線分二等分試験( USN )のやり方と判定・用紙
線分二等分試験( Line Bisection Test )は、半側空間無視( USN )の有無を “ざっくり見る” だけの検査ではありません。真の中心からの偏位を mm / % と方向で残し、同じ条件で再評価できるようにするための机上テストです。このページで決めるのは、線分二等分だけをどう実施し、どう記録し、どう解釈するかです。
一方で、USN 全体のスクリーニング順や ADL での危険場面、退院判断まではこのページで広げすぎません。親記事と兄弟記事に役割を分けつつ、ここでは用紙位置・姿勢・教示・符号を固定し、カルテに残せる形にすることへ絞って整理します。
評価の型は、個人の努力だけで身につくとは限りません。教育体制や相談相手、教材への触れやすさが不足していると、観察・記録・再評価は回りにくくなります。
PT キャリアガイドを見る1 分でわかる結論
- 線分の中心に短い縦線を引いてもらい、真の中心からの偏位を測ります。
- 記録は ① 偏位量( mm / % )、② 方向(右+/左−)、③ 条件セット の 3 点が最小です。
- 判定で迷ったら、方向の一貫性と条件ズレを先に確認します。
- 線分二等分だけで断定せず、必要に応じて他課題や ADL 観察と整合を取ります。
線分二等分試験のやり方( 1〜2 分で標準化 )
- 準備:A4 用紙、筆記具、机上環境を用意します。眼鏡が必要なら装着します。
- 姿勢:骨盤を椅子の奥に入れ、体幹正中を机へ向けます。可能なら両足接地をそろえます。
- 用紙位置:まずは体幹正中に置きます。左右にずらす運用をするなら、何 cm 動かしたかを固定します。
- 教示:「この線のちょうど真ん中だと思うところに、短い縦線で印をつけてください。」のように短い定型文で統一します。
- 練習:練習は 1 本だけにし、理解が不十分なら再説明します。以後の言い方は変えません。
- 本試行:施設で決めた本数・線長・配置で実施し、偏位を記録します。
大事なのは「毎回同じやり方」にそろえることです。検者が変わっても比較できるよう、条件セットをカルテに固定で残します。
判定で残すべき 3 点( mm / % / 方向 )
まずは図版で全体像をつかむと、下の表と PDF の使い分けがわかりやすくなります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 要素 | 何を残す? | 理由 | 記載例 |
|---|---|---|---|
| 偏位量 | 真の中心から標記まで( mm ) | 経時変化を追いやすい | 平均 + 8 mm |
| 方向 | 右+/左− など符号で統一 | 左右の読み違いを防ぎやすい | 右偏位(+) |
| 条件セット | 姿勢・用紙位置・利き手・眼鏡・覚醒 | 再評価の比較前提をそろえやすい | 座位、正中、右手、眼鏡あり |
偏位量の測り方と計算( mm と % )
偏位( mm )は、実線両端の真の中心から患者の標記までの距離です。右偏位を(+)、左偏位を(−)のように符号を固定すると、記録と再評価が安定します。
- 符号つき平均:方向の一貫性をみる
- 絶対値平均:ズレの大きさをみる
% 表記は、線長が混在する運用で便利です。
計算式:偏位( % )= 偏位( mm )÷ 線分長( mm )× 100
例:線分長 200 mm、偏位 + 8 mm → 8 ÷ 200 × 100 = 4 %(右)
解釈のコツ( USN / 半盲 / 理解・運動要因 )
線分二等分の偏位は USN の重要所見になり得ます。ただし、半盲・教示理解・上肢運動でも “それっぽく見える” ことがあります。解釈は、偏位量だけでなく「方向が一貫するか」「他所見と合うか」で整理するとブレにくくなります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 観察 | USN を疑いやすい | 別要因の可能性 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 方向が一貫 | 同方向へ安定して偏位 | 試行ごとに方向がばらつく | 条件セットを確認し、試行数を固定 |
| 探索の偏り | 左側への注意が薄い所見が併存 | 視野欠損や見えづらさが主 | 視野・眼鏡・照明、他課題で整合 |
| 教示理解 | 教示は理解できている | 失語・注意低下で理解が不安定 | 短文化、練習 1 本、再現性を優先 |
| 運動の影響 | 上肢運動はおおむね安定 | 振戦・失調・巧緻低下で線がぶれる | 前腕支持、筆記具変更、所見に併記 |
品質管理(条件ズレを潰す:OK / NG )
線分二等分は “測り方” よりも、条件ズレで比較不能になりやすい検査です。運用を回すための最小ポイントだけ整理します。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 詰まりどころ | NG(起きがち) | OK(最小の修正) | 記録に残す一言 |
|---|---|---|---|
| 用紙位置 | 毎回置き方が違う | 正中 or 右/左にずらす cm を固定 | 用紙:正中 |
| 姿勢 | 体幹が回旋したまま | 骨盤・体幹正中を先に作る | 座位:正中 |
| 教示 | 検者で言い方が違う | 短い定型文で統一 | 教示:統一 |
| 学習効果 | 同じ用紙を頻回に使う | 再評価間隔と用紙を固定する | 再評価:同条件 |
現場の詰まりどころ/よくある失敗( OK / NG 早見 )
線分二等分は「数値が出る」ぶん、条件ズレがあると誤解釈が起きやすい検査です。チーム共有では “偏位量” と同じくらい、条件セットを残すことが大切です。先に戻るなら 条件ズレのチェック と 記録テンプレ を見直してください。机上では軽くても生活場面で困りが強いときは、関連:USN の退院判断と危険場面の見方 もあわせて確認するとつながります。
※スマホでは表を左右にスクロールできます。
| 失敗 | 起きること | 修正(最小) | 所見の書き方 |
|---|---|---|---|
| 偏位だけで断定 | 半盲や理解で混線する | 他課題・観察所見と整合を確認 | 総合所見として記載 |
| 符号が統一されない | 左右が逆に読まれる | 右+/左− を固定 | +(右)で統一 |
| 用紙位置が毎回違う | 再評価が比較不能になる | 正中基準、ずらすなら cm 固定 | 用紙:正中 |
| 運動で線がぶれる | 偏位が過大に見える | 前腕支持、筆記具変更、所見に併記 | 運動影響あり |
判定・記録テンプレ(コピペ可)
カルテに残すための最小テンプレです。偏位( mm )+方向+条件セットが入っていれば、チーム共有が崩れにくくなります。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 条件 | 座位、体幹正中、用紙正中、右手、眼鏡あり、覚醒良好 |
| 結果(符号つき平均) | 平均 + 8 mm(右偏位) |
| 結果(絶対値平均) | 平均 8 mm |
| 解釈 | 右偏位が一貫。観察所見とあわせて USN を疑う。 |
| 次の一手 | 同条件で再評価。必要に応じて他課題・ADL 観察へつなぐ。 |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
線分の長さや本数は、毎回変えてもいいですか?
基本は運用で固定するのがおすすめです。線長や本数が変わると、再評価の比較が難しくなります。用紙レイアウトと条件セットを決めて、同じ形で回す方が経時変化を説明しやすくなります。
検査用紙と記録用紙は、分けた方がいいですか?
分ける方が使いやすいです。患者に提示する紙は余計な情報を減らし、検者側は条件セットや偏位量、所見を記録できる紙を別にした方が、実施と再評価が安定します。
右+/左− の符号は、なぜ必要ですか?
方向の一貫性が “所見の軸” になるためです。符号を揃えると、左右が逆に読まれる事故が減り、カルテの再現性が上がります。
偏位が小さいのに、生活場面では明らかに困っています。どう扱いますか?
机上テストが軽度でも、生活場面で悪化することがあります。観察所見や他課題とあわせて総合判断し、「机上」と「ADL」のズレを所見として残すと安全です。
ダウンロード(検査用紙・記録用紙 PDF )
このページでは、患者提示用の検査用紙と、検者記録用の記録用紙を分けて使えるようにしています。同条件で再評価したいときは、用紙を固定して運用すると比較しやすくなります。
検査用紙 PDF(患者提示用)
患者に提示して、そのまま線分二等分を実施しやすいシンプル版です。
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記録用紙 PDF(検者記録用)
偏位量、方向、条件セット、再評価メモまでまとめて残せる記録用紙です。
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次の一手(次に読む)
- 全体像に戻る:半側空間無視( USN )評価| 5〜10 分フロー
- 机上課題を並べて使う:抹消課題のやり方と判定【 USN ・注意障害 】
参考文献
- Schenkenberg T, Bradford DC, Ajax ET. Line bisection and unilateral visual neglect in patients with neurologic impairment. Neurology. 1980;30(5):509-517. doi: 10.1212/WNL.30.5.509
- Wilson B, Cockburn J, Halligan P. Development of a behavioral test of visuospatial neglect. Arch Phys Med Rehabil. 1987;68(2):98-102. PubMed: 3813864
- Ferber S, Karnath HO. How to assess spatial neglect-line bisection or cancellation tasks? J Clin Exp Neuropsychol. 2001;23(5):599-607. doi: 10.1076/jcen.23.5.599.1243
- Kwon S, Park W, Kim MY, Kim JM. Relationship Between Line Bisection Test Time and Prognosis of Hemispatial Neglect in Stroke Patients: A Prospective Pilot Study. Ann Rehabil Med. 2020;44(4):292-300. doi: 10.5535/arm.19112
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


