廃用・デコンディショニングハブ|評価 → 離床 → 運動処方の導線

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廃用・デコンディショニングハブ|評価 → 離床 → 運動処方の導線

廃用を「気合いで歩かせる」から卒業。評価の順番と、離床の基準を固定すると迷いが減ります。 評価 → 介入 → 再評価の流れを 3 分で復習する( #flow )

廃用症候群( disuse syndrome )は、安静・活動低下(生活不活発)をきっかけに筋力・持久力・循環・呼吸・精神面まで落ちていき、さらに動けなくなる悪循環で進みます。ここでは「評価 → 離床(安全管理) → 運動処方」を臨床で回す順番に並べ、抜けやすいポイントを先回りで潰せるように導線化します。

このハブの使い方(最短 5 分)

  1. 親記事で全体像(原因・症状・評価・介入の要点)を 1 回で押さえる
  2. 評価は「ADL/活動量 → 筋力/バランス → 心肺 → 栄養」の順で抜けを防ぐ
  3. 離床は「中止・中断の目安」を固定して、判断のブレを減らす
  4. 運動処方は「少量頻回 → 段階アップ → 記録で再評価」をルーチン化する

まず読む:親記事(総論)

廃用症候群の全体像(原因・症状・評価・リハの考え方)をまとめたページです。ハブから親記事へ戻る導線はここに固定します。

「廃用」と近い言葉の整理(混ざりやすいので先に分ける)

廃用症候群/フレイル/サルコペニア/HAD(入院関連デコンディショニング)の違い(臨床で混ざりやすい4つ)
用語 主なきっかけ 中心の問題 評価の入り口 まずの介入
廃用症候群 安静・活動低下(生活不活発) 多系統の機能低下+悪循環 ADL/活動量+筋力/持久力 離床・活動量の底上げ(少量頻回)
フレイル 加齢+疾患+低栄養+不活動 脆弱性(転倒・入院・要介護リスク) 体重減少/易疲労/活動低下など 運動+栄養+社会参加
サルコペニア 加齢/疾患/不活動/低栄養 筋量・筋力・身体機能の低下 握力+歩行など(施設運用に合わせる) レジスタンス運動+蛋白/エネルギー
HAD(入院関連) 入院+低活動+医療行為の制限 退院時ADL/機能の低下 入院前後のADL差・活動量 早期離床+病棟全体の“動ける環境”

評価:抜けを防ぐ「見る順番」

廃用は「どれか 1 つの指標」では捉えきれません。現場では順番を固定して、取り漏れを減らす方が安定します。

① ADL・活動量(最優先)

  • 入院前/発症前の生活(歩行範囲・階段・屋外頻度・家事/仕事)
  • 現在の活動量(離床回数・座位時間・歩数/病棟移動)
  • 介助量の推移(できる/やっている/やらせているの差)

② 筋力・バランス(“立てるけど続かない”を見抜く)

  • 下肢筋力(膝伸展など)と立ち上がり能力
  • バランス(静的/動的)と転倒リスク
  • 疲労の出方(同じ動作で回数が落ちる

筋力の取り方・記録の型は、こちらで統一しています。

③ 心肺・呼吸(“息切れの理由”を分ける)

  • SpO2・呼吸数・息切れ( Borg など施設運用に合わせる)
  • 循環(心拍・血圧)と起立性症状
  • 呼吸介入が必要なときの全体像

④ 栄養(低栄養が混ざると回復が鈍い)

  • 体重変化・摂取量・炎症の有無(ざっくりで良いので把握)
  • スクリーニングの運用(まず拾う → 深掘り)

介入:離床 → 運動処方を“ルーチン化”する

廃用の介入は、派手なメニューよりも「量を確保して継続できる仕組み」が勝ちます。まずは少量頻回で活動の底を上げ、反応(バイタル・症状・疲労)を見ながら段階的に増やします。

介入の基本フロー(テンプレ)

  1. 今日のゴール(例:ベッド上 → 端座位 10 分、病棟内 50 m など)を 1 つに絞る
  2. 中止・中断の目安を確認(下表)
  3. 少量頻回で量を作る( 1 回を短くして回数を稼ぐ)
  4. 記録:できた量・症状・バイタル変化をセットで残す
  5. 翌日の再評価:同じ/少し増やす/下げるの判断を固定

離床の中止・中断の目安(例)

数値は施設の安全管理基準に従ってください。ここでは、臨床で“迷いが出やすい”ポイントを、よく使われる基準の考え方として要約しています。

離床・運動中止の目安(例)|施設プロトコルの前提で使うチェックリスト
項目 始める前に注意(例) 途中で中断(例) メモ
心拍 安静時に極端に低い/高い 運動中に著明な上昇(例:140 以上) 不整脈・胸部症状があれば優先して中止
血圧 安静時に極端に低い/高い 運動で急上昇、または症状を伴う低下 起立性症状(冷汗・嘔気・めまい)は“早めに引く”
SpO2 安静時に低め(例:90% 以下) 低下が進む(例:80% 台) 酸素化の設定変更が必要なら主治医/チームへ
呼吸 呼吸困難が強い 頻呼吸(例:30/分以上)や強い息切れ “息切れの質”を観察(気道/換気/循環)
自覚症状 安静時胸痛・動悸・強い倦怠 中等度以上の息切れ、めまい、悪心、狭心症状 「我慢できる」は危険。症状の出方で量を調整

中止基準の考え方は、ICU 早期離床の安全管理に関する報告や国内基準の整理が参考になります(施設運用へ落とし込んで使うのが前提)。

運動処方のコツ(廃用に強い“設計”)

  • 頻度を最優先:まず「毎日・複数回」で量を作る( 1 回を短くして良い)
  • 強度は控えめから:息切れ・血圧反応・翌日の疲労が過剰なら下げる
  • 段階アップは 1 要素だけ:距離 or 回数 or 負荷のどれか 1 つ
  • “生活動作”に寄せる:立ち上がり、移乗、トイレ動作、病棟移動
  • 記録をセット:量(距離/回数/時間)+症状+バイタル反応

現場の詰まりどころ(よくある失敗を先に潰す)

廃用リハで起きがちな詰まりどころ(OK/NG の切り分け)
詰まりどころ 起きる理由 NG 対応 OK 対応(型)
「歩けるのに」退院が伸びる 量が足りない/疲労で翌日落ちる 1 回を頑張らせる 少量頻回+翌日も同じ量で“再現性”を作る
離床が怖くて進まない 中止基準が曖昧 担当者の感覚頼み 中止・中断の目安を固定し、チームで共有する
筋トレしても ADL が上がらない 生活動作への転移不足 マシン/単関節だけ 立ち上がり・移乗・歩行距離に紐づけて処方
リハが進むほど疲れて悪化 栄養/炎症が絡む 運動だけ増やす 摂取量・体重変化を拾い、栄養介入と同時並行

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. 廃用症候群は「どの評価」から入るのが正解ですか?

A. まずはADL/活動量から入るのが安全です。「筋力」から始めると、生活のどこで詰まっているかが抜けやすいです。入院前の生活範囲 → 現在の離床回数 → 介助量の推移、の順に押さえると、介入の優先度が決めやすくなります。

Q2. 早期離床は“頑張らせた方が勝ち”ですか?

A. 勝ち筋は量の確保です。1 回を頑張らせるより、短くてもいいので回数を稼ぐ(少量頻回)方が、翌日以降の再現性が出ます。中止・中断の目安を共有し、チームで「増やし方」を固定するのがコツです。

Q3. 廃用とフレイル/サルコペニア、どう使い分けますか?

A. ざっくり言うと、廃用は「今の不活動で落ちている」、フレイルは「脆弱性(リスク)」、サルコペニアは「筋量/筋力/機能」が中心です。臨床では混ざるので、まず廃用として生活の活動量を底上げしつつ、必要ならフレイル/サルコペニアの枠で追加評価すると整理しやすいです。

Q4. 退院後の再廃用を防ぐには何を残すべきですか?

A. 退院後に効くのは、メニューよりも“続けられる量”です。歩行距離・立ち上がり回数・外出頻度など、生活に直結する 1〜2 項目を選び、週単位で増やす設計にしておくと戻りにくいです。

参考文献

  1. 大川 弥生. 用語の解説 廃用症候群(disuse syndrome). DINF. https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/rehab/r068/r068_045.html
  2. Kortebein P, Ferrando A, Lombeida J, Wolfe R, Evans WJ. Effect of 10 Days of Bed Rest on Skeletal Muscle in Healthy Older Adults. JAMA. 2007;297(16):1772-1774. doi: 10.1001/jama.297.16.1772-b
  3. Kortebein P. Rehabilitation for hospital-associated deconditioning. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2008;63(10):1076-1078. doi: 10.1093/gerona/63.10.1076
  4. Chen X, et al. Hospital-associated deconditioning: Not only physical, but also cognitive. Int J Geriatr Psychiatry. 2022. doi: 10.1002/gps.5764
  5. Welch C, et al. New horizons in hospital-associated deconditioning: moving beyond muscle. Age and Ageing. 2024. doi: 10.1093/ageing/afae012
  6. Westlake K, et al. Towards a common definition of hospital-acquired deconditioning: a conceptual model. BMJ Open. 2025. doi: 10.1136/bmjopen-2024-086976
  7. Sakai T, Hoshino C, Okawa A, Wakabayashi K, Shigemitsu H. The Safety and Effect of Early Mobilization in the Intensive Care Unit According to Cancellation Criteria. Prog Rehabil Med. 2020;5:20200016. doi: 10.2490/prm.20200016
  8. Smith TO, et al. Interventions for reducing hospital-associated deconditioning: A systematic review and meta-analysis. Arch Gerontol Geriatr. 2020;90:104176. doi: 10.1016/j.archger.2020.104176

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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おわりに

廃用の立て直しは、安全の確保 → 量を作る(少量頻回) → 段階アップ → 記録で再評価のリズムで回すと、現場の迷いが減って成果が安定します。面談準備チェックと職場評価シートも使えるので、必要なら こちら(ダウンロード) も合わせてどうぞ。

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