筋トレの負荷設定をPTが解説|RPE・回数・セット

臨床手技・プロトコル
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筋トレの負荷設定は「目的・回数・RPE」の順に決める

筋トレの負荷設定では、先に筋力・筋肥大・筋持久力のどれを主目的にするかを決め、次に回数帯を選び、最後に0〜10のRPEで重さを調整します。回数だけを増やすより、目的・負荷・回数・セット・休息を同じ条件で記録した方が、次回の進行判断が安定します。

本記事では、筋力トレーニングの処方に迷うPT・医療従事者に向けて、5分で組める設定手順、RPEと残り反復回数の対応、目的別の開始目安、記録方法、中止・相談の判断を整理します。重要なのは、毎回すべてを変更せず、比較できる条件を残すことです。

5分で決める筋トレの負荷設定フロー

負荷設定は、目的を決める → 回数帯を選ぶ → RPEを合わせる → フォームと症状を確認する → 次回の負荷を決めるの順に進めます。

筋トレの目的、回数帯、RPE、フォームと症状、次回の負荷調整を示したフロー図
図:目的・回数帯・RPEから次回の負荷を決める流れ

初回から最適な負荷を決める必要はありません。最初の数回は、同じ種目・フォーム・可動域・記録項目をそろえ、反応を比較できる状態を作ります。

筋トレの負荷設定を5分で決める手順
手順 決めること 確認ポイント
1. 目的 筋力/筋肥大/筋持久力 1回の介入で優先する目的を1つ決める
2. 回数帯 低回数/中回数/高回数 対象者が安全に反復できる範囲を選ぶ
3. RPE 0〜10の主観的な努力度 終了時にあと何回できそうかを確認する
4. 実施 フォーム・呼吸・可動域・休息 代償や症状が出る条件を確認する
5. 記録・調整 負荷/回数×セット/RPE/症状 次回の進行・維持・後退を決める

RPEは0〜10で記録し、残り反復回数と対応させる

本記事のRPEは、筋力トレーニングで使われる0〜10の主観的な努力度を指します。全身持久運動などで使用されるBorgスケールの6〜20とは異なるため、記録には「RPE 0〜10」と明記してください。

判断するときは、「きつかったか」だけでなく、終了時点で同じフォームのまま、あと何回できそうだったかを確認します。この残り反復回数はRIRと呼ばれ、RPEを判断する補助になります。

筋トレで使用するRPEと残り反復回数の対応目安
RPE 残り反復回数の目安 実施時の感覚 負荷調整
10 0回 同じフォームでは追加できない 限界に近いため、臨床では対象者と目的を選ぶ
9 約1回 あと1回程度なら反復できる 高い努力度が必要な場面で使用する
8 約2回 かなりきついがフォームを保てる 筋力や筋肥大を狙う場面で使いやすい
7 約3回 きついが余力を残している 導入期やフォーム学習に使いやすい
6以下 4回以上 余裕をもって反復できる 練習、導入、回復期の調整に使用する

RPEは、対象者の理解度、疼痛、恐怖感、認知機能、筋力トレーニングの経験によって変動します。そのため、RPEだけで負荷を決めず、フォーム、動作速度、症状、実施後から翌日までの反応と組み合わせて判断します。

目的別に回数帯・セット・休息を決める

筋力を優先する場合は低回数で比較的高い負荷、筋持久力では高回数で低〜中等度の負荷を使うのが基本です。ただし、回数帯だけで効果が決まるわけではなく、実際の努力度、総運動量、継続性も影響します。

以下は、疾患や術後の運動制限がない成人における一般的な開始目安です。医療機関で使用する場合は、疾患、治療経過、荷重制限、疼痛、循環応答などを優先して調整してください。

筋トレの目的別負荷設定の開始目安
主目的 回数帯 セット 休息 RPEの目安
筋力 1〜6回程度 2〜4セット 2〜5分 7〜9
筋肥大 6〜15回程度 2〜4セット 1〜3分 7〜9
筋持久力 12回以上 2〜3セット 30〜90秒 6〜8
導入・フォーム学習 6〜12回程度 1〜2セット 1〜3分 5〜7

低体力者や疼痛がある対象者では、理論上の回数帯へ無理に合わせません。最初は、症状を悪化させずにフォームを反復できる条件を見つけ、その後に負荷やセット数を漸進します。

次回は「進行・維持・後退」の3択で調整する

次回の設定は、RPEだけでなく、フォームと症状を含めて決めます。原則として、一度に変更する項目は1つにします。

次回の負荷を進行・維持・後退させる判断
判断 今回の反応 次回の調整例
進行 目標回数を達成し、RPEが目標より低く、フォームと症状が安定している 回数、セット、負荷のいずれか1つを増やす
維持 目標RPEに入り、フォームと症状が許容範囲にある 同じ条件で再実施し、反応の再現性を確認する
後退 目標回数未達、代償増加、疼痛・息切れ・疲労の増悪がある 可動域、回数、セット、負荷の順に見直す

例えば、椅子立ち上がりを10回×2セット、RPE 6で実施でき、フォームと翌日の症状が安定していれば、次回は回数または外的負荷を少し増やします。反対にRPE 9でフォームが崩れた場合は、重量を増やさず、条件を維持または後退させます。

頻度は週2〜3日を目安に個別調整する

健康づくりを目的とした成人・高齢者の筋力トレーニングは、週2〜3日が目安です。ただし、同じ筋群の回復状況、疾患、活動量、リハビリテーション全体の内容に応じて調整します。

初めて行う方や低体力者では、週2回、1種目1〜2セット程度から始めると反応を確認しやすくなります。頻度や量を増やす前に、予定した頻度で継続できているか、日常生活へ疲労を持ち越していないかを確認します。

進める順序は、原則としてフォームの安定 → 反復回数またはセット数 → 外的負荷です。ただし、回数が過度に増えている場合は、回数を増やし続けず、外的負荷を調整します。

初心者向け全身メニューの設定例

初心者の全身メニューでは、種目数を増やすより、基本的な動作を4〜5種目に絞り、同じ条件で反復できるようにします。

以下は器具が少ない環境での設定例です。個別の疾患や術後プロトコルに対する運動処方ではありません。

初心者の全身筋トレ設定例(週2回・20〜30分)
動作 種目例 回数×セット RPE 確認ポイント
立つ・しゃがむ 椅子立ち上がり/スクワット 8〜12回×1〜2セット 6〜8 膝・体幹の代償、疼痛、支持物の有無
股関節を使う ヒップヒンジ 6〜10回×1〜2セット 6〜8 腰椎の過度な屈曲・伸展を避ける
押す 壁腕立て/チューブプレス 8〜12回×1〜2セット 6〜8 肩の疼痛、肩甲帯の代償を確認する
引く チューブロー 8〜12回×1〜2セット 6〜8 頸部・体幹の代償を確認する
体幹を保つ ブレーシング/短時間の支持運動 10〜20秒×2〜3回 5〜7 呼吸を止めず、腰痛を誘発しない

フォーム・症状・循環反応から中止と相談を判断する

筋トレ中は、目標回数の達成よりも、フォームを維持できること、症状を増悪させないことを優先します。終盤に反動や関節アライメントの崩れが増えた場合は、その時点を実質的な終了と考えます。

呼吸を止めると血圧が大きく変動する可能性があるため、呼吸を続けられる負荷を選びます。胸痛、失神、強い呼吸困難などが出現した場合は、単に負荷を下げて再開せず、中止して適切な医療判断につなげます。

筋トレ中・実施後の中止と相談の目安
確認項目 継続・経過観察 中止・負荷調整 速やかな医療相談を検討
疼痛 軽度でフォームを保て、実施後に増悪しない 鋭い痛み、増悪傾向、代償を伴う痛み 外傷後の強い痛み、安静時痛の増悪、進行する神経症状
呼吸・循環 休息により速やかに回復する息切れ めまい、冷汗、通常と異なる強い息切れ 胸痛、失神、意識状態の変化、回復しない強い呼吸困難
疲労 次回までに回復し、日常生活へ影響しない 翌日以降も強い倦怠感が残る 急激な全身状態の悪化や日常生活が保てない疲労
フォーム 目標回数まで同じ条件で反復できる 反動、可動域減少、軸の崩れが増える 急な脱力、転倒、支持不能が出現する

筋トレがうまくいかないときの戻し方

筋トレが進まないときは、種目をすべて変更せず、フォーム → 運動量 → 負荷の順に見直します。順番を固定すると、どの条件が痛みや疲労につながっていたのかを判断しやすくなります。

よくある失敗

筋トレで起こりやすい失敗と修正方法
失敗 確認すること 修正方法 記録項目
軽すぎる 目標回数終了時のRPEが低い 回数または外的負荷を1段階上げる 負荷、回数、RPE
重すぎる 目標回数前にフォームが崩れる 負荷や可動域を下げ、フォームを再確認する 代償が出た回数、疼痛
疲労が残る 頻度、セット数、休息、他の活動量 セット数または頻度を下げる 翌日の疲労、睡眠、生活への影響
継続できない 種目数、所要時間、実施環境 4〜5種目に絞り、20分程度に短縮する 実施日、未実施の理由

崩れたときは3段階で戻す

筋トレの条件を戻す3ステップ
ステップ 見るポイント 戻し方
1. フォーム 代償、反動、可動域、呼吸 可動域を小さくする、速度を落とす、支持物を使う
2. 運動量 回数、セット数、頻度、休息 回数またはセットを1段階下げ、休息を延長する
3. 負荷 RPE、疼痛、恐怖感 重量やバンドの強度を下げる

記録は「条件・RPE・症状」を比較できる形で残す

記録には、少なくとも種目、外的負荷、回数×セット、RPE、症状を残します。フォーム、可動域、支持物、介助量が変わった場合は、その条件も記載します。

筋力トレーニングの簡易記録例
種目 条件 実施量 RPE 反応・次回方針
椅子立ち上がり 座面45cm、上肢支持なし 10回×2セット 7 疼痛なし。終盤に軽度の体幹前傾増加。次回は同条件で再確認

「10回実施」のみでは、座面高、支持物、介助量、RPEが分からず比較できません。条件を短く固定して記録すると、次回の進行・維持・後退を判断しやすくなります。

筋トレの負荷設定でよくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

筋トレは週何回から始めますか?

健康づくりを目的とする成人・高齢者では、週2〜3日が目安です。初めて行う方や疲労が残りやすい方は週2日から始め、症状と回復状況を確認して調整します。

RPEはBorgスケールと同じですか?

本記事で扱うRPEは0〜10の尺度で、Borgスケールの6〜20とは異なります。記録には「RPE 0〜10」と書き、どの尺度を使用したか分かるようにしてください。

毎回限界まで反復する必要がありますか?

毎回RPE 10まで行う必要はありません。初心者、低体力者、疼痛や疾患のある対象者では、フォームと症状が安定する範囲で余力を残す方が運用しやすくなります。

目標回数ができたら、すぐに重量を増やしますか?

目標回数に加えて、RPEが目標以下であること、フォームが安定していること、実施後から翌日に症状が増悪していないことを確認します。条件を満たした場合に、回数・セット・負荷のいずれか1つを増やします。

高齢者でも筋力向上を目指せますか?

高齢者でも、状態に合った負荷と継続的な筋力トレーニングによって筋力向上を目指せます。疾患、転倒リスク、疼痛、疲労、栄養状態などを確認し、低〜中等度の努力度から段階的に調整します。

次の一手

筋トレの種目を部位別に探す場合は、筋トレメニューハブで全体像を確認してください。

具体的な姿勢・代償・進行方法を確認する場合は、大腿四頭筋トレーニングの実装例へ進みます。

運用を整えたあとに、職場環境の詰まりも点検しておきましょう

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参考文献

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著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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