施設基準ハブ| PT が関わる要件・記録・委員会を最短で整理

制度・実務
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この記事のゴール(誰のための施設基準ハブか)

施設基準とキャリアの全体像を確認する( PT キャリアガイド )

本ハブは「理学療法士として押さえておきたい施設基準・委員会・加算」を一覧できる索引用ページです。診療報酬改定・施設基準通知は難解になりがちですが、現場で必要なのは「 PT が関わるべきポイントがどこか」「記録・カンファ・委員会で何を残すか」です。

ここでは、急性期〜回復期〜在宅までの代表的な施設基準を「目的/対象患者/ PT の役割/関連書類」で整理し、個別記事への導線をまとめました。新しい加算や施設基準が追加された際も、まずこのページを見れば「どこを手当てすべきか」が素早く俯瞰できることをゴールとしています。

施設基準ハブの全体像(分類マップ)

まずは、理学療法士が関わりやすい施設基準を大枠で整理します。細かい要件や届出様式は個別記事に譲り、ここでは「どの分野にどんな施設基準があるか」を俯瞰できる形にまとめています。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

理学療法士に関連する主な施設基準・加算のマップ( 2025 年時点のイメージ )
分類 代表的な施設基準・加算 PT が関わる主なポイント 詳細記事(別ページ)
褥瘡・創傷 褥瘡対策の基準/褥瘡対策加算/褥瘡ハイリスク患者ケア加算 など 危険因子評価票、体位変換・ポジショニング、体圧分散用具、褥瘡対策委員会への報告 褥瘡対策の基準フローとハイリスク患者ケアの運用プロトコル
栄養・ NST 栄養サポートチーム加算( NST )/栄養管理体制/栄養スクリーニング関連 栄養スクリーニングの実施、体重・筋量評価、 NST ラウンド参加、運動処方の提案 NST (栄養サポートチーム)加算と PT の役割
リハ × 栄養・口腔連携 リハビリテーション栄養・口腔連携体制加算 など 栄養・口腔・リハの 3 職種連携、カンファレンス記録、目標設定と経過記録の標準化 リハ栄養・口腔連携体制加算と口腔管理の施設基準
感染対策 感染対策向上加算/抗菌薬適正使用支援加算/感染対策委員会 など リハ室・共用物品の管理、標準予防策の徹底、感染症発生時のゾーニングと介入制限 感染対策向上加算とリハ部門の具体的な対応
医療安全・身体拘束 医療安全管理体制加算/身体拘束廃止委員会/転倒転落対策 など 転倒リスク評価・再発防止カンファ、身体拘束最小化のためのポジショニングと環境調整 身体拘束最小化の PT プロトコル身体拘束廃止委員会の施設基準リスクマネジメント委員会の施設基準医療安全管理体制・患者安全委員会の記事
認知症ケアチーム 認知症ケア加算/認知症ケアチームの施設基準 など 行動・心理症状( BPSD )の評価、環境調整、非薬物的介入の提案、家族支援 認知症ケアチーム加算と PT のかかわり方
リハビリテーション 心大血管リハ/脳血管リハ/呼吸リハ 等の施設基準・人員配置要件 対象疾患・介入時間・人員配置要件の確認、プログラム構成と症例カンファレンス 各疾患別リハ施設基準のまとめ記事(作成・更新中)
在宅・訪問 訪問リハビリテーションの施設基準/計画書・情報提供書の要件 など 契約・説明書、リハビリテーション実施計画書、主治医への情報提供書の整備 訪問リハで必要な書類・施設基準のまとめ記事(作成・更新中)
改定の全体像 診療報酬改定ごとの施設基準の見直し 改定の影響を受ける加算・算定要件の洗い出し、院内共有とフロー見直し 令和 8 年診療報酬改定の概要( PT 向け )

急性期〜回復期で押さえておきたい施設基準

急性期病院・回復期リハビリテーション病棟では、褥瘡・栄養・感染対策・医療安全などの施設基準が同時に走っていることが多く、それぞれに PT の役割が紐づきます。条文を個別に読むだけでは全体像が見えづらいため、実務では「フロー」と「様式」で整理することが重要です。

  • 褥瘡対策の基準:危険因子評価・体圧分散・体位変換スケジュール・褥瘡対策委員会での報告ラインを統一する。
  • 栄養サポートチーム( NST ):栄養スクリーニング結果とリハ評価を統合し、 NST での症例提示や運動処方に活かす。
  • 医療安全管理体制:転倒・チューブ抜去・誤接続などリハ介入時に起こりやすいインシデントを「再発防止テンプレート」で標準化する。
  • 感染対策:リハ室・物理療法室・共用機器の動線と消毒手順を、感染対策委員会の方針と擦り合わせる。

慢性期・在宅・通所で意識したい施設基準

慢性期病棟・療養病床・介護医療院・在宅(訪問リハ・通所リハ)では、急性期とは異なる切り口で施設基準が求められます。ここでは「書類とプロセス」を整えることが長期的な算定・監査対応につながります。

  • 訪問リハビリテーション:契約書・重要事項説明書・リハビリテーション実施計画書・情報提供書の 4 点セットを整え、更新タイミングをフロー化する。
  • 栄養・褥瘡・排泄:褥瘡ハイリスク者や低栄養者に対して、在宅でも評価と多職種連携が行われていることを記録で示す。
  • 地域連携・退院支援:退院時共同指導や退院後訪問指導など、施設基準に紐づく「連携系の加算」は PT の参加と記録が算定に直結する。
  • 通所系サービス:個別リハビリテーション計画書とモニタリング記録が、加算と質評価の両方の根拠となる。

施設基準を現場に“落とし込む” 3 ステップ

施設基準は条文を読んだだけでは実務に結びつきません。 PT が主体的に動くためには、以下の 3 ステップで「言葉」を「フロー」と「様式」に変換することが近道です。

  1. 条文を「誰が・いつ・何を」で分解する:条文中の行為を「職種/タイミング/アウトプット」に分け、 PT が関わる部分にマーカーを引く。
  2. 評価・カンファ・記録をテンプレ化:危険因子評価票、ラウンドメモ、退院時情報提供書などをテンプレート化し、「書けば算定要件が満たされる」形に整える。
  3. 委員会・カンファでの報告ラインを固定:褥瘡/ NST /医療安全/感染対策などの委員会に対して、 PT がどの頻度で何を報告するかを共通認識にする。

本ハブに紐づく各記事では、この 3 ステップを前提に、個別の施設基準ごとのテンプレートやチェックリストを整理しています。必要なテーマから順に読み進めて、院内マニュアルのアップデートに活用してみてください。

現場の詰まりどころ(ありがちな失敗パターン)

施設基準まわりで PT がつまずきやすいのは、「条文は読んだが、結局何を変えればよいか分からない」という場面です。よくある失敗パターンと、その回避のヒントを整理します。

  • ① 条文だけ読んでフローに落とし込まない:「○○を行った場合に算定できる」という文章だけを共有しても、誰も動きません。「誰が・いつ・どの様式に書くか」までセットで決めるのがポイントです。
  • ② 委員会だけが“別世界”になっている:褥瘡や医療安全の委員会資料が、日々のカルテ記載やリハ記録と断絶していると、実態とかけ離れた報告になります。臨床で使っているチェックリストを、そのまま委員会資料に転用できる形にしておきましょう。
  • ③ PT の業務負担だけが増えている:新しい施設基準が入るたびに PT だけ記録が増え、「どこに活きているか」が見えないと疲弊します。「算定に直結する」「合併症予防に効く」「チーム連携が楽になる」のいずれかと紐づけて業務を設計することが重要です。
  • ④ 改定ごとのアップデートを個人任せにしている:改定通知を個々の PT が読むだけでは、解釈のズレが生まれます。ハブ記事+院内勉強会+マニュアル改訂をセットで回す体制を作ると、毎回ゼロから読み解く負担が減ります。

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 診療報酬改定のたびに情報収集が追いつきません。最低限どこを見ればよいですか?

まずは厚生労働省の「診療報酬改定の概要資料」と、関連する疑義解釈を押さえるのが近道です。そのうえで、施設ごとに関係が深いのは 褥瘡・栄養・感染対策・医療安全・在宅といった横断的な領域です。本ハブでは、それらの領域ごとに PT の関わりどころを整理しているので、自施設の診療科構成や算定状況に合わせて優先順位をつけて確認してみてください。

Q2. 条文が難しくて、 PT 向けの勉強会資料が作れません。どう構成すると伝わりやすいですか?

おすすめは「①目的(なぜこの施設基準があるか)→②要件(人員配置・プロセス・記録)→③ PT の役割→④症例ベースの具体例」という 4 ステップ構成です。条文をそのまま貼るのではなく、 PT の日常業務(評価・介入・カンファ・記録)にどこが接続するかを図やフローチャートで示すと、イメージしやすくなります。本ハブから関連する個別記事をピックアップして、スライドのたたき台にする方法も有効です。

Q3. 施設基準対応の書類が増えすぎて、記録時間を圧迫しています。どう整理すればよいですか?

ポイントは「似た項目を一本化し、同じ情報を二度書かない」ことです。例えば、褥瘡リスク評価・栄養スクリーニング・転倒リスク評価など、複数の施設基準にまたがる情報はチェックリストを統合し、評価結果をそのままカンファ記録や委員会資料に流用できるように設計します。既存の記録様式を棚卸しし、「どの施設基準の要件を満たしているか」をマッピングすると、統合すべき書式が見えてきます。

おわりに

施設基準まわりの仕事は、「安全の確保 → 施設基準の要件整理 → 評価と記録の標準化 → 委員会・カンファでの共有 → 改定ごとのアップデート」というリズムで回すと、臨床と算定・監査の両立がしやすくなります。いきなりすべてを整えるのではなく、褥瘡・栄養・医療安全など、自施設でインパクトの大きい領域から 1 つずつ整備していくのがおすすめです。

働き方を見直すときの抜け漏れ防止に、見学や情報収集の段階でも使える「面談準備チェック( A4 ・ 5 分)」と「職場評価シート( A4 )」を無料公開しています。印刷してそのまま使えますので、施設基準やチーム体制を確認するときのチェックリストとしても活用してみてください。

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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