筋トレのやり方と負荷設定( RPE )を PT が解説
筋トレは、目的に合わせて負荷・回数・セット・休息・頻度をそろえるだけで、成果と安全性がかなり安定します。臨床では「とりあえず回数を増やす」より、まず何を伸ばしたいかを 1 つ決め、次にきつさをどうそろえるかを決める方がブレません。
本記事では、今日から回しやすい順に、① 5 分フロー → ② 目的別の設定 → ③ RPE での負荷調整 → ④ 例メニュー → ⑤ 安全管理 → ⑥ 詰まりどころの修正で整理します。ポイントは「全部を変えない」「比較できる形で残す」の 2 点です。
まずは 5 分フロー(負荷設定 → 実施 → 記録 → 再調整)
現場で迷いを減らす最短ルートは、目的を決める → 回数帯を決める → RPE で重さを合わせる → 実施 → 記録 → 次回 1 つだけ変えるです。とくに、同じ種目・同じフォーム・同じ記録項目をそろえると、翌週の調整が速くなります。
最初から完璧なメニューを作る必要はありません。むしろ、最初の 2〜 4 週は「同じ条件で比較できる状態」を作る時期と考えた方が、患者さんにも説明しやすく、再評価の意味もはっきりします。
| 手順 | 決めること | 臨床メモ |
|---|---|---|
| 1. 目的 | 筋力/筋肥大/筋持久力 | 1 回の介入で主目的は 1 つに絞る |
| 2. 回数帯 | 低回数/中回数/高回数 | 先に回数帯を決めると設計が簡単になる |
| 3. 強度 | RPE で「きつさ」を合わせる | 1 RM が測れない場面でも使いやすい |
| 4. 実施 | フォーム・呼吸・休息を固定 | 変える変数は 1 つだけにする |
| 5. 記録 | 回数 × セット/ RPE /痛み | 次回の進行・維持・後退を決める材料にする |
目的別に「回数帯」と「休息」を先に決める
筋トレの設計は、最初に回数帯を決めると整理しやすくなります。筋力なら低回数・高負荷、筋持久力なら高回数・低〜中負荷が基本です。筋肥大は中回数が扱いやすい目安ですが、現実には十分な努力度が確保できれば、より広い回数帯でも狙えます。
臨床では、疼痛・循環器リスク・痙縮・易疲労などで理論どおりにいかないこともあります。その場合は、回数帯に固執するよりフォームの質と症状の安定を優先し、同じ条件で続けやすい設定に寄せる方が実務的です。
| 目的 | 目標回数 | 強度の目安 | 休息 | 主観強度 |
|---|---|---|---|---|
| 筋力 | 1〜 6 回 | 高強度 | 2〜 5 分 | RPE 8〜 10 |
| 筋肥大 | 6〜 15 回 | 中〜高強度 | 1〜 3 分 | RPE 7〜 9 |
| 筋持久力 | 12 回以上 | 低〜中強度 | 30〜 90 秒 | RPE 6〜 8 |
強度設定は RPE が最も実用的( 1 RM が測れない場面でも使いやすい)
臨床では、正確な 1 RM を毎回測れない場面が多いため、実務では RPE で「きつさ」をそろえる方法が使いやすいです。目標回数帯で行い、最後の 1〜 3 回が「かなりきつい」程度になるよう調整すると、軽すぎる・重すぎるを避けやすくなります。
コツは、同じ種目で記録を残すことです。重量(またはバンドの強さ)、回数、セット数、 RPE を 1 行で残すだけでも、次回は「回数を 1〜 2 回増やす」「セットを 1 つ増やす」「重量を少し上げる」の判断がしやすくなります。
頻度とボリュームの基本(まずは週 2〜 3 回)
一般成人や高齢者であっても、筋力トレーニングは主要筋群を週 2 日以上が基本線です。臨床では、初心者や低体力の方はまず週 2 回から始め、痛みや疲労が安定してから週 3 回へ増やす方が運用しやすいです。
ボリュームは、まず 1 種目 2 セット前後から始めると無理がありません。増やす順番は、重量より先にフォームの質 → セット数 → 重量です。疲労が強く出る方ほど、重量を急いで上げない方が継続しやすくなります。
初心者向け:全身メニュー例(器具が少ない環境でも)
最初は「しゃがむ」「立つ」「押す」「引く」「体幹を保つ」をそろえると、生活動作につながりやすくなります。特定筋だけを細かく攻めるより、まずは複合動作を安全に反復できる状態を作る方が、患者説明もしやすいです。
最初の 2 週間は「頑張らせる」より「続けられる」を優先し、 RPE 6〜 7 程度から始めるのがおすすめです。余力を残した状態でフォームがそろうと、その後の漸進がきれいに進みます。
| 分類 | 種目例 | 回数 × セット | RPE | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 下肢(しゃがむ) | 椅子立ち上がり/浅いスクワット | 8〜 12 回 × 2 セット | 6〜 8 | 膝が内側に入らない/体幹を保つ |
| 股関節(ヒンジ) | ヒップヒンジ/軽いデッドリフト動作 | 6〜 10 回 × 2 セット | 6〜 8 | 背中を丸めない/股関節主導 |
| 押す | 壁腕立て/チューブプレス | 8〜 12 回 × 2 セット | 6〜 8 | 肩をすくめない/痛みのない範囲で行う |
| 引く | チューブロー/シーテッドロー | 8〜 12 回 × 2 セット | 6〜 8 | 首を詰めない/肩甲骨を寄せる |
| 体幹 | ブレーシング/短時間プランク | 10〜 20 秒 × 2〜 3 回 | 5〜 7 | 呼吸を止めない/腰を反らしすぎない |
フォームと安全管理(痛み・息切れ・血圧変動のサインを見る)
筋トレで最も多い失敗は、重さを上げることが目的化してフォームが崩れることです。フォームが崩れたまま続けると、狙った筋に刺激が入りにくく、関節痛や代償が増えます。まずは可動域を少し小さくしてもよいので、体幹の安定と関節アライメントを優先します。
安全管理では、循環器症状や疼痛増悪の見逃しを避けます。とくに息こらえは血圧上昇につながりやすいため、「吐きながら力を出す」を共通キューにすると実施しやすいです。症状が出る場合は、重量・回数・休息のいずれか 1 つを下げます。
| 状況 | OK の目安 | いったん中止・調整 | 受診・医療相談を検討 |
|---|---|---|---|
| 痛み | 違和感〜軽い痛みで、翌日に悪化しない | 鋭い痛み/フォームが保てない痛み | 安静時痛/夜間痛/しびれ増悪 |
| 呼吸・循環 | 会話できる範囲の息切れ | めまい/冷汗/強い息苦しさ | 胸痛/失神/強い動悸 |
| 疲労 | 翌日に回復し、次回も実施できる | 倦怠感が 48 時間以上続く | 日常生活が保てないレベルの疲労 |
現場の詰まりどころ(先に 3 段で解決)
筋トレが続かない主因は、軽すぎて効かない/重すぎて痛い/疲労だけ残るの 3 つです。先に戻し方の順番を決めておくと、現場での修正が速くなります。
よくある失敗
失敗の多くは「安全」と「負荷」のバランスが崩れたときに起こります。安全を優先しすぎると効かず、逆に重量を急ぐと痛みや代償が増えます。まずは狙った回数帯で、狙った RPE に入っているかを見直すのが近道です。
| 失敗 | 起こりやすい原因 | 修正のコツ | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 軽すぎて効かない | 安全を優先しすぎる/回数だけ増やす | 目標回数帯で RPE 7〜 9 を狙う | 重量・回数・ RPE を 1 行で残す |
| 重すぎて痛くなる | フォームより重量を優先 | 可動域を小さくする/種目を分解する | 痛みの部位・タイミング(当日/翌日) |
| 疲労が抜けない | 頻度・セットが多い/休息が短い | 週 2 回へ戻す/セットを 1 減らす | 翌日の倦怠感・睡眠・歩数 |
| 継続できない | メニューが多い/時間が長い | 種目を 4〜 5 つに絞る/ 20 分で終える | 実施日だけでも記録する |
回避手順(崩れる前に戻す順番)
うまくいかないときに、いきなり種目を総入れ替えすると比較ができなくなります。戻す順番は、① フォーム ② ボリューム ③ 負荷の順に固定すると、何が原因だったのか判断しやすくなります。
| ステップ | 見るポイント | 戻し方の例 |
|---|---|---|
| 1. フォームを戻す | 終盤で代償が出る/軸がぶれる | 可動域を小さくする/テンポを落とす |
| 2. 量を戻す | 疲労だけ残る/翌日にだるさが強い | 回数またはセットを 1 段階下げる |
| 3. 負荷を戻す | 痛みや恐怖感が先行する | 重量を下げる/バンドを軽くする |
リハでの記録のコツ(短く、比較できる形にする)
記録は長文よりも、あとで比較できる型が大切です。おすすめは「種目/負荷/回数 × セット/ RPE /痛み・息切れ」の 5 つだけです。これだけで、次回の進行・維持・後退が決めやすくなります。
患者さんの自己管理には、実施できた日だけでも見える化すると効果的です。紙でもスマホでもよいので、できた日を残す仕組みを先に作ると、継続が止まりにくくなります。
よくある質問( FAQ )
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筋トレは週何回から始めるのがよいですか?
多くの方は、まず 週 2 回からで十分です。主要筋群を週 2 回そろえ、痛みや疲労の増悪がなければ週 3 回へ増やします。大切なのは「毎週続く頻度」に合わせて、負荷と量を調整することです。
毎回、限界まで追い込んだ方が早く伸びますか?
初心者や痛みが出やすい方は、毎回の限界実施が疲労を増やし、継続を妨げることがあります。まずは RPE 7〜 9 を目安にし、フォームが安定した状態で反復できる設定を優先する方が無難です。
筋肉痛が強い日は休んだ方がいいですか?
強い筋肉痛がある日は、同じ部位を高負荷で繰り返すより、軽い運動や別部位に切り替える方が安全です。痛みが筋肉痛ではなく関節痛に変わっている場合は、種目・フォーム・負荷の見直しを優先します。
高齢者でも筋力向上や筋量増加は狙えますか?
高齢者でも、適切な負荷設定と継続ができれば、筋力向上は十分に狙えます。最初は RPE 6〜 7 から入り、フォームと症状が安定したら少しずつ漸進する設計が現実的です。
何を記録すれば、次回の負荷調整がしやすいですか?
最低限、「種目」「負荷」「回数 × セット」「 RPE 」「痛み・息切れ」の 5 つで十分です。長文よりも、毎回同じ項目で残す方が比較しやすくなります。
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続けて読む:大腿四頭筋トレーニングの実装例を見る
参考文献
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著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


