基本チェックリスト(KCL)とは
基本チェックリスト(KCL)は、地域在住高齢者の生活機能低下を広く確認する25項目・7領域の質問票です。日常生活関連動作、運動機能、低栄養、口腔機能、閉じこもり、認知機能、抑うつ気分を一度に確認でき、介護予防や地域支援につなぐ入口として用いられます。
ただし、合計8点以上はフレイルを把握する研究上の目安であり、総合事業の事業対象者を決める基準と同じではありません。本記事では、25項目の回答方法、8点以上の意味、事業対象者基準との違い、領域別の次の対応を整理し、記録用PDFと自動計算ツールも掲載します。
評価尺度の全体像から確認する
基本チェックリストで確認できる7領域
KCLの強みは、身体機能だけでなく、生活、栄養、口腔、社会参加、認知、気分をまとめて確認できることです。合計点だけでなく、どの領域に該当が集中しているかを見ることで、追加評価や支援の優先順位を整理できます。
| 領域 | 項目番号 | 主に確認する内容 |
|---|---|---|
| 日常生活関連動作 | No.1〜5 | 外出、買い物、金銭管理、交流、相談役割 |
| 運動機能 | No.6〜10 | 階段、立ち上がり、歩行、転倒、転倒不安 |
| 低栄養状態 | No.11〜12 | 体重減少、BMI |
| 口腔機能 | No.13〜15 | 咀嚼、むせ、口腔乾燥 |
| 閉じこもり | No.16〜17 | 外出頻度と外出回数の変化 |
| 認知機能 | No.18〜20 | 物忘れ、電話操作、日付の見当識 |
| 抑うつ気分 | No.21〜25 | 充実感、楽しみ、意欲、自己評価、疲労感 |
基本チェックリストの回答・確認方法
KCLは本人が質問の趣旨を理解して回答し、評価者が回答の妥当性を確認する質問票です。回答を誘導せず、質問文の表現を変えないことが基本です。
- 質問文をそのまま提示する:分かりやすくしようとして設問の意味を変えないようにします。
- 回答期間を確認する:期間指定がない項目は現在の状況、No.9は過去1年間、No.11は過去6か月、No.13は半年前との比較、No.17は前年との比較、No.21〜25は直近2週間について回答します。
- 本人の回答を基本にする:習慣や不安を問う項目は、頻度を含めて本人の判断に基づきます。
- 矛盾があれば背景を確認する:生活状況やサービス利用の意向を聞き、回答が質問の趣旨に合っているか確認します。
本人だけで回答が難しい場合は、家族や支援者から情報を補足します。ただし、本人の主観を問う設問と、家族が観察した事実を混同しないように記録してください。
基本チェックリストの読み方は3ステップ
KCLは、該当数を合計して終わりではありません。各項目、合計点、領域別該当の順に確認すると、次の評価や支援を決めやすくなります。
- 該当した設問を確認する:回答間違いや一時的な変化がないか、設問の指定期間に沿って確認します。
- 25項目の合計点を見る:フレイル状態を大まかに把握する参考にします。
- 領域別の該当を見る:運動、栄養、口腔、社会参加、認知、気分のどこから追加評価・支援を始めるか決めます。
たとえば、運動機能と口腔機能の両方に該当する場合、転倒予防だけでなく、食事場面や口腔状態も確認する必要があります。閉じこもりや抑うつ気分の該当が目立つ場合は、筋力トレーニングだけでなく、外出機会、役割、孤立、生活リズムも確認します。
8点以上と事業対象者基準の違い
合計8点以上はフレイルの目安ですが、8点以上だけで事業対象者になるわけではありません。フレイル状態の把握には25項目の合計点、総合事業の実務では厚生労働省が示す領域別の事業対象者基準を確認します。

| 使用目的 | 見る範囲 | 判定の目安 | 実務での扱い |
|---|---|---|---|
| フレイル状態の把握 | 25項目の合計点 | 0〜3点:ロバスト 4〜7点:プレフレイル 8点以上:フレイルの目安 |
フレイルの可能性と介入・経過観察の必要性を整理する |
| 総合事業の事業対象者確認 | 厚生労働省の7基準 | 7基準のいずれかに該当 | 本人の状況とサービス利用意向を確認し、市町村または地域包括支援センターの手続きにつなぐ |
| 支援内容の検討 | 領域別の該当項目 | 点数だけでなく背景を確認 | 追加評価、介護予防ケアマネジメント、多職種連携へつなぐ |
事業対象者に該当する7つの基準
以下のいずれかに該当した場合が、基本チェックリストによる事業対象者の基準です。合計8点以上というフレイル分類とは別に確認します。
| 区分 | 該当基準 | 示される状態 |
|---|---|---|
| 複数の項目に支障 | No.1〜20の20項目中、10項目以上 | 生活機能の複数領域に支障がある可能性 |
| 運動機能 | No.6〜10の5項目中、3項目以上 | 運動機能低下の可能性 |
| 低栄養状態 | No.11〜12の2項目すべて | 低栄養状態の可能性 |
| 口腔機能 | No.13〜15の3項目中、2項目以上 | 口腔機能低下の可能性 |
| 閉じこもり | No.16に該当 | 閉じこもりの可能性 |
| 認知機能 | No.18〜20の3項目中、1項目以上 | 認知機能低下の可能性 |
| 抑うつ気分 | No.21〜25の5項目中、2項目以上 | うつ病の可能性 |
1つの領域だけに該当した場合でも、その領域だけに限定してサービスを決めるわけではありません。本人の生活課題、希望、利用可能な地域資源をアセスメントし、自立支援に向けた目標と支援内容を検討します。
領域別に該当した後の次の確認
領域別の該当は診断ではなく、追加確認が必要な場所を示すサインです。結果を多職種で共有するときは、点数だけでなく、困っている生活場面と追加確認の結果を伝えます。
| 領域 | 追加で確認すること | 初動の例 |
|---|---|---|
| 日常生活関連動作 | 本人が行っている範囲、家族の代行、交通手段、生活環境 | 困難な生活行為を特定し、環境調整や生活支援を検討する |
| 運動機能 | 転倒歴、歩行、立ち上がり、バランス、活動量 | SPPB、歩行速度、筋力などの客観評価へつなぐ |
| 低栄養状態 | 体重推移、食事摂取量、食欲、疾患、嚥下状態 | 栄養評価を行い、必要時は管理栄養士や医師へ相談する |
| 口腔機能 | 口腔内の状態、義歯、咀嚼、食形態、むせの状況 | 食事場面を確認し、必要時は歯科や言語聴覚士へ相談する |
| 閉じこもり | 外出先、移動手段、役割、対人交流、外出を妨げる要因 | 外出環境や通いの場を含め、実行可能な参加機会を検討する |
| 認知機能 | 服薬、金銭、予定、火の管理、家族が気づいた生活上の変化 | 生活上の安全性を確認し、必要時は医療機関へ相談する |
| 抑うつ気分 | 睡眠、食欲、活動性、孤立、喪失体験、自傷念慮の有無 | 状態に応じて医師、地域包括支援センターなどへ相談する |
基本チェックリストでよくある失敗
最も注意したいのは、8点以上を事業対象者の判定基準として扱うことです。8点以上はフレイル状態を把握する目安であり、事業対象者は別の7基準で確認します。
- 合計点だけを見る:どの領域に該当したかが分からず、支援につながりません。
- 質問文を言い換えすぎる:設問の意味が変わり、前回結果と比較しにくくなります。
- すべて同じ期間で回答する:設問ごとに「現在」「1年間」「6か月」「半年前」「2週間」などの指定があります。
- 本人の意向を確認しない:基準への該当だけでサービスや支援内容を決めることはできません。
- 該当を診断名として扱う:認知機能や抑うつ気分への該当は、追加評価や相談が必要なサインです。
再評価するタイミング
再評価時期は一律ではありません。介入効果を確認するとき、心身や生活状況が変化したとき、サービス利用を再検討するときなど、結果が支援方針に影響するタイミングで実施します。
- 介護予防プログラムや支援の開始前後
- 転倒、入院、退院、転居など生活状況が変わったとき
- 外出、食事、服薬、金銭管理などに新たな変化があったとき
- 一定期間サービスを利用しておらず、再び利用を希望したとき
- 支援目標やケアプランを見直すとき
再評価では合計点だけでなく、改善・悪化した設問と領域を確認します。前回と同じ質問文、採点方法、記録様式を用いると、変化を追いやすくなります。
基本チェックリストのPDF・自動計算ツール
紙で記録・保管するときはPDF、その場で合計点と領域別該当を確認するときは自動計算ツールを使用できます。判定結果だけでなく、追加確認した生活背景や対応方針も記録してください。
1.基本チェックリスト 記録シート PDF
プレビューを開く
2.自動計算ツール(25項目・領域別集計・参考判定)
自動計算結果は診断を確定するものではありません。8点以上のフレイル分類、事業対象者基準、本人の生活状況を分けて確認し、必要な追加評価や相談につなげてください。
FAQ(よくある質問)
各項目名をタップすると回答が開きます。
基本チェックリストで8点以上ならフレイルですか?
8点以上なら総合事業の事業対象者になりますか?
基本チェックリストは診断に使えますか?
J-CHSやSPPBとはどう使い分けますか?
家族が代わりに回答してもよいですか?
評価後の次の一手
KCL以外の尺度を含めて選び方を整理するときは、フレイル評価の選び方を確認してください。評価結果から運動、栄養、社会参加などの介入へ進むときは、フレイルに対するリハビリテーションで支援の組み立て方を整理できます。
参考文献
- 厚生労働省. 介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン案について. PDF.
- 厚生労働省. 介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版). PDF.
- 厚生労働省. 基本チェックリスト(表4). PDF.
- 厚生労働省. 基本チェックリストの考え方について(事務連絡). PDF.
- 厚生労働省. 介護予防・日常生活支援総合事業について(概要). PDF.
- Satake S, Senda K, Hong YJ, et al. Validity of the Kihon Checklist for assessing frailty status. Geriatr Gerontol Int. 2016;16(6):709-715. doi: 10.1111/ggi.12543. PubMed: 26171645.
- Satake S, Shimada H, Yamada M, et al. Validity of Total Kihon Checklist Score for Predicting the Incidence of 3-Year Dependency and Mortality in a Community-Dwelling Older Population. J Am Med Dir Assoc. 2017;18(6):552.e1-552.e6. doi: 10.1016/j.jamda.2017.03.013. PubMed: 28479274.
- Satake S. Kihon checklist and frailty. Nippon Ronen Igakkai Zasshi. 2018;55(3):319-328. doi: 10.3143/geriatrics.55.319.
- Watanabe D, Yoshida T, Watanabe Y, et al. Validation of the Kihon Checklist and the frailty screening index for frailty defined by the phenotype model in older Japanese adults. BMC Geriatr. 2022;22:478. doi: 10.1186/s12877-022-03177-2. PubMed: 35658843.
- Matsuzaki H, Kishimoto H, Nofuji Y, Chen T, Narazaki K. Predictive ability of the total score of the Kihon checklist for the incidence of functional disability in older Japanese adults: An 8-year prospective study. Geriatr Gerontol Int. 2022;22(9):723-729. doi: 10.1111/ggi.14435. PubMed: 35919927.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

