厚生労働省危険因子評価とは?褥瘡リスクアセスメントスケールの1つ

褥瘡対策
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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

この記事は「厚生労働省危険因子評価」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

   

こちらの評価は入院基本料の算定にも関わるものとなっております。そのため、リハビリテーション専門職よりも看護師の方がよく使用しているかもしれません。実際に筆者の勤務する医療機関でも、こちらの評価を実施しているのは看護師になります。重要な評価にはなるのですが、これがどういうものなのかについて良くわかってない方も多いと思います。

  

  • 厚生労働省危険因子評価票って何?
  • 評価方法がよくわからない
  • 入院患者全員評価しないといけないの?

  

こちらの記事を読むことで、上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。

  

主な取得資格は以下の通りです

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

褥瘡のアセスメント

褥瘡とは、身体いずれかの部位の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができた状態のことを指します。日本褥瘡学会は褥瘡について以下のように定義しています。

「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り褥瘡となる」

褥瘡ができてしまうと、患者に苦痛が生じるだけではなく、もとの原因疾患に対する治療が遅延したり、金銭的な負担の発生に繋がったり、転院先の選択肢が狭まったり、あらゆる弊害が生じます。

このような褥瘡を予防するためには、褥瘡のリスクアセスメントが必要になります。褥瘡のリスクアセスメントを適切に行うことで、褥瘡のリスクを評価し、予防策を講じることができます。

厚生労働省危険因子評価票とは

こちらの評価表は入院基本料の算定にも関わるものとなっております。そのため、医師も看護師もリハビリテーション専門職と共通して理解しておく評価法となります。

入院基本料を算定するには、入院診療計画、院内感染防止対策、医療安全管理体制、褥瘡対策および栄養管理体制の整備が必要となっています。

褥瘡対策については平成24年度の診療報酬改訂から入院基本料の算定要件に組み込まれています。褥瘡対策においては危険因子の評価をすることが求められています。

また、平成30年度の診療報酬改訂によって「皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)という項目が新たに追加されています。

なお、入院基本料の算定において、日常生活自立度がJ1〜A2である患者については、当該評価票の作成をしなくても良いとされています。つまり、危険因子の評価まではしなくても良いということになります。

エビデンスレベル(推奨度)

日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでは、高齢者のリスクアセスメント・スケールとして「推奨度C1」となっています。

厚生労働省危険因子評価表

厚生労働省危険因子評価票をダウンロードできるようにしておきました!

評価表が必要な方はこちらからどうぞ☺

評価項目について

項目は「基本的動作能力」「病的骨突出」「関節拘縮」「栄養状態低下」「皮膚湿潤(多汗、尿失禁、便失禁)」「皮膚の脆弱性(浮腫)」「皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)」の7項目です。

基本的動作能力

基本的動作能力における「ベッド上:自力体位変換」については、対象者本人の力で、身体に加わった圧力とずれ力に対して有効に体位を変え、軟部組織の血流を改善できるかどうかが判定基準になります。

「イス上:座位姿勢の保持・除圧」については、端座位をとっている時や車椅子に座っている際に、ご自身の力で安定した姿勢を保持することができるのか(座位保持能力)というところが1つの評価ポイントになります。

また、姿勢が崩れたときやお尻が痛くなった時に自力で座り直しを行うことで、良肢位へと戻ったり、痛くなった部分を除圧することで、痛みの解放を行うことができるのかというところが2つめの評価ポイントになります。

これら2つのポイントを踏まえて「できる」「できない」を判定していきます。

病的骨突出

どこの部位で判定するのかについては特に記載がないため、基本的には仙骨部で評価すると良いと考えます。

健康な状態では、仙骨の中央部は左右の臀筋や皮下脂肪などが骨の突出部よりも飛び出しており、外力が仙骨部に集中しないようになっています。

しかし、栄養状態の低下や虚弱などによって、仙骨を守る臀筋や皮下脂肪が失われ、凹みがなくなってしまう(お尻の高低差がなくほぼ平らな状態)ことがあります。この状態を病的骨突出と捉え、「あり」と判定します。

関節拘縮

関節可動域制限(関節の屈曲拘縮、伸展拘縮、変形など)が1カ所でもあれば「ある」と判定します。

基本的動作能力、病的骨突出、関節拘縮についてはOHスケールでも同様の評価項目を採用しています。厚生労働省危険因子評価票とOHスケールの評価項目は類似してますので、互いの評価法の理解を深めておくべきでしょう。OHスケールについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【OHスケールを解説についての記事はこちらから

栄養状態低下

何を基準に「低下」とするのかについての詳細な説明がありません。そのため、血清アルブミン3.5g/dL以下を判定基準にするなど何かしら基準を統一させるべきです。

血清アルブミンの値以外では、体重減少率やBMIも栄養状態の低下を判断するうえで有効だと考えられます。

皮膚湿潤(多汗、尿失禁、便失禁)

多汗は多量の汗をかくことを指します。尿失禁は、臀部皮膚が尿でぬれていることを指します。便失禁は便が臀部皮膚についている時間があることを指します。いずれか1つでもあれば、皮膚湿潤は「あり」と判定します。

皮膚の脆弱性(浮腫)

「浮腫」については、褥瘡の部分が浮腫というわけではなく、腕や脚、腹部の浮腫を示します。指で押して圧痕が残れば「あり」と判定します。

皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)

気をつけてケアをしていたにもかかわらず、高齢者などの脆弱な皮膚が裂けて創傷ができることがあると思います。

高齢者の脆弱な皮膚を守るために、近年重要視されている言葉が、スキン-テア(皮膚裂傷)になります。

皮膚の脆弱性を認める場合や、過去にスキン-テアの既往がある方は「あり」と判定します。

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感想(1件)

カットオフ値

カットオフ値はありませんが、1つでも「あり」あるいは「できない」項目があれば、専任の医師および看護職員で協力のもと、褥瘡に関する診療計画を立案することになります。

褥瘡発生リスクを有している方については、しっかりと計画を立てて褥瘡発生予防に努めていきましょうというものになりますので、わかりやすいと思います。

その他の褥瘡リスクアセスメントスツール

褥瘡については「個体の要因」「環境とケアの要因」「共通の要因」が複雑に絡み合って発生に繋がっています。

全ての患者や利用者の褥瘡を予防したいのは、言うまでもありません。漠然と予防ケアを行っていても褥瘡は生じないかもしれませんが、貴重なマンパワーや体圧分散用具を浪費していたのでは看護や介護に限界が訪れてしまいます。

そこで科学的根拠をもとに褥療発生の危険度を予測するために作成されたのがリスクアセスメント・スケールとなります。

ブレーデンスケール

リスクアセスメントスケールの中で最も浸透したのはブレーデンスケールになります。日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでも推奨度Bとなっています。

採点は、活動性ないし可動性が2点以下になった時に始めるとよいとされています。評価の頻度としては、急性期で48時間ごと、慢性期で1週間ごと、高齢者では入院後1カ月は1週間ごと、状態に変化なければ3カ月に1回が適当とされています。

褥瘡発生危険点は、病院で14点以下、介護施設で17点以下を目安にするのが妥当です。少し採点に難しいところがあるため、評価者間で評価結果が一致するためのトレーニングや教育体制も必要になるかと考えられます。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【ブレーデンスケールを徹底解説についての記事はこちらから

OHスケール

OHスケールは、日本人特有の褥瘡発生危険要因を基に作成されたものになります。2002年にOHスケールへと改定されました。

危険要因は、①自力体位変換能力 ②病的骨突出(仙骨部) ③浮腫 ④関節拘縮 の4つになります。その合計点で危険度レベル(1〜3点:軽度、4〜6点:中等度、7〜10点:高度)を決め、体圧分散マットレスの適切な選択に繋げます。

非常に簡便で評点をつけやすいですが、個体要因のみを評価していることを理解する必要があります。日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでは、高齢者のリスクアセスメント・スケールとして「推奨度C1」となっています。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【OHスケールを解説についての記事はこちらから】評価法のダウンロードもできるようにしてあります!

K式スケール

K式スケールは、前段階要因と引き金要因をYesとNoの2択式で評価します。別名、金沢大学式褥瘡発生予測尺度とも呼ばれ、当時金沢大学医学部保健学科教授の真田弘美先生が開発しました。

在宅版K式スケールは「在宅版褥瘡発生リスクアセスメント・スケール」とも呼ばれ、在宅高齢療養者のために、K式スケールの前段階要因に「介護知識がない」、引き金要因に「栄養」が追加され、在宅版として活用されている褥瘡予防のアセスメント・スケールになります。

K式スケール、在宅版K式スケールどちらも日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでは、高齢者のリスクアセスメント・スケールとして「推奨度C1」となっています。

このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【K式スケールと在宅版K式スケールの評価方法についての記事はこちらから】評価法のダウンロードもできるようにしてあります!

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では厚生労働省危険因子評価票について解説させていただきました!

こちらの評価表は入院基本料の算定にも関わるものとなっております。そのため、職種に関わらず評価方法を正確に理解しておくべきかと考えられます。

評価方法自体は2択の選択式になるため、慣れていれば、時間もかからず簡単にチェックすることができます。しかし、その2択の決定基準に関しては曖昧なところがあります。

厚生労働省危険因子評価票以外の褥瘡のリスクアセスメントスケールにおいても、似た評価項目がありますので、他のリスクアセスメントスケールと同様の視点で考えながら評価していくと根拠を持って判定することができると思います!

厚生労働省危険因子評価票のようなリスクアセスメントツールも重要ですが、褥瘡については重症度評価も網羅しておく必要があります。重症度評価については、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【DESIGN-R®2020:褥瘡についての記事はこちらから

参考文献

  1. 岡田克之.褥瘡のリスクアセスメントと予防対策.日本老年医学会雑誌,50巻,5号,2013:9,p583-591.
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