トライセル E の使い方|背上げ・蒸れ対策

臨床手技・プロトコル
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トライセル E の使い方|背上げのずれと蒸れを整える上敷きエアマット運用

支持面は「製品名」ではなく、選び方 → 設定 → 記録 → 再評価で整理すると迷いが減ります。

体圧分散マットレスの選び方へ

関連:厚さ・構造の見方蒸れ対策の考え方

結論:エアマスター トライセル E は、上敷きタイプのエアマットレスで、背上げ時のずり落ちを抑える固定フード、背上げ時の底づきを抑える背上げモード、熱・湿気を逃がす換気構造を備えています。背上げ時間が長い症例で「仙骨部のずれ」「蒸れ」「寝具の乱れ」が同時に問題になるとき、候補にしやすい支持面です。

この記事では、トライセル E を導入して終わりにせず、導入前評価、設置直後の確認、背上げモードの使い分け、蒸れ対策、非通電時の確認、48〜72 時間後の再評価までを現場で使える形に整理します。体圧分散マットレス全体の選び分けではなく、トライセル E を使う場面で「何を見て、どう記録するか」を決めるページです。

このページで答えること

このページでは、トライセル E を導入したあとに確認すべき「ずれ」「蒸れ」「背上げ」「再評価」の流れを固定します。製品スペックだけでなく、PT・看護・介護で共有しやすい観察ポイントと記録の型まで落とし込むことが目的です。

一方で、体圧分散マットレス全体の選定基準や、他製品との網羅的な比較は深掘りしません。全体像は親記事へ、蒸れ対策の考え方は兄弟記事へ分け、本記事ではトライセル E の運用に絞ります。

トライセル E でまず確認する 3 点

トライセル E では、最初に「固定」「背上げ」「蒸れ」の 3 点を見ます。上敷きエアマットは、性能そのものだけでなく、既存ベッドマットレスへの固定や寝具の使い方で結果が変わるためです。

トライセル E の主な特徴と臨床で見るポイント
特徴 公式情報の要点 現場で見るポイント
固定フード 背上げ時のエアマットレスのずり落ちとシーツのずれを抑える設計 背上げ後にマット・シーツ・骨盤位置がずれていないか
背上げモード 体重設定に応じてやわらかさを自動調整し、背上げ時の底づきを抑える 背上げ中の仙骨部圧迫、滑り座り、底づき感
換気構造 エアセルの膨張収縮と左右 4 箇所の換気ダクトで熱・湿気を逃がす 湿潤、浸軟、寝具の重ねすぎ、室温湿度

仕様は幅 84 cm と 90 cm を確認する

トライセル E は上敷きタイプで、幅 84 cm と 90 cm の 2 種類があります。導入時は「使いたいベッドに置けるか」だけでなく、既存ベッドマットレスとの組み合わせ、固定フードの適合、ベッド背上げ時のずれやすさまで確認します。

エアマスター トライセル E:仕様早見
タイプ 品番 サイズ TAIS コード 設置方法
上敷 840 CR-330 幅 84 × 長 192 × 厚 10 cm 00206-000129 上敷きタイプ
上敷 900 CR-333 幅 90 × 長 192 × 厚 10 cm 00206-000130 上敷きタイプ

導入 5 分フローで評価をそろえる

トライセル E 導入 5 分フロー。導入前評価、設置確認、背上げ確認、初期運用、48〜72 時間後再評価の流れを示した図版
トライセル E 導入時は、導入前評価から 48〜72 時間後の再評価までを同じ型で確認します。

トライセル E の導入時は、設置前後の所見を同じ型で比較します。特に、仙骨部の発赤、踵部の圧痕、背上げ時の滑り座り、湿潤・浸軟、睡眠中の寝苦しさは、導入前から記録しておくと見直しがしやすくなります。

トライセル E 導入時の 5 分フロー
段階 見ること 記録すること
導入前 発赤、圧痕、疼痛、湿潤、背上げ角度、背上げ時間 部位、持続時間、背上げ条件、寝具構成
設置直後 固定フード、シーツの張り、コード・ポンプ位置 設置状態、干渉の有無、修正内容
背上げ確認 30〜45° 程度での滑り座り、仙骨部の当たり、底づき 角度、姿勢変化、介助量、背抜きの有無
初期運用 背上げが長い時間帯、食事・経管栄養、夜間の訴え 背上げモードの使用場面、皮膚所見
48〜72 時間後 皮膚、ずれ、蒸れ、離床、睡眠 導入前との変化、継続・変更・中止の判断

背上げモードは「手順をそろえた後」に使う

背上げモードは、背上げ中の底づきやずれを減らすための機能ですが、最初から機能だけに頼ると原因が見えにくくなります。まず骨盤位置、足部支持、背抜き、衣類やシーツのよれをそろえ、それでも残る問題に対して背上げモードを使います。

背上げ時の困りごとと見る順番
困りごと 先に見ること 対策 記録ポイント
滑り座りが増える 骨盤位置、足部支持、背抜き、衣類のよれ 背上げ手順をチームで統一する 角度、ずれの程度、修正後の変化
仙骨部が赤くなる 背上げ時間、せん断、骨盤後傾 背抜き、背上げ時間の調整、背上げモード併用 発赤部位、持続、背上げ条件
背上げが長い 食事、経管栄養、呼吸管理、夜間姿勢 背上げ中の姿勢保持と寝具調整をセットで行う 使用時間帯、訴え、皮膚所見

蒸れはマットレスだけでなく寝具と環境も見る

トライセル E は、エアセルの膨張収縮と換気ダクトにより、マット内部の熱・湿気を逃がす設計です。ただし、防水シーツを重ねる、シーツを強く張る、寝具を多く重ねる、失禁対応が遅れると、蒸れ対策の効果は出にくくなります。

蒸れが残るときは、支持面だけを変更するのではなく、寝具構成、失禁ケア、室温湿度、体位変換間隔を一緒に見直します。関連する考え方は、褥瘡予防におけるマイクロクライメイト対策でも整理しています。

非通電時は移動前後の再確認を固定する

ベッド移動などで電源プラグを抜く場面では、非通電時の内圧保持と再通電時の設定復帰を確認します。公式情報では、特殊バルブにより空気漏れを遮断し、約 14 日間内圧を保持すること、再通電時に直前の体重設定へ自動復帰するメモリ機能が示されています。

ただし、臨床では「機能があるから大丈夫」で終わらせず、移動後に皮膚所見、背上げ時のずれ、ポンプ表示、設定値、寝具の乱れを再確認します。移動前後で同じ項目を見れば、トラブル時の原因が追いやすくなります。

現場の詰まりどころ:よくある失敗と対策

トライセル E の運用で詰まりやすいのは、製品機能の不足ではなく、設置・寝具・背上げ手順・記録のばらつきです。チーム内で「何を見たら設定を変えるのか」が共有されていないと、同じ所見でも人によって対応が変わります。

トライセル E 運用のよくある失敗と対策
失敗 起きやすい原因 回避手順 記録の型
背上げでマットがずれる 固定フードの調整不足、シーツの張り方のばらつき 固定フード、ベッドマットレス厚、シーツの張りを再確認する 背上げ角度、ずれの程度、修正内容
仙骨部の赤みが残る せん断、滑り座り、背上げ時間の長さ 骨盤位置、足部支持、背抜き、背上げモードをセットで見直す 発赤部位、持続時間、背上げ条件
蒸れが改善しない 防水シーツや寝具の重ねすぎ、室温湿度、失禁対応 寝具を簡素化し、失禁ケアと環境調整を同時に行う 湿潤、浸軟、寝具構成、室温湿度
再評価が曖昧になる 導入前の所見が残っていない、観察条件が違う 導入前・直後・48〜72 時間後を同じ項目で比較する 皮膚、ずれ、離床、睡眠の変化

評価・記録・再評価が職場でそろわないときは、学び方や環境の整え方も一緒に見直すと改善しやすくなります。

PT キャリアガイドを見る

48〜72 時間後のチェックで継続・変更を決める

導入後は、48〜72 時間を目安に「皮膚」「ずれ」「蒸れ」「離床」「睡眠」を同じ条件で見直します。導入直後だけでは、夜間の蒸れや背上げ時間帯のずれが拾いにくいためです。

導入後 48〜72 時間で比較する最小チェック
見る軸 観察すること 判断の目安
皮膚 仙骨・踵・大転子部の発赤、圧痕、疼痛 発赤が持続する場合は背上げ・体位変換・除圧を再調整
ずれ 滑り座り、衣類のよれ、シーツの乱れ 背上げ手順と固定状態を再確認
蒸れ 湿潤、浸軟、寝苦しさ、寝具構成 寝具・失禁・室温湿度も同時に調整
離床 起き上がり、端座位、移乗時の介助量 柔らかさで動作が不安定なら手順・環境を見直す
睡眠 夜間覚醒、暑さ・蒸れの訴え 夜間の寝具と姿勢を確認する

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

背上げモードはいつ使えばよいですか?

背上げが長く、滑り座り、仙骨部の当たり、底づき感、圧痕が戻りにくい状態が残るときに検討します。先に骨盤位置、足部支持、背抜き、シーツや衣類のよれを整え、それでも残る問題に対して背上げモードを使うと運用がぶれにくくなります。

蒸れ対策が効きにくいときは何を見直しますか?

寝具の重ねすぎ、防水シーツのしわ、シーツの張りすぎ、失禁対応、室温湿度を見直します。マットレスの換気構造だけで解決しようとせず、皮膚に近い寝具と環境を一緒に調整することが重要です。

電源を抜いて移動した後は何を確認しますか?

再通電後のポンプ表示、体重設定、マットの張り、皮膚所見、背上げ時のずれを確認します。非通電時の内圧保持機能があっても、移動後の寝具や姿勢が変わることがあるため、移動前後で同じ項目を見ます。

上敷きタイプで一番注意するポイントはどこですか?

固定フードの調整と、背上げ時のシーツ・寝具のずれです。上敷きタイプは既存ベッドマットレスとの組み合わせで挙動が変わるため、設置直後だけでなく背上げ時にも確認します。

導入後すぐに効果判定してよいですか?

設置直後の確認は必要ですが、最終判断は 48〜72 時間後の再評価も含めて行うと実態に近づきます。夜間の蒸れ、背上げ時間帯のずれ、離床時の動きやすさは時間をおいて確認します。

次の一手


参考文献

  1. 株式会社ケープ. エアマスター トライセル E(製品情報). https://www.cape.co.jp/products/pdt036
  2. 株式会社ケープ. エアマスター トライセル E 取扱説明書. https://www.cape.co.jp/wpMgr/wp-content/uploads/pdt036_torisetu_Tricell-E.pdf
  3. EPUAP/NPIAP/PPPIA. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. 2019. International Guideline
  4. Kottner J, Black J, Call E, Gefen A, Santamaria N. Microclimate: A critical review in the context of pressure ulcer prevention. Clin Biomech (Bristol). 2018;59:62-70. doi:10.1016/j.clinbiomech.2018.09.010 / PubMed

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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