TCTは「体幹機能」を4項目で短時間に確認する評価です
TCT(Trunk Control Test)は、脳卒中などでみられる体幹機能の低下を、ベッドサイドで短時間に確認する評価尺度です。寝返り、起き上がり、端座位保持を含む4項目を、各0点・12点・25点で採点し、合計0〜100点で整理します。
TCTで大切なのは、点数だけを見ることではありません。どの動作で支持・把持・代償が必要だったかを一緒に記録することで、再評価や申し送りに活かしやすくなります。この記事では、TCTの評価方法、採点基準、12点と25点の違い、端座位保持の注意点、自動計算ツール、PDF記録補助シートまで臨床向けに整理します。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 体幹機能、ベッド上動作、端座位保持の成立を短時間で確認する。 |
| 構成 | 4項目。寝返り2項目、起き上がり1項目、端座位保持1項目。 |
| 採点 | 各項目0点・12点・25点。合計0〜100点。 |
| 特徴 | ベッドサイドで短時間に実施しやすい。 |
| 注意点 | 端座位保持は、原法では足底を床から離して30秒保持する。 |
TCTの構造|4項目と合計100点
TCTは、体幹機能を4つの動作で確認します。寝返り、起き上がり、端座位保持を含むため、単なる座位バランスだけでなく、ベッド上動作の土台を短時間で把握しやすい評価です。
| 項目 | 見るポイント | 記録の視点 |
|---|---|---|
| 寝返り:麻痺側方向 | 体幹回旋、動作開始、麻痺側方向への移動。 | 支持、把持、介助、途中での崩れを記録する。 |
| 寝返り:非麻痺側方向 | 左右差、非麻痺側方向への動作のまとまり。 | 麻痺側方向との違い、代償の出方を記録する。 |
| 起き上がり | 背臥位から端座位までの体幹屈曲と支持性。 | 柵、シーツ、上肢による引き込みを記録する。 |
| 端座位保持 | ベッド端で足底を床から離した30秒保持。 | 上肢支持、ふらつき、保持時間、安全性を記録する。 |
TCTの評価方法|準備から記録まで
TCTは簡便な評価ですが、条件がずれると点数の比較が難しくなります。実施前に、安全確認、ベッド環境、介助者の立ち位置、評価条件をそろえておくことが重要です。
| 手順 | 内容 | 記録のポイント |
|---|---|---|
| 1. 安全確認 | 疼痛、転落リスク、ライン類、循環動態を確認する。 | 中止基準や介助者の立ち位置を先に決める。 |
| 2. 条件固定 | ベッド位置、手すり、支持物、足底接地の有無をそろえる。 | 原法から条件を変えた場合は必ず記録する。 |
| 3. 4項目を実施 | 寝返り、起き上がり、端座位保持を確認する。 | 支持・把持・介助・崩れ方を観察する。 |
| 4. 採点 | 各項目を0点・12点・25点で採点する。 | 迷った場合は所見を残し、12点に寄せて判断する。 |
| 5. 所見を書く | 点数だけでなく、代償や安全面を1行で残す。 | 再評価で比較しやすい記録にする。 |
TCTの採点基準|0点・12点・25点の考え方
TCTは、各項目を0点・12点・25点で採点します。迷いやすいのは、12点と25点の境界です。
実務では、動作は完了していても、支持・把持・牽引・強い代償に頼っている場合は、25点ではなく12点に寄せて考えると評価者間のブレを減らしやすくなります。
| 点数 | 意味 | よくある状態 | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 0点 | 介助なしでは遂行できない。 | 途中で崩れる、保持できない、起き上がれない。 | どこで止まったかを記録する。 |
| 12点 | 遂行できるが、正常様式ではない。 | シーツ、柵、上肢支持、把持などに頼る。 | 何に頼ったかを1行で残す。 |
| 25点 | 代償が目立たず遂行できる。 | 支持なしでまとまって行える。 | 左右差、速度、安全性を簡潔に追記する。 |
12点と25点の違い|支持・把持・代償を確認する
TCTで最も迷いやすいのは、12点と25点の判断です。ここでは、単に「できたか」ではなく、どのようにできたかを確認します。
| 点数 | 状態 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 12点 | 動作は可能だが、支持・把持・代償に頼る。 | 柵、シーツ、上肢支持、強い反動、介助者の安全確保が必要。 |
| 25点 | 代償が目立たず、自立して遂行できる。 | 支持なしでまとまり、安全に実施できる。 |
迷った場合は、点数を高く見積もるよりも、12点に寄せて所見で補足する方が再評価時の比較が安定します。
端座位保持の注意点|足底を床から離して30秒
TCTで特に条件がずれやすいのが、端座位保持です。原法では、ベッド端で足底を床から離して30秒保持します。
足底を床につけて実施すると、支持条件が変わるため、同じTCTとして経時比較しにくくなります。安全上の理由で条件を変えた場合は、必ず「足底接地あり」「介助者支持あり」などを記録しておくことが大切です。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 足底条件 | 足底を床から離しているか。条件を変更した場合は記録する。 |
| 保持時間 | 30秒保持できるか。途中で崩れる場合はそのタイミングを記録する。 |
| 上肢支持 | 手でベッドや柵を支持していないか確認する。 |
| 安全性 | 後方・側方への崩れ、恐怖感、疲労を確認する。 |
TCT自動計算ツール
TCTは4項目の合計なので、実施直後に点数をまとめたい場面では自動計算ツールが便利です。未入力があるまま合計点だけが先に出ると誤解につながるため、入力漏れがないかも確認しながら使うと安全です。
ただし、ツールはあくまで採点補助です。合計点だけで評価を終えず、「支持を使ったか」「どこで崩れたか」「原法から条件を変えたか」といった所見もセットで残してください。
TCTとBI・FIM・FACT・TISの違い
TCTは、体幹機能を短時間で確認する評価です。一方で、BIやFIMはADL全体、FACTやTISは体幹機能をより詳しく見る場面で使いやすい評価です。
| 評価 | 主に見るもの | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| TCT | 寝返り、起き上がり、端座位保持を含む体幹機能。 | ベッドサイドで短時間に体幹機能を確認したい場面。 |
| BI | 基本ADLの自立度。 | ADL全体の概要を短時間で把握したい場面。 |
| FIM | ADLの介助量と認知項目。 | 介助量を詳しく共有したい場面。 |
| FACT | 体幹機能の実用的な側面。 | 座位や体幹機能をより臨床的に整理したい場面。 |
| TIS | 静的・動的座位バランスや協調性。 | 体幹機能を下位項目で詳しく追いたい場面。 |
TCT記録で残すべき情報
TCTを再評価や申し送りで活用するには、合計点だけでなく、各項目の所見を短く残すことが重要です。
| 記録項目 | 例 |
|---|---|
| 評価条件 | ベッド環境、足底条件、手すり・柵の使用、介助者の位置。 |
| 支持・把持 | シーツ、柵、上肢支持、介助者支持の有無。 |
| 代償 | 反動、引き込み、左右差、速度低下、過剰努力。 |
| 崩れ方 | 後方へ崩れる、側方へ崩れる、途中で保持困難になる。 |
| 安全面 | 転落リスク、疼痛、恐怖感、疲労、循環動態の変化。 |
TCT記録補助シート(PDF)
TCTは「点数だけ」だと次回の解釈がぶれやすいため、点数+所見1行を書きやすい記録補助シートを用意しています。印刷してベッドサイドで使うか、電子カルテ転記の下書きとして活用できます。
注意:このPDFは、臨床記録を補助するための自作シートです。公式評価用紙や認定教材の代替ではありません。施設の運用ルールや正式な採点基準に沿って使用してください。
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TCTでよくある失敗
| 失敗 | 起こる理由 | 回避策 |
|---|---|---|
| 端座位を足底接地で行う | 原法と条件が変わり、点数比較がずれる。 | 足底を床から離して30秒保持する条件を先に確認する。 |
| 支持ありでも25点にする | 12点と25点の境界があいまいになる。 | 支持・把持・牽引があれば12点寄りで考える。 |
| 点数だけ記録する | 再評価で何が変わったか説明しにくい。 | 点数+所見1行をセットで残す。 |
| 歩行予後をTCTだけで決める | 下肢機能、感覚、注意、耐久性などを拾えない。 | TCTは判断材料の1つとして扱い、他評価と組み合わせる。 |
| 条件変更を記録しない | 次回評価で比較できなくなる。 | 安全上変更した条件は必ず記録する。 |
FAQ|TCTでよくある質問
各項目をタップすると回答が開きます。
Q. TCTは何点満点ですか?
A. TCTは4項目を各0点・12点・25点で採点し、合計100点満点で評価します。
Q. TCTは何を評価する尺度ですか?
A. 主に体幹機能、ベッド上動作、端座位保持の成立を確認する評価です。寝返り、起き上がり、端座位保持を短時間で確認できます。
Q. 12点と25点の違いは何ですか?
A. 12点は動作は可能でも、支持・把持・強い代償に頼る状態です。25点は代償が目立たず、自立してまとまって実施できる状態です。
Q. 端座位保持は足を床につけてもよいですか?
A. 原法では、ベッド端で足底を床から離して30秒保持します。足底接地で行うと条件が変わるため、変更した場合は必ず記録してください。
Q. TCTだけで歩行予後を判断できますか?
A. TCTだけで歩行予後を決めるのは不十分です。歩行には下肢機能、感覚、注意、耐久性、バランスなども関わるため、他評価と組み合わせて判断します。
Q. TCTとFACTの違いは何ですか?
A. TCTは体幹機能を4項目で簡便に確認する評価です。FACTは体幹機能をより実用的・臨床的に整理したい場面で使いやすい評価です。
Q. TCTとTISの違いは何ですか?
A. TCTは簡便な体幹機能評価です。TISは静的座位、動的座位、協調性などを下位項目で詳しく確認しやすい評価です。
Q. 再評価では何をそろえるべきですか?
A. ベッド環境、足底条件、支持物、介助者の立ち位置、安全上の変更点をそろえることが重要です。条件が変わった場合は記録に残してください。
Q. 自動計算ツールだけで評価を終えてよいですか?
A. 自動計算ツールは採点補助です。合計点だけでなく、各項目の所見、支持・把持・崩れ方、安全面を合わせて記録してください。
Q. TCTで満点でも体幹評価は不要ですか?
A. TCTは簡便な評価なので、満点でも動作の質や高いレベルの座位バランス課題が気になる場合は、FACTやTISなどで追加評価すると整理しやすくなります。
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TCTをチームで運用するなら、評価条件の共有が重要です
評価条件がそろわない、所見が残らない、再評価で比較しにくいといった課題は、個人の努力だけでは解決しにくいことがあります。
働き方や職場選びも含めて整理したい方は、PTキャリアガイドも参考にしてください。
まとめ|TCTは体幹機能を短時間で共有するための評価です
TCTは、寝返り、起き上がり、端座位保持を含む4項目で体幹機能を確認する評価です。各項目を0点・12点・25点で採点し、合計100点で整理します。
重要なのは、合計点だけを見ることではありません。支持・把持・代償・崩れ方・評価条件を一緒に記録することで、再評価や申し送りに活かしやすくなります。特に端座位保持の足底条件、12点と25点の境界、歩行予後をTCTだけで決めないことを意識して活用しましょう。
参考文献
- Collin C, Wade D. Assessing motor impairment after stroke: a pilot reliability study. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1990;53(7):576-579. doi:10.1136/jnnp.53.7.576 / PubMed
- Franchignoni FP, Tesio L, Ricupero C, Martino MT. Trunk Control Test as an early predictor of stroke rehabilitation outcome. Stroke. 1997;28(7):1382-1385. doi:10.1161/01.STR.28.7.1382
- Duarte E, Marco E, Muniesa JM, et al. Trunk Control Test as a functional predictor in stroke patients. J Rehabil Med. 2002;34(6):267-272. doi:10.1080/165019702760390356 / PubMed
- Hsieh CL, Sheu CF, Hsueh IP, Wang CH. Trunk control as an early predictor of comprehensive activities of daily living function in stroke patients. Stroke. 2002;33(11):2626-2630. doi:10.1161/01.STR.0000033930.05931.93 / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養、シーティング、摂食・嚥下、体幹機能評価

