見当識ドリルは「採点基準」と「記録語彙」を固定すると、介入の再現性が上がります
関連:紙面ドリル運用プロトコル / 視空間との使い分け比較
見当識ドリルの実務で詰まりやすいのは、「正答数は残すが、手がかり量や再指示が記録されない」ことです。これでは同じ点数でも難しさが違い、経過判断がぶれます。
本ページは、 L1〜L3 共通で使える採点・記録テンプレとして整理しました。まずは条件(時間・課題数・語りかけ)を固定し、 2 週間だけ同条件で回して、比較可能なデータを作ることを目標にしてください。
見当識ドリル PDF( L1〜L3 )ダウンロード
見当識の実施は、課題の質より先に「同じ条件で繰り返せること」が重要です。以下の PDF は L1 → L2 → L3 の順で使える構成にしています。
運用時は、正答数だけでなく手がかり量・再指示回数・不安/拒否反応を必ず記録してください(採点枠は次のセクションで統一します)。
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採点の基本枠( L1〜L3 共通 )
採点は「正答」だけでなく、「手がかり量」「再指示回数」「不安・拒否反応」の 4 軸で見ると、次回設定につながります。難易度変更は 1 要素のみ(課題数 or 速度 or 手がかり)を原則にすると、原因が追いやすくなります。
手がかり量は、チーム内で語彙をそろえるのがコツです。例として、「少」=復唱 1 回/選択肢提示など最小支援、「多」=複数回の促し/具体ヒントの追加のように運用定義を持つと、担当交代でも比較が安定します。
| 評価軸 | 記録方法 | 判定の目安 | 次回設定への反映 |
|---|---|---|---|
| 正答数 | A(正答数)/ 総課題数 | 7〜8 割以上で安定 | 手がかりが減っていれば進級検討 |
| 手がかり量 | なし / 少 / 多 | 「少」以下が継続 | 「多」が続く場合は同レベル維持 |
| 再指示回数 | 回数を数値で記録 | 回数減少が見られる | 増加時は課題量か速度を調整 |
| 不安・拒否 | 有 / 無 + 簡単メモ | 有が反復しない | 有が続く場合は L を戻して成功体験 |
記録テンプレ(そのまま使える書き方)
記録は短く、同じ語順で残すのがコツです。自由記述を増やしすぎるより、固定フォーマットを繰り返した方が比較しやすくなります。
ポイントは、「条件」→「結果」→「支援」→「次回」の順で毎回そろえることです。短時間の日でも、この 4 点がそろえば介入判断が止まりません。
| 項目 | テンプレ文 | 記載例 |
|---|---|---|
| 課題条件 | L□・時間□分・課題数□ | L1 ・ 5 分・ 4 課題 |
| 遂行結果 | A□/□、手がかり(なし/少/多) | A 3/4、手がかり少 |
| 介助量 | 再指示□回、不安/拒否(有/無) | 再指示 1 回、不安無 |
| 次回設定 | 同 L 継続 / 1 段階変更(理由) | L2 へ変更(手がかり減少のため) |
L1〜L3 の進め方と戻し基準
進級は「正答率のみ」で決めず、支援量(手がかり・再指示)の減少を重視します。 L3 に進んで崩れた場合は L2 に戻し、条件固定で取り直す方が実務的です。
迷ったときは、「課題を変える」のではなく、まず 課題数または 時間を調整して成功体験を守ると、拒否の連鎖を防げます。
| レベル | 開始の目安 | 進級の目安 | 戻し基準 |
|---|---|---|---|
| L1 | 初回、拒否・疲労が出やすい | 手がかり最小で 7〜8 割 | 不安反応が強い場合は課題数を減らす |
| L2 | L1 で安定 | 再指示回数が減少 | 再指示増加なら L1 に一時戻し |
| L3 | L2 で安定し耐性確認したい | 中断少なく遂行が安定 | 疲労・拒否増なら L2 に戻す |
現場の詰まりどころと、よくある失敗
よくある失敗は「毎回課題条件が違う」「同日に複数要素を変更」「記録が自由記述だけ」の 3 つです。いずれも比較可能性を下げ、効果判定が難しくなります。
回避手順(記録テンプレ)へ / 戻し基準( L1〜L3 )へ / 運用の型(プロトコル)で条件をそろえる
対策は、条件固定、変更 1 要素、短文テンプレの 3 点セットです。まずは 2 週間、同条件で回して基準線を作ってください。
| よくある失敗 | 起きる理由 | 改善策 |
|---|---|---|
| 課題条件が毎回変わる | 結果差の原因が判別できない | 時間・課題数・順序を固定 |
| 一気に難易度を上げる | 失敗体験が増えて拒否につながる | 変更は 1 要素のみ |
| 点数だけ残して終わる | 次回介入の判断材料が不足 | 手がかり量・再指示・不安反応を必須化 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
正答率が高ければ進級してよいですか?
正答率だけでは不十分です。手がかり量と再指示回数が減っているかをあわせて確認し、安定してから 1 段階だけ進級するのが安全です。
短時間の日は何を優先して残せばよいですか?
最優先は A(正答数)、手がかり量、再指示回数、不安・拒否の有無です。課題数を減らしても、この 4 点は固定で残してください。
「再指示」は何を数えればよいですか?
同じ問いをもう一度言い直した回数、注意を戻すための声かけ(例:今の質問に戻ります)を「再指示」として数えると、運用がそろいやすくなります。チーム内で数え方を固定しておくのがおすすめです。
家族やスタッフ共有はどう書けばよいですか?
「本日の課題(条件)」「必要だった支援」「次回設定」の 3 点を短文で共有すると伝達が早くなり、チーム内で運用が揃います。
次の一手
まずは同一条件で 2 週間運用し、記録テンプレで比較可能なデータを作ってください。全体像は 運用プロトコル、すぐ実装するなら 見当識ドリル L1〜L3 を確認すると迷いが減ります。
参考文献
- Livingston G, Huntley J, Sommerlad A, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30367-6
- World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. 2019. PubMed
- 日本作業療法士協会. 認知症に関する情報・実践資料. https://www.jaot.or.jp/
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


