令和 8 年診療報酬改定の基本方針を PT 目線で整理

制度・実務
記事内に広告が含まれています。

この記事のねらい(骨子案ベースの速報です)

診療報酬改定を味方につけてキャリアを整理する(PT キャリアガイド)

令和 7 年 11 月、社会保障審議会 医療保険部会・医療部会で「令和 8 年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)」と「骨子案の概要」が示されました。本記事は、この骨子案に書かれている内容のうち、とくに リハビリテーション・栄養・口腔・在宅医療 に関わる部分を、理学療法士目線でかみ砕いて整理することを目的としています。

まだ点数や具体的な算定要件は公表されておらず、ここで紹介するのはあくまで「基本方針レベルの方向性」です。そのため、特定の加算の新設・廃止や点数の増減を予想することはせず、一次資料に書かれている範囲+臨床の感覚からのコメント にとどめます。確定情報が出た段階で、別記事や本ページのアップデートでフォローしていく前提の「速報メモ」としてお読みください。

令和 8 年診療報酬改定の 4 つの柱

骨子案では、まず日本経済の物価高騰・賃金上昇、人手不足などの状況を踏まえた「改定の基本認識」が示され、そのうえで次の 4 つの基本的視点 が打ち出されています。

1)物価や賃金、人手不足等の医療機関等を取りまく環境の変化への対応
2)2040 年頃を見据えた医療機関の機能分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進
3)安心・安全で質の高い医療の推進
4)効率化・適正化を通じた医療保険制度の安定性・持続可能性の向上

とくに 1 つ目の視点(物価・賃金・人手不足対応)は「重点課題」として位置づけられており、医療機関の経営安定と、現場で働く職種の賃上げにつながる対応を行うことが強調されています。PT・OT・ST に関係するのは、賃上げや人員配置だけでなく、業務の効率化・役割分担・タスクシフト/タスクシェア といった文脈も含まれている点です。

診療報酬の細かい要件を見る前に、「今回の改定はこの 4 本柱で動く」という大枠を頭に入れておくと、今後の資料を読みやすくなります。一次資料は厚生労働省が公表している PDF(例:令和 8 年度診療報酬改定の基本方針(骨子案))を確認してください。

リハ・栄養・口腔に関わるキーワードを PT 目線で整理

骨子案の概要には、リハビリテーションや栄養・口腔に関わるキーワードがいくつか明確に書き込まれています。ここでは、PT の業務に直結しそうな部分だけを抜き出し、その意味合いを簡単に整理しておきます。

「質の高いリハビリテーションの推進」

「安心・安全で質の高い医療の推進」という視点の具体的方向性として、「質の高いリハビリテーションの推進」 が明記されています。前回の令和 6 年改定では、アウトカム評価や機能ごとの役割分担、リハ栄養・口腔との連携体制加算などが議論の中心でした。

今回も、リハの「量」だけでなく 質やアウトカム、多職種連携(栄養・口腔・在宅とのつながり)、高齢者の生活を支えるケアとしての位置づけが改めて強調される流れと読み取れます。今からできる準備としては、自施設のリハビリテーション提供体制やアウトカムの記録方法を振り返り、「対外的に説明できる形になっているか?」を確認しておくとよさそうです。

「リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進」

骨子案の概要には、「リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進」 という一文も含まれています。これは、令和 6 年改定で新設された「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」や、在宅・介護保険領域を含む「リハ栄養」「口腔機能管理」の流れを、そのまま延長するキーワードと考えられます。

PT 目線で見ると、NST・摂食嚥下チーム・口腔ケアチームとの連携の「実績」、カンファレンス・共同記録・計画書での役割分担の明文化、フレイル・サルコペニア・誤嚥性肺炎など 生活期までつながるアウトカム が、今後の評価や施設基準の見直しに絡んでくる可能性があります。すでに連携体制加算を算定している施設では、「連携の中身」を振り返る良いタイミングかもしれません。

在宅医療・地域包括ケアとリハ

4 つの基本的視点の 2 つ目には、「2040 年頃を見据えた機能分化・連携と地域における医療の確保、地域包括ケアシステムの推進」 が掲げられています。ここでは、在宅医療・訪問看護・かかりつけ医機能の強化などが具体的方向性として示されており、介護保険制度の改正議論とも重なっています。

リハ職にとっては、退院支援・地域連携パスにおける 情報提供の質、訪問リハビリテーション・通所リハとの連携、在宅療養患者に対する栄養・口腔・環境整備を含めた支援が、あらためて注目される可能性があります。「病棟の中だけで完結するリハ」から、「地域に出ても通用する情報・介入」の設計が、さらに求められていくかもしれません。

医療 DX・業務効率化とリハ部門の関わりどころ

骨子案では、「医療 DX や ICT 連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価」や、「業務効率化・職場環境改善の更なる推進」といった文言も盛り込まれています。一見すると事務部門向けの話に見えますが、リハ部門も例外ではありません。

たとえば、電子カルテやリハシステムを用いた評価シートの標準化、バイタル・活動量・栄養情報など他職種データとの連携、カンファレンスや説明用のテンプレート作成による 説明業務の効率化 は、まさに「DX」「業務効率化」に直結するテーマです。

「DX=新しいシステムを入れること」ではなく、すでにあるツールやテンプレートをどう活用して業務を整理するかという視点で、リハ部門としてできることを洗い出しておくと、改定後の要件に対応しやすくなります。

今後のスケジュールと、今から準備できること

骨子案の資料や各種速報記事から、今後の大まかなスケジュールは次のように整理できます。

・令和 7 年 11 月:医療保険部会・医療部会で骨子案・骨子案の概要を提示
・令和 7 年 12 月:基本方針(案)を両部会で審議し、基本方針を決定
・その後:中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的な改定項目・点数・要件を順次審議
・令和 8 年度当初:告示・通知・疑義解釈などが公表され、本格施行

PT 目線で「今からできること」を挙げると、次のようなイメージになります。

・情報源の固定:厚労省の診療報酬改定専用ページ、医療保険部会/医療部会・中医協の資料ページをブックマークし、確認先を絞る
・自施設の現状整理:リハ・栄養・口腔・在宅との連携状況(カンファレンス・計画書・記録様式など)、リハビリテーションのアウトカム指標(FIM、BBS、TUG など)の運用状況を棚卸しする
・院内で「改定チーム」ができたときに、リハとして出せる材料を準備しておく(現状の課題感、小さく始められる業務効率化・DX の種など)

「点数が出てから考える」だとどうしてもバタつきやすいので、「方向性の段階でゆるく準備しておく」くらいの温度感がちょうど良いと感じます。

現場の詰まりどころ(情報収集・院内展開のポイント)

診療報酬改定の話題は抽象的になりやすく、現場では次のような「詰まり」が起こりがちです。

・PDF を眺めても、どこがリハに関係あるのかピンと来ない
・ニュースサイトのまとめを読んでも、「結局うちの病棟で何が変わるの?」が見えない
・上層部の会議で話題になったが、リハ部門に情報が降りてくる頃には「決定事項」だけになっている

これを少しでも解消するために、骨子案の段階でおすすめしたいのは、次の 3 点です。

1)一次資料の「自分用マーカー」を作る:厚労省 PDF を印刷/ PDF ビューアの注釈で、「リハ」「栄養」「口腔」「在宅」「DX」など自分に関係する単語に印をつける
2)「リハとして何を見ていくか」のメモを 1 枚にまとめる:「リハの質」「リハ×栄養・口腔」「在宅・地域連携」「DX・業務効率化」など、今後追いかけたいテーマを箇条書きにしておく
3)情報の粒度を分けて院内共有する:同僚 PT 向けには「今回の改定はざっくりこういう方向です」という 5 分版、管理者や看護師長クラスには「リハとしてここは一緒に議論したい」という論点メモを用意する

今回の記事も、「改定の大きな流れをつかむための入り口」として、自分用メモや院内勉強会の素材として使っていただければと思います。

おわりに(確定後のアップデート方針)

令和 8 年診療報酬改定の基本方針(骨子案)は、まだ方向性を示した段階の資料ですが、リハビリテーション・栄養・口腔・在宅医療・DX・業務効率化 など、PT が関わるキーワードがしっかり書き込まれています。今後、基本方針の正式決定 → 中医協での個別項目の審議 → 告示・通知・疑義解釈と情報が具体化していくなかで、リハ栄養・口腔連携や在宅医療、DX・タスクシフトといったテーマごとに、さらに掘り下げた記事を整理していく予定です。

この記事ではあえて「予想」には踏み込まず、一次資料をベースに 流れをつかむこと に絞ってまとめました。続報が出次第、リハ職の実務に落とし込める形でアップデートしていきますので、自施設の準備や院内勉強会のたたき台として、必要に応じて活用してみてください。

働き方を見直すときの抜け漏れ防止に。見学や情報収集の段階でも使える面談準備チェック(A4・5 分)と職場評価シート(A4)を無料公開しています。印刷してそのまま使えます。チェックリストと職場評価シートを確認する

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

運営者について編集・引用ポリシーお問い合わせ

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

教育体制に不安があるとき、転職はいつ検討すべきですか?

診療報酬改定のタイミングは、施設ごとに「何を強化し、何を縮小するか」が見えやすくなる時期です。改定内容を踏まえたうえで、リハ部門の方針・教育体制・人員配置が自分のキャリアイメージと大きくずれていると感じたら、「情報収集ベースの転職検討」を始めてもよいサインと考えます。

いきなり退職を決めるのではなく、まずは院内での役割調整や部署異動の可能性を確認しつつ、外部の求人情報や他施設の体制も比較しておくと安心です。教育体制や安全文化のチェックポイントは、理学療法士のキャリアガイド(要注意サインの項目) も参考にしてみてください。

タイトルとURLをコピーしました