筋トレの3原理・6原則|効率的な筋力増強のしくみ

臨床手技・プロトコル
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この記事で分かること

本稿は、筋トレの 3 原理(過負荷・特異性・可逆性)と 6 原則(漸進性/反復・周期性/個別性/意識性/全面性/継続性)を 臨床で即使える形に整理します。強度(% 1RM / RPE)・反復・セット・頻度・レストの設計、よく起こるつまずきへの対処、高齢者・内科合併の安全運用までを一気通貫で解説します。

本文からは、A4 の クイック表設計テンプレ週次ログ安全運用カードにも直リンクしています。まずは 1 種目・週 2 回・ 4 週間の小さな設計から始めましょう。

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トレーニングの 3 原理(過負荷・特異性・可逆性)

成果の土台はこの 3 つです。過負荷は「現状より少しだけ高い刺激」で適応を引き出す原理、特異性は「鍛えた能力が伸びる」ため目的動作・筋群・エネルギー系に似せる発想、可逆性は「やめれば戻る」ため “細く長く続ける仕組み” が最重要という考え方です。

説明に迷うときは A4 の クイック表 を配布・掲示して、患者さんや利用者さんにも言葉で共有しましょう。実践記事:理学療法士が解説する筋力トレーニングの方法筋トレについて

3 原理の要点(臨床での伝え方)
原理定義臨床メモ
過負荷現状能力を “わずかに” 超える刺激で適応を促す。「昨日より 少し だけ」/やり過ぎは逆効果。
特異性刺激した能力が向上する。動作・筋群・エネルギー系の一致。目的動作に似せるほど効果が出やすい。
可逆性刺激を中断すると効果は減弱・消失する。続ける仕組み化(スケジュール・記録・仲間)。

トレーニングの 6 原則(実装のコツ)

漸進性(小刻み増量)、反復・周期性(刺激と回復の設計)、個別性(年齢・既往で調整)、意識性(狙いの明確化)、全面性(全身バランス)、継続性(行動設計)が柱です。増やす変数は “1 回に 1 つだけ” が原則。重量・反復・セット・レストのどれを動かすかを決め、効果と疲労を観察します。

6 原則の運用早見(何をどう変える?)
原則要点実装ヒント
漸進性負荷を少しずつ上げる。2–5 % の小刻み増量 or +1 セット。
反復・周期性適切な頻度と休息。部位あたり週 2–3 回、疲労強はボリューム減。
個別性体力・既往に合わせる。同じ重量でも感じ方は違う → RPE で補正。
意識性目的筋・動作を意識。毎セット「どこに効かせるか」を言語化。
全面性全身をバランスよく。押す・引く・股関節・膝関節・体幹を網羅。
継続性続ける仕組みづくり。短時間ルーティン・記録・リマインド。

強度 × 回数 × セット × 頻度の設計(RPE・% 1RM)

設計は A4 テンプレ に直接記入すると早いです。強度目安は、筋力向上なら % 1RM 85–95(反復 3–6)、筋肥大なら % 1RM 60–85(反復 6–15)、筋持久なら % 1RM 50–65(反復 12–25)を起点に、RPE チートシート強度×回数×レスト表で微調整します。

迷ったら 2-for-2 ルール:目標回数を 2 回以上上回る状態が 2 セッション続いたら、次回は 2–5 % 増量 or +1 セット。フォーム破綻/痛み/強い疲労が出る場合は、負荷ではなく反復・セット・レストを先に調整。運動前チェックは 血圧チェック手順 を参照。キャリア軸の “現場実装の流れ” は こちら(インライン導線)。

簡易対応表(RPE ↔ 推定 % 1RM ↔ 反復の目安)
RPE推定 % 1RM反復の目安用途
6–7約 60–7012–20フォーム習得/ボリューム確保
7–8約 70–808–12筋肥大の中心
8–9約 80–904–8筋力向上
9+90 以上1–4最大筋力・ピーキング

運用は 週次トレーニングログ で “反復 × セット × RPE” を可視化し、翌週の漸進判断に活用してください。

筋肥大のしくみ(MPS/mTOR の超要点)

筋肥大は主に機械的張力・代謝的ストレス・筋損傷の相互作用で起こり、セッション後の合成優位(MPS の一過性上昇)が反復されることで長期的変化になります。張力の質を高めるには、十分な可動域・コントロールされたテンポ・狙い筋の張力時間を意識します。ボリュームは “部位あたり週 10–20 セット” を起点に、回復許容量に合わせて調整。

栄養は十分なたんぱく摂取(例: 0.3 g/kg/回 × 3–4 回/日)と睡眠の最適化が前提。詳細の理論は文末の参考文献(Schoenfeld 2010 ほか)を参照してください。

高齢者・内科合併での安全運用

最初は RPE 5–7 を目安にフォーム優先、週 2 回から開始し、反応を見て総セット数を漸進します。血圧・脈拍・症状の変化に留意し、めまい・胸痛・会話困難・不整脈感・鋭い痛みが出たら中止。実地では “負荷を上げる” よりも “ボリューム・休息・頻度” の微調整が安全です。

症状ベースの中止目安や運動前チェックは A4 の 安全運用カード を活用してください。評価系の横断整理は 評価ハブ にまとめています。

今日から使えるチェックリスト

  • 目的(筋力/筋肥大/筋持久)を 1 つに絞った設計か?
  • 増やす変数は 1 つだけに限定したか?(重量/反復/セット/レスト)
  • RPE とフォームを毎セット言語化したか?
  • 週次ログで “反復 × セット × RPE” を記録したか? → ログ
  • 高齢者・合併症は安全運用カードを確認したか? → カード

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

週何回が効率的?セット数はどれくらい?

部位あたり 週 2–3 回 が扱いやすく、合計ボリュームは 週 10–20 セット を起点に個別調整します。疲労が強い週は “ボリュームを 20–40 % 下げる” デロードも有効です。

重量が伸びない時は何を変える?

順に(1)総セット数(+2–4 セット/週)、(2)レスト延長、(3)種目の入替(同パターンで負荷が乗る種目へ)、(4)頻度の見直しを検討。設計テンプレで計画→実績の差を見える化します。

高血圧や循環器の既往がある場合の注意点は?

RPE 5–7 から開始し、バルサルバを避けて呼吸を統制。胸痛・息切れ・めまい・動悸などが出たら中止し、安全運用カードを参照。運動前の確認は 血圧チェック手順 を。

参考文献

  1. Schoenfeld BJ. The mechanisms of muscle hypertrophy and their application to resistance training. J Strength Cond Res. 2010;24(10):2857–2872. https://doi.org/10.1519/JSC.0b013e3181e840f3
  2. American College of Sports Medicine. Progression models in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(3):687–708. https://doi.org/10.1249/MSS.0b013e3181915670
  3. Garber CE, et al. Quantity and quality of exercise for developing and maintaining fitness. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(7):1334–1359. https://doi.org/10.1249/MSS.0b013e318213fefb
  4. Fragala MS, et al. Resistance Training for Older Adults. J Strength Cond Res. 2019;33(8):2019–2052. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003230
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