ブルンストロームステージ(BRS)の評価方法|6段階と記録例

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ブルンストロームステージ(BRS)は上肢・手指・下肢を別々に判定します

評価尺度の全体像から確認する

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ブルンストロームステージ(Brunnstrom Recovery Stages:BRS)は、脳卒中後の片麻痺について、共同運動が優位な状態から分離運動・協調運動へ進む過程を6段階で整理する評価です。

上肢・手指・下肢は、必ず別々に判定します。評価はStage IIIに相当する共同運動から確認し、成立しなければStage II・Iへ、成立すればStage IV〜VIの分離運動へ進むと流れを組み立てやすくなります。

この記事では、各段階の見方、部位別の評価ポイント、判定時にそろえたい条件、記録例を解説します。評価条件と判定根拠をまとめて残せる、A4版のPDF・Excel記録シートも用意しています。

BRSの6段階早見表|上肢・手指・下肢を分けて確認する

BRSは、痙縮の強さだけではなく、共同運動をどの程度随意的に行えるか、共同運動から外れた動きが現れているか、分離運動と協調性がどこまで回復しているかを確認します。

以下は判定の全体像をつかむための独自要約です。原著の検査用紙や判定文を転載したものではありません。最終的な段階は、施設で採用している正式な手順に沿って判定してください。

※スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。

ブルンストロームステージの段階別早見表
Stage 段階の全体像 上肢 手指 下肢
I 弛緩が中心で、随意運動を確認できない 随意的な上肢運動を確認できない 随意的な手指運動を確認できない 随意的な下肢運動を確認できない
II 共同運動の構成要素や連合反応が現れ始める 屈曲・伸展共同運動の一部がわずかに現れる 集団屈曲などのわずかな動きが現れる 背臥位などで屈曲・伸展共同運動の一部が現れる
III 基本的な共同運動を随意的に行える 屈曲または伸展共同運動が明確になる 集団屈曲が主体となり、随意的に開く動きは乏しい 屈曲・伸展共同運動が明確になる
IV 共同運動から外れた動きが一部現れる 肘伸展を保った肩運動や前腕回内外などが一部可能になる 横つまみや不十分な手指伸展などが現れる 座位での膝屈曲や踵を接地した足関節背屈などが現れる
V より複雑な分離運動が可能になる 複数方向の肩運動や肘・前腕の分離が広がる 把持の種類と手指伸展の範囲が広がる 立位での膝・足関節の分離運動が可能になる
VI 分離運動と協調性が正常に近づく 単関節運動や複合運動を協調して行える 各指の分離と協調が良好になる 下肢の回旋や外転を含む協調運動が良好になる

BRSで評価するもの|筋力・痙縮・ADLとは分けて考える

BRSが中心に捉えるのは、片麻痺側の運動が共同運動へどの程度依存しているか、共同運動から外れた分離運動がどこまで可能かという回復段階です。

BRSで中心に確認すること

  • 随意運動の有無
  • 共同運動の出現と随意的な制御
  • 共同運動から外れた分離運動
  • 運動の協調性

BRSだけでは直接判断しないこと

  • 個々の筋の筋力
  • 痙縮の程度だけを切り離した評価
  • 歩行や更衣などのADL自立度
  • 上肢の巧緻性や動作速度の細かな変化

たとえば、痙縮が強いからStage IIIと決めるのではなく、共同運動を随意的に行えるか、共同運動から外れた動きがあるかを合わせて確認します。

BRSの評価フロー|Stage IIIから確認して上下へ分岐する

評価はStage Iからすべて順番に確認するより、共同運動が明確なStage III相当かを入口にすると、短時間で現在の段階を絞りやすくなります。

BRS評価の5ステップ。安全確認後、上肢・手指・下肢を分け、Stage IIIの共同運動を確認し、成立しなければStage I・II、成立すればStage IV〜VIの分離運動を確認して、段階・判定根拠・条件を記録する流れ
BRSはStage IIIの共同運動を起点に確認し、上肢・手指・下肢を分けて判定します。
  1. 安全と実施条件を確認する:疼痛、関節可動域制限、疲労、覚醒、注意、座位・立位の安全性を確認します。
  2. 上肢・手指・下肢を分ける:一つの部位の段階を、他の部位へそのまま当てはめません。
  3. Stage III相当の共同運動を確認する:基本的な屈曲・伸展共同運動を随意的に行えるか確認します。
  4. 成立しなければ下位、成立すれば上位へ進む:Stage II・Iの反応、またはStage IV〜VIの分離運動を確認します。
  5. 正式な判定と評価条件を記録する:段階に加えて、姿位、確認課題、促通・介助、疼痛、疲労を残します。

判定条件をそろえる|姿位・指示・促通を変えない

評価条件をそろえる目的は、独自の採点基準を作ることではありません。正式な判定手順に沿ったうえで、前回評価や他の評価者と比較できる状態を作ることです。

  • 姿位:背臥位、端座位、立位などを記録する
  • 開始肢位:体幹や関節の位置、支持の有無をそろえる
  • 口頭指示:指示の内容や追加説明の有無をそろえる
  • 促通・介助:触刺激、誘導、支持、介助の有無を区別する
  • 代償:体幹側屈、回旋、勢いなどで成立していないか確認する
  • 変動要因:疼痛、疲労、注意、時間帯を記録する

III–IVやIV–Vで判断が分かれる場合は、上位段階へ急いで決めず、BRSの境界判定と再評価方法で、採用・保留・再評価の分け方を確認してください。

上肢・手指・下肢の評価ポイント

同じ患者でも、上肢・手指・下肢の回復段階は一致しないことがあります。それぞれの部位で、共同運動と分離運動を確認します。

上肢|体幹代償と肩関節の状態を確認する

上肢では、屈曲・伸展共同運動がどこまで随意的に行えるかを確認したあと、肘や前腕、肩関節の分離運動へ進みます。

肩関節痛や可動域制限があると、運動麻痺ではなく疼痛や拘縮によって課題を実施できないことがあります。体幹の側屈・回旋、肩甲帯の挙上、勢いによる代償も分けて観察してください。

手指|上肢の段階から推測しない

手指は上肢とは別に、集団屈曲、随意的な手指伸展、つまみ、把持の種類、各指の分離を確認します。

上肢がStage IVでも手指がStage IIやIIIにとどまることはあります。上肢の段階をそのまま手指へ当てはめず、握る動きと離す動きの両方を確認します。

下肢|座位と立位の課題を安全に分ける

下肢では、背臥位や座位で共同運動を確認し、回復段階に応じて座位・立位での膝関節や足関節の分離運動へ進みます。

立位課題では、手すり、平行棒、介助者などによる安全確保が必要です。支持の有無が変わると課題の難易度も変わるため、判定と一緒に記録します。

判定で混同しやすい3つのポイント

1.正式な判定基準と実務上の補足を分ける

段階の判定は、施設で採用している評価用紙や原著の検査手順に従います。姿位、促通、疲労、代償などは、正式な段階とは別の補足情報として記録します。

2.痙縮の強さだけで段階を決めない

Stage IIIでは痙縮が目立つことがありますが、痙縮の程度だけでStage IIIとは判定しません。共同運動の随意性と、共同運動から外れた分離運動の有無を確認します。

3.段階間を等間隔の点数差として扱わない

BRSは順序尺度です。Stage IIからIIIへの変化と、Stage IVからVへの変化を、同じ「1段階分」の改善として量的に比較することはできません。段階だけでなく、実際に可能になった運動と評価条件を記録してください。

記録方法|段階・根拠・条件を1組で残す

「上肢IV、手指III、下肢V」だけでは、次の評価者が同じ条件を再現できません。段階に加えて、判定根拠となった運動と評価条件を短く残します。

BRSの記録で残したい項目
記録項目 記載する内容
部位と段階 上肢・手指・下肢をそれぞれ記載する
判定根拠 主に確認した共同運動・分離運動
姿位・支持 背臥位、端座位、立位、手すり支持など
促通・介助 促通なし、触刺激あり、体幹支持ありなど
変動要因 疼痛、疲労、注意、時間帯
次回条件 前回と同条件で確認する項目
BRS:上肢IV/手指III/下肢V
上肢:端座位、促通なし。分離運動を一部確認。体幹側屈あり。
手指:集団屈曲可。随意的な手指伸展は不十分。
下肢:手すり支持立位で分離課題を確認。
疼痛NRS 2、午後の疲労あり。次回は午前・訓練前に再評価。

BRS-A IV / H III / L Vのような略記を使用する場合は、A・H・Lの意味が施設内で共有されていることを確認してください。初回記録や他施設への情報提供では、「上肢・手指・下肢」と記載する方が伝わりやすくなります。

BRS記録シート|PDF・Excel

上肢・手指・下肢の段階と判定根拠、評価条件、観察所見、再評価条件を1枚にまとめられるBRS記録シートを用意しています。

印刷して手書きする場合はPDF、パソコンで編集・複製する場合はExcelを使用してください。正式な判定は、施設で採用している評価用紙や原著の検査手順を確認してください。

PDF版|印刷して記録する

A4縦1ページです。印刷または端末へ保存して使用できます。

BRS記録シート PDFを開く

Excel版|編集・複製して使う

施設内の運用に合わせて入力・保存したい場合はこちらを使用してください。

BRS記録シート Excelをダウンロード

PDFプレビューを開く

BRS記録シートPDFのプレビューを表示できない場合は、こちらから開いてください

BRSの使い方と限界|回復段階の共有に使う

BRSは、片麻痺の運動回復段階を短く共有する場面に向いています。初回評価、申し送り、カンファレンス、経時的な方向性の確認などで使用できます。

一方、同じステージ内で起きた小さな変化、運動速度、巧緻性、筋緊張、ADL自立度などは十分に表現できません。細かな介入効果を確認するときは、評価目的に応じて上肢機能、運動麻痺、筋緊張、ADLなどの評価を併用します。

また、BRSの段階だけから歩行自立度や上肢の実用性を決めず、実際の動作能力、安全性、感覚障害、注意障害、疼痛などを合わせて判断してください。

安全に評価するための注意点

BRSの評価では、疼痛や関節可動域制限を運動麻痺と混同しないこと、座位・立位課題で転倒を防ぐことが重要です。

  • 肩関節痛や亜脱臼が疑われる場合は、無理な上肢挙上や牽引を避ける
  • 強い疼痛、めまい、著明な疲労、バイタル変化がある場合は中断する
  • 立位課題では、手すりや介助者による支持を確保する
  • 評価後も筋緊張や疼痛の増悪が続く場合は、誘発方法と課題を見直す
  • 前回と条件が異なる場合は、段階の変化と条件差を分けて記録する

よくある質問

各項目名をタップすると回答が開きます。

Q1.上肢と手指のステージが違ってもよいですか?

A.問題ありません。上肢・手指・下肢は別々に判定します。上肢の分離運動が改善していても、手指の伸展や各指の分離が遅れることがあります。

Q2.痙縮が強ければStage IIIですか?

A.痙縮の強さだけでは決めません。基本的な共同運動を随意的に行えるか、共同運動から外れた分離運動があるかを確認して判定します。

Q3.分離運動が一度できたら上位ステージにしてよいですか?

A.施設で採用している正式な判定規則を確認してください。代償、勢い、促通、疼痛回避などによって成立した可能性がある場合は、条件を記録し、必要に応じて同条件で再評価します。

Q4.BRSだけでリハビリテーションの効果を判断できますか?

A.BRSは回復段階の大枠を共有する尺度です。同じステージ内の微細な変化、巧緻性、筋緊張、ADLなどを確認する場合は、目的に応じた評価を併用します。

Q5.PDFとExcelはどちらを使えばよいですか?

A.印刷して手書きする場合はPDF、パソコンで入力・複製・保存する場合はExcelが適しています。評価項目や注意点の内容は共通です。

次の一手|上田式12段階との違いを確認する

BRSより細かく運動麻痺を追いたい場合でも、数字を機械的に換算することはできません。評価目的、検査課題、施設内での運用方法を比較して選びます。


参考文献

  1. Brunnstrom S. Motor testing procedures in hemiplegia: based on sequential recovery stages. Phys Ther. 1966;46(4):357-375. doi:10.1093/ptj/46.4.357
  2. Naghdi S, Ansari NN, Mansouri K, Hasson S. A neurophysiological and clinical study of Brunnstrom recovery stages in the upper limb following stroke. Brain Inj. 2010;24(11):1372-1378. doi:10.3109/02699052.2010.506860PubMed
  3. Twitchell TE. The restoration of motor function following hemiplegia in man. Brain. 1951;74(4):443-480. doi:10.1093/brain/74.4.443PubMed
  4. Huang CY, Lin GH, Huang YJ, et al. Improving the utility of the Brunnstrom recovery stages in patients with stroke: validation and quantification. Medicine (Baltimore). 2016;95(31):e4508. doi:10.1097/MD.0000000000004508

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blogを2022年4月に開設。急性期・回復期・療養病棟、介護福祉施設、訪問リハビリテーションでの臨床経験をもとに、理学療法評価、臨床手順、記録用紙、医療制度などの実務情報を発信しています。

現在は療養病院に勤務し、脳卒中、褥瘡・創傷ケア、リハビリテーション栄養、呼吸リハビリテーションを中心に臨床・教育活動を行っています。

保有資格

  • 脳卒中認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター2級

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