線分二等分試験の評価と結果の書き方【USN】

評価
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線分二等分試験のやり方と判定(USN)

線分二等分試験は、USN(半側空間無視)の偏倚を短時間で定量化できる中核テストです。本稿では、臨床で迷いにくい手順・判定指標・計算メモ・所見テンプレを 1 ページに集約しました。評価は毎回同じ条件で実施し、偏位量(mm / %)と方向を安定して記録することで、経時変化や他の無視検査との関係が見えやすくなります。

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実施手順(1–2 分)

  1. 用紙・環境:A4 横置き、中央に水平線(例:200 mm)。視距離 35–40 cm、正面座位で机と体の向きを合わせます。
  2. 教示(統一):線の真ん中に短い縦線を引いてください。」と 1 回だけ伝え、練習・誘導は行いません。
  3. 実施:通常は利き手で 1 本。必要に応じ 2–3 本試行し、平均偏位最大偏位を残します。
  4. 記録:真の中心からの距離(mm、+=右/−=左)と偏位%、姿勢・用紙条件・使用手を併記します。
  5. 解釈:恒常的に一方向へ偏る場合は USN を示唆します。抹消試験・時計描画・DSS など他課題との一貫性を必ず確認します。

評価シート:テスト用紙と記録用紙を用意しておくと、病棟・外来・訪問でのルーチン検査として回しやすくなります(下の「ダウンロード」参照)。

判定指標(最小 3 点)

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線分二等分試験:判定の軸と記録の要点
指標 目的 測り方/記録 所見例 注意
平均偏位(mm / %) 偏倚の中心傾向 複数試行の平均(+右/−左) +8 mm(4.0 %) 線の長さは毎回固定する
最大偏位(mm) 極端値の把握 試行中の最大距離 +12 mm 外れ値の理由(集中低下など)も併記
方向の一貫性 USN 示唆の強さ 全試行で符号が揃うか 全試行で右向き 併存(半盲・失行・注意障害)に注意

偏位量の計算メモ(コピペ可)

式:偏位(mm)=受検者が引いた印の位置 − 真の中心 / 偏位(%)= 偏位(mm) ÷ 線の長さ(mm) × 100

例:200 mm の線で中心から右へ 12 mm の場合
線の長さ 中心からの距離 偏位(mm) 偏位(%) 符号
200 mm 右 12 mm +12 6.0 % 右=+/左=−

記録テンプレ:「線分二等分試験:平均偏位 +8 mm(最大 +12 mm)、方向=右」といった形で、線の長さとセットで記載しておくとカルテ上も分かりやすくなります。

品質管理(落とし穴と対策)

  • レイアウト固定:線の長さ・太さ・用紙の向きが毎回違うと、同じ偏位でも数値が比較できません。院内で評価用紙を統一しておきます。
  • 姿勢 / 視線:体や頭が右に傾いていると「見かけ上の中心」が右にずれます。実施前に正面座位と紙の傾きゼロを必ず確認します。
  • 試行数: 1 本だけだと、疲労や理解不十分によるブレを拾ってしまいます。2–3 本実施し、平均と最大の両方を残すと安心です。
  • 課題横断:線分二等分試験だけで USN の有無を決めるのではなく、抹消試験・時計描画・行動観察とセットで解釈します。
  • 半盲との鑑別:同じ右偏倚でも、視野検査や頭位・眼球運動の情報を合わせて、半盲主体か USN 主体かを整理することが大切です。

現場の詰まりどころ(よくある悩み)

  • 「カットオフはいくつで見る?」問題:文献によって線分二等分試験のカットオフ(例:6–10 mm など)はばらつきがあります。「何 mm 以上なら USN」と機械的に扱うより、左右差・方向の一貫性・他課題との整合性を含めた判断が重要です。
  • 結果の書き方が定まらない:「やや右寄り」「少し偏位あり」といった主観的表現だけでは再評価や引き継ぎのときに困ります。偏位 mm / % と方向、線の長さをセットで書くひな形をチームで共有しておきましょう。
  • 点数化にこだわりすぎる:線分二等分試験は「線分二等分試験 点数」そのものよりも、偏位の大きさと安定性、他の行動評価との組み合わせで意味が出ます。スコア単独でのラベリングは避けましょう。
  • 半側無視が軽いと「正常」とみなしてしまう:軽度 USN や環境依存の USN では、線分二等分試験だけでは見逃されることがあります。移動中のぶつかり、食事場面、着衣など ADL 場面での偏りも必ずチェックします。

カットオフや偏位量の扱いについては、下の「よくある質問」で補足しています。

判定・記録の型(コピペ可)

線分二等分試験 所見テンプレ(成人)
項目 所見例
平均偏位 +8 mm(4.0 %)/線分長 200 mm
最大偏位 +12 mm
方向の一貫性 3 / 3 試行で右向き偏倚
補足 正面座位・用紙条件は同一、上肢失調の影響は目立たず
まとめ 右向き偏倚が恒常的。線分抹消・時計描画でも右無視傾向を認め、USN を示唆。

カルテには「線分二等分試験 評価」の枠をあらかじめ作っておくと、転棟・退院時の情報共有もしやすくなります。

よくある質問(Q&A)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

線の長さや太さは毎回同じにすべき?

はい。長さ・太さ・用紙の向きを固定し、再評価でも同条件にします。条件差は見かけ上の偏位量や pseudo-neglect(健常者のわずかな左偏倚)に影響し、経時比較が難しくなります。

線分二等分試験のカットオフ(判定基準)は?

文献や対象によって基準は異なり、200 mm の線で右へ 6–10 mm 程度をカットオフとする報告が多いとされています。ただし「線分二等分 試験 カットオフ」はあくまで目安であり、偏位量+方向の一貫性+他検査(BIT・抹消・時計描画など)を合わせて解釈することが重要です。高齢健常者でもわずかな右偏位は起こり得る点に注意します。

mm と % はどちらで残す?

院内標準に合わせますが、再掲や他院共有を考えると、mm と % の併記(例:+12 mm / 6.0 %)が無難です。研究目的では % の方が線分長の違いを補正でき、臨床では直感的な mm 表記が好まれることが多い印象です。

左利き・上肢協調障害の影響は?

描記能力や利き手の違いの影響を受けます。必要なら別日に対側手での追試を検討しますが、それだけで判定を変えるのではなく、他課題や ADL 観察との一貫性で総合判断します。

再評価の本数と間隔は?

学習効果を避けるため、1 評価日に 1–2 本程度に留め、日を改めて再評価します。急性期では数日〜 1 週間ごと、回復期以降はリハビリ方針の見直しタイミング(例:カンファレンス前)に合わせると運用しやすくなります。

ダウンロード

おわりに

線分二等分試験も、臨床では「安全の確保 → 標準化した教示 → スケール記録 → 他検査との統合 → 再評価」というリズムで回すことで、USN の変化や ADL への影響が見えやすくなります。抹消試験・時計描画・実場面観察と組み合わせて評価し、必要に応じて prism 適応や視覚探索訓練などの介入につなげていきましょう。

評価スキルを活かすには、教育体制やチーム連携が整った職場を選ぶことも大切です。もし「今の環境で評価やリハビリの腕を伸ばせているか不安…」という場合は、面談準備チェック&職場評価シートを活用しつつ、自分に合った職場条件を整理してみてください。

参考文献

  1. Schenkenberg T, Bradford DC, Ajax ET. Line bisection and unilateral visual neglect in patients with neurologic impairment. Neurology. 1980;30(5):509–517. doi:10.1212/WNL.30.5.509. PubMed
  2. Wilson BA, Cockburn J, Halligan PW. Development of a behavioral test of visuospatial neglect. Arch Phys Med Rehabil. 1987;68(2):98–102. PubMed
  3. Williams LJ, Kernot J, Hillier SL, Loetscher T. Spatial Neglect Subtypes, Definitions and Assessment Tools: A Scoping Review. Front Neurol. 2021;12:742365. doi:10.3389/fneur.2021.742365. DOI
  4. Ota H, et al. Validity and Reliability Study of a Line Bisection Task on Tablet Personal Computer. Asian J Occup Ther. 2024;20(1):142–148. doi:10.11596/asiajot.20.142. DOI

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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