- 離床を伴わないリハの減算は「離床できなかった日」すべてが対象ではない
- 減算対象になり得るのは他動的訓練のみを行った特定の患者
- 急性期の患者などは減算・2単位上限の対象外となる
- 診療記録は目的・実施内容・反応・判断・次回方針をつなげる
- 記録前は5段階で実施内容を整理する
- 記録例:ギャッジアップ後に離床を見送った場合
- 記録例:ベッド上で他動運動のみを行った場合
- 記録例:呼吸状態を考慮して離床前介入を行った場合
- 「今日はここまで」は患者反応と回復状況まで記録する
- 3単位以上が医学的に必要な場合は理由と訓練内容を残す
- SOAPでは本日の目的を決めてからO・A・Pへ落とし込む
- よくある失敗は目的だけを付け足して実施内容を曖昧にすること
- 多職種共有では到達段階と次の条件を伝える
- よくある質問
- 次の一手
- 参考文献
- 著者情報
離床を伴わないリハの減算は「離床できなかった日」すべてが対象ではない
令和8年度診療報酬改定では、入院患者に対し、ベッド上から移動せず、ポジショニングや拘縮予防などを主目的とする他動的訓練のみを行った場合について、疾患別リハビリテーション料を90%で算定し、原則1日2単位までとする区分が設けられました。ただし、急性期の入院料・加算を算定する患者などは対象外です。本記事では、離床の有無だけで判断しないための確認手順と、実施内容・患者反応・終了理由・次回方針が伝わる診療記録例を整理します。
最初に確認したいポイント
「ベッド上で行った」「離床できなかった」という事実だけで、一律に減算対象となるわけではありません。実際の訓練内容、主たる目的、患者の算定状況、除外条件を確認して判断します。
減算対象になり得るのは他動的訓練のみを行った特定の患者
対象判定では、離床の有無だけでなく、実施場所・訓練内容・主たる目的・除外条件を順に確認します。
令和8年度診療報酬改定の概要では、個別療法を実施する日に、ベッド上から移動せず、ポジショニングまたは拘縮予防などを主たる目的とした他動的な訓練のみを行う入院患者のうち、所定の除外条件に該当しない患者を「特定の患者」としています。

| 確認項目 | 確認内容 | 記録で明確にする内容 |
|---|---|---|
| 実施場所 | ベッド上から移動したか | ギャッジアップ、端座位、車椅子移乗などの到達段階 |
| 訓練内容 | 他動的訓練のみであったか | 患者の自動運動、起居動作、座位練習などの実施内容 |
| 主たる目的 | ポジショニングや拘縮予防などが中心か | 本日の目的と実際に行った介入 |
| 患者条件 | 対象外となる入院料・加算等に該当するか | 算定状況は院内の医事・診療報酬担当者と確認 |
| 医学的必要性 | 3単位以上の実施が特に必要か | 移動困難の医学的理由、長時間必要な理由、訓練内容 |
記録表現だけを変えて、実施していない離床練習や自動運動を記載してはいけません。算定区分は、診療録に使った言葉ではなく、患者の状態と実際に提供したリハビリテーションの内容に基づいて判断します。
急性期の患者などは減算・2単位上限の対象外となる
一定の急性期患者、小児患者、医師が医学的必要性を認めた患者は、減算および2単位上限の対象外として示されています。
| 区分 | 対象外となる患者 | 実務上の確認点 |
|---|---|---|
| 急性期 | 救命救急入院料等の治療室に係る入院料、早期リハビリテーション加算、初期加算または急性期リハビリテーション加算を算定している患者 | 当日の入院料・加算の算定状況を確認する |
| 小児 | 疾患および状態によりベッド上からの移動が困難な15歳未満の患者 | 年齢だけでなく移動困難な状態を確認する |
| 医学的必要性 | ベッド上からの移動が困難で、3単位以上の個別療法が医学的に必要であると医師が特に認めた患者 | 診療録と診療報酬明細書の摘要欄に必要事項を記載する |
最終的な算定判断は、告示・通知・疑義解釈と院内運用を確認し、医師、リハビリテーション部門、医事担当者で共有してください。
診療記録は目的・実施内容・反応・判断・次回方針をつなげる
離床関連の記録では、「離床できたか」だけでなく、何を目的にどの段階まで進め、どの反応から終了または継続を判断したかを残します。

| 項目 | 記録する内容 | 例 |
|---|---|---|
| 最終目標 | 計画書とつながる到達目標 | 車椅子で30分離床する |
| 本日の目的 | 今回の介入で確認すること | ギャッジアップ時の循環応答を確認する |
| 実施内容 | 姿勢、角度、時間、介助量、運動内容 | 背上げ30°から50°へ段階的に調整 |
| 患者反応 | バイタル、自覚症状、疼痛、覚醒、動作反応 | 血圧低下と倦怠感を認めた |
| 臨床判断 | 継続・中断・終了した理由 | 循環動態の変化から端座位への移行を見送った |
| 次回方針 | 再評価する条件と変更点 | 背上げ角度と保持時間を調整して再評価する |
診療記録全体の組み立て方は、目的連動型リハ記録の考え方で整理しています。
記録前は5段階で実施内容を整理する
記録を書く前に、次の5段階で整理すると、算定判断と臨床判断を混同しにくくなります。
- 患者条件を確認する:急性期の入院料・加算、小児、医師が特に必要と認める患者などの対象外条件を確認する。
- 実施場所を確認する:ベッド上から移動したか、端座位・移乗・車椅子離床まで進んだかを確認する。
- 訓練内容を確認する:他動運動のみか、自動運動、起居動作、座位練習などを行ったかを区別する。
- 患者反応と終了理由を確認する:循環、呼吸、疼痛、意識、自覚症状などから、なぜその段階で終了したかを整理する。
- 次回の条件を決める:角度、時間、介助方法、休憩、他職種との調整事項を記載する。
療養病棟での実務上のポイント
血圧低下、覚醒不良、呼吸状態、疼痛などが重なり、予定した離床段階まで進めないことがあります。その場合も、実際に行った介入と患者反応を具体的に残し、離床できなかった医学的・臨床的背景と次回の調整点を多職種で共有することが重要です。
記録例:ギャッジアップ後に離床を見送った場合
「ギャッジアップ実施」だけで終わらせず、離床へ進めなかった理由と次回の条件まで記録します。
| よくある記録 | 目的連動型の記録例 |
|---|---|
| 50°ギャッジアップ実施。血圧低下のため終了。 | 車椅子離床に向けた循環応答の確認を目的に、背上げ30°から50°へ段階的に調整し、下肢をベッド端へ移動した。開始前血圧128/74mmHg、50°保持3分後98/60mmHgとなり、倦怠感を認めた。端座位への移行は見送り、背臥位へ戻したところ血圧116/70mmHgまで回復した。次回は背上げ40°での保持時間を延長し、症状と血圧推移を再評価する。 |
この例では、目的だけでなく、実施した姿勢変化、保持時間、バイタル変化、自覚症状、回復状況、次回方針を記録しています。
記録例:ベッド上で他動運動のみを行った場合
他動運動のみの日は、実施内容をそのまま記載し、離床できなかった背景と医学的必要性を明確にします。
| 不足しやすい記録 | 具体化した記録例 |
|---|---|
| 上下肢ROM訓練実施。全身状態不良のため離床せず。 | 発熱および安静時呼吸数増加があり、担当医・看護師と相談のうえ、本日はベッド上からの移動を見送った。関節拘縮の進行予防とポジショニング調整を目的に、両上下肢の他動関節可動域運動および右側臥位への体位調整を実施した。実施中の著明なSpO2低下や呼吸苦の増悪は認めなかった。全身状態と離床可否を翌日再評価する。 |
このように具体的に書いても、実施内容が他動的訓練のみであった事実は変わりません。記録を充実させる目的は、算定区分を変えることではなく、医学的必要性と臨床経過を正確に共有することです。
記録例:呼吸状態を考慮して離床前介入を行った場合
呼吸リハでは、画像所見だけで介入内容を決めたように書かず、身体所見、呼吸状態、実施内容、反応をつなげます。
| 不足しやすい記録 | 目的連動型の記録例 |
|---|---|
| 体位排痰法、胸郭ストレッチ実施。 | 右背側で呼吸音減弱と湿性ラ音を認め、喀痰排出の促進を目的に左側臥位での体位調整、胸郭可動域練習、呼気介助、咳嗽練習を実施した。介入後に喀痰排出を認め、SpO2は酸素投与条件を変更せず92%から95%へ改善した。呼吸困難感の増悪は認めなかった。端座位への移行は疲労が強く見送り、次回は覚醒状態と呼吸数を確認して離床段階を再検討する。 |
吸引は看護師等が行った処置と、リハビリテーション専門職が行った介入を区別し、実施者と内容が分かるように記載します。
「今日はここまで」は患者反応と回復状況まで記録する
離床を中断・終了した場合は、異常値だけでなく、症状、対応、回復状況、次回の変更点を残します。
| 観察項目 | 記録内容 | 次回へつなげる視点 |
|---|---|---|
| 循環 | 血圧、脈拍、不整脈、冷汗、顔色、自覚症状 | 姿勢変化の幅、保持時間、休憩、薬剤・輸液との時間調整 |
| 呼吸 | SpO2、呼吸数、呼吸様式、呼吸困難感、酸素投与条件 | 負荷量、体位、排痰介入、呼吸補助条件の確認 |
| 神経・意識 | 覚醒、指示理解、反応性、神経症状の変化 | 実施時間帯、刺激量、医師・看護師への報告 |
| 疼痛 | 部位、強度、動作との関係、安静後の変化 | 支持方法、介助方法、鎮痛後の実施時刻 |
| 疲労 | 表情、発言、動作速度、持続時間、回復までの時間 | 介入時間、分割実施、離床段階の調整 |
中止基準は患者の病態や診療科、施設基準によって異なります。単一の数値だけで機械的に判断せず、事前に定めた院内基準、医師の指示、患者の症状と変化を総合して判断します。
3単位以上が医学的に必要な場合は理由と訓練内容を残す
ベッド上からの移動が困難であっても、医師が3単位以上の個別療法を医学的に特に必要と認める場合は、所定の記載が必要です。
厚生労働省資料では、次の内容を診療録および診療報酬明細書の摘要欄へ記載することが示されています。
- 患者がベッド上から移動できない医学的理由
- 長時間のリハビリテーションが必要な理由
- 実施した訓練内容
記載時の注意
「全身状態不良」「廃用予防のため」といった抽象的な表現だけでは、移動困難な理由や長時間介入の必要性が伝わりません。病態、治療上の制約、身体所見、期待する効果、実際の訓練内容を患者ごとに具体化します。
SOAPでは本日の目的を決めてからO・A・Pへ落とし込む
SOAPを使う場合も、最初に本日の目的を明確にすると、観察所見と臨床判断がつながりやすくなります。
| 項目 | 記録例 |
|---|---|
| 本日の目的 | 車椅子離床に向け、背上げ時の循環応答と端座位への移行可否を確認する。 |
| S | 「少しだるい。めまいはない」 |
| O | 背上げ30°から50°へ調整。開始前血圧128/74mmHg、3分後98/60mmHg。倦怠感増強あり。背臥位へ戻した5分後116/70mmHg。 |
| A | 背上げ50°で血圧低下と倦怠感を認め、現時点では端座位への移行に十分な循環耐性が得られていない。 |
| P | 次回は背上げ40°から開始し、保持時間と血圧推移を確認する。実施前に看護師と食事・内服・輸液状況を共有する。 |
よくある失敗は目的だけを付け足して実施内容を曖昧にすること
診療記録では、目的、実施内容、患者反応のいずれかが欠けると、介入の実態が伝わりにくくなります。
| 失敗 | 問題点 | 修正方法 |
|---|---|---|
| 目的だけを付け足す | 実際の訓練内容や患者反応が分からない | 姿勢、介助量、時間、運動様式、反応まで記載する |
| 「全身状態不良」で終える | 離床を見送った具体的な理由が共有できない | 発熱、血圧、呼吸数、疼痛、覚醒などの所見を書く |
| 異常値だけを書く | 中止後の対応と回復状況が分からない | 対応、再測定値、症状の変化を記録する |
| 毎回同じPを書く | 再評価による調整が見えない | 次回に変更する角度、時間、方法、連携事項を具体化する |
| 記録表現で算定を変えようとする | 実施内容と記録の不一致につながる | 事実を正確に記録し、算定は通知と患者条件に基づいて判断する |
多職種共有では到達段階と次の条件を伝える
多職種には、「離床できなかった」ではなく、どの段階まで実施でき、何が次の段階への障害になったかを共有します。
例えば、「背上げ50°で血圧が低下したため端座位を見送った」「排痰後は酸素化が改善したが疲労が強かった」「鎮痛後であれば起き上がりを再評価できる」と記載すると、医師や看護師も次回の実施条件を検討しやすくなります。
記録は監査のためだけではありません。治療、看護、栄養、薬剤、リハビリテーションの情報をつなぎ、安全に離床段階を進めるための共有手段です。
よくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
離床できなかった日はすべて減算対象になりますか?
いいえ。離床できなかったという結果だけで一律に判断するものではありません。ベッド上から移動していないことに加え、ポジショニングや拘縮予防などを主目的とする他動的訓練のみを行ったか、患者が対象外条件に該当しないかを確認します。
目的を書けば減算対象外になりますか?
目的を書くだけで算定区分が変わるわけではありません。実際に提供した訓練内容、患者の状態、対象外条件などに基づいて判断します。診療記録には実施した内容を正確に記載してください。
ギャッジアップを行えば離床した扱いになりますか?
算定上の具体的な判断は、通知、疑義解釈、実際の介入内容および院内運用の確認が必要です。「ギャッジアップを行った」という名称だけで判断せず、ベッド上からの移動、訓練内容、患者の能動的参加などを含めて医事担当者と確認してください。
ベッド上介入にも診療上の意味はありますか?
あります。患者の病態により離床できない場面では、ポジショニング、拘縮予防、呼吸管理、離床前の耐性評価などが必要になることがあります。ただし、臨床上の必要性と診療報酬上の算定区分は分けて整理します。
3単位以上実施する場合は何を記載しますか?
対象となる場合は、ベッド上から移動できない医学的理由、長時間のリハビリテーションが必要な理由、訓練内容を診療録と診療報酬明細書の摘要欄へ記載します。医師の判断と院内の記載手順も確認してください。
次の一手
まずは部署内で、「離床できなかった患者」と「制度上の特定の患者」を同一視していないか確認してください。そのうえで、目的、実施内容、患者反応、終了判断、次回方針を共通項目として記録すると、算定判断と多職種共有の両方を整理しやすくなります。
参考文献
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定 重点的な対応が求められる分野:質の高いリハビリテーションの推進.2026.厚生労働省資料
- 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定関連通知及び官報掲載事項の一部訂正について.2026.厚生労働省通知
- 日本集中治療医学会集中治療早期リハビリテーション委員会.重症患者リハビリテーション診療ガイドライン2023.日集中医誌.2023;30 Suppl 2:S905-S972.ガイドライン本文
- 日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会.集中治療における早期リハビリテーション―根拠に基づくエキスパートコンセンサス―.日集中医誌.2017;24:255-303.コンセンサス本文
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関、介護福祉施設、訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信しています。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、リハビリテーション栄養、摂食・嚥下

