廃用・デコンディショニングハブ|評価 → 離床 → 運動処方を “迷わない順番” に固定
廃用症候群( disuse syndrome /デコンディショニング)は、「どのメニューをやるか」より「評価 → 離床 → 運動処方 → 再評価の順番を固定すること」が勝ち筋です。本ページは、病棟〜在宅移行で迷いがちな判断(中止・中断、量の作り方、栄養が混ざる場面)を、最短導線で引ける “入口(ハブ)” として整理します。
想定読者:PT/OT/ST(新人〜中堅)、病棟で廃用を見ている方/早期離床を回したい方
得られること:①抜けを防ぐ評価順 ②離床の判断の軸 ③運動処方の型 ④チーム共有のテンプレ
臨床の “進め方” も一緒に整える:評価・記録の型が増えるほど、働き方の選択肢も判断しやすくなります。
PT キャリアガイドで “進め方の型” を確認するこのハブの使い方(最短 5 分)
| ステップ | やること | リンク |
|---|---|---|
| 1 | 全体像(評価 → 介入 → 再評価)を 1 回で掴む | 廃用症候群の評価とリハ|初期 72 時間の原則と 1 週間モデル(親記事) |
| 2 | 評価の抜けを防ぐ( ADL → 筋力 → 心肺 → 栄養 ) | 評価:見る順番 |
| 3 | 離床の判断を固定(中止・中断の目安を共有) | 離床:安全管理 |
| 4 | 運動処方をルーチン化(少量頻回 → 段階アップ) | 運動処方:型 |
「廃用」と近い言葉の整理(混ざりやすいので先に分ける)
まず “言葉の混ざり” をほどくと、評価の入り口と介入の優先順位が揃います。現場では「廃用+フレイル」「廃用+低栄養」が重なっていることが多いので、中心の問題を 1 つ決めて回すのがコツです。
| 用語 | 主なきっかけ | 中心の問題 | 評価の入り口 | まずの介入 |
|---|---|---|---|---|
| 廃用 | 安静・活動低下 | 多系統の機能低下+悪循環 | ADL /活動量 | 離床・活動量の底上げ(少量頻回) |
| フレイル | 加齢+疾患+不活動 | 脆弱性(転倒・入院・要介護) | 体重減少/易疲労/活動低下 | 運動+栄養+社会参加 |
| サルコペニア | 加齢/疾患/低栄養/不活動 | 筋量・筋力・身体機能の低下 | 握力+歩行など(施設運用) | レジスタンス+蛋白/エネルギー |
| HAD | 入院+低活動+医療制限 | 退院時 ADL の低下 | 入院前後の ADL 差 | 早期離床+病棟の “動ける環境” |
評価:抜けを防ぐ「見る順番」
廃用は「どれか 1 つの指標」では捉えきれません。現場では、順番を固定して取り漏れを減らすほうが再現性が上がります。まずは “生活( ADL )の詰まり” を掴み、次に “続かない理由(筋力・心肺・栄養)” を分けます。
① ADL ・活動量(最優先)
- 入院前/発症前の生活:歩行範囲、階段、屋外頻度、家事・仕事
- 現在の活動量:離床回数、座位時間、病棟移動(距離でも可)
- 介助量の推移:「できる」より「やっている」を優先して把握
関連:ADL の見取り図は、このハブからも引けます。ADL・ IADL 評価ハブ(まとめ)
② 筋力・バランス( “立てるけど続かない” を見抜く)
- 下肢筋力(膝伸展など)と立ち上がり能力
- 静的/動的バランスと転倒リスク
- 疲労の出方:同じ課題で回数が落ちる/休息で戻る
筋力評価と記録の型:筋力評価( MMT )まとめ|臨床で迷わない書き方
③ 心肺・呼吸( “息切れの理由” を分ける)
- SpO₂ /呼吸数/息切れ( Borg など施設運用に合わせる)
- 循環:心拍・血圧と起立性症状(ふらつき、冷汗、悪心)
- 呼吸介入が必要なときは “観察 → 解釈 → 介入” の順で整理
関連:呼吸・運動耐容能 評価ハブ(観察→解釈→介入) / リハ前後の血圧チェック手順(中止基準と記録) / 起立性低血圧の運動療法・生活指導プロトコル
④ 栄養(低栄養が混ざると回復が鈍い)
- 体重変化・摂取量・炎症の有無(ざっくりで良いので把握)
- スクリーニングは “まず拾う → 深掘り” の二段構えで運用
関連:栄養・嚥下ハブ(保存版) / MUST(低栄養スクリーニング)の回し方
介入:離床を “怖くない運用” にする(安全管理)
廃用の介入は、派手なメニューよりも「量を確保して継続できる仕組み」が勝ちます。まずは少量頻回で “活動の底” を上げ、反応(バイタル・症状・疲労)を見ながら段階的に増やします。
介入の基本フロー(テンプレ)
- 今日のゴールを 1 つに絞る(例:端座位 10 分、病棟内 50 m など)
- 中止・中断の目安を確認(下表)
- 少量頻回で量を作る( 1 回は短くて良い)
- 記録:量(距離/回数/時間)+症状+バイタル反応をセットで残す
- 翌日:同じ/少し増やす/下げる、の判断を固定
| 観点 | 始める前に注意(例) | 途中で中断(例) | 現場メモ |
|---|---|---|---|
| 心拍 | 安静時に極端に低い/高い | 著明な上昇、不整脈、胸部症状 | “数値+症状” をセットで判断 |
| 血圧 | 安静時に極端に低い/高い | 急上昇、または症状を伴う低下 | 起立性症状(冷汗・悪心・めまい)は早めに引く |
| SpO₂ | 安静時に低め | 低下が進む/回復が遅い | 設定変更が必要ならチームへ接続 |
| 呼吸 | 呼吸困難が強い | 頻呼吸、強い息切れ | “息切れの質” を観察(気道/換気/循環) |
| 自覚症状 | 安静時の胸痛・動悸・強い倦怠 | めまい、悪心、狭心症状 | “我慢できる” は危険サイン |
運動処方:廃用に強い “設計” を 1 枚で
運動処方は、まず頻度(回数)を最優先にして量を作り、次に段階アップ( 1 要素だけ)で安全に伸ばします。筋トレは “やらない” より “安全にやる” ほうが ADL の底上げに直結しやすいです。
- 頻度:毎日・複数回( 1 回を短くして良い)
- 強度:控えめから開始(翌日の疲労が過剰なら下げる)
- 段階アップ:距離 or 回数 or 負荷 のどれか 1 つだけ
- 転移:立ち上がり、移乗、トイレ動作、病棟移動に寄せる
- 記録:量(距離/回数/時間)+症状+バイタル反応
詳しい組み立て:廃用症候群の筋力トレーニング|始め方と負荷設定
配布 PDF |廃用リハの記録を “同じ条件” で残す
廃用は、介入の良し悪しよりも「記録が揃っていない」ことで再評価が崩れがちです。まずは 1 枚の記録シートで、量と反応を同じ形式で残す運用に寄せると回り始めます。
現場の詰まりどころ(よくある失敗を先に潰す)
廃用リハは “正解のメニュー” 探しで詰まるより、量・判断・転移・栄養の 4 点で止まりやすいです。ここはチームで共有しやすいように、 OK / NG で切り分けておきます。
| 詰まりどころ | 起きる理由 | NG (ありがち) | OK (型) |
|---|---|---|---|
| 「歩けるのに」退院が伸びる | 量不足/疲労で翌日落ちる | 1 回を頑張らせる | 少量頻回+翌日も同じ量で “再現性” を作る |
| 離床が怖くて進まない | 中止基準が曖昧 | 担当者の感覚頼み | 中止・中断の目安を固定し、申し送りの型に入れる |
| 筋トレしても ADL が上がらない | 生活動作への転移不足 | 単関節だけで終わる | 立ち上がり・移乗・歩行距離に紐づけて処方 |
| 進むほど疲れて悪化する | 低栄養/炎症が混ざる | 運動だけ増やす | 摂取量・体重変化を拾い、栄養介入と同時並行 |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. 廃用は「どの評価」から入るのが正解ですか?
A. まずは ADL /活動量 から入るのが安全です。入院前の生活範囲 → 現在の離床回数 → 介助量の推移、の順に押さえると、介入の優先度が決めやすくなります。
Q2. 早期離床は “頑張らせた方が勝ち” ですか?
A. 勝ち筋は 量の確保 です。 1 回を頑張らせるより、短くても良いので回数を稼ぐ(少量頻回)の方が、翌日以降の再現性が出ます。
Q3. 廃用とフレイル/サルコペニア、どう使い分けますか?
A. “中心の問題” を 1 つ決めます。廃用は活動低下起点で多系統が落ちるので、まずは 離床・活動量の底上げ。体重減少や低栄養が強ければ、運動と同時に栄養を並走します。
Q4. 何日くらいの臥床で影響が出ますか?
A. 影響は “早い段階” から出ます。全体像と注意点は別記事に整理しています:長期臥床の影響とは?何日で何が起きるか
関連リンク(サイト内)
次の一手(回遊と “環境整備” を同時に進める)
運用を整える → 共有の型を作る → 環境の詰まりも点検
教育体制・記録文化・人員・標準化など “環境要因” が詰まっていると、離床や運動処方は回りにくくなります。無料のチェックシートで現状を整理できます。
無料チェックシートで職場環境を点検する(マイナビ)臨床の “進め方” を固定して迷いを減らす
PT キャリアガイド(最短フロー)を見る参考文献
- Kortebein P, et al. Effect of 10 days of bed rest on skeletal muscle in healthy older adults. JAMA. 2007;297(16):1772-1774. doi: 10.1001/jama.297.16.1772-b
- Schweickert WD, et al. Early physical and occupational therapy in mechanically ventilated, critically ill patients. Lancet. 2009;373(9678):1874-1882. doi: 10.1016/S0140-6736(09)60658-9
- Puthucheary ZA, et al. Acute Skeletal Muscle Wasting in Critical Illness. JAMA. 2013;310(15):1591-1600. doi: 10.1001/jama.2013.278481
- Needham DM, et al. Early physical medicine and rehabilitation for patients with acute respiratory failure: a quality improvement project. Arch Phys Med Rehabil. 2010;91(4):536-542. doi: 10.1016/j.apmr.2010.01.002
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


