令和 8 年診療報酬改定の基本方針【確定版】PT が押さえる 4 つの柱

制度・実務
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令和 8 年診療報酬改定の基本方針を PT 目線で整理(確定版)

本記事は「令和 8 年度 診療報酬改定の基本方針(確定版)」を、リハビリテーション・栄養・口腔・在宅医療・医療 DX の観点で、 PT(リハ職)向けに噛み砕いて整理したものです。骨子案の段階で読んだ方も、「確定版で何が明記されたか」を改めて把握できるように、押さえどころをまとめ直しました。

まだ点数や算定要件(新設・廃止・要件変更の細部)はこの後に具体化していきます。ここでは、あくまで “ 基本方針レベルの方向性 ” を先に押さえ、現場での情報収集・院内展開・準備に使える形に落とし込みます。

令和 8 年改定の 4 つの柱(まずは地図を作る)

基本方針は、改定全体の “ 地図 ” です。点数の増減を当てにいくより先に、「どの方向に制度が寄っていくか」を押さえると、中医協の資料や通知を読むスピードが上がります。特に今回も、物価・賃金・人手不足、地域包括ケア、質・アウトカム、効率化( DX )が中核です。

PT 目線では、「リハの質・アウトカム」「リハ × 栄養・口腔」「在宅・退院支援」「業務効率化・タスクシフト」を “ 4 本柱に紐づけて ” 整理しておくと、院内の議論に参加しやすくなります。

令和 8 年 診療報酬改定| 4 つの柱と PT が見ておく観点
柱(基本的視点) 要点(現場で起きること) PT が先に準備する観点
( 1 )物価・賃金・人手不足への対応 処遇改善、業務改善、タスクシフト/タスクシェア、基準の柔軟化 記録のムダ削減/説明業務の型化/役割分担の見える化
( 2 )機能分化・連携/地域包括ケア 「治し、支える医療」/円滑な入退院/在宅医療の質 退院支援の情報提供テンプレ/ ADL・嚥下・栄養の引き継ぎ精度
( 3 )安心・安全で質の高い医療 アウトカム評価、質の高いリハの推進、体制評価 アウトカム指標の運用(測定頻度・責任者・記録様式)
( 4 )効率化・適正化/持続可能性 医療 DX・ ICT 連携、適正化、制度の持続性 データ連携(バイタル・栄養・口腔)/カンファ短縮/標準書式

リハ・栄養・口腔に関わるキーワードを PT 目線で整理

基本方針の “ 具体的方向性 ” には、 PT の日常業務と直結する語がそのまま載っています。ここでは、現場の改善に繋がりやすい順に、読み替えのポイントを整理します。

ポイントは、制度の言葉を “ 現場の作業 ” に変換することです。「評価」や「推進」の一言で終わらせず、誰が・いつ・何を・どこまで揃えるかまで落とすと、改定対応のバタつきが減ります。

「質の高いリハビリテーションの推進」=アウトカムと体制の “ 説明力 ”

「質の高いリハビリテーションの推進」と「アウトカムにも着目した評価の推進」はセットで考えると理解が早いです。つまり、提供量だけでなく “ 成果の説明 ” や “ 成果に繋がる体制 ” をどう整えるかが論点になります。

PT 部門で先に整えておくと効くのは、①アウトカム指標(例:歩行・バランス・ ADL )の測定タイミング、②誰が入力するか、③カンファでどう使うか、④退院時にどう要約して地域へ渡すか、の 4 点です。測定そのものより “ 運用の設計 ” が詰まりやすいので、まずは 1 病棟( 1 チーム )から試行すると進みやすいです。

「リハ × 栄養管理 × 口腔管理」=ケアの “ 同時進行 ” を評価される

「リハビリテーション・栄養管理・口腔管理等の高齢者の生活を支えるケアの推進」は、 PT だけで完結しない領域を “ 改定の中枢 ” に置く宣言です。現場感としては、フレイル・サルコペニア、低栄養、誤嚥性肺炎など、生活機能を下げる要因に対して、リハと栄養・口腔が同時に走れる体制が問われやすくなります。

「連携しています」と言うだけでなく、カンファの議題、共同記録、介入計画(目標の整合)を “ 証拠として残す ” 仕組みが要です。 PT は、嚥下や栄養の専門職ではありませんが、 “ 動作・活動・呼吸・ ADL ” からのリスク察知と、連携へ繋ぐ導線設計で価値を出しやすい領域です。

在宅医療・地域包括ケアとリハ=退院支援の “ 情報品質 ” が勝負

機能分化・連携、地域包括ケアの文脈では、「円滑な入退院の実現」「質の高い在宅医療・訪問看護の確保」などが並びます。PT にとっては、退院支援で “ 何を渡せるか ” がそのまま評価される場面が増えます。

退院時サマリや連携パスで、①移動(監視・介助量)、②転倒リスク(根拠)、③嚥下・栄養・口腔の注意点、④住宅・福祉用具の要点、⑤再増悪のレッドフラッグ、を短く渡せると強いです。現場の働き方や役割分担の変化まで含めて掴みたい方は、関連として 令和 8 年に向けたリハの働き方(急性期〜在宅)の全体像 もセットで読むと整理しやすくなります。

医療 DX・業務効率化とリハ部門の関わりどころ

基本方針には「医療 DX や ICT 連携を活用する医療機関・薬局の体制の評価」「業務効率化・負担軽減」などが明記されています。 DX は “ 新しいシステム導入 ” だけではなく、既存のツールを使った業務設計(ムダ取り)も含みます。

リハ部門で効果が出やすいのは、①評価・計画書のテンプレ統一、②カンファ資料の型化、③他職種データ(バイタル・栄養・口腔)を拾う導線、④説明業務(同意・家族説明)のチェックリスト化、です。改定の議論が進むほど “ 記録と説明の質 ” が求められやすいので、先に型を作っておくと後が楽になります。

今後のスケジュールと、今から準備できること

基本方針が確定した後は、中医協で具体項目(点数・要件・施設基準など)が議論され、告示・通知・疑義解釈へと落ちていきます。現場は「点数が出てから」だと一気にバタつくので、方向性の段階で “ ゆるく準備 ” しておくのがコスパが良いです。

PT 部門としては、「情報源固定 → 論点メモ化 → 小さく試行 → 記録整備」の順で動くと、改定のたびに再利用できる資産になります。

PT 部門が “ 今から ” やると効く準備(改定前のスタートダッシュ用)
やること 目的 最小単位(まずここから)
一次情報の確認先を固定する 誤情報・二度手間を減らす 厚労省の改定ページ+中医協資料の 2 つに絞る
アウトカム指標の運用を棚卸し 「質」の説明力を上げる 1 病棟で測定タイミングと記録様式を統一
リハ × 栄養 × 口腔の連携導線を見える化 ケアの同時進行を回す カンファ議題に “ 栄養・口腔 ” を必ず入れる
説明業務のテンプレ化( DX の第一歩 ) 負担軽減と質担保 退院説明のチェックリストを 1 枚化

現場の詰まりどころ(情報収集・院内展開のポイント)

診療報酬改定は抽象度が高く、情報が “ 上から降りてくる頃には決定済み ” になりがちです。PT が関与できる余地を残すには、早い段階で論点を言語化し、院内の会議に “ 材料 ” を持っていくことが重要です。

ここでは、よく起きる詰まりを “ OK/ NG ” で整理し、明日からの動きに変換します。

改定対応でよくある詰まり| NG と OK の違い( PT 部門向け )
詰まり NG(起きがち) OK(こう直す) その場の 1 手
PDF を読んでも関係が分からない 全文を通読して疲れる “ リハ/栄養/口腔/在宅/ DX ” の単語にマーカー 用語ごとの付箋(メモ)を作る
ニュースまとめで終わる 結論が “ ふーん ” で止まる 自施設の論点に変換(どの体制が弱いか) 5 分メモ( 3 行 )を作る
院内共有が遅い 決定事項だけ共有される 早期に “ 論点 ” を出して議題化する 管理者へ論点メモを 1 枚で提出
準備が “ 施行直前 ” になる 点数が出るまで動かない 運用設計(記録・カンファ・テンプレ)を先に整える 1 病棟で試行して横展開

おわりに(確定版で押さえるべき “ 次の動き ” )

令和 8 年改定は、方向性として「情報源の固定 → 院内論点の整理 → 小さく試行 → 記録整備 → 再点検」というリズムで回すと、毎回の改定で資産が積み上がります。特に “ リハの質 ” と “ リハ × 栄養・口腔 ”、そして “ 退院支援の情報品質 ” は、 PT が関与して改善しやすい領域です。

改定の議論が具体化する前に、面談準備チェックと職場評価シートで「働き方の見直し」まで一緒に整理しておくと動きやすいので、マイナビコメディカルの無料ツール(ダウンロード) も必要に応じて活用してみてください。

一次情報(公式資料)

参考文献

  1. Langhorne P, Bernhardt J, Kwakkel G. Stroke rehabilitation. Lancet. 2011;377(9778):1693-1702. DOI: 10.1016/S0140-6736(11)60325-5
  2. Bernhardt J, et al. Very early versus delayed mobilisation after stroke ( AVERT ): a randomised controlled trial. Lancet. 2015;386(9988):46-55. DOI: 10.1016/S0140-6736(15)60690-0
  3. Wakabayashi H. Rehabilitation nutrition in general and family medicine. J Gen Fam Med. 2017;18(4):153-154. DOI: 10.1002/jgf2.116
  4. Nagano A, Nishioka S, Wakabayashi H. Rehabilitation Nutrition for Iatrogenic Sarcopenia and Sarcopenic Dysphagia. J Nutr Health Aging. 2019;23(3):256-265. DOI: 10.1007/s12603-018-1150-1
  5. Yoneyama T, Yoshida M, Ohrui T, et al. Oral care reduces pneumonia in older patients in nursing homes. J Am Geriatr Soc. 2002;50(3):430-433. DOI: 10.1046/j.1532-5415.2002.50106.x
  6. Shimizu A, Maeda K, Koyanagi Y, et al. The Global Leadership Initiative on Malnutrition-Defined Malnutrition Predicts Prognosis in Persons With Stroke-Related Dysphagia. J Am Med Dir Assoc. 2019. DOI: 10.1016/j.jamda.2019.07.008

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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よくある質問

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基本方針(確定版)を読めば、点数改定の中身まで分かりますか?

分かるのは “ 方向性 ” までです。点数・算定要件・施設基準の具体は、この後に中医協で議論され、告示・通知・疑義解釈で形になります。本記事は、確定版の方向性を先に掴み、現場での準備(記録・連携・テンプレ整備)を進めるための土台として使ってください。

PT が最優先で備えるなら、どこから着手が良いですか?

①アウトカム指標の運用(測定タイミング・記録様式・責任者) ②リハ × 栄養 × 口腔の連携導線(カンファ議題・共同記録) ③退院支援の情報品質(要点を短く渡すテンプレ) の順が進めやすいです。システム導入より “ 運用の設計 ” が先に効きます。

「医療 DX」って、リハ部門では何をすれば良いですか?

新しいシステムを買う前に、まずは “ 型化 ” が近道です。評価・計画書・説明資料をテンプレ化し、カンファに必要な情報が 1 画面( 1 枚 )で揃う状態を作ると、効率化と質担保を同時に進められます。

院内共有がうまくいきません。どんな資料が刺さりますか?

“ 5 分版 ” と “ 論点版 ” を分けるのがおすすめです。同僚向けには方向性を 3 行で、管理者向けには「リハとして議論したい論点」と「その根拠(基本方針の該当語)」を 1 枚にまとめると通りやすくなります。

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