シーティング身体計測|座幅・奥行き・座面高の決め方

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シーティング身体計測のゴール

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シーティングの採寸は、「測定 → 寸法の仮決定 → 試座で微調整 → 記録」の流れを揃えるだけで、再現性が一気に上がります。本記事は、座位が取れる場面を基本に、座位が難しい場合の代替も含めて、誰が測っても同じ結論に近づく“型”を整理します。

このページで答えるのは、座幅・座面奥行き・座面高をどう測り、どこで仮決定するかです。クッション適合や前すべり対策の深掘りは別記事に分け、本記事では「測る → 仮決定する → 試座で最終調整する」ところまでに絞ります。

評価の型は、個人の努力だけで身につくとは限りません。

今の職場で教育体制がない、相談相手がいない、教材に触れにくい、見本となる先輩が少ないと感じるなら、学び方と環境の整え方を先に整理しておくと動きやすくなります。

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用語と基準点の確認(“同じもの”を測る)

シーティングで迷う原因の多くは、測り方そのものより「何を測ったか(基準点)」が揃っていないことです。まず用語を定義して、記録欄に残せる形にします。

  • 座位臀幅:両大転子、または大腿を含めた最も広い部分の左右幅。衣服の厚みや側方パッドの有無も併記します。
  • 座底長:骨盤後方の基準点から膝窩手前までの水平距離。膝窩に食い込ませず、最終は試座で確認します。
  • 下腿長:膝窩付近から踵底面までの距離。靴底厚、クッション条件、フットサポート条件を別に残します。

測定姿勢は可能な範囲で骨盤中間位・股関節 約 90°・膝関節 約 90°・足底条件を一定にそろえます。クッションを使う場合は、厚みだけでなく沈み込みや前後位置まで記録して、再現性を担保します。

座位の採寸 3 点基準図。正面では座位臀幅と座面高、側面では座幅・座面奥行き・座面高 / フットサポートの対応を示した図版
図.座位で確認したい 3 つの基準点と、車椅子寸法へつなぐ対応関係

準備する道具とセットアップ

“測れる環境”を先に作ると、採寸が一気に安定します。おすすめは、道具と記録様式を 1 セット化して持ち回れる状態にしておくことです。

  • メジャー(硬め・幅広タイプ推奨)
  • 直角定規( L 尺)
  • 記録用紙(本記事の PDF)
  • 写真記録用スマホ(正面・側面)
  • 補助者 1 名(メジャーの水平保持・姿勢保持)

測定面は、沈み込みが大きすぎない座面かマットを選びます。座面条件が変わると数値が動くため、「どのクッション上で測ったか」を必ず残してください。

座位での測定手順(基本)

座位で測れるなら、まずはこの手順を“固定手順”にします。ポイントは水平・垂直を崩さないことです。

  1. 骨盤・体幹を整える:骨盤中間位を目標にし、体幹が過度に後方へ倒れないようにします。
  2. 座位臀幅を測る:両大転子、または最も広い部分を触診し、床と水平にメジャーを張って測ります。
  3. 座底長を測る:骨盤後方の基準点から膝窩手前まで水平に測ります。左右差がある場合は、安全側を優先して試座で最終調整します。
  4. 下腿長を測る:膝窩付近から踵底面までを垂直方向で確認します。靴底厚や中敷き条件は別に mm で残します。
  5. 写真記録を残す:前後・側面から 2〜3 枚。衣服・装具・クッション条件も一緒に残します。

仰臥位での代替計測(座位困難時)

痙縮・疼痛・易疲労などで座位保持が難しい場合は、仰臥位で“座位を仮想”して置換計測します。股関節・膝関節の角度条件をそろえたうえで、座位で確認したい寸法を仮値として拾うイメージです。

ただし仰臥位は、骨盤後方基準点や実際の沈み込みをそのまま再現できません。したがって、仰臥位はあくまで候補サイズを絞る段階と考え、最終決定は必ず試座で行います。

座面幅の決め方(座位臀幅 → 座幅)

座面幅は、最も広い部分を基準に、保持と駆動の両立で微調整します。実務では、座位臀幅だけでなく、大腿外側の張り出し、衣服の厚み、側方パッドの有無も見て決めると失敗が減ります。

  • やや狭めに寄せる場面:側方保持を優先したい、上肢駆動をしやすくしたい
  • やや広めに寄せる場面:厚着、体重変動、皮膚トラブル予防を優先したい

広すぎると骨盤が流れやすくなり、腕の届きやすさも落ちます。狭すぎると大転子部の圧や摩擦が増えやすいため、仮決定後は試座で左右差・駆動性・皮膚反応を必ず確認します。

座面奥行きの決め方(座底長 → 座面奥行き)

座面奥行きは、座底長から膝窩前クリアランスを引いて仮決定します。目安は 30〜50 mm 前後 とし、膝窩圧がないことを優先します。

  • 膝窩前クリアランス:膝窩に食い込まず、かつ大腿支持が落ちすぎない範囲にする
  • 短めを検討する場面:骨盤後傾、円背、前滑りが強い、深く座りにくい

奥行きが長すぎると、膝窩圧だけでなく、骨盤後傾や前滑りを助長しやすくなります。逆に短すぎると大腿支持が不足するため、測定値で候補を決めて、試座で膝窩圧と骨盤位置を見ながら詰めるのが安全です。

座面高の決め方(下腿長 → 座面高 / フットサポート条件)

下腿長は、膝窩〜踵底面を基準に取り、クッション厚・靴底厚・フットサポート高をまとめて合わせます。既製車椅子では seat-to-floor 高を直接変えにくいこともあるため、実務ではフットサポート条件を先に整える考え方が有効です。

  • 高すぎる足台のサイン:大腿が浮く、骨盤が後傾しやすい、殿部が前へずれる
  • 低すぎる足台のサイン:大腿裏の圧迫、足底が不安定、移動や段差で干渉しやすい

試座では、膝角度だけでなく、足底接触・踵の安定・殿部のずれ・移乗のしやすさまで確認します。数字どおりに合わせるより、実際の操作性と安定性が残る設定を優先してください。

その他寸法(併せて決める)

  • 座位肘頭高:アームレスト高の基準。肩をすくめず、肘が軽く支持される高さを目標にします。
  • 背もたれ高:体幹コントロールに応じて、下位胸郭支持で十分か、肩甲帯近くまで必要かを判断します。
  • フットサポート長:下腿長・靴底厚・拘縮の有無を反映し、足底条件とクリアランスを両立させます。

ケース別補正の要点

  • 片麻痺:麻痺側の沈み込みや側屈が残る前提で見ます。左右差は数値だけで決めず、試座で支持の当たり方まで確認します。
  • 肥満:軟部組織の張り出しで見かけの幅が増えやすいです。圧分散と駆動性のバランスで判断します。
  • 円背・胸腰椎後弯:深く座りにくく、実効奥行き不足が起きやすいです。奥行きは短めから試すと合わせやすくなります。
  • 拘縮(尖足/膝屈曲):下腿長だけでなく、関節角度と足底条件を優先します。フットサポートやウェッジで逃がす発想が必要です。

現場の詰まりどころ/よくある失敗(ここだけ直すと再現性が上がる)

採寸が安定しないときは、測り方の工夫より先に条件固定(体位・肢位・衣服・装具・クッション)が抜けていることがほとんどです。まずは「同じ条件で測れているか」を揃えるだけで、再現性は大きく改善します。

先に戻す 3 つ

採寸がぶれたら、まず チェック表 で条件の抜けを確認し、次に 測定→試座→処方 の順に戻します。シーティング全体の流れから見直したいときは、車椅子シーティング全体像から先に読むと立て直しやすいです。

身体寸法測定のチェック表

スマホでは表を横スクロールできます。

身体寸法測定のチェックリスト(成人・座位計測の目安|車椅子 シーティング採寸)
項目 ありがちミス すぐ直せる対策 記録ポイント
座位臀幅 メジャーが斜行/厚着で過大評価 水平を保ち、衣服条件をそろえて再測 衣服・側方パッド有無を明記
座底長 膝窩まで当てて深く見積もる 膝窩手前で止め、試座で確認する 骨盤角度/クッション条件を併記
下腿長 靴底厚やクッション条件を反映しない 靴・中敷き・クッション条件を別記する フットサポート条件も記録
最終決定 試座なしで発注する 試座 → 微調整 → 記録の順を固定する 最終寸法・変更理由を残す

測定→試座→処方のワークフロー

  1. どこまで座位で測れるかを先に判断する。
  2. 本記事の手順で身体寸法を測定する(座位/仰臥位)。
  3. 座幅・奥行き・座面高の候補を仮決定する。
  4. 試座で、骨盤位置・膝窩圧・足底条件・駆動/移乗の干渉を確認する。
  5. 最終寸法と変更理由を記録し、次回も同条件で再現できる状態にする。

ダウンロード(記録・運用にそのまま使えます)

現場でそのまま使える A4 記録シートを用意しました。印刷設定は A4 /余白 10〜12 mm /ヘッダ・フッタ非表示が目安です。

身体計測(シーティング)記録シート(A4・ 1 ページ)

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よくある質問(FAQ)

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膝窩前の余裕は何 mm を目安にしますか?

一律ではありませんが、まずは 30〜50 mm 前後を目安にすると合わせやすいです。膝窩圧がないことを優先し、骨盤後傾や前滑りが強い場合は、やや短めから試座して詰めます。

仰臥位計測だけで最終決定してもよいですか?

候補サイズを絞る段階としては使えますが、最終決定には不向きです。実際の沈み込み、骨盤位置、膝窩圧、足底条件は試座でしか確認できないため、仰臥位は仮値と考えてください。

試座では何を必ず確認しますか?

骨盤位置(後傾・左右差)、膝窩圧、足底接触、殿部の前滑り、上肢駆動や移乗の干渉、皮膚反応を最低限確認します。数字が合っていても、ここが崩れるなら再調整が必要です。

座面幅が合っていないサインはありますか?

広すぎる場合は骨盤が流れやすく、腕が届きにくくなります。狭すぎる場合は大転子部や大腿外側の圧・摩擦が増えやすくなります。試座では左右の当たり方と操作性を一緒に見てください。

左右差がある場合、どちらの値を採用しますか?

原則は「皮膚・姿勢の安全側」を優先し、左右差が出る理由を併記して試座で最終調整します。数値だけで決めず、沈み込みや側屈などの所見をセットで残すことが重要です。

次の一手(最短で上達する進め方)


参考文献

  • International Organization for Standardization. ISO 7250-1:2017 Basic human body measurements for technological design — Part 1: Body measurement definitions and landmarks. Geneva: ISO; 2017. ISO
  • World Health Organization. Wheelchair Service Training Package: Training of Trainers Card Deck. Geneva: WHO; 2013. WHO PDF
  • Owens J, Davis DD. Seating and Wheelchair Evaluation. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan-. Updated 2023 May 1. NCBI Bookshelf

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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