時計描画テスト( CDT )|やり方・採点と記録シート

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時計描画テスト( CDT )のやり方・採点|河野法 9 点

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CDT は「手順固定 → 採点固定 → 所見の言語化」でブレが減ります。先に総論と関連評価の置き場所をそろえると、申し送りと経時比較が安定します。

認知機能評価の選び方を確認する

MMSE の見方と使い方DASC-21 と CDR の違い

時計描画テスト( Clock Drawing Test: CDT )は、紙とペンだけで 1〜3 分 ほどで実施できる認知機能スクリーニングです。臨床では「点数を付けること」より、どこで崩れたか を見て、次の追加評価や環境調整につなげる使い方が実用的です。

この記事で答えるのは、河野法( 9 点法 )でのやり方・採点・記録・所見の読み方 です。認知機能評価全体の選び方や、生活機能尺度との詳細比較までは広げず、現場で再現できる運用 に絞って整理します。

時計描画テスト( CDT )の基本手順を A・B・C の 3 ステップで示した図版
CDT は「 A :円 → B :数字 → C : 10 時 10 分の針」の順で教示を固定すると、実施と記録のブレを減らしやすくなります。

準備(所要 1〜3 分)

  • 無地 A4 用紙 1 枚、黒ペン(消せないもの)。
  • 筆記しやすい机・肘掛けを準備し、眼鏡・補聴器の装用を確認します。
  • 短い会話で「聞こえ」「理解」「注意」を確認します(氏名・日付・場所など)。
  • 周囲の時計は見えない位置にし、静かな環境で行います。
  • 利き手、麻痺、振戦、疼痛、失調、姿勢保持の条件を先に確認します。

やり方(標準スクリプト)

  1. 円を描く:「この紙に、丸い時計の円 を書いてください。」
  2. 数字を入れる:「その中に、1 から 12 までの数字 を時計のように入れてください。」
  3. 時刻を示す:10 時 10 分 を指すように針を書いてください。」

原則として、読み上げは 1 回で固定します。「もう少し右」などの誘導は入れません。迷った場合は「わからないで大丈夫です」と伝え、所要時間、再指示の有無、中止理由を記録します。

10 時 10 分と 11 時 10 分の違い

CDT は運用によって 10 時 10 分11 時 10 分 が混在しやすい検査です。重要なのは「どちらが正しいか」より、施設内で固定して経時比較の再現性を担保すること です。本記事は河野法の運用に合わせて 10 時 10 分 で統一します。

河野法 CDT( 9 点法 )|A・B・C の流れ

河野法は、A(円)→ B(数字配置)→ C(針) の 3 段階で観察する採点スキームです。合計 9 点 で評価し、最終的な絵だけでなく、どの段階で破綻したか を分けて見やすいのが利点です。

河野法( 9 点法 )の構成と観察の焦点
テスト 用紙 見るところ(要点) 配点 現場メモ(例)
A 白紙 円の構成(大きさ・歪み・閉じるか) 最大 1 円が極端に小さい/大きい、開始で停滞、線が二重になる
B 円のみ印刷 数字の数・順序・配置(偏り、欠落、重複) 最大 6 左側欠落、 12・ 3・ 6・ 9 のみ、数字重複、並びが錯綜する
C 文字盤あり 針の理解と配置(時・分の区別) 最大 2 針が 1 本だけ、向き誤り、時針と分針の逆転

CDT の位置づけ|何を見る検査か

CDT は、円・数字・針を構成する過程を通して、視空間認知実行機能注意指示理解 をまとめて観察しやすい検査です。短時間で入口を作れる一方、単独で診断を確定する検査ではありません

臨床では、得点だけで終わらせず、「どこで崩れたか」→「次に何を追加するか」 に変換して使うと価値が高くなります。視力、巧緻性、麻痺、教育歴、疲労、せん妄、難聴などで結果が揺れるため、実施条件を必ず併記して解釈する のが前提です。

CDT で観察しやすい要素と次の追加評価
観察ポイント 崩れ方の例 次に確認したいこと
視空間認知 数字の偏り、左右差、一部欠落 線分二等分、キャンセレーション、模写課題
実行機能 順序が飛ぶ、重複する、針の取り違え TMT-A/B、段取り課題、切替課題
注意・指示保持 途中で手が止まる、課題を忘れる Digit Span、聴覚理解、注意課題
理解・言語 数字概念の誤り、教示の取り違え 失語の確認、言語理解のスクリーニング
運動要因 線が震える、巧緻性低下で構成が破綻する 上肢機能、書字、姿勢保持、支持条件の確認

現場の詰まりどころ|よくある失敗と回避手順

CDT は簡便なぶん、どこがブレやすいかどう固定するか を先に決めておくと、結果の再現性が上がります。点数の読み方まで含めて整理したいときは、関連して MMSE の見方と使い方 も合わせておくと、所見の共有がしやすくなります。

よくある失敗

  • ヒントを足してしまう:「もう少し右」「針は 2 本」などの誘導で結果が変わる。
  • 時刻が混在する: 10 時 10 分と 11 時 10 分が部署内で混ざり、経時比較が崩れる。
  • 条件を書かない:眼鏡、利き手、麻痺、振戦、疼痛、失調が未記載で解釈しにくい。
  • 採点法が毎回違う:河野法なのか他法なのかが不明で、過去比較ができない。
  • 点数だけで終わる:偏り、欠落、重複、針の逆転などの質的所見が残らない。

回避手順(固定すると安定すること)

  1. 教示を固定:読み上げ文、再指示の扱い、時刻を統一します。
  2. 条件を固定:眼鏡、姿勢、机、筆記具、利き手を毎回そろえます。
  3. 採点を固定:河野法( 9 点法 )と明記し、満点と判定の目安を記録に残します。
  4. 所見を固定:「偏り」「欠落」「重複」「逆転」などの語で書き残します。
  5. 次アクションを固定:視空間系、実行機能系、注意系のどれを追加するかまで決めます。

レポート例・再検タイミング

CDT は、点数+質的所見+条件 の 3 点セットで書くと、後から読み返しても解釈しやすくなります。経時比較では、同条件・同スキームで再検することが最優先です。

レポート例

CDT:右手利き、眼鏡あり。教示理解は概ね可能。河野法( 9 点法 )で 6 / 9。数字の重複と針の方向誤りを認める。所要 1 分 40 秒、再指示なし。

次アクション:視空間の偏り確認として線分二等分、実行機能確認として TMT-A/B を追加。運動要因は軽度振戦あり。

再検タイミングの目安

  • 回復期では、同一条件・同一スキームで 1〜3 か月 ごとの再検が実務的です。
  • 急性期では、退院前後や転棟時などの節目で行い、学習効果の可能性 を解釈に添えます。
  • 再検時は、眼鏡、筆記具、姿勢、実施者の教示差をそろえておくと比較しやすくなります。

記録シート PDF

CDT の実施条件と所見を毎回同じ順で残したいときは、下記の A4 記録シートを使うと、経時比較と申し送りがしやすくなります。採点だけでなく、数字の偏り、欠落、重複、針の逆転などの質的所見も短く残せる前提で使うのがおすすめです。

記録シート PDF を開く(ダウンロード)

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よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

CDT は 10 時 10 分と 11 時 10 分、どちらでやればいいですか?

大切なのは「どちらが正しいか」より、施設内で固定して再現性を担保すること です。経時比較をするなら、時刻・採点法・満点・判定の目安をセットで統一します。本記事は河野法の運用に合わせて 10 時 10 分 で固定しています。

ヒントはどこまで許されますか?

基本はスクリプト以外の誘導を入れない運用が安全です。どうしても再指示が必要になった場合は、再指示の内容と回数 を記録し、解釈で補正します。

麻痺や振戦がある場合でも CDT は使えますか?

使えますが、運動要因で崩れる可能性があるため、利き手・麻痺・振戦・疼痛・姿勢・支持条件 を必ず記録します。必要に応じて、模写課題や別形式の評価を併用し、認知要因と運動要因を切り分けます。

CDT が低得点なら、まず何を追加評価しますか?

所見で決めます。偏り・欠落 が強ければ視空間系、重複・錯綜 が強ければ実行機能系、指示保持 が怪しければ注意・理解の評価を優先します。

河野法の点数だけで判定してよいですか?

点数だけで終わらせず、質的所見実施条件 を合わせて読むのが安全です。CDT は入口として有用ですが、必要に応じて MMSE、HDS-R、生活機能評価、家族情報を統合して判断します。

次の一手


参考文献

  • 河野和彦. 痴呆症臨床における時計描画検査( The Clock Drawing Test, CDT )の有用性. The Journal of Showa Hospital. 2004;1(1):76-89. DOI: 10.11163/akanekai.1.76
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  • Rouleau I, Salmon DP, Butters N, Kennedy C, McGuire K. Quantitative and qualitative analyses of clock drawings in Alzheimer’s and Huntington’s disease. Brain Cogn. 1992;18(1):70-87. DOI: 10.1016/0278-2626(92)90112-Y
  • Yamamoto S, Mogi N, Umegaki H, Suzuki Y, Ando F, Shimokata H, Iguchi A. The clock drawing test as a valid screening method for mild cognitive impairment. Dement Geriatr Cogn Disord. 2004;18(2):172-179. DOI: 10.1159/000079198
  • Ehreke L, Luppa M, König HH, Riedel-Heller SG. Is the Clock Drawing Test a screening tool for the diagnosis of mild cognitive impairment? A systematic review. Int Psychogeriatr. 2010;22(1):56-63. DOI: 10.1017/S1041610209990676
  • Aprahamian I, Martinelli JE, Neri AL, Yassuda MS. The Clock Drawing Test: a review of its accuracy in screening for dementia. Dement Neuropsychol. 2009;3(2):74-81. DOI: 10.1590/S1980-57642009DN30200002

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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