疼痛・悪心・めまい | 体位変換時・運動時 | 症状の増悪、動作との関係、回復時間 |
| 体温・感染兆候 | 実施前 | 発熱、全身倦怠感、感染の増悪 |
起立時の血圧低下や症状が問題になる場合は、臥位から一気に歩行へ進めず、背上げ、端座位、立位と段階を分けます。詳しい進め方は、起立性低血圧の運動療法プロトコルで確認できます。
呼吸・循環は離床の上限と回復時間を確認します
呼吸・循環評価では、運動中の変化だけでなく、負荷を止めた後にどの程度で回復するかを確認します。回復が遅い場合は、同じ離床レベルでも時間や回数を調整する必要があります。
| 観察 | 確認すること | 介入へのつなげ方 |
|---|---|---|
| 呼吸困難 | 安静時と負荷時の差、会話の可否 | 時間を短くし、体位や動作を調整する |
| SpO2・呼吸数 | 低下や上昇の程度、持続、回復 | 酸素投与条件を確認し、チームで共有する |
| 起立性症状 | めまい、悪心、冷汗、意識の変化 | 離床段階を戻し、段階的に反復する |
| 脈拍 | 負荷に対する上がり方、不整、回復 | 動作速度、休憩、実施時間を調整する |
| 下肢所見 | 腫脹、疼痛、熱感、左右差 | DVTを疑う場合は運動を進めず相談する |
筋力と関節可動域は動作を止めている原因まで確認します
筋力や関節可動域は数値だけで評価せず、起き上がり、立ち上がり、移乗、歩行のどこを妨げているかまで確認します。筋力低下に見えても、疼痛、呼吸困難、恐怖、理解不足が主な制限因子であることがあります。
| 評価 | 確認すること | 記録例 |
|---|---|---|
| 筋力 | 下肢・体幹の左右差、抗重力活動 | 股・膝伸展力低下により立ち上がりで介助を要する |
| 関節可動域 | 動作に必要な可動域、左右差 | 股関節伸展制限により立位で前傾が残る |
| 疼痛 | 安静時痛、動作時痛、荷重時痛 | 右膝荷重時痛により立脚時間が短い |
| 制限因子 | 筋力、疼痛、浮腫、恐怖、呼吸苦 | 筋力よりも起立時のめまいが離床を制限している |
MMT、握力、ハンドヘルドダイナモメーターなどは目的に応じて選びます。再評価では、測定肢位、固定方法、声かけ、時間帯などの条件を可能な範囲でそろえます。
動作・ADLでは介助が必要な場所を具体化します
ADL評価では、合計点だけでなく、どの動作のどの部分に介助が必要かを記録します。介助量の内訳が分かれば、次に優先する練習と病棟で反復する動作を決めやすくなります。
| 動作 | 確認すること | 次の介入 |
|---|---|---|
| 起き上がり | 体幹操作、上肢支持、疼痛、息切れ | ベッド環境と手順を固定して反復する |
| 端座位 | 姿勢保持、支持量、症状、許容時間 | 短時間の反復と支持面の調整を行う |
| 立ち上がり | 足部位置、前方移動、下肢支持、介助部位 | 椅子高や手すりを調整して反復する |
| 移乗 | 方向転換、足の運び、介助量 | 動作方向と介助方法をチームで統一する |
| 歩行 | 距離、補助具、症状、疲労、方向転換 | 安全に反復できる距離と環境を設定する |
転倒・認知・意欲も活動量を左右します
身体機能が改善しても、注意障害、不安、拒否、環境上の問題が残ると活動量は増えません。転倒リスクと認知・精神機能は、離床の可否だけでなく、声かけや環境設定を決めるために評価します。
| 観点 | 確認すること | 対応 |
|---|---|---|
| 転倒 | 立ち上がり、方向転換、トイレ動作 | 補助具、動線、見守り方法を調整する |
| 理解・注意 | 指示理解、注意の持続、手順の保持 | 指示を短くし、動作手順を固定する |
| 意欲 | 開始の遅れ、拒否、疲労の訴え | 短時間で達成できる課題から始める |
| 不安・恐怖 | 転倒への恐怖、症状への不安 | 実施内容と終了条件を先に説明する |
栄養と皮膚は離床と並行して確認します
運動量を増やすだけでは、摂取不足や褥瘡リスクを解決できません。栄養状態と皮膚状態は、離床を中断して後から確認する項目ではなく、活動量の調整と並行して多職種で確認します。
| 領域 | 確認すること | 共有する内容 |
|---|---|---|
| 食事摂取 | 摂取量、残食、飲水、食事中の疲労 | 活動量との関係、食事姿勢、介助状況 |
| 体重・身体所見 | 体重変化、浮腫、筋量低下の可能性 | 経時変化と測定条件 |
| 皮膚 | 発赤、びらん、湿潤、ずれ | 体位、座位時間、除圧方法 |
| 体圧分散 | マットレス、クッション、沈み込み | 使用条件と姿勢の崩れ |
介入はボトルネックに合わせて組み立てます
介入内容は「廃用症候群だから同じメニュー」ではなく、当日のボトルネックと離床レベルに合わせて選びます。一度に複数の要素を変えると、何が症状や疲労に影響したのか分かりにくくなるため、時間、回数、姿勢、動作難易度のうち、主に変更する要素を決めます。
| 主なボトルネック | 介入例 | 再評価すること |
|---|---|---|
| 循環調節 | 背上げ、端座位、下肢運動、短時間の立位 | 症状、血圧・脈拍、回復時間 |
| 呼吸 | 体位調整、呼吸練習、排痰支援、短時間離床 | 呼吸困難、呼吸数、SpO2、痰 |
| 筋力・関節可動域 | 関節運動、反復収縮、立ち上がり、荷重練習 | 疼痛、反復回数、介助量、動作の変化 |
| 動作・ADL | 起居、移乗、トイレ、歩行など実際の動作練習 | 介助部位、補助具、疲労、安全性 |
| 認知・意欲 | 短い課題、生活行為、成功しやすい目標 | 開始までの時間、拒否、集中、達成状況 |
運動量は時間・回数・強度を分けて調整します
運動処方は、頻度、強度、時間、種類を分けて考えます。体力が低下している患者では、一度に長時間実施するより、短時間で反応を確認し、病棟生活の中で反復できる形へつなげる方が安全に調整しやすくなります。
- 頻度:リハビリテーション時間だけでなく、病棟で反復できる回数を検討します。
- 強度:会話、呼吸困難、疲労、フォームの崩れ、翌日への影響を確認します。
- 時間:症状が出るまで続けず、反応を確認できる長さから始めます。
- 種類:関節運動、筋力練習、起居・移乗、立位、歩行、呼吸練習、ADLを組み合わせます。
中止・相談は症状と変化から判断します
新しい症状、強い症状、回復しない変化がある場合は、離床を進めず中止・相談します。施設で定められた基準、主治医の指示、疾患別の注意事項を優先してください。
- 胸部症状、失神・前失神、新しい神経症状
- 強い呼吸困難、会話困難、酸素化や呼吸状態の悪化
- 意識状態の変化、反応の低下
- 血圧・脈拍の急な変化、不整脈の増悪
- 発熱や感染状態の悪化
- コントロールできない疼痛、めまい、悪心
- DVTを疑う下肢腫脹、疼痛、熱感、左右差
再評価では「できた量」より条件と反応を比較します
再評価では、歩行距離や座位時間だけでなく、同じ動作をどの条件で実施し、どのような反応があったかを比較します。条件が異なるまま数値だけを比べると、改善・悪化を正しく判断できません。
| 比較項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 開始条件 | 時間帯、食事、疼痛、酸素投与、安静時間 |
| 実施条件 | 体位、補助具、介助量、動作、時間、回数 |
| 反応 | 症状、バイタル変化、呼吸困難、疲労 |
| 回復 | 症状や数値が戻るまでの時間 |
| 次回条件 | 進める項目、維持する項目、戻す条件 |
記録例
記録例:ベッド上安静後、背上げを経て端座位を実施。端座位開始後に軽度のめまいを認めたが、支持下で継続可能。終了後は臥位へ戻し、症状と脈拍は数分で開始前の状態へ回復した。次回も同条件で端座位を反復し、症状と回復時間が短縮すれば立位を検討する。
「端座位を実施した」だけでなく、開始条件、症状、回復、次回の判断まで記録すると、多職種間で同じ進め方を共有できます。
廃用症候群の記録シートPDF
評価、離床、介入、再評価を1枚で整理できるA4記録シートです。初回評価、病棟での申し送り、前回との条件差の確認に使用できます。
廃用症候群の記録シート
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よくある質問
起立性低血圧がある場合は、どこまで離床しますか?
一律に立位や歩行を中止するのではなく、臥位、背上げ、端座位、立位と段階を分け、症状、血圧・脈拍の変化、回復時間を確認します。症状が強い場合や回復しない場合は段階を戻し、脱水、貧血、感染、薬剤、疼痛などの背景要因を医師・看護師と共有します。
DVTを疑う所見がある場合も運動してよいですか?
下肢の新しい腫脹、疼痛、熱感、左右差などからDVTが疑われる場合は、運動やマッサージを先に進めず、医師へ報告して評価と対応方針を確認します。既往がある場合や診断後に治療が開始されている場合も、現在の治療状況と離床許可を確認したうえで進めます。
毎回すべての評価項目を測定する必要がありますか?
毎回すべてを測定する必要はありません。安全確認は毎回行い、筋力、関節可動域、ADL、栄養などは、当日のボトルネックと再評価の目的に合わせて選びます。前回と比較する項目は、測定条件を可能な範囲でそろえてください。
廃用症候群は反応を見ながら段階を調整します
廃用症候群のリハビリテーションでは、安全確認から記録までの順番を固定し、患者の反応から次の段階を決めます。評価項目を網羅するのではなく、当日の離床レベルとボトルネックを決め、短時間で実施し、症状・バイタル変化・回復時間を記録してください。
- 最初に全身状態と当日の安全域を確認する
- ベッド上、端座位、立位・移乗、歩行から離床レベルを決める
- 当日のボトルネックを1つ選ぶ
- 反応を確認できる量から実施する
- 進める・維持する・戻すを判断する
- 次回の開始条件まで記録する
次に確認する記事
廃用症候群に関連する評価や介入を探す場合は、廃用・デコンディショニングハブから必要な記事を選べます。記録時には、本記事のPDFを使用し、安全基準の詳細は離床の中止・再開基準の記事で確認してください。
参考文献
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著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設しました。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に、臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

