電解質異常とリハビリ|新人PT向けNa・K・Caの見方

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電解質異常は「数値だけ」で判断せず、Na・K・Caごとに次の確認先を変える

新人PTがNa・K・Caの異常値を見たときに重要なのは、基準値を暗記して「リハ実施/中止」を機械的に決めることではありません。症状、バイタル、前回値からの変化、治療状況を確認したうえで、電解質ごとに関連データを追加確認することが基本です。

Naでは神経症状と変化速度、Kでは心電図・腎機能・薬剤・採血条件・Mg、CaではAlb(アルブミン)またはイオン化Ca・Mg・腎機能が重要です。本記事では、PT・OT・STがリハビリ前・中に異常値へ気づいたとき、何を確認し、どのような所見なら負荷をかけず報告・相談へ進むかを整理します。

血液検査データ全体の確認順を先に整理したい場合は、新人PT向けの生化学検査値ガイドもあわせて確認してください。

電解質異常(Na・K・Ca)を見たときの次の確認ポイント
Na・K・Caでは、異常値を見たあとに確認する症状・関連データが異なります。

Na・K・Caの異常値を見たら、まず「症状→変化→関連データ」を確認する

電解質異常を見つけたら、値だけで介入可否を決めず、現在の患者状態とその値がどのような経過で生じたのかを確認します。特に、新しい神経症状、不整脈を疑う症状、循環動態の変化がある場合は、運動負荷を追加する前に報告・相談を優先します。

Na・K・Ca異常を見たときの確認ポイント
項目 まず確認する症状・所見 次に確認するデータ 特に注意する場面
Na 意識変化、混乱、頭痛、悪心・嘔吐、けいれん、強い倦怠感 前回値、変化速度、血糖・浸透圧に関する情報、体液状態、水分出納、治療状況 新規の神経症状、急速なNa変化、全身状態の悪化
K 筋力低下、動悸、めまい・失神、脈拍異常、不整脈を疑う所見 心電図、腎機能、薬剤、採血条件、前回値、Mg、必要に応じ酸塩基平衡 高度なK異常、急速な変化、心電図変化、腎機能悪化
Ca しびれ、筋けいれん、テタニー、脱力、意識変化、けいれん、脈拍異常 Alb補正Caまたはイオン化Ca、Mg、腎機能、前回値、治療状況 神経筋症状、意識変化、不整脈を疑う所見、急速な変化

ここで示しているのは、PT・OT・STが原因を診断するための手順ではありません。「異常値を見つけたあと、リハビリを続ける前に何を確認して医師・看護師へ共有するか」を整理するための視点です。

Na異常|数値だけでなく神経症状と「どのくらい速く変化したか」を見る

Na異常では、現在の値だけでなく、神経症状とNaが変化した速度を確認することが重要です。特に低Na血症では、同じNa値でも急速に低下した場合と慢性的に推移している場合では臨床的な意味が異なります。

低Na血症では意識・頭痛・悪心・けいれんを確認する

低Na血症では、混乱、頭痛、悪心・嘔吐、傾眠、けいれんなどの神経症状がみられることがあります。欧州の低Na血症ガイドラインでは、血清Na濃度による生化学的な重症度と症状の重症度を分けて評価しており、症状の程度と発症速度を含めて判断する必要があるとされています。

そのため、リハビリ前にNa低値を確認した場合は、「Naがいくつか」だけではなく、次の情報を確認します。

  • 意識状態は普段と変わっていないか
  • 新しい混乱、頭痛、悪心・嘔吐、けいれんはないか
  • 前回のNaはいくつで、どの程度の期間で変化したか
  • 血糖上昇など、Na値の解釈に影響する状況がないか
  • 脱水や浮腫など、体液状態に変化がないか
  • 輸液、利尿薬、水分制限などの治療が開始・変更されていないか

新しい意識変化やけいれんなどを認める場合は、リハビリ負荷を調整して様子を見る場面ではありません。介入を進めず、患者の安全を確保して速やかに報告・相談します。

高Na血症でも体液状態と神経症状を合わせて確認する

Na異常は低Na血症だけではありません。高Na血症では、水分不足や水分喪失などを背景としている場合があり、口渇、脱水を示唆する所見、意識状態、水分出納、尿量などの確認が重要になります。

PT・OT・STが高Na血症の原因を決める必要はありませんが、「前回から急に上昇している」「意識状態が変化した」「水分出納や全身状態が大きく変化している」場合は、運動負荷を追加する前に治療状況を確認し、必要に応じて医師・看護師へ共有します。

K異常|心電図・腎機能・薬剤・採血条件まで確認する

K異常では、神経筋症状だけでなく心筋への影響を意識し、心電図・腎機能・薬剤・採血条件を確認します。高K血症と低K血症のどちらでも、不整脈や筋力低下につながる可能性があるため、K値単独で「運動できる」と判断しないことが重要です。

高K血症では心電図と腎機能を優先して確認する

高K血症を認めた場合は、動悸、胸部症状、めまい・失神、筋力低下、脈拍の変化を確認します。そのうえで、心電図、Cr・eGFRなどの腎機能、前回K値、使用薬剤を確認します。

ACE阻害薬・ARB、MRA、カリウム保持性利尿薬など、Kへ影響する薬剤が使われている場合があります。一方で、薬剤をPTの判断で中止するものではありません。使用薬剤と直近の変更を確認して、報告時の情報として共有するという位置づけです。

また、高K値が患者の臨床像と合わない場合は、採血時の溶血、検体の取り扱いなどによる偽性・見かけ上の高K血症も考慮されます。PTが再採血を決定するのではなく、「症状がないのに前回から突然大きく上昇している」などの情報を共有し、検査結果が確認済みかを確認します。

K 6.0・6.5 mmol/Lは「リハ中止値」ではなく医学的評価を優先する目安

UK Kidney Associationの高K血症ガイドラインでは、入院患者で血清K 6.0 mmol/L以上の場合は緊急12誘導心電図を実施し、高K血症に伴う変化を確認することを推奨しています。

さらに、K 6.5 mmol/L以上、12誘導心電図に高K血症を示唆する変化がある場合、またはK 6.0〜6.4 mmol/Lでも全身状態不良や急速な上昇が予想される場合には、少なくとも持続心電図モニタリングが推奨されています。

重要:6.0 mmol/Lや6.5 mmol/Lを「リハビリ中止基準」と読み替えないでください。これは高K血症に対する医学的評価・心電図確認の基準です。PT・OT・STとしては、このレベルの高K血症を確認した場合に通常の運動負荷へ進むのではなく、治療状況・心電図評価・医師の方針を確認するための目安として扱います。

モニター心電図と12誘導心電図の役割や確認方法は、新人PTの心電図の読み方で詳しく整理しています。

低K血症では筋力低下・心電図・Mgも確認する

低K血症では、筋力低下、筋けいれん、麻痺、便秘などの症状に加えて、心電図変化や不整脈が問題になることがあります。低下の程度だけでなく、変化速度、心疾患の有無、薬剤、消化管からの喪失などの背景を確認します。

もう1つ見落としたくないのがMgです。低Mg血症を伴う低K血症ではK補正が難しくなる場合があるため、K低値を認めたときはMgが測定されているかも確認しておくと、病態を理解しやすくなります。

Ca異常|総Caだけで判断せずAlbまたはイオン化Caを確認する

Caでは、検査画面に表示された総Ca値だけで「低Ca・高Ca」と判断しないことが重要です。血清Caの一部はアルブミンと結合しているため、Albが低い患者では総Caが低く表示されることがあります。

総Caが低いときはAlb補正Caまたはイオン化Caを見る

低Caが表示されている場合は、Albがどの程度か、補正Caが提示されているか、またはイオン化Caが測定されているかを確認します。特に重症患者などでは、アルブミン補正式だけでは状態を十分に反映しないこともあり、イオン化Caが重要になる場面があります。

PT・OT・STがCa値を補正して治療を決めるのではなく、「表示されている総Caのみを見て判断せず、Albやイオン化Caを含む医学的評価が済んでいるか確認する」という使い方が実務的です。

低Ca血症ではしびれ・テタニー・けいれん・QT延長に注意する

急性の低Ca血症では、口周囲や手指のしびれ、筋けいれん、テタニー、けいれんなどの神経筋症状がみられます。心電図ではQT延長や不整脈がみられることがあります。

Society for Endocrinologyの急性低Ca血症ガイダンスでは、症候性の低Ca血症は緊急対応を要する場合があるとされ、評価項目としてAlb補正Ca、Mg、腎機能などが挙げられています。

特にMg低下は低Ca血症の原因・増悪要因となるため、低Caと神経筋症状がある場合にはMgも確認します。

高Ca血症では脱力・認知変化・脱水・心電図を確認する

高Ca血症では、筋力低下、口渇・多尿、悪心、便秘、認知機能の変化や意識障害などがみられることがあります。また、高度になると心電図変化や不整脈が問題になります。

高Ca値を確認した場合も、総Caだけを見るのではなくAlbを確認し、患者の意識状態、体液状態、腎機能、心電図などと合わせて評価されているかを確認します。新しい意識変化や循環動態の異常を伴う場合は、リハビリ負荷より医学的評価を優先します。

リハビリ前と介入中では、電解質異常への対応を分けて考える

介入前に異常値を見つけた場合と、リハビリ中に症状が出現した場合では初動が異なります。介入前はカルテ情報と患者状態を照合できますが、介入中の新規症状ではまず負荷を止めて安全確認することが優先されます。

電解質異常を疑う場面でのリハビリ前・介入中の確認
場面 最初に行うこと 次に確認すること 報告・相談を優先する所見
介入前に異常値を確認 症状・意識・バイタルを確認 前回値、変化速度、関連検査、治療状況、医師指示 新規症状、急な検査値変化、循環不安定、医学的評価が未確認
介入中に新しい症状が出現 運動・離床負荷を中断して安全確保 意識、血圧、脈拍、SpO₂、呼吸状態、症状の推移 意識変化、けいれん、失神、胸部症状、強い呼吸苦、不整脈を疑う所見
異常値はあるが症状なし 値だけで即断しない 慢性値か、前回との差、治療中か、関連データが確認されているか 高度異常、急速な変化、評価・治療方針が不明な場合

「症状がない=安全」とも、「異常値がある=すべて中止」とも限りません。電解質異常の種類、急性か慢性か、症状、心電図や関連データ、現在の治療方針を合わせて確認することが重要です。

負荷をかけず報告・相談を優先する場面

新規または増悪する神経症状、循環器症状、全身状態の悪化がある場合は、数値の再確認より先に患者の安全確保と報告・相談を優先します。

  • 新しい意識変化や著明な傾眠を認める
  • けいれんが出現した
  • 失神または失神前症状がある
  • 新しい動悸や明らかな脈拍異常を認める
  • 胸部症状や強い呼吸苦を認める
  • 急な筋力低下や麻痺様症状が出現した
  • バイタルが不安定である
  • Na・K・Caが前回から大きく変化しており、医学的評価が確認できていない
  • 高度なK異常など、緊急の医学的評価が必要となる可能性がある

これらは「電解質異常だけが原因」と断定するための所見ではありません。同じ症状は脳血管障害、心疾患、感染症、薬剤などでも生じます。だからこそ、リハビリ場面では原因の確定よりも、変化を見つけて負荷を止め、必要な情報をまとめて報告することが重要です。

報告・記録では「値」だけでなく症状・変化・関連データをセットにする

「Kが高いです」「Naが低いです」だけでは、受け手が患者の緊急性を判断しにくくなります。電解質異常を報告するときは、数値に加えて現在の状態と変化をまとめます。

電解質異常を共有するときに残したい情報
項目 確認・記録する内容
検査値 Na・K・Caの当日値、採血時刻
経時変化 前回値と採血日、上昇・低下の方向
症状 意識、頭痛、悪心、けいれん、筋力低下、しびれ、動悸、めまいなど
バイタル 血圧、脈拍・心拍数、SpO₂、呼吸数など
関連データ Kなら心電図・腎機能・Mg、CaならAlbまたはイオン化Ca・Mgなど
治療状況 輸液、補正治療、薬剤変更、医師指示など確認できた内容
リハでの対応 介入前に保留したか、介入中に中断したか、症状の経過

記録では原因を推測して断定するより、「何を確認し、患者にどの変化があり、何を報告してどう対応したか」を残すほうが、次の担当者の再評価につながります。

よくある質問

Q1. 電解質が基準値から外れていたら、リハビリは中止ですか?

一律には判断できません。電解質の種類、異常の程度、前回からの変化、症状、バイタル、心電図や治療状況を合わせて確認します。ただし、新規の意識変化、けいれん、失神、不整脈を疑う所見、循環不安定などがあれば、負荷を進めず報告・相談を優先します。

Q2. Kが6.0 mmol/L以上ならリハビリ中止と考えてよいですか?

6.0 mmol/Lをリハビリ中止の一律基準として扱うのは適切ではありません。一方、UK Kidney Associationでは、入院患者のK 6.0 mmol/L以上で緊急12誘導心電図を推奨しています。したがって、リハビリを通常どおり開始するのではなく、医学的評価・心電図・治療方針を確認してから介入可否を判断する場面と考えます。

Q3. Caが低ければ、その値をそのまま低Ca血症として見てよいですか?

総Caだけでは判断しにくい場合があります。Caの一部はアルブミンと結合しているため、Alb低値では総Caも低く表示されます。Alb補正Caやイオン化Caが確認されているかを見たうえで、Mg・腎機能・症状なども合わせて確認します。

まとめ|Na・K・Caで「次に見るもの」を変える

電解質異常のリハビリ判断では、正常値を暗記することより、異常を見つけたあとに何を追加確認するかを理解することが重要です。

  • Na:神経症状、前回値、変化速度、体液状態を確認する
  • K:心電図、腎機能、薬剤、採血条件、Mgを確認する
  • Ca:Alb補正Caまたはイオン化Ca、Mg、腎機能を確認する

そして、新しい意識変化、けいれん、不整脈を疑う症状、循環動態の悪化などがあれば、負荷を追加せず安全確保と報告・相談へ進みます。「数値→即中止」ではなく、「数値→患者状態→関連データ→医学的評価・治療方針→リハ判断」までつなげることが、新人PTが電解質異常を読むときの基本です。

参考文献

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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