高次脳機能評価ハブ|USN・注意・遂行機能の索引

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高次脳機能評価ハブ:USN/注意/遂行機能/失行/アパシーを迷わず引ける索引

高次脳機能の評価は「症状が多い」「現場で時間がない」「担当が変わるたびに運用がブレる」で詰まりやすい領域です。本記事は、ベッドサイド → 作業場面 → 再評価の流れで、まず何を見て、次に何を追加するかを索引(ハブ)として整理します。

評価の全体像(全領域の地図)から確認したい場合は、評価ハブもあわせてどうぞ。

臨床が回らない時は「評価の型」と「環境」から整える

高次脳は、評価の上手さよりも「相談できる相手」「教育体制」「運用の統一」で差がつきます。困った時に動けるよう、選択肢を先に揃えておくのも 1 つの手です。

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まずは流れ:ベッドサイド → 作業場面 → 再評価で迷いを減らす

最初から検査を並べるより、「どの症状が主役か」を切り分けてから深掘りした方が、短時間でも精度が上がります。特に脳卒中では、 USN(半側空間無視)・注意・遂行機能・失行・アパシーが重なりやすく、見落としが起きやすいです。

このハブでは、①ベッドサイドでスクリーニング → ②作業場面で困りごとを特定 → ③同条件で再評価、の順に整理します。

ベッドサイド:まず「見落としやすい 5 つ」を拾う

ベッドサイドは「短時間で拾う」が目的です。ここで“どれが主役か”の当たりをつけ、作業場面で深掘りします。

ベッドサイドの最初の見立て(短時間で拾うポイント)
領域 まず見るサイン よくある見落とし 次の一手
USN(半側空間無視) 視線・探索の偏り、衝突、食事の偏り 「机上テストは OK でも ADL で出る」 観察評価( ADL での困り)へ
注意 指示の入りにくさ、持続困難、逸脱 眠気/せん妄/疲労と混ざる 環境(疲労・疼痛・時間帯)を固定して再観察
遂行機能 段取りの崩れ、自己修正の乏しさ 「できない」ではなく「やり方がズレる」 手順を伴う課題(更衣・整容)で確認
失行 道具操作の誤り、模倣困難 麻痺や失語の影響と混同 模倣/道具使用/系列動作で切り分け
アパシー 自発性低下、開始が遅い、働きかけ待ち 抑うつと混同して対応がズレる 「意欲の低下」を構造化して記録

作業場面: ADL で「困りごと」を言語化して評価につなぐ

高次脳は、机上の成績より実生活の困りが重要な場面が多いです。観察のコツは、失敗を「能力の低下」ではなく“どの工程でズレたか”として分解することです。

ADL 観察の分解(困りごと → 工程 → 記録の一言)
困りごと ズレやすい工程 関与しやすい領域 記録の一言例
食事で左側を残す 探索・注意の配分 USN /注意 「左側の探索が乏しく、声かけで改善」
更衣で順番が崩れる 段取り・自己修正 遂行機能 「工程の飛ばしあり、修正の自発性は乏しい」
歯磨きで道具操作が不自然 道具使用・模倣 失行 「手順は理解、道具操作で誤りが出る」
開始が遅く、促しがないと動けない 開始・動機づけ アパシー 「開始は遅いが、開始後は一定の遂行が可能」

代表スケールの位置づけ:何をいつ使うか(早見)

ここでは「どの領域に、どんな目的で当てるか」を整理します。検査は増やすほど良いわけではなく、“困りごとを説明できる最小構成”にするのが運用しやすいです。

高次脳機能の代表スケール(目的と使いどころの早見)
領域 代表例 得意なこと 使いどころ 運用メモ
USN CBS(観察)/机上テスト(線分二等分など) ADL の困り(観察)+机上の偏り 「 ADL で出る」タイプの見落とし対策 観察は条件を揃えて再評価しやすい
注意 机上課題/ dual task 的な観察 持続・選択・分配の偏り 指示が入らない/逸脱が多い時 疲労・疼痛・時間帯を固定する
遂行機能 FAB(簡便)/手順課題 切り替え・抑制・計画 段取りが崩れる/自己修正が弱い時 「工程のズレ」を記録して介入に直結
失行 模倣/道具使用/系列動作の観察 道具操作の誤りの切り分け 運動麻痺や失語と混ざる時 できる/できないより「誤り方」を残す
アパシー Starkstein Apathy Scale( SAS )など 自発性低下の構造化 促し待ちが多い/開始が遅い時 抑うつと分けてチームで共有

再評価:変化を「症状」ではなく「条件の中で」追う

高次脳は日内変動が大きく、評価の比較が難しくなりがちです。再評価で大事なのは、頻度より条件の統一です。

再評価で揃える最低限(ブレを減らすチェック)
項目 揃える理由 運用例 記録の一言例
時間帯 覚醒・疲労で成績が変わる 午前の同じ枠で実施 「 10 時台、食後 30 分」
環境 刺激量で注意がブレる 静かな場所、同席人数を固定 「病室/ 1 対 1 」
声かけ 介入で結果が変わる 声かけルールを統一 「開始合図のみ、途中介入なし」
課題 課題差で比較できない 同じ課題(更衣の同工程など) 「上衣更衣:袖通しまで」

現場の詰まりどころ:評価が増えるほど「運用」が崩れる

高次脳は「気になるから検査を追加」になりやすく、気づくと誰も回せない状態になりがちです。詰まりの典型は、①スクリーニングが統一されない、② ADL 観察の言語化がバラバラ、③再評価条件が揃わない、の 3 つです。

まずはこのハブの表をベースに、“最初に拾う 5 つ”“ ADL の分解の書き方”だけでも統一すると、チームの会話が揃ってきます。面談準備のチェックなど、手元の型を揃える資料が必要なら 無料ダウンロード も使えます。

よくある質問(FAQ)

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

最初に何をやればいいですか?検査を決める前に見るべきことは?

最初は「検査の選定」よりも、ベッドサイドで拾う 5 つ( USN /注意/遂行機能/失行/アパシー)のどれが主役かを当てにいくのが早道です。主役の見当がついたら、 ADL 観察で「どの工程でズレるか」を言語化し、必要最小限の評価に絞っていきます。

USN は机上テストで陰性でも疑うべきですか?

はい。机上で整って見えても、 ADL では探索や注意配分の偏りが出ることがあります。食事・移動・更衣などで偏りや衝突がある場合は、観察ベースで困りを拾い、同じ条件で再評価して変化を追うと整理しやすいです。

抑うつとアパシーの区別が難しいです

混ざりやすいポイントなので、まずは「開始が遅い」「促し待ち」「自発性が弱い」など行動として書き出し、チームで共有できる形にします。評価は、症状のラベルよりも「何ができれば ADL が進むか」に直結する情報が重要です。

再評価の頻度はどのくらいがいいですか?

目的次第ですが、頻度よりも「条件の統一(時間帯・環境・声かけ・課題)」が最優先です。条件が揃っていれば、少ない回数でも変化が読み取りやすくなります。

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参考文献

  • Azouvi P, et al. Behavioral assessment of unilateral neglect: study of the psychometric properties of the Catherine Bergego Scale. Arch Phys Med Rehabil. 2003;84(1):51-57. doi:10.1053/apmr.2003.50062. PubMed
  • Dubois B, et al. The FAB: a Frontal Assessment Battery at bedside. Neurology. 2000;55(11):1621-1626. doi:10.1212/WNL.55.11.1621. PubMed
  • Starkstein SE, et al. Reliability, validity, and clinical correlates of apathy in Parkinson’s disease. J Neuropsychiatry Clin Neurosci. 1992;4(2):134-139. doi:10.1176/jnp.4.2.134. Journal
  • Wilson B, Cockburn J, Halligan P. Development of a behavioral test of visuospatial neglect. Arch Phys Med Rehabil. 1987;68(2):98-102.

著者情報

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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