リハビリ拒否時の記録は「拒否あり」だけでは不十分
リハビリを拒否された日は、「拒否あり」だけで終わらせず、拒否理由、身体状態、再提案、多職種共有、次回方針を残すことが重要です。この記事では、PT・OT・STがリハビリ拒否時にカルテへ残したい記録項目、NG表現の言い換え、算定・監査で注意したいポイントを整理します。接遇対応ではなく、現場で使える記録の型を作るための記事です。
算定できない日との関係も確認する
拒否時の記録は、算定できない日・中止日・短縮日の整理とも関係します。算定可否の全体像は親記事で確認し、本記事では拒否時の記録に絞って整理します。
拒否時は理由と状態を先に確認する
拒否されたときは、すぐに「意欲が低い」と判断せず、拒否の背景を確認することが重要です。疼痛、発熱、倦怠感、呼吸苦、不安、睡眠不足、検査予定、面会など、介入方法や時間を変えれば対応できる要因が隠れていることがあります。
臨床では、拒否そのものよりも「なぜ拒否したのか」「安全上の問題はないか」「次にどうするか」が後から重要になります。記録では、拒否理由、確認した状態、再提案の有無を短く残します。
| 確認項目 | 見るポイント | 記録の方向性 |
|---|---|---|
| 身体状態 | 疼痛、発熱、倦怠感、呼吸苦、めまい | 症状と安全確認を残す |
| 心理面 | 不安、恐怖、落ち込み、失敗体験 | 主観語ではなく訴えとして残す |
| 環境要因 | 面会、食事、検査、処置、睡眠不足 | 時間変更や再提案につなげる |
| 認知・覚醒 | 傾眠、せん妄、理解困難、混乱 | 介入困難な状態を観察語で残す |
拒否理由は4つに分けると記録しやすい
拒否理由は、身体的要因、心理的要因、環境要因、認知・覚醒要因に分けると整理しやすくなります。分類して書くことで、単なる拒否ではなく、次回介入や多職種共有につながる記録になります。
たとえば「拒否あり」だけでは次回の対応が分かりません。一方で「右膝痛の訴え強く離床拒否。疼痛評価後に再提案予定」と書くと、疼痛評価、時間調整、看護師との共有につながります。
| 分類 | 具体例 | 次の対応 |
|---|---|---|
| 身体的要因 | 疼痛、発熱、倦怠感、呼吸苦、めまい | バイタル確認、負荷量調整、医師・看護師へ共有 |
| 心理的要因 | 不安、恐怖、意欲低下、失敗体験 | 説明方法変更、目標再確認、短時間介入 |
| 環境要因 | 面会、食事、検査、処置、睡眠不足 | 時間変更、再提案、予定調整 |
| 認知・覚醒要因 | 傾眠、せん妄、理解困難、混乱 | 覚醒状態の確認、安全配慮、多職種共有 |
NG記録は観察語に置き換える

リハビリ拒否時の記録で避けたいのは、主観的な評価語だけで終わることです。「やる気なし」「拒否強い」「不穏」などの表現は、状況が伝わりにくく、後から見た人が介入方針を判断しにくくなります。
改善のポイントは、曖昧語を観察語に変えることです。拒否の背景、患者さんの訴え、再提案の有無、共有先、次回方針を短く入れるだけで、記録の実用性が上がります。
| NG記録 | 改善例 | 改善ポイント |
|---|---|---|
| 拒否あり | 疲労感強く本日離床拒否。午後に再提案予定。 | 理由と次回対応を残す |
| やる気なし | 右膝痛の訴え強く、立位練習を拒否。疼痛評価後に再検討。 | 主観語を症状に変える |
| 不穏 | 声かけに対し拒否的発言あり。覚醒変動あり介入困難。 | 行動と状態を分けて書く |
| 本人希望なし | 転倒への不安を訴え、歩行練習を見送り。端座位から再提案予定。 | 不安の内容を具体化する |
| 拒否強い | 呼吸苦の訴えあり離床拒否。SpO2確認後、看護師へ共有。 | 安全確認と共有を残す |
拒否時に残したい記録項目は5つ
拒否時の記録は、長く書くよりも、判断に必要な情報を抜かさないことが重要です。最低限、拒否理由、状態確認、再提案、共有、次回方針の5点を意識すると、記録の抜けが減ります。
療養病棟では、体調変動、覚醒低下、疼痛、検査や処置の影響で予定通り実施できない場面が少なくありません。同じ「拒否」でも背景が異なるため、毎回同じ定型文にせず、判断の根拠を残すことが大切です。
| 項目 | 書く内容 | 記録例 |
|---|---|---|
| 拒否理由 | 患者さんの訴え、症状、予定 | 倦怠感の訴え強く離床拒否 |
| 状態確認 | バイタル、疼痛、覚醒、呼吸状態 | 発熱あり、端座位練習は見送り |
| 再提案 | 時間変更、内容変更、短時間提案 | 午後に短時間離床を再提案予定 |
| 共有 | 看護師、医師、家族、カンファレンス | 疼痛増悪について看護師へ共有 |
| 次回方針 | 負荷量、開始姿勢、説明方法 | 次回は端座位保持から再開予定 |
拒否日は算定記録と経過記録を混同しない
患者さんに声をかけた、訪室した、説明したというだけでは、リハビリを実施したことにはなりません。実際に訓練を実施していない場合は、単位算定は困難です。拒否時の記録は、算定の根拠ではなく、実施できなかった理由と次の対応を示す経過記録として考えます。
一部だけ実施して途中で拒否された場合は、実施した内容、開始・終了時刻、中止理由を分けて記録します。拒否で未実施だった日と、短時間でも実施した日を同じように書かないことが重要です。
| 場面 | 注意点 | 安全な考え方 |
|---|---|---|
| 訪室のみ | 実施時間として扱わない | 拒否対応の経過記録にする |
| 説明のみ | 訓練実施と混同しない | 説明内容と反応を残す |
| 一部実施後に拒否 | 実施時間と内容を明確にする | 開始・終了時刻と中止理由を残す |
| 拒否が連日続く | 同じ定型文の連続に注意 | 原因分析と方針変更を残す |
拒否が続く場合は多職種共有まで残す
拒否が一度だけであれば、時間変更や説明方法の工夫で対応できることもあります。しかし、拒否が繰り返される場合や、疼痛、発熱、呼吸苦、せん妄などが背景にある場合は、PT・OT・STだけで抱え込まないことが重要です。
看護師には日内変動や服薬状況、医師には疼痛や発熱などの医学的要因、家族には生活歴や不安の背景を確認できる場合があります。記録では「誰に何を共有したか」まで残すと、チームとしての対応が追いやすくなります。
よくある失敗は「短い記録」ではなく「判断材料の不足」
リハビリ拒否時によくある失敗は、記録が短いことではなく、判断につながる情報が抜けていることです。「拒否あり」とだけ書かれていると、患者さんの状態、再提案の有無、多職種共有、次回方針が分かりません。
また、「やる気がない」「不穏」「協力的でない」などの表現は、医療者側の印象が強くなりやすい言葉です。できるだけ、患者さんの訴え、観察された行動、確認した状態に置き換えて記録します。
| よくある失敗 | 困る理由 | 修正ポイント |
|---|---|---|
| 「拒否あり」だけ | 理由と次回対応が分からない | 理由・再提案・方針を加える |
| 主観表現が多い | 評価情報として使いにくい | 訴え・行動・状態に置き換える |
| 再提案がない | 介入調整の経過が見えない | 時間変更や内容変更を残す |
| 共有先が不明 | チーム対応につながらない | 看護師・医師・家族への共有を残す |
迷ったときは5分フローで整理する
拒否時の記録で迷ったら、いきなり文章を書き始めるより、確認順を決めておくと書きやすくなります。おすすめは、拒否理由、身体状態、再提案、共有、次回方針の順で整理することです。
この流れにすると、「拒否された事実」だけで終わらず、評価と次回介入につながる記録になります。部署内で記録の型をそろえておくと、新人教育や監査対応でも説明しやすくなります。
| 順番 | 確認すること | 記録に入れる内容 |
|---|---|---|
| 1 | 拒否理由 | 患者さんの訴え、予定、拒否場面 |
| 2 | 身体状態 | 疼痛、発熱、呼吸苦、覚醒、バイタル |
| 3 | 再提案 | 時間変更、内容変更、短時間介入 |
| 4 | 共有 | 看護師、医師、家族、カンファレンス |
| 5 | 次回方針 | 負荷量、開始姿勢、説明方法、再評価項目 |
よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。もう一度タップすると閉じます。
リハビリを拒否された日は算定できますか?
実際にリハビリを実施していなければ、原則として単位算定は困難です。訪室や声かけだけで訓練を実施した扱いにせず、拒否理由、再提案、多職種共有を経過記録として残します。
「拒否あり」だけではダメですか?
絶対にダメというより、情報が不足しやすい記録です。拒否理由、患者さんの訴え、状態確認、再提案、次回方針のうち、必要な情報を短く加えると実務で使いやすくなります。
「やる気なし」と書いてもよいですか?
できるだけ避けた方がよい表現です。「疼痛の訴え強い」「不安感あり離床拒否」「傾眠強く介入困難」など、観察できる情報や患者さんの訴えに置き換えると記録として使いやすくなります。
拒否が続く場合はどう記録しますか?
同じ定型文を繰り返すのではなく、拒否の背景、再提案の内容、負荷量や時間帯の変更、多職種共有、方針変更を残します。必要に応じてカンファレンスで共有します。
少しだけ実施して途中で拒否された場合はどうしますか?
実施した時間、実施内容、拒否に至った理由を分けて記録します。開始時刻・終了時刻、実施内容、途中中止の理由が分かるように残すことが重要です。
次の一手
拒否時の記録は、「拒否あり」で終わらせず、拒否理由、状態確認、再提案、共有、次回方針の順に整理すると実務で使いやすくなります。まずは部署内で、NG記録と改善例を共有し、よくある拒否場面の記録の型をそろえることから始めてください。
関連して、拒否日を含めた算定判断は リハビリが算定できない日の記事、記録全体の監査対策は リハ実施計画書の監査対策記事 を確認してください。
参考文献
- 厚生労働省. 令和6年度診療報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00045.html
- 厚生労働省. 第7部 リハビリテーション. https://www.mhlw.go.jp/topics/2008/03/dl/tp0305-1d_0014.pdf
- 近畿厚生局. 個別指導(医科)における主な指摘事項. https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/iryo_shido/000155885.pdf
- 厚生労働省. 令和6年度診療報酬改定の概要【個別改定事項(Ⅰ)】. 2024. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001251539.pdf
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下

