ポリファーマシー対策チェックリスト|PTが拾う危険サインと共有手順

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ポリファーマシー対策|PTは「薬物有害事象+身体機能・ADLの変化」を拾って共有する

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結論:ポリファーマシー対策でPTが担いやすいのは、薬を減らす判断ではなく、薬物有害事象の手がかりと、服薬に関わる身体機能・ADLの変化を拾って多職種へ共有することです。転倒・ふらつき、せん妄、覚醒低下、起立時症状、排泄変化などがみられたら、薬剤数だけで判断せず、処方変更の時期、症状が始まった時期、機能変化を同じ順番で整理します。

この記事では、PTが多剤服用症例をみるときの60秒チェック、介入を一旦止めて共有したい安全サイン、薬剤クラスの確認、SBAR、記録、再評価までを1本の流れにまとめます。個別薬剤の中止・減量や処方設計までは扱わず、「何が・いつから・どの場面で変わったか」を安全に連携するための型に絞って解説します。

PTの役割は、薬剤を選ぶことではなく、変化を拾ってつなぐことです。厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編)」では、理学療法士・作業療法士の役割として、薬物有害事象、服薬に関わる身体機能、ADLの変化の確認が示されています。

ポリファーマシーでPTが見る5ステップ。処方変更、危険サイン、身体機能・ADL、時系列共有、再評価の流れ
図1.ポリファーマシーでPTが見る5ステップ

まず60秒で「処方変更 → 症状 → 機能変化」を確認する

最初から薬剤名や副作用をすべて暗記する必要はありません。直近の処方変更 → 目の前の症状 → 身体機能・ADLの変化の順で確認すると、多職種へ共有すべき変化を整理しやすくなります。

薬剤数だけでポリファーマシーとは判定しません。厚生労働省の資料では、服用薬剤数が6種類以上になると薬物有害事象の発生頻度が高まるデータが示されていますが、ポリファーマシーそのものは、単に薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態を指します。

表1.PTがまず60秒で確認する拾い上げチェック
確認 見るポイント 次に行うこと
服薬状況 処方薬、頓用薬、一般用医薬品、サプリメントを可能な範囲で把握する 剤数だけで判断せず、薬物有害事象や服薬上の問題がないか確認する
直近の変更 追加・増量・減量・中止、服薬時刻の変更など 「何が変わったか」と「症状がいつ始まったか」を並べる
ふらつき・転倒 新規の転倒、立ちくらみ、歩行不安定、支持量の増加 発生場面、時間帯、起立時症状、処方変更との時間関係を整理する
せん妄・認知変化 急な注意低下、見当識の変化、不穏、日内変動 急性発症かを確認し、脱水・感染・便秘・排尿障害など他の要因も含めて共有する
覚醒・反応 強い眠気、反応遅延、訓練中の覚醒低下、会話の成立しにくさ 普段との違い、呼吸状態、服薬タイミングを確認する
排泄・食欲 便秘、排尿障害・尿失禁、食欲低下などの新規変化 活動量やADL低下との時間関係を整理する

PTは「薬剤性」と断定せず、動作中の変化を薬物療法の評価へつなぐ

PTが強みを出せるのは、起立・歩行・注意・覚醒・ADLなど、実際の動作や活動の中で見える変化を多職種へ返すことです。処方内容の見直しは医師・歯科医師・薬剤師が中心となりますが、PTが把握した身体機能やADLの変化は、その判断を支える情報になります。

ここで重要なのが、「薬物有害事象」と「副作用」を同じ意味で扱わないことです。厚生労働省の普及啓発資材では、薬物有害事象は薬剤使用後に生じた有害な症状・徴候で、薬剤との因果関係の有無を問わない概念として整理されています。そのため、PTの記録や共有では「この薬が原因」と決めるより、症状・発生場面・時系列・機能への影響を事実としてそろえ、「薬剤影響も含めて確認が必要」とつなぐのが安全です。

表2.PTが共有しやすい情報の4点セット
項目 共有する内容
何が変わったか ふらつき、眠気、注意低下、起立時症状、ADL低下など
いつからか 発症日、処方変更日、頓用薬を使用した日など
どの場面か 起立直後、歩行中、服薬後、食後、夕方など
何が危険か 転倒、活動低下、誤嚥リスク、介助量増加、訓練継続困難など

介入を一旦止めて即時共有したい安全サイン

急な意識・覚醒変化や失神などがみられる場合は、薬剤性かどうかを判断する前にリハビリ介入を一旦中断し、安全確保と施設の急変対応手順に沿った共有を優先します。薬剤だけへ原因を絞らず、急性疾患、脱水、感染など他の原因も含めて評価につなげます。

表3.介入を一旦止めて共有したい安全サイン
安全サイン 現場で見える変化 PTの初動
意識・覚醒・呼吸の急変 呼名反応低下、急な強い眠気、会話困難、呼吸状態の変化 介入を中断し、安全な体位を確保して意識・呼吸・バイタルを確認し共有する
失神・前失神 眼前暗黒感、強い立ちくらみ、意識消失、立位保持困難 安全な姿勢へ戻し、症状・体位・バイタルの変化を確認して共有する
急性のせん妄・認知変化 急な不穏、注意障害、見当識変化、普段と異なる反応 発症時刻と普段との差を確認し、薬剤以外の急性要因も含めて共有する
転倒後の状態変化 疼痛増悪、歩容急変、覚醒・認知変化、離床困難 転倒時刻・状況・その後の変化を整理し、必要な評価につなげる

薬剤クラスは「原因確定」ではなく確認のきっかけにする

老年症候群の症状や所見が新たにみられたときは、薬剤起因性も確認候補になります。ただし、症状と薬剤クラスが一致するだけで原因とは判断しません。処方変更との時間関係や、脱水・感染・疼痛・睡眠状況などを合わせて整理し、医師・薬剤師へ確認します。

表4.症状から確認候補となる薬剤群の例
見える変化 確認候補となる薬剤群の例 PTが追加で見ること 共有の型
ふらつき・転倒 催眠鎮静薬・抗不安薬、抗精神病薬、抗うつ薬、降圧薬、利尿薬など 起立時症状、歩行の変化、転倒場面、時間帯、処方変更 「変更後から、どの場面で不安定になったか」を伝える
せん妄・認知変化 抗コリン作用を持つ薬剤、催眠鎮静薬・抗不安薬、オピオイドなど 急性発症、日内変動、注意、便秘・排尿障害・感染・脱水など 薬剤以外の誘因も同時に整理する
便秘・排尿変化 抗コリン作用を持つ薬剤、オピオイドなど 排泄頻度、腹部症状、活動量、ADLへの影響 排泄変化と活動・離床への影響をセットで伝える
起立時症状 降圧薬、利尿薬、α遮断薬など 体位変換と症状、血圧・心拍、水分状況、処方変更 薬剤影響も含めた確認が必要であることを共有する
強い眠気・反応低下 催眠鎮静薬・抗不安薬、オピオイド、抗精神病薬、抗てんかん薬など 覚醒レベル、注意維持、呼吸状態、会話の成立、服薬時間 安全への影響と普段との差を先に伝える

把握 → 拾い上げ → 機能確認 → 共有 → 再評価の5ステップ

PTの運用では、薬剤情報だけを集めるより、症状と身体機能・ADLの変化を同じ流れで追跡できることが重要です。再評価の時期を一律に「24〜72時間」と固定するのではなく、急な変化はその都度確認し、処方変更や対応後はチームで決めたモニタリング項目と時期に沿って追跡します。

表5.PTが回すポリファーマシー確認5ステップ
ステップ やること 残す内容
1.把握 処方薬、頓用、一般用医薬品、サプリメントなどを可能な範囲で確認する 現在の服薬状況と直近の変更
2.拾い上げ ふらつき・転倒、せん妄、覚醒、排泄などの変化を確認する 症状、発症時期、発生場面
3.機能確認 起立、歩行、注意、覚醒、ADL、バイタルなどを確認する 普段との差と安全上の影響
4.共有 SBARで事実と確認依頼を短く伝える S/B/A/Rを簡潔に残す
5.再評価 急変時は随時、処方変更・対応後は決めたモニタリング項目を同条件で追う 改善・不変・悪化と次の確認時期

SBAR|「薬剤性」と断定せず30秒で共有する

共有では、原因を決めるより処方変更と症状の時間関係、安全への影響、確認してほしいことを明確にします。以下は、起立時のふらつきを例にしたPTから医師・薬剤師への共有例です。

表6.ポリファーマシーで使うSBAR共有例
項目 共有例
S(状況) 「昨日から立位時のふらつきと眼前暗黒感が増え、歩行時の支持量が増えています。」
B(背景) 「3日前に降圧薬の変更があり、夕方に症状が出やすくなっています。水分摂取も少なめです。」
A(評価) 「起立時に症状が再現し、普段より歩行が不安定です。処方変更との時間関係があり、薬剤影響を含めた確認が必要と考えます。」
R(依頼) 「処方内容と他の原因を含めた確認をお願いします。PTでは安全を優先して負荷を調整し、同じ症状と機能を継続して確認します。」

現場で詰まりやすいのは「剤数・原因・再評価」を固定してしまうこと

よくある失敗は、薬剤数だけでポリファーマシーと判断すること、症状をすぐに薬剤性と決めること、再評価時期を全症例で同じにすることです。PTは観察した事実をそろえて、薬剤影響を含む評価へつなぐところまでを確実に行います。

表7.ポリファーマシー対応でよくある失敗と修正
失敗 問題 修正
薬剤数だけで判断する 必要な多剤服用まで「悪い」と捉えてしまう 薬物有害事象、服薬上の問題、機能変化とセットで確認する
薬剤性と断定する 感染、脱水、急性疾患など他の原因を見落とす可能性がある 「薬剤影響も含めて確認」と共有する
時系列が抜ける 処方変更と症状の関係を評価しにくい 変更日と発症時期を並べて記録する
一般用医薬品・サプリが抜ける 服薬状況の全体像が見えない お薬手帳、本人・家族からの情報も活用する
再評価条件が決まっていない 対応後に改善したか比較できない 追う症状・機能・条件・確認時期をチームで決める

転倒そのものの機能評価まで整理したい場合は、転倒リスク評価の最小セットで、薬剤情報とは分けて客観的な転倒リスクを確認できます。

記録は「変更 → 症状 → 機能 → 共有 → 再評価」を1本につなぐ

薬剤名だけを記録しても、PTが観察した機能変化は伝わりません。何が変更され、その後どの症状と機能変化が起き、誰へ何を共有し、何を追跡するかまで残すと、対応後の比較がしやすくなります。

表8.ポリファーマシー対応の最小記録テンプレ
項目 記録する内容
服薬情報 処方薬/頓用/一般用医薬品/サプリメント/お薬手帳の確認状況
直近の変更 追加・増量・減量・中止・服薬時刻変更と日付
症状 いつから、何が、どの場面で出現したか
PT所見 起立、歩行、注意、覚醒、ADL、バイタルなど普段との違い
共有 S:状況/B:背景/A:観察・評価/R:確認依頼
再評価 追跡項目、条件、確認時期、改善・不変・悪化

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。

Q1.何剤からポリファーマシーですか?

一律の剤数だけでは定義しません。厚生労働省資料では、6種類以上になると薬物有害事象の発生頻度が高まるデータが示されていますが、「6剤以上=ポリファーマシー」という意味ではありません。薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下などの問題につながっているかを合わせて考えます。

Q2.PTは薬についてどこまで共有してよいですか?

PTが処方変更を決めるのではなく、薬物有害事象の手がかり、服薬に関わる身体機能、ADLの変化を観察して多職種へ共有します。「何が、いつから、どの場面で変わったか」「安全上何が問題か」を具体的に伝えることが重要です。

Q3.ふらつきを薬剤性と判断してよいですか?

薬剤だけで原因を確定しません。処方変更との時間関係を確認しつつ、脱水、感染、循環変動、疼痛、睡眠状況、急性疾患など他の要因も含めて整理します。共有では「薬剤影響も含めた確認が必要」とすると、観察事実と原因判断を分けやすくなります。

Q4.処方変更後は24〜72時間で再評価しますか?

24〜72時間は全症例に共通する公式の再評価基準ではありません。急な安全上の変化はその都度確認し、処方変更後は医師・薬剤師・看護師などと共有したモニタリング項目と時期に沿って追跡します。重要なのは、同じ症状・機能を比較できる条件を決めておくことです。

Q5.市販薬やサプリメントも確認しますか?

可能な範囲で確認します。処方薬だけでは服薬状況の全体像が分からないことがあり、厚生労働省の資料でも一般用医薬品やサプリメントを含めた把握が示されています。お薬手帳の情報だけで不足する場合は、本人・家族や関係職種から情報を補完します。

次の一手|症状に合わせて深掘りする


参考文献

  1. 厚生労働省.高齢者におけるポリファーマシー対策の普及啓発資材について.2026年7月31日.厚生労働省
  2. 厚生労働省.ポリファーマシー対策の普及啓発資材 高齢者の医薬品適正使用の指針 総論編の概要.2026.PDF
  3. 厚生労働省.高齢者の医薬品適正使用の指針 各論編(療養環境別).2019.PDF
  4. American Geriatrics Society Beers Criteria Update Expert Panel. American Geriatrics Society 2023 updated AGS Beers Criteria for potentially inappropriate medication use in older adults. J Am Geriatr Soc. 2023;71(7):2052-2081. doi:10.1111/jgs.18372
  5. O’Mahony D, Cherubini A, Guiteras AR, et al. STOPP/START criteria for potentially inappropriate prescribing in older people: version 3. Eur Geriatr Med. 2023;14(4):625-632. doi:10.1007/s41999-023-00777-y

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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