失語症評価の基本セット|SLTA・WAB・CADL の使い分け

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失語症評価の基本セット| SLTA ・ WAB ・ CADL の違いと使い分け

失語症の評価は「全部やる」ほど正確になるわけではなく、病期目的に合わせて検査を選び、結果を介入と共有に変換できるほど強くなります。本記事では、 SLTA ・ WAB ・ CADL を「何が分かるか」ではなく、どの場面で、どれを優先し、どう組み合わせるかに絞って整理します。

結論はシンプルで、WAB で全体像と重症度SLTA で苦手プロファイルCADL で生活の困りごとの順に「翻訳」すると、カンファや家族説明まで一気に通ります。まずは 10 秒で全体像が掴める比較表と、選び方フローから入ってください。

回遊(同ジャンル):失語だけでなく「脳卒中の ST 評価」を最小セットで揃えると、優先順位がブレにくくなります。

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先に結論| 3 つの検査で「何が違うか」を一発で整理

迷いが出るのは「検査の目的」が混ざるときです。まずは、 SLTA ・ WAB ・ CADL を目的で分けると、選び方が速くなります。

SLTA ・ WAB ・ CADL の比較(成人・脳血管障害の運用イメージ)
検査 最短の目的 強い場面 弱い場面 向く病期
WAB 全体像+重症度 限られた時間で「失語の輪郭」を作る 読み書き等の細かな苦手が残りやすい 急性期〜回復期
SLTA プロファイル(苦手の地図) どこから訓練するかを具体化する フル実施は負担が大きい 回復期〜外来
CADL 生活での会話能力 家族説明・在宅支援に直結する 急性期の状態不安定では取りにくい 生活期(回復期後半〜)

選び方フロー|「病期 × 目的」で迷わない最小セット

検査は「どれが優れているか」ではなく、いま欲しい意思決定に合わせて選ぶのが実務です。ここでは、病期ごとに優先しやすい組み合わせを固定します。

病期ごとの検査選択(成人・脳血管障害の優先順位)
病期 まず決めたいこと 優先しやすい検査 運用のコツ
急性期 安全に評価できる上限/全体像 WAB(コア)+観察 フルにこだわらず「いま取れた範囲」を固定して再評価
回復期 訓練の優先順位/目標設定 SLTA(重点 or フル)+ WAB(再評価) 苦手モダリティを「介入に変換」して共有する
生活期 生活で困る場面/支援設計 CADL +会話観察+聴き取り 「できる/できない」より「どうすればできるか」を先に決める

ケースで分かる|急性期と生活期の “最小セット” 運用

同じ失語でも、病期が違うと「まず決めたいこと」が変わります。ここでは典型 2 例で、 SLTA ・ WAB ・ CADL の使い分けを “現場の型” に落とします。

ケース 1(急性期):短時間で全体像 → 再評価の軸を作る

状況:疲労が強く、長時間の検査が難しい。まずはチームで「どれくらい助ければ会話が通るか」を揃えたい。

最小セット:WAB(コア)+会話観察(通る手段)+ 3 行テンプレで共有。

急性期の共有( 3 行テンプレ例)
書く内容 短い例
①いま何が起きているか 全体像(理解/発語) 短文理解は通るが、発語は遅延が強い
②何ができるか 通る手段 指差し・二択提示で意思確認は可能
③次に何をするか 支援の一手 指示は 1 文を短く区切り、二択で成功率を上げる

急性期あるある(回避):急性期に SLTA を “フル” で回すと疲労で崩れやすいので、まずは WAB の軸を作り「次回の条件固定(時間帯・声掛け・提示法)」を先に決めます。

ケース 2(生活期):点数 → 生活支援に翻訳して家族説明まで通す

状況:家族が「電話ができない」「用件が増えると噛み合わない」と困っている。支援設計へ直結させたい。

最小セット:CADL(困る場面)+必要なら SLTA(重点)→「代償手段+環境調整+家族の関わり」に固定して共有。

生活期の支援設計(場面 → 打ち手の例)
困る場面 代償手段 環境調整 家族の関わり
電話 要点カード 静かな場所で短時間 一問一答+確認の合図を統一
買い物 写真付きリスト 売り場を固定 選択肢を 2 つに絞って提示
来客対応 定型フレーズ紙 会話の役割を分担 話題を 1 つずつ、待つ時間を確保

生活期あるある(回避):検査結果を示して終わらず、 CADL の結果を「今日からできる支援」に直訳して、家族と支援者で同じ型を共有します。

結果を “使える形” にする| 3 ステップで介入と共有へ落とす

点数やタイプ名だけだと、チームは動けません。検査結果は行動支援に翻訳して、カンファと家族説明まで通すのがゴールです。

  1. WAB:重症度とタイプで「全体像」を 1 行で言う
  2. SLTA:苦手モダリティを「訓練の優先順位」に変換する
  3. CADL:生活場面の困りごとを「支援の設計」に変換する
カンファ・家族説明に落とす 3 行テンプレ(例)
書く内容 短い例
①いま何が起きているか 全体像(重症度/大枠) 「口頭理解は短文なら可能だが、発語は遅延が強い」
②何ができるか 保たれる手段 「指さし・ジェスチャーで意思は伝わる」
③次に何をするか 介入と環境調整 「指示は 1 文を短く区切り、選択肢提示で成功率を上げる」

各検査の “使いどころ” だけ押さえる| SLTA ・ WAB ・ CADL

ここでは、各検査の説明を最小限にして、現場で迷うポイント(いつ・何のために)だけに絞ります。

SLTA:苦手の “地図” を作り、訓練の優先順位を決める

  • 向く:回復期〜外来で、読解・書字を含む苦手領域を具体化したい
  • 迷いどころ:フル実施にこだわると負担が増え、結果が荒れる
  • 運用のコツ:「重点項目」を固定して経時で追える形にする

WAB:短時間で “全体像+重症度” を作り、再評価の軸を揃える

  • 向く:急性期〜回復期で、限られた時間に全体像を作りたい
  • 迷いどころ:読み書きの細かい訓練設計は単独だと不足しやすい
  • 運用のコツ:コアを優先して「同条件」で繰り返し、変化を拾う

CADL:生活場面の “困りごと” を見える化し、支援設計へ直結させる

  • 向く:在宅復帰・復職を見据え、家族説明と支援方針を作りたい
  • 迷いどころ:急性期の状態不安定では実施の質が落ちやすい
  • 運用のコツ:結果を「代償手段」「環境調整」「家族の関わり方」に直訳する

現場の詰まりどころ|“やりがち” を先に潰しておく

ここは読ませるゾーンです。ボタンは置かず、ページ内で解決できる形にします。

よくある失敗|時間がないのに “全部やる” で崩れる

失語評価が回らない原因は、検査の難しさよりも「設計ミス」であることが多いです。よくある失敗と、最短の修正を表に固定します。

失語症評価の “よくある失敗” と最短の修正
失敗(NG) なぜ起きるか 修正(OK)
急性期に SLTA をフルで回そうとする 目的(全体像)と手段(詳細)が逆転する 急性期は WAB コア+観察で「上限」と「再評価軸」を作る
点数だけを共有して終わる チームが行動に変換できない 「できる手段」「難しい場面」「支援の一手」を 3 行で添える
1 回で全部終わらせようとする 疲労で反応が崩れ、結果が荒れる 評価を分割し「どこまでできたか」を固定して追う
検査の印象と生活の印象がズレて混乱する 構造化場面と自然場面の差を見落とす CADL/会話観察で “生活の強み” を拾い、支援設計に直結させる

回避の手順/チェック|評価 → 介入 → 共有を 1 本にする

失語評価は「検査」ではなく「意思決定」です。迷わないために、手順を固定します。

  1. 目的を 1 行で宣言:いまは(全体像/訓練設計/生活支援)のどれか
  2. 検査を選ぶ: WAB / SLTA / CADL を 1 つ軸にして、必要なら補助を足す
  3. 結果を翻訳:点数 → 行動(できる/難しい) → 支援(どうすればできる)
  4. 共有の型: 3 行テンプレで、チームが動ける情報にする
  5. 再評価の条件を固定:時間帯、疲労、声掛け、提示方法を揃える

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

SLTA ・ WAB ・ CADL は全部やるのが理想ですか?

理想は「全部」ではなく、目的に対して必要十分であることです。急性期は WAB で全体像と重症度、回復期は SLTA で訓練設計、生活期は CADL で生活支援というように、病期と目的で優先順位を決める方が再現性が高くなります。

急性期で疲れやすく、検査が途中で止まります。どう扱えばいいですか?

無理に最後まで進めるより、どこまでできたかを記録して、その範囲で意思決定に必要な情報へ変換します。次回は同条件で再実施し、変化を拾える形にすると、評価が「積み上がる」運用になります。

検査結果をカンファでどう説明すれば伝わりますか?

点数よりも、できる手段支援の一手が伝わるとチームが動けます。「いま何が起きているか → できる手段 → 次に何をするか」の 3 行で言い切ると、家族説明にも流用できます。

SLTA と WAB の結果が噛み合わず混乱します。

評価場面の構造化の程度が違うため、ズレは起こり得ます。ズレは情報なので、 CADL や会話観察で「生活場面の強み」を拾い、代償手段と環境調整に落とすと整理しやすくなります。

次の一手|運用を整える → 共有の型 → 環境も点検

教育体制・人員・記録文化など“環境要因”を一度見える化すると、次の打ち手が決めやすくなります。

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参考文献

  • 日本高次脳機能障害学会(旧 日本失語症学会)関連:標準失語症検査( SLTA )情報(購入案内を含む) 公式ページ
  • 医学書院: WAB 失語症検査 日本語版(書籍情報) 書籍詳細
  • 心理検査専門所(千葉テストセンター): CADL 実用コミュニケーション能力検査(概要) カタログ
  • Strokengine: Western Aphasia Battery( WAB )概要( AQ の説明を含む) 解説

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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