【ALSFRS-Rの評価項目とは】筋萎縮性側索硬化症の重症度評価

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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

   

読者の皆さまは筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のリハビリテーションを実施したことがあるでしょうか?

近年、高齢化社会や医療の進歩における寿命の延長もあり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者数が増加傾向にあります。

   

実際に筆者が働いている医療機関でも筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の新規入院は定期的に発生しており、筆者も視線入力装置の導入などに携わらせていただいた経験があります。

  

リハビリテーションを実施するうえで定期的な病態の評価や効果判定は欠かすことができませんが、ALS の評価方法にはどのようなものがあるでしょうか?日常生活動作(ADL)の評価指標には FIM(機能的自立度評価法)や Barthel Index(バーセルインデックス)を始めとして、さまざまなものが開発されていますが、 ALS 患者を評価するためには ALS 患者に特化した指標を使用することが望ましいと考えられます。

    

そこでこちらの記事では、ALS に特化した評価尺度である ALSFRS-R について紹介させていただきます。

こちらの記事を読むことで、ALSFRS-R についての理解が深まり、今後の ALS の診療やリハビリテーションに貢献することができれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。

  

療法士の働き方に対する記事の 1 つが右記になりますが、"理学療法士は生活できない?PTが転職を考えるべき7つのタイミング"こちらの記事は検索ランキングでも上位を獲得することができております。興味がある方は、こちらの記事も目を通してくれると幸いです☺

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筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、身体の筋肉が徐々に痩せ、力がなくなっていく疾患になります。

最近ではドラマなどでも ALS を題材にすることもあり、ALS という疾患についての認知度は以前よりも高くなったのではないかと考えられますが、Amyotrophic Lateral Sclerosis の略称が ALS ということになります。

筋肉が痩せていく疾患と説明しましたが、ALS は筋肉そのものの病気ではありません。

人間の身体は、脳や脊髄に存在する神経系(上位・下位運動ニューロン)からの指示で筋肉を動かす仕組みとなっておりますが、ALS ではこの神経系に障害が発生します。

神経系、すなわち運動ニューロンに障害が生じた結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなり、結果として筋肉に力が入る機会がなくなっていき、筋肉の萎縮へと繋がっていきます。

ALS 症状の経過

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は指、腕などの上肢症状から発症する場合が 50 ~ 60 % 程度、転びやすいなどの下肢症状から発症する場合が 20 ~ 25 % 程度、呂律不良・嚥下困難の球麻痺症状から発症する場合が 20 ~ 25 % 程度と報告されています。

経過は個人差が大きく、発症後 1 年で呼吸不全となる症例もあれば 10 年以上も歩ける人もいます。

しかし、前述したように進行性の運動ニューロン障害により、身体の全ての筋肉が動かなくなる疾患になります。

症状が進行していくと次第に呼吸筋にも影響をもたらすようになります。呼吸障害から始まり、やがて自発的な呼吸ができなくなると、気管切開下陽圧換気(TPPV)による呼吸管理が必要になります。

人工呼吸器管理というと「何とか生命を維持している状態」という印象もあるかもしれませんが、そんな一方で気管切開下陽圧換気(TPPV)を装着することにより 10 年以上生存できる症例も多数おります。

先行研究によると、ALS 患者の発症から侵襲的換気療法、または死亡までの期間の中央値は 20 ~ 48 カ月と報告されています。

気管切開下陽圧換気(TPPV)による呼吸管理を導入するか否かについては、国によって考え方が異なります。

英国、カナダ、米国などの諸外国では気管切開を伴う侵襲的換気療法(TIV)、気管切開下陽圧換気(TPPV)を装着することは珍しいですが、日本では気管切開下陽圧換気(TPPV)装着率が高く、Tagami らの調査によると 1999 ~ 2010 年の間に 160 人中 52 人が TPPV を装着していたと報告しています。

気管切開下陽圧換気(TPPV)装着後の生存期間は平均 49.1 カ月とされ、装着例の生存期間は装着なしの患者群に比して有意に延長していたとの報告もあります。

気管切開下陽圧換気(TPPV)を装着することで生存期間は延長されますが、一方で気管切開下陽圧換気(TPPV)装着後は基本的に全介助下での生活となりことが予測されます。

また、意思の疎通が一切行うことができない完全閉じ込め状態に至る患者も少なくありません。

本邦では気管切開下陽圧換気(TPPV)装着後の ALS 患者に対しリハビリテーションを実施することも多く、それが年単位に及ぶことが諸外国と異なる点といえます。

このような日本特有の背景も踏まえ、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する支援を検討していく必要があります。

ALSFRS-Rとは?

ALSFRS(ALS Functional Rating Scale)とは、ALS 患者の日常生活動作能力を判定するために米国で作成された評価尺度になります。

ALSFRS は 1990 年代に開発されて以降、臨床で使用されておりましたが、呼吸機能障害と比較し、 四肢障害と延髄評価に過剰な重みづけがなされているのではないかと指摘されていました。

このような背景から ALSFRS はその後、ALSFRS-R として改定されています。ALSFRS-R では呼吸機能評価項目に、呼吸困難・起坐呼吸・換気補助の項目が追加され、より ALS 患者の日常生活を判定するのに相応しい評価尺度にアップデートされています。

ALSFRS-R 評価項目

ALSFRS-R は球麻痺の症状(言語、唾液分泌、嚥下)、上肢の ADL(書字、摂食動作、着衣)、下肢の ADL(寝床、歩行、階段)、呼吸状態(呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全)の 4 つのパートで構成されています。

全 12 項目について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 言語
  2. 唾液分泌(よだれの状態)
  3. 嚥下(摂食状態)
  4. 書字
  5. 摂食動作(食事用具の使い方 or 指先の動作)
  6. 着衣(着衣の介助の依存度)
  7. 寝床での動作(寝返りができるかどうか)
  8. 歩行
  9. 階段をのぼる(階段の介助の依存度)
  10. 呼吸困難
  11. 起坐呼吸
  12. 呼吸不全

ALSFRS-R 評価方法

患者への聞き取りおよび、実際の動作を観察して採点を行います。以下の 12 項目について、0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

5 番目の評価項目となる摂食動作については、胃瘻の使用の有無で評価内容が変わるため注意が必要になります。

各項目ごとの詳細な評価方法について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定していきます。

言語

ALS では球麻痺症状により、呂律が回りにくくなり、しっかり声として発声することが難しくなることがあります。

日常生活における会話の障害の程度について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 正常
  2. 会話障害が認められる
  3. 繰り返し聞くと意味がわかる
  4. 声以外の伝達手段と会話を併用する
  5. 実用的会話の喪失

唾液分泌

舌や口が動きにくくなる球麻痺が進行すると唾液を適切に飲み込むことができなくなり、よだれが垂れるようになります。

唾液が溜まることにより、余計に話しにくい状態になったり、唾液でむせ込むこともあります。

常にティッシュやタオルが必要となり、人前に出ることが苦痛になる場合もあり、精神的にも辛い症状になります。

  1. 正常
  2. 口腔内の唾液量は普通より多いが、よだれを垂らさずに日常生活を送ることができる(夜間は垂れることもある)
  3. 口腔内の唾液量は中程度に過剰であり、日常生活において、よだれが垂れることもある
  4. 口腔内の唾液量は過剰であり、日常生活において、しばしばよだれが垂れる
  5. 口腔内の唾液量が著しく、絶えずティッシュペーパーやハンカチを必要とする

嚥下

経口摂取する場合には、食べ物を口に運ぶ、口を閉じておく、噛み砕く、舌を動かすなどの機能を必要としますが、ALS ではこれら摂食嚥下に必要となる筋肉に筋力低下を来すため、摂食嚥下障害が生じます。

嚥下機能について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 正常な食事習慣である
  2. 初期の摂食障害を認め、時々食べ物を喉に詰まらせる
  3. 食べ物の内容を変化させるなど、食事内容の工夫を要する
  4. 経管栄養(チューブ栄養)が補助的に必要である
  5. 全面的に非経口性または腸管性栄養となる

書字

ALS 患者の多くは発話によるコミュニケーションが困難となった場合、それを補う手段として文字を用います。文字を用いたコミュニケーション方法として、書字能力は特に重要と考えられます。

しかし、ALS 患者の中には認知機能障害を呈する患者が存在し、言語・意欲・注意・実行機能など、さまざまな症状を呈することが報告されています。

その症状の 1 つに書字障害があり、ALS 患者の中には運動機能障害によらない書字障害を呈する者が存在するため、こちらの項目が用意されています。

  1. 正常
  2. 遅く拙劣だが全ての単語が判読可能である
  3. 判読できない文字がある
  4. ペンは握れるが、字を書けない
  5. ペンを握れない

胃瘻なし:食事用具の使い方

こちらの項目は「摂食動作」を評価する項目であり、摂食動作を通して上肢の ADL を評価する項目になります。

胃瘻の使用の有無で評価内容が変わるため注意が必要になります。

胃瘻を使用していない場合には「食事用具の使い方」についてを、胃瘻を使用している場合には「指先の動作」について判定します。

  1. 正常
  2. 少し時間がかかり、ぎこちなさはあるが他人の助けは必要としない
  3. フォーク・スプーンは使えるが、箸を使うことはできない
  4. 食物は誰かに切ってもらはなければならないが、何とかフォークまたはスプーンで食べることができる
  5. 誰かに食べさせてもらう必要がある

胃瘻あり:指先の動作

前項に引き続いて上肢の ADL を評価する項目になります。

胃瘻を使用している場合には摂食動作場面がない可能性があるため、そのような場合には「指先の動作」について判定をします。

  1. 正常
  2. ぎこちないがすべての指先の作業ができる
  3. ボタンやファスナーを留めるのにある程度手助けが必要となる
  4. 身の回りの動作に手助けが必要となる
  5. 全く指先の動作ができない

着衣、身の回りの動作

ALS では筋力低下の影響により、腕を持ち上げる機能や指先の巧緻性が低下するため、着衣や身の回りの動作(顔を洗う、歯を磨く、髪をとかす)が行うことが難しくなります。

着衣、身の回りの動作能力について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 正常
  2. 時間がかかったり、努力を要するが介助は不要である
  3. 時々介助あるいは工夫を要する
  4. 介助が必要である
  5. 全面的に介助が必要である

寝床での動作

ベッド上での寝返り動作能力は褥瘡予防の観点からも非常に重要な動作能力となります。

寝床での動作について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 正常
  2. 時間がかかったり、努力を要するが介助は不要である
  3. 独りで寝返りをしたり、寝具を整えることができるが非常に苦労する
  4. 寝返り動作を開始することはできるが、独りで寝返り動作を完結したり、寝具を整えることはできない
  5. 自分ではどうすることもできない

歩行

歩行動作について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 正常
  2. やや歩行が困難である
  3. 補助歩行となっている
  4. 歩行は不可能だが脚を動かすことはできる
  5. 脚を動かすことができない

階段をのぼる

階段をのぼる動作について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 正常
  2. 遅い
  3. 軽度に不安定、疲れやすい
  4. 介助を要する
  5. 登ることができない

呼吸困難

ALS では呼吸筋筋力低下や口腔内の唾液貯留量増加により呼吸困難感を引き起こすことがあります。

呼吸困難の程度について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 呼吸困難の出現なし
  2. 歩行時に出現する
  3. 食事、入浴、着替えのいずれかの日常生活動作で出現する
  4. 座位あるいは臥床安静時のいずれかで出現する
  5. 呼吸困難は極めて困難であり、補助呼吸装置を考慮する段階にある

起坐呼吸

仰臥位になると腹部臓器が頭側へ移動し、かつ呼吸補助筋が働きにくくなるため、臥床時には座位と比較して肺活量が低下します。

ALS では横隔膜の筋力低下により、より顕著に肺活量が低下するため、臥床状態であると呼吸困難の症状が強くなり、身体を起こして呼吸をすると楽になることがあります。

起坐呼吸について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 症状なし
  2. 息切れのため夜間の睡眠がやや困難となる
  3. 眠るのに支えとする枕が必要である
  4. 座位をとらないと睡眠することができない
  5. 全く睡眠することができない

呼吸不全

ALS では呼吸筋力の低下により血液中の酸素分圧が低くなったり、それに伴って二酸化炭素分圧が高くなったりすることで呼吸不全に至る可能性があります。

呼吸不全について 0 ~ 4 点の 5 段階で判定します。

  1. 呼吸不全なし
  2. 間欠的に補助呼吸装置を必要とする
  3. 夜間に継続的に補助呼吸装置を必要とする
  4. 昼間も夜間も 1 日中、補助呼吸装置を必要とする
  5. 挿管または気管切開による人工呼吸装着が必要となる

カットオフ値、結果の解釈

ALSFRS-R は全 12 項目を 0 ~ 4 点の 5 段階で判定する評価尺度になります。そのため、最高得点は 48 点となり、得点が高いほど ALS の重症度は低い(症状が進行していない)ということになります。

一方、最低得点は 0 点となり、得点が低いほど ALS の重症度が高い(症状が進行している)ということになります。

ALSFRS-R のカットオフ値については特別ありませんが、病態進行速度の予測方法として報告している研究があります。

【病態進行速度の予測】

1 ヶ月間の ALSFRS-R のスコアが 0.67 以上低下している症例では病態の進行が急速である

Kimuraら(2006)

筋萎縮性側索硬化症(ALS)エネルギー必要量

ALS患者さんでは、体重が減少することがわかっています。その理由はさまざまですが、体重を減少させないことがその後の病状の進行に影響するとされています。

エネルギー必要量の推定は、対象者の状態に合わせた計算式が必要になるため、簡単なものではありませんが、「筋萎縮性側索硬化症(ALS)の情報サイト:ALSステーション」というWEB サイトのでは、性別・年齢・身長・体重・ALSFRS-R スコアを入力するだけで ALS 患者の 1 日の推定エネルギー必要量が算出できるようになっております。

大変便利で効果的なサービスになっているため、ご紹介させて頂きました。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「ALSFRS-R」をキーワードに解説させて頂きました。

こちらの記事を読むことで、ALSFRS-R についての理解が深まり、今後の ALS の診療やリハビリテーションに貢献することができれば幸いです。

参考文献

  1. 阿部康二.ALSの臨床,病態と治療.脊髄外科.2012年,26巻,3号,p270-277.
  2. 日野創.筋萎縮性側索硬化症に対するリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2016,53,p529-533.
  3. 早乙女貴子.筋萎縮性側索硬化症(ALS)のリハビリテーション治療.Jpn J Rehabil Med .2018,55,p539-544.
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