疼痛・安全管理ハブ|強さ・生活影響・安全を同じ型で整理
疼痛評価は、痛みの強さだけを追うと生活で何が詰まっているかが見えにくく、生活影響だけを見ると負荷調整や安全判断がブレやすくなります。このページでは、痛みの強さ → 生活影響 → 行動・機能 → 安全管理を同じ順番で確認できるように整理します。
まずは、安静時・動作時・夜間など、どの痛みを定点にするかを決めます。そのうえで、生活で困っている場面と中止基準をセットにすると、再評価が比較しやすくなります。疼痛評価の全体像へ戻る場合は、評価ハブも確認してください。
最短の使い方
疼痛評価で迷ったら、最初は 痛みの強さ、生活影響、行動・機能、安全 の 4 つに分けます。痛みの強さは NRS や VAS、生活影響は PDAS や BPI 干渉、部位別 PROM、行動・機能は歩行距離や階段、睡眠などで確認します。
重要なのは、毎回聞き方を変えないことです。立ち上がり時、歩行時、夜間痛など、定点を 1 つ決めて同じ条件で追うと、再評価が比較しやすくなります。
| 領域 | まず見るもの | 記録のコツ | 次に読む |
|---|---|---|---|
| 強さ | NRS、VAS、BPI | 安静時・動作時・夜間など定点を固定する | 疼痛評価の基本 |
| 生活影響 | PDAS、BPI 干渉、部位別 PROM | 困っている生活場面を 1 つ添える | PDAS・PDI・RDQ 比較 |
| 行動・機能 | 歩行距離、階段、睡眠、仕事動作 | 点数ではなく、残った動作を言語化する | 運動器 PROM ハブ |
| 安全 | 中止基準、血圧、起立性低血圧 | 症状とバイタルをセットで残す | 血圧チェック手順 |
痛みの強さ
痛みの強さを短時間で追うなら、まずは NRS を 1 本化すると運用しやすいです。微小変化を細かく見たい場合は VAS、痛みの強さと生活への干渉を一緒に見たい場合は BPI が候補になります。
ただし、どの尺度を使うか以上に、いつ・どの動作で・どの条件で聞くかが重要です。評価のたびに聞き方が変わると、変化量が比較できなくなります。
生活影響
痛みの強さが下がっても、生活が広がらないことがあります。その場合は、生活障害や活動制限を確認する尺度を 1 つ足すと、退院支援、復職、外来フォローの説明がしやすくなります。
慢性痛では PDAS、腰痛では RDQ や ODI、膝・股関節では WOMAC、頚部痛では NDI など、目的と部位に合わせて選びます。
| 目的 | まず 1 つ選ぶ | 必要時に足すもの | 関連リンク |
|---|---|---|---|
| 慢性痛の生活障害 | PDAS | BPI 干渉、行動指標 | PDAS・PDI・RDQ 比較 |
| 腰痛の生活障害 | RDQ または ODI | PSFS | 腰痛 PROM の選び方 |
| 膝・股関節 OA | WOMAC | HOOS、KOOS | WOMAC / HOOS |
| 下肢の生活機能 | LEFS | 10 m 歩行、TUG | LEFS |
| 頚部痛 | NDI | NRS | NDI |
心理・行動
痛みが長引くほど、不安、抑うつ、恐怖回避、睡眠不良、活動量低下が痛みの体験を強めることがあります。ここでは診断ではなく、見逃さないための拾い上げとして扱います。
施設で心理面のスクリーニングを使う場合は、尺度を増やしすぎず、HADS、PHQ-9、SRQ-D などの役割を整理して 1 本化すると運用しやすくなります。
運動器所見
可動域制限を伴う痛みでは、end feel、誘発動作、荷重時痛、神経症状をそろえると仮説が立てやすくなります。再評価では、同じ角度、同じ負荷、同じ動作で確認することが重要です。
安全管理
疼痛が強い日は、運動量が落ちるだけでなく、血圧変動、起立性低血圧、過換気、疲労、恐怖回避が重なることがあります。負荷を上げる前に、中止基準と再開条件を共有しておくと判断が揃いやすくなります。
目的別の最小セット
疼痛評価は、疾患や場面ごとに最小セットを決めておくとチーム共有が安定します。すべてを毎回実施するのではなく、強さ、生活影響、行動・機能、安全を 1 つずつ選びます。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 場面 | 強さ | 生活影響 | 行動・機能 | 安全 |
|---|---|---|---|---|
| 急性痛 | NRS(安静・動作時) | BPI 干渉 | 歩行距離、階段、体位変換 | 中止基準、血圧 |
| 慢性痛 | NRS(誘発動作・夜間) | PDAS | 活動量、睡眠、価値ある活動 | 中止基準、起立性低血圧 |
| 腰痛 | NRS(動作時) | RDQ または ODI | 座位耐久、仕事動作、歩行 | 神経症状、危険サイン |
| 膝・股関節 OA | NRS(荷重時) | WOMAC、HOOS、KOOS | TUG、階段、6 分歩行 | 腫脹、熱感、全身所見 |
| 頚部痛 | NRS(頚部運動) | NDI | 作業耐久、生活動作 | 神経学的徴候 |
記録テンプレ
疼痛は、点数だけを残しても次の介入が決まりません。スコア、変化量、残った生活場面を 1 行で残すと、チーム共有と再評価がしやすくなります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 時点 | 痛みの強さ | 生活影響 | 残った生活場面 |
|---|---|---|---|
| 初回 | 安静 2 / 動作時 7(立ち上がり) | PDAS 18 | 外出が怖く 1 日の歩行が 200 m 未満 |
| 2 週 | 安静 2 / 動作時 5(同条件) | PDAS 12(Δ -6) | 買い物は可能。長時間座位で増悪が残る |
現場の詰まりどころ
疼痛評価で詰まりやすいのは、尺度が悪いからではなく、定点と条件がそろっていないことです。どの痛みを、いつ、どの動作で聞くかを固定すると、再評価が比較できるデータになります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| NG | なぜ困る? | OK | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| NRS の聞き方が毎回変わる | 再評価が比較できない | 安静・動作時・夜間など定点を決める | 例:立ち上がり時 NRS 7 |
| 強さだけで終わる | 生活の詰まりが共有されない | PDAS、BPI 干渉、部位別 PROM を 1 つ足す | 困る動作を 1 個添える |
| 途中で尺度を変える | 変化量が比較できない | まず 4〜6 週は同じセットで追う | 変更時は理由を 1 行残す |
| 安全基準が曖昧 | 中止判断が人で揺れる | 中止基準と血圧手順を共有する | 症状とバイタルをセットで書く |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. NRS は安静時と動作時のどちらを記録すべきですか?
A. 目的で決めます。負荷調整や生活動作の改善を見たい場合は動作時を軸にし、慢性痛で睡眠や不安が関係する場合は夜間痛や代表的な誘発動作を定点にします。迷ったら、安静時と代表動作 1 つで固定します。
Q2. NRS は下がったのに PDAS や RDQ が下がりません。
A. 痛みの軽減と生活機能の回復は同時に進まないことがあります。回避行動、活動量低下、睡眠、不安、仕事や家庭の負荷が残っている可能性があります。どの生活場面が残っているかを 1 行で添えると介入の焦点が合いやすくなります。
Q3. VAS と NRS はどちらを使えばよいですか?
A. 忙しい臨床では NRS を 1 本化すると運用しやすいです。VAS を使う場合は、同じ用紙、同じ説明、同じ測定方法で継続し、mm 単位の測定まで固定できると比較しやすくなります。
Q4. 痛みが強い日に運動をどこまで行ってよいですか?
A. まず中止基準を共有し、症状とバイタルをセットで確認します。その日の最低ラインを決め、低強度、分割、休息を前提にします。痛みだけでなく、血圧、めまい、息切れ、疲労も合わせて判断します。
Q5. 心理面は PT がどこまで扱えばよいですか?
A. 診断ではなく、見逃さないための拾い上げとして扱います。不安や抑うつが強い場合は、見通しの共有、負荷設定、医師・心理職・多職種との連携に分けて対応します。
次の一手
疼痛評価は、まず定点を決めて同じ条件で回すことが重要です。次に、生活影響と安全管理を 1 つずつ足してください。
- 強さを固定する:疼痛評価のやり方(NRS / VAS / BPI)
- 生活影響を選ぶ:PDAS・PDI・RDQ の違い
- 部位別 PROM を選ぶ:運動器 PROM ハブ
- 安全管理を整える:中止基準 / 血圧チェック手順
参考文献
- Farrar JT, Young JP Jr, LaMoreaux L, Werth JL, Poole RM. Clinical importance of changes in chronic pain intensity measured on an 11-point numerical pain rating scale. Pain. 2001;94(2):149-158. doi:10.1016/S0304-3959(01)00349-9
- Dworkin RH, Turk DC, Farrar JT, et al. Core outcome measures for chronic pain clinical trials: IMMPACT recommendations. Pain. 2005;113(1-2):9-19. doi:10.1016/j.pain.2004.09.012
- Cleeland CS, Ryan KM. Pain assessment: global use of the Brief Pain Inventory. Ann Acad Med Singap. 1994;23(2):129-138. PubMed:8080219
- Arimura T, Komiyama H, Hosoi M. Pain Disability Assessment Scale(PDAS): A Simplified Scale for Clinical Use. Japanese Journal of Behavior Therapy. 1997;23(1):7-15. doi:10.24468/jjbt.23.1_7
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

