訪問看護PT減算とは?
訪問看護PT減算は、訪問看護ステーションで理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問する場合に、一定条件で所定単位数が減算される仕組みです。PT訪問が禁止される制度ではありません。本記事では、対象になりやすいケース、よくある誤解、現場で確認すべき対応を整理します。
なぜ訪問看護PT減算が話題になるのか
訪問看護PT減算が話題になる理由は、訪問看護の中でリハ職の訪問割合が高い事業所では、看護との連携や医療管理の視点がより問われやすくなるためです。
訪問看護は、制度上は看護を中心としたサービスです。一方で、生活期の現場ではPT・OT・STによる訪問ニーズも高く、リハ職中心の運用になっている事業所もあります。そのため、単にリハを提供しているかではなく、「訪問看護として必要な看護連携が保たれているか」が重要になります。
訪問看護PT減算の対象になりやすいケース
訪問看護PT減算では、リハ職の訪問回数や事業所の加算算定状況が確認されやすくなります。
特に、前年度のPT・OT・STによる訪問回数が看護職員による訪問回数を上回る場合や、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算をいずれも算定していない場合は、減算の対象として整理されます。


| ケース | 確認されやすい点 | 現場で見るポイント |
|---|---|---|
| PT・OT・STの訪問が多い | 看護職員との訪問回数の関係 | 前年度の訪問回数を確認する |
| 看護訪問が少ない | 訪問看護としての運用 | 看護師の評価・情報共有を確認する |
| 医療管理の視点が薄い | 全身状態の把握体制 | バイタル、服薬、疼痛、皮膚状態を共有する |
| 加算算定がない | 緊急時・特別管理・看護体制強化加算の有無 | 事業所単位で算定状況を確認する |
現場への影響
訪問看護PT減算の影響は、PT訪問の禁止ではなく、訪問目的・頻度・看護連携を説明できる運用が求められる点にあります。
現場では、「PTが訪問できなくなるのでは」と不安視されることがあります。しかし、制度上はリハ職による訪問そのものを否定するものではありません。重要なのは、利用者の状態に対して訪問看護として妥当な関わりになっているかを説明できることです。
療養病棟や訪問系の現場では、ADL練習だけでなく、浮腫、褥瘡リスク、呼吸状態、栄養状態、服薬状況などがリハ内容に影響します。PT・OT・STが看護師と情報共有し、医療管理の視点を記録に残しておくことが、制度対応としても実務対応としても重要です。
| 変化 | 現場で意識したいこと |
|---|---|
| 看護連携の強化 | 看護師と評価内容・状態変化を共有する |
| 訪問目的の明確化 | なぜ訪問看護でリハ職が関わるのかを説明できるようにする |
| 訪問頻度の見直し | 状態変化、目標、医療管理の必要性に応じて調整する |
| 記録の質の重要性 | リハ内容だけでなく全身状態や連携内容も残す |
訪問看護PT減算でよくある誤解
訪問看護PT減算は、「PT訪問が禁止される制度」と誤解しないことが重要です。
| 誤解 | 実際 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| PT訪問は禁止される | 禁止ではない | 訪問看護としての目的と連携体制を確認する |
| 看護師同行が毎回必要 | 毎回の同行が一律必須ではない | 情報共有や定期的な評価体制を確認する |
| 訪問看護リハは継続できない | 継続可能なケースはある | 利用者状態とサービス選択の妥当性を確認する |
| 全員が訪問リハへ移行する | 一律移行ではない | 主治医、ケアマネ、看護師、リハ職で判断する |
特に注意したいのは、「減算=サービス終了」ではない点です。必要なのは、訪問看護でリハ職が関わる理由、看護との連携、利用者の状態に応じた頻度設定を整理することです。
現場でどう対応するか
現場対応では、訪問回数、看護連携、記録、説明の4点を整理することが実務上の優先事項です。
| 手順 | 確認すること | 記録・共有の例 |
|---|---|---|
| 1 | PT・OT・STと看護職員の訪問回数 | 前年度の訪問回数を事業所単位で確認する |
| 2 | 加算算定状況 | 緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算の有無を確認する |
| 3 | 利用者状態 | バイタル、疼痛、浮腫、皮膚、呼吸、栄養状態を共有する |
| 4 | 訪問目的 | ADL練習、転倒予防、介助量軽減、生活動作練習などを明確にする |
| 5 | サービス選択 | 訪問看護リハで継続するか、訪問リハとの使い分けを検討する |
例えば、医療依存度が高い利用者では、PTの運動療法だけでなく、看護師による全身状態の評価やリスク管理が重要になります。一方で、生活動作練習を中心に継続する場合は、訪問リハとの役割分担を検討する場面もあります。
記録で残したいポイント
訪問看護PT減算への対応では、リハ実施内容だけでなく、看護連携と利用者状態の変化を記録に残すことが大切です。
記録が「歩行練習を実施」「筋力訓練を実施」だけになると、訪問看護としての必要性が伝わりにくくなります。制度対応としても、臨床の情報共有としても、全身状態・リスク・連携内容を簡潔に残すことが重要です。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 全身状態 | 訪問時バイタル安定。下腿浮腫は前回同程度。息切れ増悪なし。 |
| リハ目的 | 屋内移動時の転倒予防を目的に、立位バランス練習と方向転換練習を実施。 |
| 看護連携 | 皮膚発赤と浮腫について看護師へ共有。次回訪問時に状態確認予定。 |
| 今後の方針 | 疲労感と血圧変動を確認しながら、訪問頻度と練習量を調整する。 |
今後の制度対応で見ておきたいこと
今後は、訪問看護リハを「回数」だけで考えるのではなく、利用者状態と看護連携を含めた運用として整理することが重要になります。
リハ職の訪問ニーズは今後も続くと考えられます。一方で、訪問看護として関わる以上、看護師との情報共有、全身状態の観察、医療管理の必要性、主治医・ケアマネジャーとの連携は避けて通れません。
PT・OT・STは、訓練内容だけでなく、「なぜ訪問看護で関わるのか」「看護とどのように連携しているのか」「利用者の状態変化をどう共有しているのか」を説明できるようにしておくと、現場の混乱を減らしやすくなります。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
訪問看護PT減算でPT訪問は禁止されますか?
禁止ではありません。訪問看護としての適切な運用、看護師との連携、利用者状態に応じた訪問目的の整理が重要になります。
訪問看護PT減算はどんな事業所で関係しますか?
PT・OT・STの訪問回数が看護職員の訪問回数を上回る場合や、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算をいずれも算定していない場合に関係します。
看護師同行は毎回必要ですか?
毎回の同行が一律に必要という意味ではありません。ただし、看護師による評価、情報共有、医療管理の視点は重要です。
訪問リハへ移行しなければいけませんか?
一律に移行が必要なわけではありません。利用者の状態、医療管理の必要性、リハの目的、主治医やケアマネジャーの方針を踏まえて判断します。
現場では最初に何を確認すればよいですか?
まずは、事業所単位の訪問回数、加算算定状況、利用者ごとの訪問目的、看護師との情報共有体制を確認します。
次の一手
訪問看護PT減算は、減算だけでなく、訪問系サービス全体の役割整理として理解すると現場で対応しやすくなります。あわせて、訪問リハとの違いや関連加算も確認してみてください。
参考文献
- 厚生労働省. 令和6年度介護報酬改定に関する審議報告・関連資料.
- 厚生労働省. 社会保障審議会介護給付費分科会資料.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会. 訪問リハビリテーション・訪問看護関連情報.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験をもとに、臨床・制度・実務に役立つ情報を発信しています。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハ栄養、訪問リハ、摂食・嚥下

