SOAP記録はChatGPTで時短できる?
ChatGPTは、SOAP記録の臨床判断を代行するものではありませんが、患者発言と観察所見の分類、文章の短文化、AとPのつながりの整理には活用できます。特に、S・O・A・Pの分け方やAの書き方で手が止まりやすい新人理学療法士に有用です。本記事では、個人情報を入力しない前提で、SOAP記録を3分で整理する流れ、項目別プロンプト、記録例、AI出力を確認するポイントを実務ベースで解説します。
この記事で分かること
- ChatGPTに任せられる部分と任せてはいけない部分
- SOAP記録を3分で整理する入力手順
- S・O・A・P別に使えるプロンプト例
- 個人情報とAI出力に関する確認ポイント
PDF:SOAP記録 AI活用チェックシート
ChatGPTをSOAP記録に使う前に確認したい「個人情報」「S・O・A・P別の使い分け」「コピペ前の確認」をA4 1枚で整理しています。
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SOAP記録に時間がかかる3つの理由
SOAP記録に時間がかかる主な理由は、文章力ではなく、情報の分類・解釈・計画を同時に行う必要があるためです。
理学療法士の記録では、患者の訴え、疼痛、歩行距離、介助量、動作の特徴、リスク、介入後の変化など、多くの情報を扱います。これらを第三者が読んでも分かる形に整理するには、次の3段階が必要です。
- 患者の発言と観察事実を分ける
- 観察事実から評価を組み立てる
- 評価に対応する計画を具体化する
| 詰まりどころ | 起こりやすい問題 | ChatGPTで補助しやすい部分 |
|---|---|---|
| SとOが混ざる | 患者発言と観察事実が一文に混在する | 入力情報の分類 |
| Oが長くなる | 重要な距離・介助量・動作場面が埋もれる | 客観情報の短文化と並べ替え |
| Aが書けない | 所見を並べるだけで解釈につながらない | 評価候補と根拠の整理 |
| Pが抽象的になる | 「継続」「経過観察」だけで終わる | 次回確認項目と介入内容の整理 |

ChatGPTで時短できる部分と任せてはいけない部分
ChatGPTで時短しやすいのは、情報の分類・要約・構造化・文章化です。
一方で、病態判断、転倒リスクの判定、介助量の決定、運動負荷、禁忌、中止基準などは、患者を直接評価した理学療法士が判断しなければなりません。AIが作った文章が自然であっても、臨床的に妥当とは限らないためです。
| 項目 | 補助に使いやすいこと | 任せてはいけないこと |
|---|---|---|
| S | 患者発言の短文化、重複の整理 | 発言の背景や意図を推測すること |
| O | 距離・介助量・使用物品・動作場面の整理 | 観察していない所見を補うこと |
| A | 評価候補、問題点、根拠の対応づけ | 病態やリスクを断定すること |
| P | 次回確認項目と介入候補の整理 | 運動負荷や介助量を決定すること |
現場でのポイント:療養病棟では、体調や覚醒状態、介助量が日によって変わる患者も少なくありません。前回記録をもとにAIが整えた文章よりも、当日に観察した状態を優先し、変化した部分を必ず自分で修正する必要があります。
SOAP記録に使う前の安全確認
SOAP記録にChatGPTを使う前に、施設の規程と利用環境を確認し、患者を特定できる情報を入力しないことが基本です。
氏名や患者IDを削除しただけでは、必ずしも十分とは限りません。年齢、疾患、入院日、手術日、病棟、地域、家族構成、詳細な経過などを組み合わせると、患者を推測できる場合があります。
また、医療情報を外部サービスへ入力できるかどうかは、勤務先の情報セキュリティ規程、利用契約、データの保存・学習条件によって異なります。個人の判断だけで使用せず、施設で許可された範囲を優先してください。
| 確認項目 | 避けたい入力 | 安全側の対応 |
|---|---|---|
| 氏名・識別番号 | 氏名、患者ID、部屋番号 | 入力しない |
| 日付 | 生年月日、入院日、手術日、詳細な経過日 | 必要がなければ削除し、病期などに一般化する |
| 施設・地域 | 病院名、病棟名、居住地域 | 医療機関、病棟、自宅などに一般化する |
| 症例経過 | 個人を推測できる詳細な経過 | SOAP整理に必要な情報だけを抽出する |
| 利用可否 | 施設の許可を確認せずに使用する | 院内規程、契約、保存・学習条件を確認する |
SOAP記録を3分で整理するChatGPT活用フロー
時短するには、完成文をいきなり作らせるのではなく、材料整理、SOAP分類、最終確認の3段階に分けます。
| 時間 | 理学療法士が行うこと | ChatGPTへの指示 |
|---|---|---|
| 1分目 | 個人情報を除き、患者発言と観察所見を箇条書きにする | まだ文章化させず、入力材料を提示する |
| 2分目 | S・O・A・Pに分類する | 観察していない内容を追加しないよう指定する |
| 3分目 | 事実、評価、計画のつながりを確認する | Aの根拠とPの対応を整理させる |

一括で整理するときのプロンプト例
以下の情報を、理学療法士のSOAP記録としてS・O・A・Pに分類してください。観察していない内容や病名、検査結果は追加しないでください。Aは評価候補として断定を避け、PはAと対応するように簡潔に整理してください。
・「歩くと少し怖い」と発言
・痛みは強くない
・T字杖使用
・病棟内30m歩行
・右立脚期に骨盤右側方動揺
・方向転換時にふらつき
・見守りで実施
出力された文章は完成記録ではありません。事実との一致、介助量、リスク、施設の記録様式を確認し、自分で修正してから使用します。
S:患者の主観情報を整理する入力例
Sでは、患者が話した内容の意味を変えず、記録に必要な訴えや体調変化を短く整理します。
ChatGPTに患者の意図や心理状態を推測させるのではなく、発言の重複を除き、主観情報としてまとめる用途に限定します。
入力例
以下の患者発言を、SOAPのSに記載しやすい形で短く整理してください。意味を変えず、医療者側の解釈は追加しないでください。
発言:昨日より足が重い感じがする。歩くと少し怖い。痛みは強くない。
整理後の例
「昨日より足が重く、歩行時に少し怖さがある。痛みは強くない」と発言。
- 原発言の意味が変わっていないか
- 医療者側の解釈が混ざっていないか
- 重要な訴えが削除されていないか
O:観察・測定した客観情報を整理する入力例
Oでは、実際に観察・測定した事実を、距離、介助量、使用物品、動作場面が分かる形で整理します。
「ふらつきあり」のような短いメモだけでは、どの場面で、どの方向へ、どの程度の介助が必要だったかが伝わりません。入力時点で具体的な事実を含めることが重要です。
入力例
以下の情報をSOAPのOとして簡潔に整理してください。観察していない内容は追加せず、使用物品、距離、介助量、動作場面を残してください。
T字杖使用、病棟内30m歩行、右立脚期に骨盤右側方動揺、方向転換時にふらつき、見守りで実施。
整理後の例
T字杖を使用し、病棟内30m歩行を見守りで実施。右立脚期に骨盤の右側方動揺を認め、方向転換時にふらつきがみられた。
- 観察していない所見が加わっていないか
- 距離、介助量、使用物品が残っているか
- ふらつきが生じた場面が明確か
曖昧なカルテ表現そのものを整えたい場合は、記事末の「カルテ文をChatGPTで読みやすく整える方法」で使い分けを確認できます。
A:評価候補と根拠を整理する入力例
Aでは、SとOから考えられる問題点を整理しますが、ChatGPTの出力を臨床判断として採用してはいけません。
「評価を書いてください」だけでは、AIが観察していない原因や病態を補う可能性があります。「評価候補」「提示した所見の範囲」「断定を避ける」という条件を明示します。
入力例
以下のSとOから、SOAPのAに使える評価候補を整理してください。提示した所見の範囲に限定し、原因を断定せず、根拠となるOが分かる表現にしてください。
S:「歩くと少し怖い。痛みは強くない」と発言。
O:T字杖で病棟内30m歩行を見守りで実施。右立脚期に骨盤右側方動揺を認め、方向転換時にふらつきがみられた。
整理後の例
右立脚期の側方動揺および方向転換時のふらつきがみられ、病棟内歩行には見守りを要する。本人から歩行への怖さも聞かれており、安全性を確認しながら方向転換時の安定性を評価する必要がある。
- SとOにない病態や原因が追加されていないか
- 評価の根拠となる観察所見が明確か
- 断定できない内容を断定していないか
- Pにつなげられる評価になっているか
P:次回の確認項目と計画を整理する入力例
Pでは、Aで挙げた問題に対応する確認項目と介入内容を具体化します。
「歩行練習継続」だけでは、何を確認し、何を目的に実施するのかが伝わりません。ただし、運動負荷、禁忌、中止基準、介助量の最終決定は、患者の状態を確認した理学療法士が行います。
入力例
以下のAをもとに、SOAPのPの候補を整理してください。「次回確認すること」と「介入内容」に分け、提示されていない運動負荷や回数は追加しないでください。
A:右立脚期の側方動揺と方向転換時のふらつきがみられ、病棟内歩行には見守りを要する。安全性を確認しながら、方向転換時の安定性を評価する必要がある。
整理後の例
次回は右立脚期の側方動揺、方向転換時のふらつき、必要な介助量を再確認する。安全性に配慮しながら、T字杖歩行および方向転換動作の練習を継続する。
- Aで挙げた問題と対応しているか
- 次回確認する項目が明確か
- 実施していない負荷量や回数が追加されていないか
- 患者の当日の状態で実施可能か
ChatGPTで整理する前後のSOAP記録例
ChatGPTを使う目的は文章を装飾することではなく、事実・評価・計画の役割を分け、第三者が経過を追いやすい記録にすることです。
| 項目 | 整理前 | 整理後の例 |
|---|---|---|
| S | 怖い。痛みはない。 | 「歩行時に少し怖さがある。痛みは強くない」と発言。 |
| O | 歩行時ふらつきあり。 | T字杖を使用し、病棟内30m歩行を見守りで実施。方向転換時にふらつきがみられた。 |
| A | 歩行不安定。 | 方向転換時のふらつきがみられ、病棟内歩行には見守りを要する。方向転換時の安定性を継続して確認する必要がある。 |
| P | 歩行練習継続。 | 方向転換時のふらつきと必要な介助量を確認しながら、T字杖歩行練習を継続する。 |
整理後の文章も、実際の観察内容と一致している場合にのみ使用できます。AIが文章を具体化したのではなく、理学療法士が入力した具体的事実を並べ直した状態が理想です。
AIの文章を記録へ使う前の5項目チェック
AIの出力は、次の5項目を確認してから修正します。
| 確認項目 | チェックする内容 |
|---|---|
| 1.事実 | 観察・測定していない内容が追加されていないか |
| 2.分類 | Sに解釈、Oに推測、Aに未確認情報が混ざっていないか |
| 3.つながり | Oを根拠にAが書かれ、Aに対応するPになっているか |
| 4.安全性 | 介助量、転倒リスク、禁忌、中止基準の記載が妥当か |
| 5.施設ルール | 院内様式、略語、記載責任、利用規程に合っているか |
特に注意したいのは、自然な文章ほど誤りを見落としやすいことです。読みやすさではなく、観察した事実との一致を基準に確認してください。
SOAP記録でよくあるChatGPTの失敗
失敗を防ぐには、AIの性能よりも、入力する情報と確認手順を整えることが重要です。
| 失敗例 | 問題点 | 対策 |
|---|---|---|
| 実際のカルテをそのまま入力する | 患者を特定できる情報が含まれる可能性がある | 施設規程を確認し、入力可能な範囲でも必要最小限に一般化する |
| 「SOAPを書いて」とだけ指示する | AIが不足情報を推測して補う可能性がある | 追加禁止、断定禁止、残す項目を具体的に指定する |
| Aを丸投げする | 病態・原因・リスクが根拠なく断定される可能性がある | 評価候補として出力させ、理学療法士が判断する |
| Pを自動決定させる | 患者の状態に合わない負荷や介入が提案される可能性がある | 次回確認項目と介入候補の整理に限定する |
| 出力をそのまま貼り付ける | 事実誤認や施設ルールとの不一致を見逃す | 5項目チェック後に自分で修正する |
SOAP記録とChatGPTに関するよくある質問
各項目名をタップすると回答が開きます。
SOAP記録にChatGPTを使っても大丈夫ですか?
勤務先の規程と利用環境で許可され、患者を特定できる情報を入力せず、最終確認を理学療法士自身が行う場合に限り、情報整理の補助として活用できます。施設で使用が認められていない場合は使用できません。
患者名を消せばカルテ内容を入力できますか?
患者名を削除しただけでは十分とは限りません。年齢、疾患、日付、病棟、地域、詳細な経過などの組み合わせから個人を推測できる場合があります。施設規程を確認し、許可された場合でもSOAP整理に必要な情報だけに限定してください。
AIが作ったSOAPをそのまま使えますか?
そのまま使用することは避けます。観察していない所見、断定的な評価、不適切な介入内容が含まれる可能性があるため、事実、分類、AとPのつながり、安全性、施設ルールを確認して修正します。
Aの評価もChatGPTに作らせてよいですか?
評価候補や根拠の整理には使えますが、臨床判断を任せることはできません。提示したSとOの範囲に限定し、断定を避けて出力させたうえで、理学療法士自身が採否を判断します。
カルテ文を整える記事との違いは何ですか?
カルテ文の記事は、曖昧な表現を客観的で読みやすい文章へ直すことが中心です。本記事は、S・O・A・Pへの分類、AとPの接続、SOAP全体を作る手順に焦点を当てています。
新人理学療法士でも使えますか?
使えますが、AIの出力を正解集として扱わないことが重要です。まずは患者発言と観察事実の分類に使い、AとPは先輩の記録や施設ルールと照合しながら学習してください。
まとめ
ChatGPTは、SOAP記録を代行するツールではなく、理学療法士が集めた情報を分類・要約・構造化する補助ツールです。
時短しやすいのは、患者発言と観察所見の分類、Oの短文化、Aの評価候補の整理、Aに対応するPの具体化です。一方、病態判断、リスク判断、介助量、運動負荷、禁忌などは、患者を直接評価した理学療法士が判断します。
まずは個人情報を除いた短い練習用メモで、S・O・A・Pに分類する使い方から始めてください。出力後は、事実、分類、つながり、安全性、施設ルールの5項目を確認することが重要です。
次の一手
SOAP以外の業務も含めた活用方法を確認したい場合は全体像の記事へ、観察メモを客観的なカルテ表現へ整えたい場合は実践記事へ進んでください。
記録時間を個人の工夫だけで解決できない場合
記録量が多い、相談相手が少ない、教育体制が整っていないなど、職場環境が負担の背景にある場合もあります。現在の環境を整理したい方は、チェックシートを活用してください。
参考文献
- 厚生労働省. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版. 2023. 厚生労働省ウェブサイト
- 厚生労働省. 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版に関するQ&A. 厚生労働省PDF
- OpenAI. ChatGPT. ChatGPT公式サイト
- OpenAI. Privacy Policy. 2026. OpenAI公式サイト
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

