ハムストリングストレーニングは「膝屈曲」と「股関節伸展」で選びます
筋トレメニューを部位別に整理し、鍛えたい筋や改善したい動作から必要な記事へ進めます。
ハムストリングスを鍛えるときは、立位・座位・ベッド上の順で姿勢を並べるよりも、膝屈曲を狙うのか、股関節伸展を狙うのかを先に決めると整理しやすくなります。レッグカール、ヒップヒンジ、ブリッジはすべて「太もも裏の筋トレ」として一括りにされやすいですが、運動課題は同じではありません。
この記事では、PT・OTが臨床で使いやすいように、ハムストリングストレーニングの種目選択、フォームが崩れたときの見方、負荷調整の考え方をまとめます。結論は、目的に合う運動を選び、代償と反応を見ながら条件を調整することです。
膝屈曲系と股関節伸展系は目的が異なります
結論からいうと、膝を曲げる力を直接練習したいなら膝屈曲系、股関節伸展を含む動作を練習したいなら股関節伸展系を候補にします。どちらか一方が常に優れているわけではなく、何を改善したいかで選びます。
ハムストリングスは膝関節屈曲と股関節伸展に関与します。運動によって筋活動のパターンは異なるため、同じ「ハムストリングストレーニング」でも狙いは同一ではありません。一方で、筋活動研究だけで特定筋への選択性を強く断定せず、患者の筋力、症状、バランス、理解度、疾患特性も合わせて判断することが大切です。
| 運動パターン | 代表的な種目 | 選ぶ場面 | 主な確認点 |
|---|---|---|---|
| 膝屈曲系 | レッグカール、腹臥位・立位での膝屈曲 | 膝屈曲方向へ抵抗をかけたい | 骨盤回旋、体幹反動、可動域 |
| 股関節伸展系 | ヒップヒンジ、RDL系 | 股関節伸展を伴う運動課題を練習したい | 腰椎伸展、体幹反動、股関節から動けているか |
| 複合・導入 | ブリッジ | 比較的単純な条件で股関節伸展を反復したい | 骨盤回旋、腰椎伸展、殿筋を含めた運動パターン |
| 高負荷の膝屈曲系 | Nordic hamstring exercise | 十分な能力があり、高い膝屈曲負荷が目的となる場合 | 負荷の高さ、疼痛、代償、安全な実施環境 |

目的に合わせて種目を選びます
ハムストリングスの種目は多数ありますが、臨床では代表的な運動を使い分けられれば十分です。重要なのは、種目数を増やすことではなく、目的に対して必要な運動パターンを選ぶことです。
レッグカール|膝屈曲を直接練習したいとき
膝屈曲方向へ抵抗を加えたい場合は、レッグカール系が分かりやすい選択肢です。腹臥位、座位、立位など実施姿勢は変えられますが、姿勢そのものを難易度の順番として扱う必要はありません。
バランスに不安がある場合は安定した姿勢を選び、抵抗を上げる前に骨盤や体幹の反動が増えていないか確認します。立位で行う必要がなければ、無理に立位へ進める必要もありません。
ヒップヒンジ|股関節伸展パターンを練習したいとき
股関節伸展を含む運動を狙う場合は、ヒップヒンジ系を候補にします。股関節を屈曲・伸展しながら体幹を制御するため、単純な膝屈曲運動とは課題が異なります。
腰椎伸展や体幹の反動で動きを作っている場合は、抵抗を増やす前に可動域を小さくする、支持を追加する、股関節から動く感覚を確認するなどして条件を調整します。
ブリッジ|股関節伸展系の導入・複合課題として使う
ブリッジではハムストリングスだけでなく殿筋群なども働くため、ハムストリングスだけを単独で鍛える運動として扱う必要はありません。
一方、臥位で股関節伸展を反復できるため、立位でのヒップヒンジが難しい患者などで運動課題を単純化したい場合には選択肢になります。目的が膝屈曲筋力そのものであれば、レッグカール系を併用または選択したほうが整理しやすくなります。
Nordic hamstring exercise|高負荷が必要な対象で検討します
Nordic hamstring exerciseは、ハムストリングスに高い負荷を与えられる膝屈曲系種目の一つです。高い筋活動が報告されていますが、研究の多くは健常者やスポーツ領域を中心とするため、すべてのリハ患者の第一選択として固定する必要はありません。
高負荷種目を選ぶこと自体を目的にせず、対象者の能力、疼痛、理解度、安全性に合う場合に検討します。
フォームが崩れたら回数より先に条件を調整します
フォームの崩れが増えている状態で回数だけを達成しても、意図した運動課題から外れている可能性があります。まず、どこで代償が生じたかを確認し、抵抗・可動域・支持条件などを調整します。
| 見られる変化 | 確認すること | 調整例 |
|---|---|---|
| 体幹の反動が増える | 現在の抵抗や反復回数が高すぎないか | 抵抗、回数、可動域を調整する |
| 腰を反って股関節伸展する | 股関節から動けているか | 可動域を小さくし、ヒップヒンジを再確認する |
| 骨盤が回旋する | 左右差や抵抗量、支持条件 | 抵抗を下げる、支持を追加する |
| 後半だけ可動域が小さくなる | 疲労によるフォーム変化 | 反復数やセット間休息を調整する |
| 疼痛が出る・増える | 疼痛部位、出現角度、負荷、運動前後の変化 | 無理に継続せず条件を下げて再評価する |
「腰が動いたら失敗」のように一つの所見だけで判断するのではなく、運動目的から外れているか、症状が増えていないか、同じ条件で反復可能かを合わせて見ます。
負荷量は固定せず、目的と反応で決めます
一般的なレジスタンストレーニングでは、8〜12回程度反復できる負荷を用いる方法がよく知られています。ただし、臨床では低い負荷と多めの反復が適する場合もあり、同じ設定をすべての患者へ当てはめるものではありません。
そのため、ハムストリングストレーニングでも「8〜12回×2セット、週3〜5回」を固定値にはせず、目的、現在の筋力、症状、疲労、疾患、運動経験、他の運動量を含めて設定します。
進行・維持・調整はフォームと反応から決めます
以下は公式の判定基準ではなく、rehabilikunblogで負荷調整を整理するための実務上の考え方です。
| 方針 | 考える場面 | 調整候補 |
|---|---|---|
| 進行 | 狙ったフォームを保ち、症状や疲労の反応も許容できる | 抵抗、反復数、セット数、可動域などを段階的に調整する |
| 維持 | 現在の条件で目的に合った運動ができるが、十分な余裕はない | 同条件を継続し、再現性を確認する |
| 調整 | 代償が増える、可動域が保てない、症状が増える | 抵抗、反復数、可動域、支持条件、種目自体を見直す |
何をどの程度変えるかは患者ごとに異なります。回数だけを機械的に増やすのではなく、フォームと反応を見て次回条件を決めることが大切です。
記録は「種目・負荷・フォーム・反応・次回方針」を残します
ハムストリングストレーニングの記録は、実施した回数だけでなく、何を狙ってどの種目を選び、その条件でどう反応したかが分かる形にします。
- 種目と運動パターン:膝屈曲系/股関節伸展系
- 抵抗や支持条件
- 反復回数・セット数
- 可動域とフォーム
- 疼痛・疲労など運動前後の反応
- 次回に維持・進行・調整する内容
たとえば「レッグカール10回実施」だけでなく、「膝屈曲を目的にレッグカールを実施。後半に骨盤回旋が出現したため現条件を維持し、次回もフォームを再確認」のように、種目を選んだ理由と次回判断まで残すと再評価につなげやすくなります。
疼痛や全身状態の変化があれば、負荷調整より再評価を優先します
トレーニング中に新たな疼痛や明らかな症状増悪が生じた場合は、回数を達成することを優先せず、運動条件と患者状態を再評価します。
特に術後、急性期、循環器・呼吸器疾患、神経疾患などでは、ハムストリングスへの局所的な負荷だけで安全性を判断できません。疾患別の制限、医師指示、施設基準がある場合はそれらを優先してください。
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
膝屈曲系と股関節伸展系は両方行うべきですか?
必ず両方行う必要はありません。膝屈曲筋力を直接狙うのか、股関節伸展を含む動作を練習するのかによって選びます。必要であれば複数の運動パターンを組み合わせます。
ブリッジだけでハムストリングスを鍛えられますか?
ブリッジでもハムストリングスは働きますが、殿筋群なども関与する股関節伸展課題です。膝屈曲方向の筋力を直接練習したい場合は、レッグカール系など別の運動を検討します。
8〜12回できれば負荷を上げてよいですか?
回数だけでは決めません。フォーム、可動域、症状、疲労、患者の目的を確認します。一般的なレジスタンストレーニングでよく用いられる回数設定ではありますが、臨床では個別調整が必要です。
Nordic hamstring exerciseを最初から使うべきですか?
第一選択として固定する必要はありません。高い負荷をかけられる種目のため、対象者の能力と目的、安全性を確認したうえで選択します。低体力者や入院患者では、より調整しやすい種目が適する場合があります。
次の一手
まずは、膝屈曲を狙うのか、股関節伸展を狙うのかを決めてから種目を選んでください。そのうえでフォームと反応を確認し、次回に進行・維持・調整のどれが適切かを記録すると、負荷設定の再現性が高まります。
続けて読む:運動療法ハブ / 大腿四頭筋トレーニング
参考文献
- Bourne MN, Williams MD, Opar DA, Al Najjar A, Kerr GK, Shield AJ. Impact of exercise selection on hamstring muscle activation. Br J Sports Med. 2017;51(13):1021-1028. doi:10.1136/bjsports-2015-095739
- Sahinis C, Amiridis IG, Enoka RM, Kellis E. Differences in activation amplitude between semitendinosus and biceps femoris during hamstring exercises: a systematic and critical review with meta-analysis. J Sports Sci. 2025;43(11):1054-1069. doi:10.1080/02640414.2025.2486879
- Llurda-Almuzara L, Labata-Lezaun N, López-de-Celis C, Aiguadé-Aiguadé R, Romaní-Sánchez S, Rodríguez-Sanz J, et al. Biceps Femoris Activation during Hamstring Strength Exercises: A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(16):8733. doi:10.3390/ijerph18168733
- Paluch AE, Boyer WR, Franklin BA, Laddu D, Lobelo F, Lee DC, et al. Resistance Exercise Training in Individuals With and Without Cardiovascular Disease: 2023 Update: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. 2024;149(3):e217-e231. doi:10.1161/CIR.0000000000001189
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度など、医療従事者の実務に役立つ情報を発信しています。
現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。
保有資格
- 脳卒中認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級

