リハビリ診療記録は「目的」で整理する

制度・実務
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リハビリ診療記録は「目的」で整理すると書きやすい

リハビリの診療記録は、SOAP の型に当てはめるだけでは不十分です。大切なのは、計画書の目標に対して、今日のリハで何を確認・練習・修正したのかが伝わることです。

本記事では、SOAP を否定せずに、計画書の目標と日々の記録をつなげる「目的連動型のリハ記録」の考え方を整理します。新人教育、監査対策、多職種共有、目標変更時の説明にも使いやすい記録の型として活用してください。

記録と計画書のつながりを整理したい方へ

リハ計画書、説明日、監査対策まで含めて整理すると、日々の記録の目的が見えやすくなります。

計画書と記録の監査対策を見る

関連:リハ実施計画書の説明日・説明者の記録

診療記録が書きづらい理由は「目的」が曖昧だから

リハ記録が書きづらくなる原因は、SOAP そのものが難しいからではなく、介入の目的が曖昧なまま書き始めていることにあります。「歩行練習を実施」「ROM 訓練を実施」だけでは、何の目標に向けた介入なのかが伝わりにくくなります。

令和 6 年度の診療報酬改定や介護報酬改定でも、リハビリテーション実施計画書、リハビリテーション計画書、LIFE 関連様式など、目標・評価・見直しを多職種で共有する流れは重要です。そのため日々の記録でも、計画書の目標とその日の介入が切れないように残すことが実務上のポイントになります。

まず「本日の目的」を 1 行で決める

記録を書く前に、まず「今日のリハは何を進める日か」を 1 行で決めます。目的が明確になると、観察すべき所見、実施内容、評価、次回方針が自然につながります。

目的連動型リハ記録で使いやすい「本日の目的」の例
計画書の目標 本日の目的 観察するポイント
トイレ移動を見守りで行う 方向転換時のふらつきと介助量を確認する 体幹動揺、足部位置、一時停止の有無
病棟内歩行の安全性を高める 歩行中の疲労と速度低下を確認する 歩行距離、息切れ、休憩の要否
更衣動作の自立度を高める 上衣操作時の座位保持と上肢操作を確認する 座位バランス、上肢到達、介助場面

計画書には「歩行自立」「ADL 向上」「在宅復帰」などの目標が書かれます。しかし日々の記録では、その大きな目標をその日の介入に落とし込む必要があります。

たとえば「屋内歩行を見守りで行う」という目標がある場合、毎回「歩行練習を実施」と書くのではなく、「今日は方向転換」「今日はトイレ動線」「今日は疲労時の安全性」のように、目標達成に必要な要素へ分けて記録します。これにより、リハの継続理由や目標変更の根拠も説明しやすくなります。

目的連動型リハ記録の流れ
計画書の目標から次回方針までを一連でつなげる「目的連動型リハ記録」の考え方

SOAP は目的を整理した後に使う

SOAP は便利な記録形式ですが、SOAP を埋めること自体が目的になると、A が書けない、P が毎回同じになる、O が実施内容の羅列になるという問題が起こりやすくなります。

おすすめは、SOAP の前に「本日の目的」を置くことです。目的が決まれば、O には目的に関係する観察所見を残し、A には目的に対する解釈を書き、P には次回の確認点をつなげやすくなります。

記録例:実施内容だけの記録から目的連動型へ

目的連動型の記録では、「何をしたか」だけでなく、「何のために行い、どうだったか」を残します。以下のように少し書き換えるだけで、記録の意味が明確になります。

リハ診療記録の Before / After 例
よくある記録 目的連動型の記録
平行棒内歩行を実施。 病棟内歩行見守りに向け、方向転換時の安定性を確認。右方向転換で体幹動揺あり、接触介助を 2 回要した。
起立練習を実施。 トイレ移乗の介助量軽減に向け、起立時の前方重心移動を確認。座面高 40 cm では手すり使用で見守り、低座面では軽介助を要した。
ADL 練習を実施。 更衣自立に向け、上衣操作時の座位保持を確認。右上肢挙上時に後方へ重心偏位あり、声かけで修正可能。

目的連動型リハ記録シートをダウンロード

日々の記録で「目標」「本日の目的」「実施内容」「反応・所見」「次回方針」をつなげて書けるように、A4 1 枚の記録シートを作成しました。SOAP の前段階として整理したいときや、新人教育で記録の軸を共有したいときに活用できます。

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現場の詰まりどころ

現場で多い詰まりは、「毎回同じ記録になる」「A が書けない」「計画書の目標と日々の記録がつながらない」の 3 つです。これらは文章力の問題というより、目的設定の問題として考えると整理しやすくなります。

まずは、記録の冒頭に「本日の目的」を 1 行だけ置きます。次に、目的に関係する所見だけを優先して残します。最後に、次回確認することを 1 つ書きます。この 3 点がそろうと、SOAP でも SOAP 以外でも記録の軸がぶれにくくなります。

記録の書き方を教わりにくい環境で悩む方へ

記録、評価、目標設定を相談しにくい環境では、学び方や働き方を見直すことも選択肢になります。

PTの働き方ガイドを見る

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

SOAP で書かないといけませんか?

施設のルールで SOAP が指定されている場合は、そのルールに従います。ただし、SOAP は記録を整理する方法の 1 つです。重要なのは、計画書の目標、本日の目的、実施内容、反応、次回方針がつながっていることです。

毎回「本日の目的」を書く必要がありますか?

長文で書く必要はありません。1 行で十分です。「方向転換時の安定性を確認」「起立時の血圧変動を確認」「更衣時の座位保持を確認」のように、今日の介入の焦点が伝われば記録全体が整理しやすくなります。

A が書けないときはどうすればよいですか?

A が書けないときは、O に目的と関係の薄い情報が並んでいる可能性があります。まず「今日の目的に対してどうだったか」を 1 文で考えます。改善、変化なし、介助量増加、条件変更の必要性など、次回方針につながる解釈を書くと整理しやすくなります。

計画書の目標が抽象的な場合はどう記録しますか?

「ADL 向上」「筋力向上」など抽象的な目標は、その日の記録では具体的な場面に分解します。たとえば「ADL 向上」であれば、トイレ移動、更衣、入浴動作、食事姿勢など、実際の生活場面に置き換えて目的を設定します。

新人教育ではどこから教えるとよいですか?

最初から SOAP の各項目を細かく教えるより、「今日の目的」「目的に対する所見」「次回の確認点」の 3 つを先に教えると実務に落とし込みやすくなります。その後に施設の記録形式へ当てはめると、記録の質が安定しやすくなります。

次の一手

診療記録は、単独で完結する書類ではありません。リハ計画書、説明日、目標設定、再評価、監査対策とつながることで、日々の介入の意味が伝わりやすくなります。


参考文献

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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