MSQとは?10項目の認知スクリーニングと記録方法
どの認知機能評価を選ぶか迷っている方へ
MSQ(Mental Status Questionnaire)は、Kahnらが報告した10項目の簡便な認知スクリーニングです。短時間で認知機能低下の可能性を確認できますが、MSQだけで認知症の診断や原因の特定はできません。
実務では、誤答数だけで判定せず、聴覚・視覚、覚醒状態、疼痛、実施場所、再提示の有無などを一緒に記録することが重要です。本記事では、MSQの位置づけ、実施条件、記録方法、SPMSQとの違いを、質問文を転載せずに解説します。
MSQは認知機能低下の可能性を拾う評価
MSQは、認知機能低下の可能性を短時間で確認し、次の評価へつなげるためのスクリーニングです。結果だけで認知症と判断したり、認知症の原因や病型を特定したりする検査ではありません。
KahnらのMSQは、原型となった項目群から識別力の高い10項目を選んだ古典的な評価です。主に見当識や個人に関する情報への回答を確認し、誤答数を記録します。
一方、実際の回答には認知機能だけでなく、難聴、視力低下、眠気、疼痛、疲労、言語・文化的背景、急性疾患なども影響します。そのため、MSQは誤答数と実施条件をセットで解釈する必要があります。

| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 確認できること | 質問への誤答数、誤り方、認知機能低下の可能性 |
| 単独では判断できないこと | 認知症の診断、病型、原因、生活上の重症度 |
| 合わせて確認すること | 全身状態、覚醒、感覚器、服薬、生活情報、他の認知機能評価 |
MSQ記録シートPDF
質問文を転載せず、実施条件、誤答数、誤り方、次の対応を1枚に残せる記入式の記録シートです。院内で質問内容や提示方法を定めたうえで、経過比較や多職種共有に使用してください。
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記録シートには患者情報、実施条件、各項目の反応、誤答合計、所見、再評価メモを記入できます。本記事にはMSQの質問文を掲載していないため、質問内容や提示方法は原著論文や院内で採用している資料を確認してください。
実施前に確認する条件
MSQを始める前に、回答へ影響する条件を整えます。条件が不十分なまま実施すると、感覚器障害や全身状態の変化を認知機能低下として捉える可能性があります。
- 覚醒:会話を続けられる覚醒状態か
- 聴覚:質問を聞き取れているか、補聴器が必要か
- 視覚:通常使用している眼鏡が必要か
- 環境:周囲の会話やテレビ音などが少ないか
- 身体状態:疼痛、呼吸苦、発熱、疲労、眠気が強くないか
- 言語:質問の言語を理解できるか
- 急性変化:発症時期や日内変動から、せん妄が疑われないか
強い眠気、急激な状態変化、著しい苦痛、質問を聞き取れない状況では、無理に採点を進めません。先に原因を確認し、条件を整えたうえで再評価します。
MSQの実施手順
施設内で説明、再提示、ヒントの扱いをそろえ、回答を面接者が補完しないことが基本です。同じ患者を経時的に評価する場合は、可能な範囲で時間帯や実施場所もそろえます。
- 実施条件を確認する:覚醒、聴覚、視覚、疼痛、眠気、実施場所を確認します。
- 簡潔に目的を説明する:認知症と決める検査ではなく、現在の状態を確認する質問であることを伝えます。
- 質問を一定の方法で提示する:質問の順番、言い方、再提示の回数を施設内で統一します。
- 回答をそのまま記録する:曖昧な回答や言い直しも含め、面接者が意味を補完せずに記録します。
- 誤答数を集計する:正誤だけでなく、どの種類の項目で誤ったかを確認します。
- 次の対応を決める:条件を整えた再評価、他尺度による確認、医師や多職種への共有につなげます。
再提示とヒントの扱い
再提示やヒントを加えると回答が変わることがあります。再提示を行う場合は、回数と方法を施設内で統一し、記録に残してください。
- 聞き取れなかったために同じ質問を繰り返したのか
- 質問の意味を説明し直したのか
- 選択肢や手掛かりを与えたのか
- 自発回答の後に言い直しがあったのか
これらを区別しておくと、次回評価との比較や多職種での再解釈がしやすくなります。
誤答数と所見のまとめ方
MSQでは誤答数を集計しますが、数字だけで認知機能や認知症の重症度を決めません。実施条件、誤り方、急性変化の有無を併記し、必要に応じて別の認知機能評価へ進みます。
特に、日付や場所の誤りがあったのか、質問全体への注意が続かなかったのか、聞き取りにくさがあったのかによって、同じ誤答数でも意味が異なります。
| 項目 | 記録例 | 目的 |
|---|---|---|
| 実施条件 | 午前、病室、眼鏡あり、補聴器なし、疼痛NRS 2 | 結果に影響した条件を確認する |
| 提示方法 | 再提示なし/聞き取り困難時のみ同一文を1回再提示 | 評価方法の再現性を確保する |
| 結果 | 10項目中3項目で誤答 | 誤答数を共有する |
| 誤り方 | 日付を取り違えたが、場所に関する回答は保たれた | 認知機能の状態を具体的に伝える |
| 次の対応 | 翌日午前、補聴器装着後に再評価する | 評価を次の行動へつなげる |
所見の記録例
「MSQは10項目中3項目で誤答。午前に病室で実施し、眼鏡装着、補聴器なし。日付に関する誤りと注意の逸れを認めた。聴取条件を整え、翌日同時間帯に再評価する」のように、結果、条件、誤り方、次の対応を1つにまとめます。
「認知症あり」「重度認知症」など、MSQだけでは判断できない内容を所見として断定しないことが重要です。
誤答があったときの次の評価
誤答が多い場合は、まず実施条件と急性変化を確認し、その後に目的に合う評価へ進みます。すぐに慢性的な認知機能低下と判断しないようにします。
- 感覚器と全身状態を再確認する:難聴、視力、疼痛、眠気、低酸素、発熱などを確認します。
- 急性変化を確認する:発症時期、日内変動、注意障害があれば、せん妄の可能性を検討します。
- 生活情報を確認する:家族やスタッフから、普段の会話、服薬管理、見当識、生活動作の変化を聴取します。
- 目的に合う尺度を選ぶ:より広い認知領域を確認する場合はMMSEやHDS-R、生活上の重症度を共有する場合はCDRなどを検討します。
- 条件をそろえて再評価する:経過を追う場合は、時間帯、場所、補助具、再提示方法を可能な範囲でそろえます。
MSQの結果がぶれやすい場面
MSQの誤答数は、認知機能以外の条件でも変化します。特に感覚器、覚醒、急性疾患、提示方法、記録不足は、経過比較を難しくする要因です。
| ぶれやすい原因 | 起こりやすい誤解 | 実施時の対応 | 再評価のポイント |
|---|---|---|---|
| 聴覚・視覚の影響 | 聞き取りや見えにくさを認知機能低下と捉える | 補助具、声量、話す速さ、周囲の音を確認する | 感覚条件をそろえて比較する |
| 眠気・疼痛・疲労 | 一時的な反応低下を慢性的な低下と捉える | 苦痛や覚醒を確認し、無理に続けない | 状態が安定した時間帯に再評価する |
| 急性発症・日内変動 | せん妄を認知症と決めつける | 発症時期、注意障害、変動を確認する | 全身状態と経過を合わせて追う |
| 提示方法の違い | 評価者間の結果を同じ条件として比較する | 再提示、説明、ヒントのルールを統一する | 提示方法を記録して比較する |
| 誤答数だけの記録 | 変化の理由を後から確認できない | 実施条件と誤り方を一緒に残す | 同じ項目の変化と次の対応を確認する |
MSQとSPMSQの違い
MSQとSPMSQは、どちらも10項目で誤答数を確認する評価ですが、同じ尺度ではありません。教育歴を考慮した補正や、誤答数による段階的な分類として広く紹介されているのはSPMSQです。
| 項目 | MSQ | SPMSQ |
|---|---|---|
| 正式名称 | Mental Status Questionnaire | Short Portable Mental Status Questionnaire |
| 報告 | Kahnら、1960年 | Pfeiffer、1975年 |
| 項目数 | 10項目 | 10項目 |
| 結果の基本 | 誤答数を記録する | 誤答数を記録する |
| 教育歴の扱い | SPMSQのような定番の補正と混同しない | 教育歴に応じた補正が示されている |
| 実務上の使い分け | 原著や施設基準に沿って運用する | 教育歴を含む採点方法を確認して運用する |
| 代表文献 | Kahn RL, 1960(PubMed) | Pfeiffer E, 1975(PubMed) |
| 比較研究 | Fillenbaum GG, 1980(PubMed) | |
SPMSQの採点方法や教育歴補正を確認したい場合は、SPMSQの評価方法と誤答数の見方へ進んでください。
よくある質問
MSQだけで認知症を診断できますか?
MSQだけでは認知症を診断できません。認知機能低下の可能性を確認するスクリーニングとして使用し、全身状態、生活情報、他の認知機能評価、医師の診察などと合わせて判断します。
MSQの誤答数だけを記録すればよいですか?
誤答数だけでなく、実施場所、時間帯、補助具、覚醒、疼痛、再提示の有無、どの項目で誤ったかを残します。条件を記録すると、再評価時に変化を解釈しやすくなります。
MSQとSPMSQは同じ評価ですか?
別の評価です。どちらも10項目で誤答数を用いますが、SPMSQはPfeifferが報告した尺度で、教育歴を考慮した補正と段階的な解釈が知られています。
質問文を記事や記録用紙に掲載していないのはなぜですか?
本記事では質問文そのものを転載せず、質問内容を記入する形式の記録シートを提供しています。具体的な質問文や提示方法は、原著論文や院内で正式に採用している資料を確認してください。
MSQ実施後の次の一手
MSQは認知機能低下の可能性を拾い、次の評価を選ぶための入口です。誤答があった場合は、感覚器、全身状態、急性変化を確認し、目的に応じてより詳しい評価へ進みます。
参考文献
- Kahn RL, Goldfarb AI, Pollack M, Peck A. Brief objective measures for the determination of mental status in the aged. Am J Psychiatry. 1960;117:326-328. doi: 10.1176/ajp.117.4.326 / PubMed
- Pfeiffer E. A short portable mental status questionnaire for the assessment of organic brain deficit in elderly patients. J Am Geriatr Soc. 1975;23(10):433-441. doi: 10.1111/j.1532-5415.1975.tb00927.x / PubMed
- Fillenbaum GG. Comparison of two brief tests of organic brain impairment, the MSQ and the Short Portable MSQ. J Am Geriatr Soc. 1980;28(8):381-384. doi: 10.1111/j.1532-5415.1980.tb01103.x / PubMed
- Folstein MF, Folstein SE, McHugh PR. “Mini-mental state”. A practical method for grading the cognitive state of patients for the clinician. J Psychiatr Res. 1975;12(3):189-198. doi: 10.1016/0022-3956(75)90026-6 / PubMed
- Morris JC. The Clinical Dementia Rating(CDR): current version and scoring rules. Neurology. 1993;43(11):2412-2414. doi: 10.1212/WNL.43.11.2412-a / PubMed
- Cummings JL, Mega M, Gray K, Rosenberg-Thompson S, Carusi DA, Gornbein J. The Neuropsychiatric Inventory: comprehensive assessment of psychopathology in dementia. Neurology. 1994;44(12):2308-2314. doi: 10.1212/WNL.44.12.2308 / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blogを2022年4月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター2級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

