認知症 OT 実行機能ドリルは L1〜L3 と記録軸をそろえると使いやすいです
認知症 OT の実行機能ドリルは、正答率だけでなく、開始遅延・再指示回数・切替後の誤反応・自己修正を同じ軸で残すと臨床で使いやすくなります。この記事では、手順化・ルール切替・抑制を確認できる L1〜L3 の PDF と、実施後に迷わない記録・進級判断の型を整理します。
このページで答えるのは「どのレベルから始め、何を観察し、次回どう調整するか」です。認知症全体の評価や二重課題との詳細比較は別記事に分け、本記事では実行機能ドリルを短時間で安全に回すことに絞ります。
実行機能ドリル L1〜L3 PDF を開く
以下は、調整済みの r3 版です。院内共有時は、版の混在を防ぐためにリンク先をこの 3 本へ統一してください。
中身をプレビューする(L1)
中身をプレビューする(L2)
中身をプレビューする(L3)
このドリルで見るのは正答率より実行過程です
実行機能ドリルでは、課題が「できたか」だけでなく、どの過程で崩れたかを観察します。開始が遅いのか、切替で旧ルールが残るのか、誤りに気づいて修正できるのかを分けると、次回の難易度調整が具体化します。
評価全体の位置づけは高次脳機能障害 × OT ドリル使い分けハブで整理し、本記事では実行機能ドリルの観察・記録・進級判断に絞って運用します。
| 観察項目 | 詰まりの出やすい場面 | 記録の書き方(例) | 次回の調整 |
|---|---|---|---|
| 開始遅延 | 説明後、取りかかりまでに時間がかかる | 開始まで xx 秒/開始促し x 回 | 説明文を固定し、見本 1 回のみ追加 |
| 再指示回数 | 途中で手が止まる/別ルールへ逸れる | 再指示 x 回(停止した箇所も併記) | 量を減らす/手順を 1 ステップ化 |
| 切替後の誤反応 | ルール変更直後に旧ルールが残る | 切替後誤反応 x / n | 切替回数だけ調整し、量と時間は固定 |
| 自己修正 | 誤りに気づく/気づかない | 自己修正あり/なし、修正までの促し | 自己修正が出るなら 1 段階のみ負荷増 |
| 疲労・離脱 | 集中低下、拒否、途中離脱がある | 疲労徴候、表情、途中中断の有無 | セクション数で調整し、記録項目は維持 |
L1〜L3 は成功体験を保てるレベルから選びます
開始レベルは、難しい課題に挑戦することよりも、同じ条件で比較できることを優先します。初回は L1 から始め、達成率・再指示・疲労・自己修正を見て、1 要素ずつ負荷を上げると失敗体験を減らせます。
| 状況 | 推奨開始 | 進級の目安 | 戻す判断 |
|---|---|---|---|
| 初回導入・不安が強い | L1 | 再指示少なく 7〜8 割達成 | 拒否・疲労・混乱が強い場合は L1 継続 |
| 通常運用・経時比較 | L2 | 切替後誤反応が減る | 旧ルールへの固着が増える場合は L1 へ戻す |
| 高負荷で過程評価 | L3 | 自己修正が増え、離脱がない | 疲労増・離脱・拒否があれば L2 へ戻す |
5 分運用フローで説明・実施・記録を固定します
短時間で使う場合は、実施量を増やすよりも手順を固定します。説明文、実施順、記録項目をそろえることで、日による揺れを減らし、次回の比較がしやすくなります。
- 導入(30 秒):本日の目的を 1 文で共有する。
- 実施(3〜8 分):手順化 → 切替 → 抑制の順で進める。
- 記録(1 分):正答率、再指示、自己修正、疲労徴候を記録する。
- 次回設定(30 秒):同レベル継続か、1 段階変更かを決める。
現場の詰まりどころ
実行機能課題は、気分・体調・環境の影響を受けやすく、単回結果だけでは解釈を誤りやすい領域です。特に、説明が毎回変わる、量・時間・ルールを同時に変える、正答率だけで判断する、という 3 つで経時比較が崩れやすくなります。
詰まりを減らすには、説明文を固定する、変更は 1 要素だけにする、観察項目を固定することが有効です。迷った場合は、先によくある失敗を確認し、次に5 分運用フローへ戻って条件をそろえてください。関連:紙面ドリル運用プロトコル
よくある失敗と対策
| よくある失敗 | 起きる理由 | 対策 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 説明が毎回変わる | 比較条件が揃わない | 読み上げ文をテンプレ化する | 説明変更の有無 |
| 一度に難しくしすぎる | 失敗体験が増える | 量・時間・ルールの 1 要素だけ変更 | 変更した要素を明記 |
| 正答率のみで判断する | 過程情報が不足する | 再指示・自己修正・開始遅延を併記 | 遅延秒数、再指示回数 |
| 切替後の誤反応を残さない | 次回の調整点が曖昧になる | 旧ルールの残存か迷いかを分けてメモする | 旧ルール反応 x 回、迷い x 回 |
よくある質問(FAQ)
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
どのレベルから始めるのが無理がありませんか?
初回は L1 開始が基本です。拒否や疲労が見られる場合は L1 を継続し、成功体験と手順理解が安定してから L2 へ進めると運用が安定します。
注意・記憶課題と同日に実施してもよいですか?
同日実施は可能ですが、当日の主目的を 1〜2 領域に絞ると負担を調整しやすくなります。
進級判断は何を見ればよいですか?
正答率に加え、再指示回数、自己修正、開始遅延、途中離脱の有無を合わせて判断します。
短時間セッションではどこを省略しますか?
セクション数で調整し、記録項目は省略しない方針が有効です。
次の一手
実行機能ドリルを導入したら、同じ症例で注意課題・記憶課題と順番を固定して比較すると、所見が生活場面へつながりやすくなります。続けて読む:認知症 OT 紙面ドリル集、実行機能ドリルと二重課題の使い分け。
参考文献
- Livingston G, Huntley J, Sommerlad A, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396(10248):413-446. DOI: 10.1016/S0140-6736(20)30367-6
- Clare L, Kudlicka A, Oyebode JR, et al. Goal-oriented cognitive rehabilitation for early-stage Alzheimer’s and related dementias: the GREAT RCT. Health Technol Assess. 2019;23(10):1-242. DOI: 10.3310/hta23100
- World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. Geneva: World Health Organization; 2019. 公式ページ
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


