リハ栄養口腔連携体制加算の記録例
リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算では、「多職種が関わった」だけでなく、患者の ADL、栄養状態、摂食嚥下、口腔状態を共有し、共通目標に沿って介入したことを記録で説明できるかが重要です。特に急性期では、離床、食事摂取、嚥下、口腔管理が同時に動くため、記録がバラバラになりやすい点に注意が必要です。
この記事では、PT・OT・ST がリハ栄養口腔連携体制加算に関わる際の記録例を、監査対策の視点で整理します。制度上の最終判断は施設基準・通知・疑義解釈・院内運用に基づきますが、現場では「誰と何を共有し、介入にどう反映したか」を残すことが実務上のポイントになります。
記録で見られやすいポイント
監査や院内確認で見られやすいのは、単に「リハ実施」「栄養士へ報告」「ST 介入」などの事実だけではありません。患者の課題に対して、リハ・栄養・口腔の情報が共有され、介入内容や目標に反映されているかが重要です。
たとえば、離床時の疲労が強い患者では、活動量だけでなく摂取量、低栄養リスク、嚥下状態、口腔内の問題を合わせて見る必要があります。記録では、「何を共有したか」「共有後に何を変えたか」「次に何を見るか」を短く残すと説明しやすくなります。
| 記録要素 | 残したい内容 | 記録の例 |
|---|---|---|
| 共有した課題 | ADL、摂取量、嚥下、口腔状態など | 離床時疲労と摂取量低下を共有 |
| 関わった職種 | PT・OT・ST、管理栄養士、歯科職種など | ST・管理栄養士と食形態を確認 |
| 介入への反映 | 負荷量、食事姿勢、訓練時間など | 食後リハを避け午前に離床練習 |
| 次の確認 | 摂取量、疲労、誤嚥徴候、ADL 変化 | 翌日も摂取量と歩行耐久性を確認 |
PT・OT の記録例
PT・OT の記録では、離床や ADL 練習の結果だけでなく、栄養・嚥下・口腔状態が活動にどう影響したかを残すと連携の意味が明確になります。特に、食事摂取量が少ない、疲労が強い、食後にむせる、口腔内乾燥があるケースでは、リハ単独の記録にしないことが重要です。
記録例では、評価、共有、介入変更、次回確認を短く分けると使いやすくなります。長文にする必要はありませんが、「誰に共有したか」「何を変えたか」が抜けると、多職種連携が記録上で見えにくくなります。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| 離床時の疲労 | 端座位 10 分で疲労感増強。朝食摂取量 3 割であり、管理栄養士へ共有。午前は端座位中心とし、午後の離床可否を再評価する。 |
| 食事姿勢 | 食事時に体幹右傾あり、嚥下時の姿勢保持が不安定。ST と共有し、車椅子座位で骨盤支持と足底接地を調整した。 |
| ADL 練習 | 更衣練習で息切れと疲労が強く休息を要した。摂取量低下と活動耐久性低下を病棟・栄養担当へ共有し、負荷量を段階調整する。 |
ST の記録例
ST の記録では、嚥下評価や食形態の判断だけでなく、離床状況、姿勢、疲労、栄養摂取量とつなげて残すことが重要です。嚥下機能だけを単独で記載すると、リハ・栄養・口腔の連携が見えにくくなります。
特に、誤嚥リスク、食形態、食事姿勢、口腔内環境、食事中の疲労は、PT・OT・管理栄養士・看護師と共有しやすい項目です。記録では、評価結果に加えて、共有先と今後の観察ポイントを残すと実務で使いやすくなります。
| 場面 | 記録例 |
|---|---|
| むせ | 水分摂取時に湿性嗄声あり。食形態と水分形態について看護師・管理栄養士へ共有し、食事中の姿勢を PT と確認する。 |
| 食事疲労 | 食事後半で咀嚼速度低下と疲労あり。摂取量低下リスクとして管理栄養士へ共有し、食事時間と介助方法を病棟で確認する。 |
| 口腔状態 | 口腔乾燥と舌苔を認める。口腔ケア状況を看護師へ共有し、食前の口腔内確認を継続する。 |
栄養・口腔との共有例
リハ職側の記録では、栄養や口腔の専門的判断を代行するのではなく、リハ場面で観察した事実を共有することが大切です。たとえば、疲労、摂取量、食事姿勢、むせ、口腔乾燥、義歯の不適合などは、リハ場面でも気づきやすい情報です。
共有記録では、「問題があった」だけで終わらせず、どの職種に共有し、何を次に確認するかまで書くと連携が見えやすくなります。専門外の断定を避け、観察事実と共有内容を分けて記録するのが安全です。
| 観察したこと | 共有先 | 記録の方向性 |
|---|---|---|
| 摂取量が少ない | 管理栄養士 | 活動耐久性低下と合わせて共有 |
| 食事姿勢が崩れる | ST・看護師 | 座位保持と嚥下リスクを共有 |
| 口腔乾燥がある | 看護師・歯科職種 | 口腔ケア状況の確認につなげる |
| 義歯が合わない | 歯科職種・看護師 | 咀嚼や摂取量への影響を共有 |
避けたい NG 記録例
避けたいのは、多職種連携をしたように見えて、実際には何を共有したのか分からない記録です。「栄養士と連携」「ST と共有」「口腔管理を実施」だけでは、患者の課題、共有内容、介入への反映が読み取れません。
また、リハ職が栄養診断や歯科的判断を断定する書き方も避けた方が安全です。記録では、観察事実、共有した内容、今後の確認を分けて書くことで、専門職間の役割が明確になります。
| NG 記録 | 修正例 |
|---|---|
| 栄養士と連携した | 朝食摂取量 3 割、離床時疲労あり。活動耐久性低下について管理栄養士へ共有した。 |
| ST と共有した | 食事時の体幹右傾とむせを ST へ共有。食事姿勢と車椅子座位を再調整する。 |
| 口腔状態不良 | 口腔乾燥と食物残渣を認めたため、看護師へ共有し食前後の口腔確認を依頼した。 |
| 低栄養のため離床困難 | 摂取量低下と疲労を認め、離床時は休息を挟み実施。栄養評価について管理栄養士へ共有した。 |
監査前の 5 分チェック
監査対策としては、記録量を増やすよりも、必要な情報がつながっているかを確認することが重要です。リハ記録、栄養記録、嚥下記録、口腔管理の記録が別々に存在していても、共通目標や共有内容が見えなければ、連携の説明が難しくなります。
まずは以下の項目を確認し、記録テンプレートやカンファレンス記録に不足がないかを点検しましょう。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 共通目標 | ADL、摂取、離床、嚥下などの方向性が一致しているか |
| 共有内容 | 何を誰に共有したかが分かるか |
| 介入反映 | 共有後に負荷量、姿勢、食形態、ケアが調整されたか |
| 役割分担 | PT・OT・ST、栄養、口腔の役割が混ざっていないか |
| 期間 | 算定期間や計画作成日との整合が取れているか |
よくある質問
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
リハ職の記録だけで算定根拠になりますか?
リハ職の記録だけで完結させるのは避けた方が安全です。加算の趣旨はリハ・栄養・口腔の連携であり、栄養管理や口腔管理に関する記録、共有内容、院内の運用と合わせて説明できることが重要です。
「管理栄養士へ共有」と書けば十分ですか?
共有先だけでなく、何を共有したかを残すことが重要です。たとえば、摂取量、疲労、活動耐久性、体重変化、食事姿勢など、共有した観察事実を短く記録しましょう。
ST がいない場合はどう考えますか?
職種配置や施設基準、院内体制により判断が必要です。嚥下や口腔に関する評価・管理をどのように担保しているかを、通知・施設基準・院内運用に沿って確認してください。
記録は毎回長く書く必要がありますか?
毎回長文にする必要はありません。重要なのは、患者の課題、共有内容、介入への反映が分かることです。短文でも「何を見て、誰に共有し、何を変えたか」が残っていれば実務で使いやすくなります。
監査で特に見られやすいのはどこですか?
共通目標、共有内容、役割分担、算定期間、計画との整合が見られやすいポイントです。リハ記録だけでなく、栄養・嚥下・口腔管理の記録と矛盾がないかも確認しましょう。
次の一手
リハ栄養口腔連携体制加算の記録では、「多職種が関わった」よりも、「共有した内容が介入に反映された」ことが重要です。まずは、現在のリハ記録に、摂取量、嚥下、口腔状態、共有先、介入変更が残っているか確認しましょう。
参考文献
- 厚生労働省. 令和 8 年度診療報酬改定について. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省保険局医療課. 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について. 令和 8 年 3 月 5 日保医発 0305 第 6 号.
- 厚生労働省保険局医療課. 基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて. 令和 8 年 3 月 5 日保医発 0305 第 7 号.
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

