CTAR とシェーカー法の使い分け【PDF付き】

栄養・嚥下
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結論:CTAR から始め、頸部負担が少なければシェーカー法を検討する

まずは嚥下リハの全体像を押さえ、次に本記事で CTAR/シェーカー法の使い分けを決めると、評価→介入→再評価が回しやすくなります。

嚥下リハの全体像を見る

関連: 摂食嚥下リハ体制の実務整理多職種連携と PT 評価ガイド

CTAR とシェーカー法は、どちらも舌骨上筋群を介して舌骨・喉頭の前上方移動、上部食道括約筋( UES )開大を助ける目的で使われます。実務では、まず座位で行いやすく継続しやすい CTAR を候補にし、頸部痛や代償が少ない対象者で シェーカー法 を検討すると整理しやすいです。

この記事で答えることは、CTAR とシェーカー法の違い、始め方、負荷設定、中止基準、記録の残し方です。一方で、嚥下障害全体のスクリーニングや食形態調整の詳細は深掘りせず、必要に応じて親記事・兄弟記事へつなぎます。

CTAR とシェーカー法の使い分け早見表(成人・臨床運用の目安)
判断ポイント CTAR( Chin Tuck Against Resistance ) シェーカー法( Head Lift Exercise )
まず選びやすい場面 座位が取れ、病棟・在宅で継続したい 仰臥位が安定し、頸部負担が少ない
主な利点 環境を選びにくく、負荷を調整しやすい 原法が明確で、等尺+反復で段階化しやすい
注意点 押す力が弱いと負荷不足になりやすい 頸部痛・肩すくめ・胸鎖乳突筋優位に注意する
導入の目安 等尺 5〜10 秒 × 5 回 × 2 セット 等尺 5〜10 秒 × 3 回 + 反復 10〜15 回

CTAR/シェーカー法で何を改善したいかを決める

CTAR とシェーカー法は、嚥下時の舌骨・喉頭挙上や UES 開大に関わる筋活動を高める目的で使います。現場では「喉頭挙上が弱い」「咽頭残留が疑われる」「嚥下後に湿性嗄声が残る」などの所見に対して、姿勢調整・代償嚥下・食形態調整と並行して使う介入です。

ただし、訓練だけで嚥下方針を決めるのは危険です。むせ、湿性嗄声、呼吸苦、発熱、食後疲労などの症状と、RLP・GS などの簡便評価を合わせて、訓練の適応と再評価のタイミングを決めます。

使い分け:狙い筋よりも姿勢・負担・継続性で決める

CTAR とシェーカー法は目的が近いため、違いは「どちらが絶対に優れるか」ではなく、対象者が安全に継続できる条件で判断します。座位で再現しやすい CTAR は導入しやすく、シェーカー法は頸部負担を確認しながら段階化するのが実務的です。

迷う場合は、頸部痛・めまい・呼吸苦・代償運動の有無を確認し、継続できる方法から始めます。訓練量は固定せず、RPE と翌日の反応で調整します。

CTAR とシェーカー法の比較(目的・実施条件・運用の違い)
観点 CTAR シェーカー法
姿勢 座位。ベッド上座位でも調整しやすい 仰臥位。頭部挙上を保てる条件が必要
負荷 顎でボールやタオルを押す抵抗負荷 頭部挙上による自重負荷
継続性 比較的高い。病棟・在宅で反復しやすい 頸部疲労や痛みで中断しやすい
代償の例 首を丸めるだけ、押す力が弱い 肩すくめ、胸鎖乳突筋優位、息こらえ
選択の目安 まず導入し、負荷量を調整しながら継続 頸部負担が少なく、フォームを保てる場合に検討
CTARとシェーカー法の使い分けフロー。座位・仰臥位・頸部負担・体調を確認し、CTAR優先、シェーカー法候補、負荷軽減や中止を判断する図版
図:CTAR/シェーカー法の使い分けフロー

CTAR のやり方:座位で負荷を再現する

CTAR は、顎を引いた状態でボールやタオルに抵抗をかけ、舌骨上筋群へ負荷を入れる訓練です。重要なのは「首を曲げる」ことではなく、顎を引いたまま一定方向へ押し続けることです。

座位で骨盤と体幹を安定させ、顎先と胸骨上部の間に柔らかいボールを置きます。押した時に顎下へ疲労感が出るか、頸部痛や息こらえが強くないかを確認しながら始めます。

準備:道具・姿勢・位置をそろえる

  • 道具:柔らかいボール、または丸めたタオル
  • 姿勢:座位で骨盤を立て、体幹を軽く起こす
  • 位置:顎先と胸骨上部の間に置き、顎を引くと潰れる高さに調整する

負荷設定:RPE と翌日の反応で調整する

CTAR の負荷設定(成人の目安・段階化して運用)
段階 内容 ねらい 進め方
導入 等尺 5 秒 × 5 回 × 2 セット 狙い筋に入る感覚を作る RPE 4〜6 、翌日に強い痛みが残らない
標準 等尺 10 秒 × 5 回 × 2 セット 筋出力を高める RPE 5〜7 を目安にする
発展 等尺 10 秒 × 5 回 × 3 セット、または反復を追加 持久性と反復耐性を高める 呼吸苦・めまい・頸部痛が増悪しない範囲で進める

よくある失敗と回避手順

  • 押す力が弱い:ボールの硬さや位置を調整し、顎下に疲労感が出るか確認する
  • 首を丸めるだけになる:体幹を起こし、顎を引く方向を作ってから押す
  • 疲労が強すぎる:保持時間を 10 秒から 5 秒へ落とし、総量で調整する

シェーカー法のやり方:頸部負担を見ながら段階化する

シェーカー法は、仰臥位で頭部を挙上し、つま先を見るように保持する訓練です。原法では等尺保持と反復運動を組み合わせますが、現場では最初から高負荷にせず、保持時間と反復回数を落として導入します。

頸部痛、肩すくめ、胸鎖乳突筋優位、息こらえが強い場合は、シェーカー法にこだわらず CTAR へ切り替える判断も必要です。フォームが崩れた状態で回数だけ増やすと、狙いから外れやすくなります。

準備:仰臥位でフォームを確認する

  • 姿勢:仰臥位で肩の力を抜き、目線をつま先方向へ向ける
  • フォーム:肩が浮かない範囲で頭部を挙上し、顎を軽く引く
  • 確認:頸部痛・めまい・息切れが出る場合は中止または負荷を下げる

負荷設定:等尺と反復を分けて調整する

シェーカー法の負荷設定(成人の目安・可能範囲で調整)
段階 等尺保持 反復 確認ポイント
導入 5〜10 秒 × 3 回 10〜15 回 頸部痛が出ないフォームを優先する
標準 30 秒 × 3 回 30 回 疲労で代償が増える前に休息を入れる

中止基準:やってよい条件を先に決める

CTAR/シェーカー法は、実施量を増やす前に中止基準を共有しておくことが重要です。特にシェーカー法は頸部負担が出やすいため、痛み・めまい・呼吸苦・代償運動が強い場合は、量を減らすだけでなく方法自体を見直します。

以下は臨床運用上の目安です。最終判断は、主治医・ ST の方針、嚥下評価、全身状態、施設内手順を優先してください。

CTAR/シェーカー法の中止・見直し目安
状況 目安 次アクション 記録ポイント
頸部痛が増悪 痛みが強くなりフォーム維持が困難 保持時間を短縮、CTAR へ切替、姿勢再調整 痛みの部位・強さ・出現タイミング
めまい・吐き気 訓練継続が不快で難しい 中止して休息、体位とバイタルを確認 出現時の姿勢・血圧・自覚症状
息切れ・呼吸苦 会話が途切れる、苦痛が強い 中止し、呼吸状態と姿勢を確認する SpO2 ・呼吸数・主観症状
代償運動が強い 肩すくめ、胸鎖乳突筋優位、息こらえが目立つ 負荷を下げ、等尺中心へ戻す 代償の種類、修正で改善するか

効果判定と記録:実施量・症状・代償をセットで残す

効果判定では、回数をこなしたかだけでなく、実施量、RPE、症状、代償運動を同じ条件で記録します。嚥下の筋力側の見立ては、相対的喉頭位置( RLP )と GS グレードで整理してから入ると、介入の根拠を説明しやすくなります。

続けて読む:相対的喉頭位置( RLP )と GS グレードの評価手順

記録テンプレ:そのまま書ける形

  • 実施: CTAR 等尺 10 秒 × 5 回 × 2 セット。RPE 6 。
  • 反応:顎下の疲労感あり。頸部痛 NRS 2/10 、翌日増悪なし。
  • 症状:訓練中のむせなし。湿性嗄声の増悪なし。呼吸苦なし。
  • フォーム:肩すくめ軽度あり。声かけで修正可能。
  • 次回:同量で継続。代償が少なければ保持時間を 10 秒から 12 秒へ増量検討。

A4 記録シート:使い分け・中止基準・再評価を 1 枚で残す

CTAR/シェーカー法は、実施量だけでなく、RPE、頸部痛、症状、代償運動、次回調整を同じ形式で残すと再評価しやすくなります。以下の A4 記録シートは、初回導入時や再評価時に「どちらを選んだか」「なぜ継続・変更したか」を整理するための補助資料です。

A4 記録シートを開く(PDF)

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現場の詰まりどころ:続かない・効かない理由を切り分ける

CTAR/シェーカー法で詰まる時は、方法そのものよりも「負荷不足」「代償運動」「中止基準の共有不足」で止まっていることが多いです。先に よくある失敗と回避手順を確認し、次に 中止基準でチーム内の線引きをそろえると、継続しやすくなります。

  • 負荷が軽すぎる: RPE 3 以下なら、保持時間またはセット数を少し増やす
  • 代償が強い:フォームが崩れたら、負荷を下げて等尺中心へ戻す
  • 頸部痛で続かない:シェーカー法を段階化し、必要時は CTAR 優先へ切り替える

関連:摂食嚥下リハ体制の実務整理

手順を整えても毎回同じところで詰まる場合は、教育体制・共通フォーマット・相談相手の有無など、職場環境の影響を受けていることもあります。

PT キャリアガイドを見る

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. CTAR とシェーカー法はどちらから始めるのが無難ですか?

実務では CTAR から始める方が運用しやすいことが多いです。座位で行いやすく、病棟・在宅でも継続しやすいためです。頸部負担が少なく、仰臥位でフォームを保てる対象者では、シェーカー法を段階的に検討します。

Q2. 回数や保持時間は固定でよいですか?

固定ではなく、RPE と翌日の反応で調整します。RPE が低く、痛みや疲労の増悪がなければ、保持時間を 2〜5 秒増やす、またはセット数を 1 つ増やします。代償が増える場合は、量を増やさずフォーム修正を優先します。

Q3. 頸が痛い場合はどうしますか?

まず保持時間・回数・姿勢を見直します。シェーカー法で頸部痛が強い場合は、CTAR へ切り替える方が継続しやすいです。痛みが強い、悪化する、日常動作に影響する場合は中止し、医師・ ST へ連携します。

Q4. 効いているかは何で判断しますか?

回数だけでなく、狙い筋の疲労感、むせ・湿性嗄声・呼吸苦の変化、代償運動の減少をセットで見ます。RLP・GS などの評価と合わせ、同じ条件で実施量と症状を残すと、経時変化を比較しやすくなります。

Q5. 再評価はどのくらいの間隔で行いますか?

初期は 1〜2 週ごとに、実施量、RPE、症状、代償の変化を確認する運用が実務的です。食形態変更、体調変動、頸部痛の増悪、むせの増加があれば、予定を待たずに再評価します。

次の一手

CTAR/シェーカー法を単独で考えず、嚥下評価と運用体制の中に位置づけると、介入と再評価がつながりやすくなります。


参考文献

  1. Shaker R, Easterling C, Kern M, et al. Rehabilitation of swallowing by exercise in tube-fed patients with pharyngeal dysphagia secondary to abnormal UES opening. Gastroenterology. 2002;122(5):1314-1321. DOI: 10.1053/gast.2002.32999. PubMed
  2. Logemann JA, Rademaker A, Pauloski BR, et al. A randomized study comparing the Shaker exercise with traditional therapy: a preliminary study. Dysphagia. 2009;24(4):403-411. DOI: 10.1007/s00455-009-9217-0. PubMed
  3. Sze WP, Yoon WL, Escoffier N, et al. Chin tuck against resistance exercise (CTAR): new method for enhancing suprahyoid muscle activity using a Shaker-type exercise. Dysphagia. 2016;31(2):195-205. DOI: 10.1007/s00455-015-9678-2. PubMed
  4. Liu J, Wang Q, Zhang M, et al. Effects of chin tuck against resistance exercise on post-stroke dysphagia rehabilitation: a systematic review and meta-analysis. Front Neurol. 2023;14:1109140. DOI: 10.3389/fneur.2023.1109140. PubMed
  5. Gao J, Zhang HJ. Effects of chin tuck against resistance exercise versus Shaker exercise on dysphagia after stroke: a randomized trial. J Int Med Res. 2017;45(3):969-979. DOI: 10.1177/0300060517693760. PubMed
  6. Park JS, Oh DH, Chang MY, Kim KM. Effect of effortful swallowing combined with CTAR in post-stroke dysphagia. J Oral Rehabil. 2018;45(6):426-432. DOI: 10.1111/joor.12648. PubMed

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

rehabilikun プロフィールアイコン

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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