ICU早期離床の多職種連携|カンファレンス・情報共有の進め方

臨床手技・プロトコル
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ICU早期離床の多職種連携は「共有項目」と「更新するタイミング」をそろえる

ICUの早期離床では、医師・看護師・PT/OTなどが個別に判断するだけでなく、当日の離床目標、患者リスク、ライン・デバイスや介助体制、状態変化時の対応を共有しながら進めることが重要です。特定職種だけに判断を集約するのではなく、多職種カンファレンス、実施前、実施中、実施後の各段階で情報を更新すると、離床方針のずれや申し送りの抜けを整理しやすくなります。

本記事では、ICUで早期離床を進める際に「誰が何を知っているか」から「チームとして何を共有して次の判断へつなげるか」へ視点を移し、多職種連携の実装方法を整理します。

ICU早期離床の多職種連携フロー。多職種カンファレンス、実施前、実施中、実施後の4段階で情報を共有する流れ
図|ICU早期離床では、多職種カンファレンス→実施前→実施中→実施後の順に情報を更新し、目標・リスク・実施条件・中止時対応を共有します。

まず共有するのは「目標・リスク・実施条件・状態変化時の対応」です

多職種連携では、職種ごとの仕事内容を細かく固定する前に、その日の離床に必要な情報がチーム内でそろっているかを確認します。特に重要なのは、離床目標だけでなく、実施前に解決しておくべきリスクや不確定事項を共有することです。

ICU早期離床で多職種が共有したい4項目
共有項目 確認する内容 共有する目的
当日の離床目標 ベッド上活動、端座位、立位、移乗、歩行など、当日に候補とする活動 職種間で活動目標がずれたまま進むことを防ぐ
患者リスク 病態の変化、呼吸・循環状態、意識・鎮静、疼痛、治療内容など 離床前に追加確認や相談が必要な事項を明確にする
実施条件 ライン・ドレーン・人工呼吸器などのデバイス、必要な介助人数、環境 実施直前の中断やデバイストラブルを減らす
状態変化時の対応 注意する症状・所見、院内の中止基準、報告・エスカレーション経路 異常時に安全確保と情報共有を速やかに行う

この4項目はJ-ReCIP 2023の公式チェックリストではありません。重症患者リハビリテーションで多職種連携が重要であることを踏まえ、本記事で院内運用を整理するための実務上の枠組みとしてまとめています。

カンファレンス→実施前→実施中→実施後で情報を更新します

ICUでは、患者状態や治療内容が短時間で変化します。そのため、朝のカンファレンスで決めた内容を一日中そのまま適用するのではなく、実際に離床する時点の情報へ更新しながら進めることが重要です。

ICU早期離床の多職種連携フロー
タイミング 主に共有すること 次につなげるポイント
多職種カンファレンス 病態・治療方針、当日の活動目標、主なリスク 今日の活動候補と、実施までに確認すべき事項をそろえる
実施前 直近の症状・バイタル、治療変更、意識、ライン・デバイス、介助体制 カンファレンス後の変化を確認し、現在の状態と計画を照合する
実施中 症状、呼吸・循環反応、意識、動作、介助量、デバイスの状態 患者の反応に合わせて活動内容を調整する
実施後 実際に行えた活動、反応、制限因子、回復経過 次回の確認事項とチームへ返す情報を明確にする

特に実施前の再確認は欠かせません。カンファレンス時には離床を予定していても、その後に呼吸・循環状態や治療内容が変われば、当初の計画をそのまま実施するのではなく、現在の状態に合わせて再評価します。

多職種カンファレンスでは「今日の目標」と「未解決事項」をそろえます

多職種カンファレンスの目的は、「離床する・しない」を決めることだけではありません。実施するまでに何を確認しなければならないのかを、チームで見える状態にすることも重要です。

カンファレンス終了時にそろえておきたい情報
  • 今日、どこまでの活動を候補とするか
  • 離床を妨げる可能性のあるリスクは何か
  • 実施直前に再確認する項目は何か
  • ライン・デバイス管理や介助にどの程度の体制が必要か
  • 状態変化が生じた場合、どの経路で報告・相談するか

多職種回診と早期離床の関連を検討した2025年の観察研究では、多職種回診導入後の群で、早期離床の実施割合は20.9%から39.8%へ増加し、ICU入室からPT開始までの中央値は6日から3日へ短縮していました。

ただし、この研究は単施設の観察研究であり、多職種回診そのものが早期離床の増加を直接引き起こしたと断定することはできません。一方で、離床を進めるうえで多職種が情報を共有する場を設けることの実装上の意義を考える参考になります。

職種別に固定するより「何の情報を持ち寄るか」を整理します

ICUの人員配置、主治医制、集中治療医の関与、専従リハスタッフの有無、院内の指示系統は施設によって異なります。そのため、本記事では「この職種が必ず最終判断する」と一律に固定せず、各職種が持つ情報をチームの判断へどう持ち寄るかを整理します。

早期離床で各職種から共有したい情報の例
職種 共有したい情報 離床へつなげる視点
医師・集中治療チーム 病態、治療方針、治療変更、医学的な懸念、活動に関連する指示 現在の治療方針と離床計画に矛盾がないか
看護師 ベッドサイドでの経過、症状・バイタル変化、意識・鎮静、疼痛、ケア予定、ライン類の状態 その時間帯に離床を行える状態・環境か
PT/OT 前回の離床反応、身体機能、動作能力、介助量、活動時の制限因子 どの活動が可能で、どの程度の介助・環境調整が必要か
その他の関連職種 人工呼吸器・医療機器、薬剤、栄養、嚥下など、当日の活動に影響する専門情報 必要に応じて専門的な確認を追加する

この表は職務分担や責任範囲を規定するものではありません。実際の判断、指示系統、責任範囲は、患者ごとの診療方針と各施設の院内規程・運用に従います。

実施前は「朝の情報」ではなく直近の患者状態で再確認します

カンファレンスから実際の離床まで時間が空くほど、患者状態や治療内容が変化している可能性があります。実施前には、朝に確認済みかどうかではなく、現在どうなっているかを確認します。

  • 症状と直近のバイタルサインに変化がないか
  • 呼吸管理や循環管理に変更がないか
  • 意識・鎮静・疼痛の状態が変わっていないか
  • 新しい処置や検査予定が入っていないか
  • ライン・ドレーン・チューブ類の位置と固定状態はどうか
  • 予定している活動に必要な介助者を確保できるか

ここで新しいリスクや未確認事項が見つかった場合は、「予定していたから実施する」のではなく、必要な情報をそろえてから方針を再検討します。

職種間で意見が分かれたら、まず「なぜ違うか」を確認します

看護師とリハ職、医師とリハ職などで離床方針が一致しない場合、機械的に中間の活動レベルを選ぶ必要はありません。まず、判断が違っている理由を具体化することが優先です。

離床方針が一致しないときに確認すること
確認すること 具体例
情報差 夜間や直前の状態変化を一方の職種だけが把握している
治療方針の変更 薬剤、呼吸管理、循環管理、処置予定などがカンファレンス後に変更された
実施条件 介助者、機器、ライン管理など、安全に実施するための体制が不足している
懸念しているリスク 呼吸、循環、意識、疼痛、転倒、デバイスなど、注目しているリスクが異なる

情報をそろえても判断が難しい場合は、未解決となっている問題を明確にしたうえで、各施設の指示系統に沿って相談します。離床の実施そのものを目的にせず、何が確認できれば次の判断へ進めるのかをチームでそろえることが重要です。

実施中は「予定どおり進んだか」より患者の反応を共有します

実施中は、端座位や立位などの到達レベルだけでなく、症状、呼吸・循環反応、意識、動作、介助量、ライン・デバイスの状態を確認します。

離床前に立てた計画は、その日の目安です。予定した活動へ到達することを優先するのではなく、患者の反応に合わせて活動量や方法を調整します。

状態変化を認めた場合は安全を確保し、院内基準に従って中断・再評価・報告を行います。具体的な数値や中止後の再開判断は、本記事ではなく離床の中止・再開を扱う各論で確認する構成としています。

実施後は「できたこと」と「制限したこと」を次の担当者へ返します

「端座位実施」「立位実施」だけでは、次の担当者は同じ条件で安全に再現できません。実施後には、実施内容・患者の反応・制限因子・回復経過・次回確認事項まで共有します。

実施後に共有・記録したい5項目
項目 残す内容
当日の目標 どの活動を候補としていたか
実施内容 実際に行った活動と必要だった介助
患者の反応 症状、呼吸・循環反応、意識や動作の変化
制限因子・中断理由 何が活動を制限したのか、どの時点で生じたのか
次に確認すること 再評価項目、相談事項、次回実施前に確認が必要な条件

記録例

当日の目標は端座位〜立位での反応確認。実施前に直近の呼吸・循環状態、意識、ライン配置、介助体制を確認した。端座位後に立位へ移行したが、立位中にめまいを認めたため中断。座位へ戻した後に症状軽減を確認した。経過を看護師へ共有し、以降の離床については状態再評価後にチームで検討する。

この記録例は、特定の中止・再開基準を示すものではありません。予定した活動 → 実際の反応 → 対応 → 次の判断に必要な情報がつながる書き方の例です。

中止時の報告は「離床基準」と「伝え方」を分けて考えます

多職種で情報を共有していても、具体的な中止基準や再開条件が曖昧では安全管理は完結しません。一方で、中止基準そのものと、中止後に情報をどう伝えるかは別の問題です。

状態変化後の報告を構造化したい場合は、離床中止時のSBAR記録テンプレートで、Situation・Background・Assessment・Recommendation/Requestの整理方法を確認できます。

SBARは情報共有の手段であり、離床を開始・中止するための基準そのものではありません。本記事では、SBARの詳細を繰り返さず、どの段階で何をチームへ返すかに役割を限定します。

ICU早期離床の多職種連携で避けたい3つのずれ

多職種連携で起こりやすいずれと見直すポイント
起こりやすいずれ 問題 見直すポイント
朝の方針をそのまま実施する カンファレンス後の状態変化を反映できない 実施直前に患者状態と治療変更を再確認する
職種ごとに別のリスクを見ている 同じ患者でも離床方針がそろわない 何を懸念しているかを具体的な所見・情報にして共有する
到達レベルだけを申し送る 次回の負荷や安全条件を再現しにくい 患者反応・制限因子・次回確認事項まで残す

ICU早期離床の多職種連携でよくある質問

Q1. ICUの早期離床は医師・看護師・PT/OTの誰が最終判断しますか?

施設の診療体制、指示系統、患者の状態によって役割は異なります。本記事では全国共通で特定の1職種を最終判断者として固定せず、必要な情報を各職種が持ち寄って判断につなげる考え方で整理しています。具体的な責任範囲は各施設の院内規程や診療方針に従います。

Q2. 朝のカンファレンスで離床予定になっていれば、そのまま実施してよいですか?

実施までの間に患者状態や治療内容が変化する可能性があります。実施直前に症状・バイタル、意識、治療変更、ライン・デバイス、介助体制などを確認し、朝の計画を現在の状態と照合します。

Q3. 看護師とリハ職で離床方針が異なる場合はどうしますか?

機械的に活動量を下げて合意するのではなく、直近の状態変化、治療方針、実施条件、各職種が懸念しているリスクを共有します。情報をそろえても判断が難しい場合は、未解決事項を明確にして院内の指示系統に沿って相談します。

次の一手|離床全体と中止・再開判断を分けて確認する

参考文献

  1. Unoki T, Hayashida K, Kawai Y, et al. Japanese Clinical Practice Guidelines for Rehabilitation in Critically Ill Patients 2023 (J-ReCIP 2023). J Intensive Care. 2023;11(1):47. doi: 10.1186/s40560-023-00697-w
  2. Shiota N, Nosaka N, Nawa N, et al. Enhancing early mobilization in critically ill patients through multidisciplinary rounds: A process-focused observational study. Anaesth Crit Care Pain Med. 2025;44(2):101485. doi: 10.1016/j.accpm.2025.101485
  3. 戸部一隆, 片岡竹弘, 安藤守秀. 集中治療領域での多職種連携における理学療法士の役割. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌. 2024;33(1-3):18-22. doi: 10.15032/jsrcr.33.18

著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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