意識レベルの評価(総論):JCS/GCS/ECS の使い分けと観察項目
意識レベル評価は「急変の入口」で使う技術です。まずは ABC とバイタルを押さえつつ、呼名 → 大声 → 刺激 → 反応の段階をそろえて観察し、同条件・同刺激で比較できる形に整えます。
本稿は総論として、ベッドサイドの評価フロー、 JCS / GCS / ECS の使い分け、意識以外に同時に見る観察項目、記録の型、よくある失敗( OK / NG )までを 1 本にまとめます。
最短導線(関連ページ)
評価フロー(ベッドサイドの基本手順)
現場の詰まりどころは「何から見るか」と「刺激条件がバラバラになる」ことです。順番と刺激を固定すると、再評価での比較が一気にラクになります。
以下は病棟〜在宅まで共通の最短フローです(実施できない項目は “未評価” と明示し、状況と理由もセットで共有します)。
- 一次確認:気道・呼吸・循環( ABC )と外傷の有無。 SpO₂ ・血圧・脈拍・体温、必要時は血糖。
- 呼名 → 大声 → 刺激:普通声 → 大声 → 痛み刺激(例:爪床圧迫)へ段階的に。
- スケールで記録:施設の SOP に従い JCS または GCS (必要時 ECS を併用)で速やかに記録。
- 意識以外の同時観察:瞳孔・対光反射、左右差、呼吸パターン、けいれん、麻痺、外傷部位。
- 再評価サイクル:同条件・同刺激で反復し、変化(悪化/改善)を追える形で残す。
| 項目 | ポイント | 記録例 |
|---|---|---|
| 部位 | 外傷部位は避け、評価者間で再現しやすい部位を選ぶ | 爪床圧迫(右手第 2 指) |
| 強さ | 必要最小限で短時間。反応が出たら深追いしない | 約 2–3 秒で反応確認 |
| 段階 | 呼名 → 大声 → 刺激の順番を崩さない | 普通声 × → 大声 × → 刺激で逃避 |
スケール選択:JCS/GCS/ECS をどう使い分ける?
結論は「施設の共通言語を軸にしつつ、場面に合う表現力を足す」です。国内では JCS が速く、 GCS は国際標準で詳細、 ECS は JCS の運用感を保ちながら表現力を補います。
大事なのは “合計点の見た目” より、刺激条件と反応の根拠が残ることです(例:呼名で開眼/痛みで逃避/定位など)。
| スケール | 強い場面 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| JCS | 一次評価を速く共有したい | 短時間で分類しやすい | 刺激条件の統一がないとブレやすい |
| GCS | 外傷・救急/経時変化を詳しく追う | E/V/M で反応を分解できる | 挿管・失語などで V が評価できないことがある |
| ECS | 深昏睡域の変化を拾いたい/ JCS の運用で表現力を上げたい | 覚醒の定義を広げ、Ⅲ 桁の表現力が高い | 施設内の共有ルール(略記・刺激)が必要 |
補足:意識低下が「鎮静(深さ)」や「せん妄(注意・認知の揺れ)」と混ざる場面があります。意識スケールだけで完結させず、必要に応じて鎮静・せん妄の評価( RASS / CAM-ICU / ICDSC )も併記できると、チーム内の解釈が揃いやすくなります。
JCS(Japan Coma Scale)の要点
JCS は 3 群(Ⅰ:刺激なし/Ⅱ:刺激で覚醒/Ⅲ:刺激しても覚醒しない)で捉えると判断が速くなります。一次評価では “大分類をまず決める” のがコツです。
記録は数値だけでなく、可能なら「どの刺激で反応したか」を添えると、再評価での比較が安定します。詳細手順は JCS の評価方法 にまとめています。
| 群 | 覚醒レベル | 臨床イメージ | 記録例 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | 刺激なしでも覚醒 | 清明ではないが起きている | JCS 1–3 |
| Ⅱ | 刺激で覚醒 | 呼名/痛み刺激で開眼する | JCS 10–30 |
| Ⅲ | 刺激しても覚醒しない | 開眼が得られない領域 | JCS 100–300 |
GCS(Glasgow Coma Scale)の要点
GCS は E(開眼)・ V(言語)・ M(運動)を分けて記録します。合計点だけだと情報が落ちるため、 E/V/M を必ず併記するのが実務上のコツです。
挿管や重度失語などで V が評価できないときは、施設ルールに沿って “未評価” を注記し、 E と M を確実に残します。詳細手順は GCS の評価方法 にまとめています。
| 要素 | 点数範囲 | 観点(要約) | メモ例 |
|---|---|---|---|
| E(開眼) | 1–4 | 自発/呼名/痛み/なし | E3 |
| V(言語) | 1–5 | 会話〜発声なし | V4(または V=NT ) |
| M(運動) | 1–6 | 命令〜無反応(定位/逃避を含む) | M5 |
| 重症度 | 合計点 | 臨床での扱い(例) |
|---|---|---|
| 軽症 | 14–15 | 経時的再評価で変化を拾う |
| 中等症 | 9–13 | 原因検索とモニタリングを強める |
| 重症 | 3–8 | 気道・循環の優先管理を検討する |
ECS(Emergency Coma Scale)の要点
ECS は JCS の枠組みをベースにしながら、「覚醒」の定義を 開眼・発語・合目的動作のいずれかへ拡張し、Ⅲ 桁(深昏睡域)をより細かく表現できる設計です。
JCS の運用感を保ちつつ、深い領域の “悪化/改善” を拾いたい場面で強い武器になります。Ⅲ 桁 5 段階や記録例は ECS の評価方法 に整理しています。
| 領域 | 要点 | 臨床メリット |
|---|---|---|
| 覚醒の定義 | 開眼・発語・合目的動作のいずれか | 「開眼のみ」頼りになりにくい |
| Ⅰ・Ⅱ 桁 | JCS に近い運用で整理 | 判断が速く、再評価がそろう |
| Ⅲ 桁 | 深昏睡域を細分化 | 経時変化の検出力が上がる |
観察項目:意識以外で同時に見る 6 点
意識レベルは “単独” で見ると、背景の見立てが遅れやすくなります。意識が落ちた要因(低酸素、循環不全、頭蓋内病変など)を示す所見を同時に拾うほど、共有の精度が上がります。
最低限、以下の 6 点は「毎回セット」でそろえると、急変時の情報が整いやすくなります。
| 順 | 項目 | 見るポイント | 次アクション |
|---|---|---|---|
| 1 | SpO₂ /呼吸 | 低酸素、努力呼吸、呼吸数の異常 | 体位・酸素・医療者共有 |
| 2 | 血圧/脈拍 | 低血圧、徐脈/頻脈、不整 | 循環評価、原因検索 |
| 3 | 瞳孔・対光反射 | 左右差、散大、固定 | 緊急共有(神経学的悪化) |
| 4 | 左右差(運動・感覚) | 片麻痺、偏倚、反応差 | 脳血管障害を疑う共有 |
| 5 | けいれん/異常運動 | 発作様、ミオクローヌス | 周囲の整理と目撃情報の集約 |
| 6 | 外傷の有無 | 頭部打撲、出血、疼痛 | 二次障害の評価を優先 |
現場の詰まりどころ/よくある失敗(OK/NG 早見)
「評価はしたのに伝わらない」原因の多くは、刺激条件と根拠が残っていないことです。逆に、同じ条件で反復できる情報にすると、チームの判断が速くなります。
新人さんがつまずきやすい典型パターンを OK / NG で固定します。
この “詰まり” が繰り返されるときは、個人の努力というより教育体制(急変時の標準手順・指導・振り返り)がボトルネックになっていることが多いです。現場の条件を点検するなら、面談準備チェック(無料)で「確認したい項目」を先に言語化しておくと、情報収集がブレにくくなります。
| NG | なぜ問題? | OK(修正) | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 合計点だけを書く | E/V/M の内訳が落ち、変化の理由が追えない | E/V/M を併記する | 例: GCS 11(E3V3M5) |
| 刺激が毎回違う | 改善/悪化なのか “条件差” なのか分からない | 部位と強さを固定する | 爪床圧迫などで統一 |
| V を無理に点数化 | 挿管・失語で誤評価になりやすい | 未評価を注記して共有 | 例: V=NT を明示 |
| 意識だけ見て終わる | 低酸素・循環不全・神経悪化を見逃す | バイタル+瞳孔+左右差をセット化 | 「 6 点セット」でルーチン化 |
記録の型:変化を追える “短文テンプレ”
記録は「結論」より「根拠」が価値になります。おすすめは、刺激条件 → 反応(スケール) → 同時所見(呼吸・循環・瞳孔・左右差)の順に短文でそろえる型です。
テンプレを決めておくと、申し送りの漏れが減り、再評価が速くなります。
| 項目 | 書き方 | 例 |
|---|---|---|
| 刺激条件 | 声かけ → 大声 → 痛み刺激(部位・時間) | 普通声 ×、大声 ×、爪床圧迫(右第 2 指・ 2 秒) |
| スケール | JCS または GCS(E/V/M)または ECS | GCS 11(E3V3M5) |
| 同時所見 | SpO₂ /呼吸、 BP /脈拍、瞳孔、左右差など | SpO₂ 96%、 BP 120/70、瞳孔左右差なし、左上下肢反応弱い |
| 再評価 | 同条件で再評価(時間も) | 30 分後に同条件で再評価し推移を記録 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
挿管中や失語疑いの患者では、GCS の V(言語)をどう扱う?
発声が評価できない状況では “未評価” を注記し、 E と M を確実に残します。運用は施設ルールに従い、例としては「 V=NT 」を併記し、 E / M の内訳が分かる形で共有します。合計点だけにせず、同じ基準・同じ刺激で再評価できる形に整えるのが最優先です。
痛み刺激は、どこまで強くしていい?
刺激は短時間で、評価目的に必要な最小限にします。部位と強さを固定して再現性を高め、反応が出たら深追いしません。外傷部位は避け、評価後は同条件での再評価につなげます(施設の SOP を優先)。
JCS/GCS/ECS を “換算” して書いた方がいい?
原則は、施設の共通言語(採用スケール)で「同条件・同刺激」で経時変化を追える形に整えるのが先です。換算は目安として役立つこともありますが、刺激条件や併存所見が揃っていないと誤解を生みやすいので、まずは根拠(刺激と反応)を優先して残します。
意識が落ちたとき、意識スケール以外に何を “セット” で見る?
最低限は「呼吸・循環( SpO₂ /呼吸数、 BP /脈拍)」と「瞳孔・対光反射」「左右差(運動反応の差)」です。意識だけを見て終わると、低酸素や循環不全、神経学的悪化のサインを見逃しやすいので、 6 点セットをルーチン化すると共有が安定します。
次の一手
- 全体の地図に戻る:意識・鎮静・せん妄の評価ハブ
- 手順を標準化する: JCS の評価方法 / GCS の評価方法
- 深昏睡域の粒度を上げる: ECS の評価方法
参考文献
- Teasdale G, Jennett B. Assessment of coma and impaired consciousness. Lancet. 1974;2(7872):81–84. doi: 10.1016/S0140-6736(74)91639-0
- Takahashi C, Okudera H, et al. A simple and useful coma scale for patients with neurologic emergencies: the Emergency Coma Scale. Am J Emerg Med. 2011;29(2):196–202. doi: 10.1016/j.ajem.2009.09.018. PubMed
- Reith FCM, Brennan PM, Maas AIR, Teasdale GM. Lack of Standardization in the Use of the Glasgow Coma Scale: Results of International Surveys. J Neurotrauma. 2016;33(1):89–94. doi: 10.1089/neu.2014.3843. PubMed
- 厚生労働省. ⑸ 入院時意識障害がある場合の JCS(診断群分類資料). PDF
- Majdan M, Steyerberg EW, et al. Glasgow Coma Scale motor score and outcome in traumatic brain injury. J Neurotrauma. 2015;32(19):1373–1381. doi: 10.1089/neu.2014.3645. PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


