歩行・バランス評価ハブ:使い分けと比較表

評価
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歩行・バランス評価ハブ:迷わない「選び方」と運用テンプレ

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歩行・バランス評価は、検査が増えるほど「時間が足りない」「条件が揃わない」「記録がブレる」で回らなくなりやすい領域です。このハブでは、よく使う検査を目的→第一選択→追加 1 本の形に落とし込み、記録テンプレまで含めて “ 迷いどころ ” を減らします。

評価スケール全体の索引は 評価ハブ にまとめています。歩行・バランス領域だけを引きたいときは、このページをブックマークしてください。

このページの使い方

目的別:まず何を選ぶか(最小セットの作り方)

結論から言うと、歩行・バランス評価は「速度(移動能力)」「段取り(転倒リスク)」「下肢機能の俯瞰」の 3 軸を押さえると、ほとんどの症例で方針が立ちます。まずは “ 最小セット ” を決め、追加検査は仮説を検証する 1 本に絞ると運用が安定します。

時間が限られる現場では、 10 m 歩行(通常 / 最良)+ TUG + SPPBの組み合わせが回しやすい基本形です(時間がさらに厳しければ、 10 m 歩行+ TUG に寄せます)。

目的別の第一選択( 1 本)と追加( 1 本)
臨床の目的 第一選択(まず 1 本) 追加(仮説検証で 1 本) 判断のコツ
歩行の “ 速さ ” を見たい 10 m 歩行テスト 6 MWT 速度は “ 条件固定 ” が最重要(助走 / 計測区間 / 補装具 / 靴)。
転倒リスク / 段取りを見たい TUG FGA 方向転換・着座・二重課題で “ ブレる理由 ” を分解します。
下肢機能を俯瞰したい SPPB 5xSTS “ バランス / 歩行 / 立ち上がり ” のどこが伸びたかが残りやすいです。
静的~動的バランスを見たい BBS Mini-BESTest BBS は俯瞰、 Mini-BESTest は姿勢制御の “ どの系が弱いか ” を掴みやすいです。
反応・予測の姿勢制御を切り分けたい 反応性バランス 予測的姿勢制御( APA ) “ つまずき / 外乱 ” か “ 先回りできない ” かで介入が変わります。
脳卒中で姿勢偏位(プッシャー)を疑う SCP BLS “ 判定(有無)= SCP ”、“ 経過(変化)= BLS ” に寄せると整理しやすいです。

まとめて押さえたい場合は、こちらの親記事(ガイド)も参照できます:歩行・バランス評価の選び方( SPPB と TUG を中心に)

代表検査の比較表(何がわかる / 何が弱い)

同じ “ 歩行・バランス ” でも、検査によって見えている要素が違うため、結果だけを横並びで比べると誤解が増えます。下の表は「何を見ているか」を先に揃えるための比較です。

歩行・バランス評価:代表検査の “ 得意領域 ” 比較
検査 主に見ている要素 強み 弱み / 注意 運用のポイント
10 m 歩行 歩行速度(通常 / 最良) 短時間で “ 能力の変化 ” を掴みやすい 助走・計測区間・補装具で差が出やすい 助走 / 計測区間 / 靴 / 補装具 / 介助量を固定して記録します
TUG 立ち上がり→歩行→方向転換→着座の段取り 生活場面に近く、転倒リスクの “ におい ” が出やすい 指示・恐怖・注意負荷でブレやすい イス高、開始姿勢、回転方向、補助具を条件固定します
SPPB バランス+歩行+立ち上がり(複合) “ どこが伸びたか ” を分解して残しやすい 点数だけだと “ 伸びた要素 ” が見えにくいことがある 各サブテストの所見(何が詰まったか)を 1 行追記します
5xSTS 立ち上がり反復(筋力寄り + 協調) “ 立ち上がりが遅い理由 ” の入口になる 疼痛・恐怖・フォームでブレる 椅子高、手の使用、痛みの有無を固定して記録します
6 MWT 持久力(歩行の耐久) “ 続けられるか ” を定量化しやすい コース条件(距離 / ターン)で結果が変わる コース長、声かけ、休憩ルールを施設内で統一します
BBS 静的~動的バランス(俯瞰) 広く拾える、経過が追いやすい 上限効果(高機能で頭打ち)に注意 高機能者は Mini-BESTest / FGA の追加を検討します
Mini-BESTest 姿勢制御システムの切り分け “ どの系が弱いか ” が残りやすい 実施に慣れが必要 落ちたセクションを介入目標に直結させます
FGA 歩行中の適応(視線 / 障害物 / 速度変化) 歩行の “ 実戦力 ” を見やすい 環境がないと実施が難しい項目がある 病棟内で実施できる導線を先に作ると安定します

比較・使い分けを 1 本で読みたい場合は SPPB と TUG の違い(比較・使い分け) も便利です。

記録テンプレ:条件固定チェック + 所見の残し方

再評価で差が出る最大要因は、検査そのものより条件のズレです。まず “ 条件固定チェック ” を用意し、毎回ここだけは同じにします。

条件固定チェック(再評価でブレを減らす)
項目 記録例 ポイント
靴 / 裸足 運動靴 滑りやすさで歩容が変わります
補装具 / 補助具 AFO + T 字杖 種類と設定(長さ等)まで揃えます
介助量 見守り / 近位介助 “ 介助が増えた=悪化 ” と早合点しないために残します
コース条件 助走 2 m + 計測 10 m 助走と計測区間、ターン有無を固定します
イス条件( TUG / 5xSTS ) 座面高 43 cm・肘掛けなし 高さが違うと “ 立ち上がり難易度 ” が変わります
指示 / 声かけ “ いつも通りの速さで ” 言い方を固定し、二重課題の有無も明記します
所見テンプレ(結果+ “ 理由 ” を 1 行で残す)
検査 結果 所見(詰まりの部位) 次アクション( 1 つだけ)
10 m 歩行 通常:◯◯ 秒( ◯◯ m / s ) 立脚後期の推進が弱く、速度が “ 乗らない ” 推進とリズムの介入 → 1 週後に同条件で再測定
TUG ◯◯ 秒 ターンで外側支持が崩れ、 1 歩増える ターン練習+視線誘導 → 次回ターン方向も固定
SPPB 合計:◯ / 12 立ち上がり項目がボトルネック 5xSTS でフォーム確認 → 介入の焦点を決める

現場の詰まりどころ:よくある失敗と直し方

歩行・バランス評価は “ ちゃんとやったつもり ” でも、条件ズレで結果が揺れます。下の表は、再現性を落としやすい典型パターンです。

よくある失敗( NG )と修正( OK )
ありがちな NG 何が起きるか OK の直し方 記録に残す一言
10 m の助走が毎回違う 速度が “ 出たり出なかったり ” します 助走距離を固定し、開始位置を床マーキングします 助走 ◯ m・計測 ◯ m 固定
TUG のイス高が違う 立ち上がりが難しくなり、時間が延びます 座面高を統一し、同じイスを使います 座面高 ◯ cm・肘掛けなし
補助具が変わったのに比較してしまう “ 改善 / 悪化 ” の解釈がズレます 補助具変更は “ 別条件 ” として扱い、両条件で測ります 条件 A:◯◯ /条件 B:◯◯
二重課題を入れたり入れなかったり “ 転倒リスク ” の見え方が変わります 単一課題と二重課題を区別して記録します 単一 / 二重課題(内容)
“ 最良 ” と “ 通常 ” が混ざる 改善が “ 見えない ” ことがあります 通常 / 最良を分け、声かけを固定します 通常:◯◯ /最良:◯◯

よくある質問(FAQ)

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歩行・バランス評価は、どの頻度で再評価すればいいですか?

結論としては、介入の “ 単位 ” に合わせます。急性期~回復期で変化が出やすい時期は、 1 週に 1 回を基準に、状態が安定してきたら 2 週~ 4 週に 1 回へ移行すると運用が回ります。ポイントは同条件(靴 / 補装具 / 介助量 / コース)で揃えることで、頻度よりも “ 再現性 ” の方が品質を左右します。

時間がなくて 1 本しかできないときは、何を選ぶべきですか?

基本は TUG を推します。理由は、立ち上がり・歩行・方向転換・着座まで含み、転倒リスクの “ におい ” が出やすいからです。一方で “ 速さ ” を最優先したい場面(歩行自立の可否、退院前の移動能力など)では 10 m 歩行 を第一にしても構いません。

SPPB と 5xSTS は、両方やる必要がありますか?

多くの場面では、まず SPPB で俯瞰し、立ち上がりがボトルネックなら 5xSTS を “ 追加 1 本 ” として入れる形が回しやすいです。両方を毎回ルーチンにすると、忙しい現場ほど条件ズレが増えてしまうため、目的があるときだけ追加がおすすめです。

10 m 歩行は “ 通常 ” と “ 最良 ” のどちらを記録すべきですか?

臨床では、まず “ 通常 ” をベースにしつつ、余裕があれば “ 最良 ” も併記すると変化が読みやすくなります。大事なのは、どちらで測ったかを混ぜないことです。声かけ(例: “ いつも通り ” / “ できるだけ速く ” )も固定し、記録に残します。

参考文献

  1. Podsiadlo D, Richardson S. The timed “Up & Go”: a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. doi: 10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x / PubMed: 1991946
  2. Guralnik JM, Simonsick EM, Ferrucci L, et al. A short physical performance battery assessing lower extremity function: association with self-reported disability and prediction of mortality and nursing home admission. J Gerontol. 1994;49(2):M85-M94. doi: 10.1093/geronj/49.2.m85 / PubMed: 8126356
  3. ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111-117. doi: 10.1164/ajrccm.166.1.at1102 / PubMed: 12091180
  4. Wrisley DM, Kumar NA. Functional gait assessment: concurrent, discriminative, and predictive validity in community-dwelling older adults. Phys Ther. 2010;90(5):761-773. doi: 10.2522/ptj.20090069 / PubMed: 20360052
  5. Peters DM, Fritz SL, Krotish DE. Assessing the reliability and validity of a shorter walk test compared with the 10-Meter Walk Test for measurements of gait speed in healthy, older adults. J Geriatr Phys Ther. 2013;36(1):24-30. doi: 10.1519/JPT.0b013e318248e20d / PubMed: 22415358

おわりに

歩行・バランス評価は、条件の固定→段階的に刺激→同じ型で記録→同条件で再評価のリズムを作ると、一気に “ 迷い ” が減ります。面談準備チェックと職場評価シートも使えるので、次の一手として マイナビコメディカルの無料ダウンロード も活用してみてください。

著者情報

rehabilikun

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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