MGFA 分類とは?MG-ADL・QMG・PIS の使い分けと記録例
重症筋無力症( MG )の重症度評価で先に決めたいのは、 MGFA をどう固定し、 MG-ADL ・ QMG ・ PIS をどう使い分けるかです。MG は時間帯・内服・疲労で症状が揺れやすく、「どの尺度で何を記録するか」が曖昧だと、カルテ・申し送り・カンファレンスの言葉が揃いません。
本記事は、 MGFA は最重症時の分類、経過は MG-ADL / QMG 、介入後の要約は MGFA-PIS という実務の順番に絞って整理します。診断アルゴリズムや薬物治療の選択、 MGC の詳説までは広げず、現場で迷わない使い分けに焦点を当てます。
この親記事から辿れる小記事(まずここ)
最初に “詰まりやすいところ” だけ小記事で切り出しました。必要なところから読めば OK です。
| テーマ | 小記事 | 読むと解決すること |
|---|---|---|
| MGFA a / b | MGFA a / b の見分け方(球・呼吸優位を落とさない) | 「 a / b がブレる」問題を、食事と会話の持続性で統一 |
| MG-ADL 運用 | MG-ADL の使い方(条件を揃えて追跡する) | 「今日は良い/悪い」で点が動く問題を、条件固定で解消 |
最短まとめ:まずこの 1 枚で使い分け
| 尺度 | 得意な用途 | 使うタイミング | 記録のコツ | 詰まりどころ |
|---|---|---|---|---|
| MGFA | 最重症時の「分類」共有 | 入院・急性増悪・転院紹介 | クラス+ a / b を併記する | 球症状/呼吸優位を見落とす |
| MG-ADL | 日常の困りごとの追跡 | 外来フォロー・病棟経過 | 時間帯・内服・活動直後を揃える | 「今日は良い/悪い」でブレる |
| QMG | 介入前後の客観比較 | 評価会議・臨床試行・説明 | 体位・手順・休憩を標準化する | 条件差で比較不能になる |
| MGFA-PIS | 治療反応の「状態名」付け | 治療変更後・退院時要約 | MGFA とセットで表記する | 寛解/改善の言い回しが揃わない |
現場の詰まりどころ:流れが崩れる 3 パターン
MG の評価は尺度の数が問題ではなく、順番が混ざることで崩れやすくなります。以下の 3 パターンを避けるだけで、申し送りと経時比較はかなり整います。
| よくあるズレ | 何が困る? | 整え方(実務) |
|---|---|---|
| MGFA を毎回更新してしまう | 分類が「時系列の点数」と混ざり、比較がしにくくなる | MGFA は最重症時を固定し、経過は MG-ADL / QMG で追う |
| MG-ADL の条件がバラバラ | 「変わった」のか「条件差」なのか判断できない | 時間帯・内服・活動直後をできる範囲で固定し、条件を一言残す |
| QMG を同条件で実施できない | 点の上下が評価者差か病勢か分からなくなる | 同じ体位・同じ手順・同じ休憩を優先し、難しければ条件差を記録する |
5 分フロー:カルテに残る「順番」を作る
迷ったら、① 最重症時 MGFA → ② 日々の追跡 MG-ADL → ③ 客観比較 QMG → ④ 介入後 MGFA-PIS の順にそろえます。すべての指標を毎回そろえなくても、順番が固定されるだけでチーム内の言葉が揃います。
この流れに沿って、短文で残せる “最小セット” を作ると、病棟でも外来でも申し送りのズレが減ります。
| ステップ | 何を決める? | 使う指標 | 記録例(短文) |
|---|---|---|---|
| ① 最重症時の固定 | 分類の共通言語 | MGFA | 「最重症時 MGFA IIIb」 |
| ② 経時変化の追跡 | 日内変動を含む症状の推移 | MG-ADL | 「MG-ADL 8 → 6(午前・内服後)」 |
| ③ 客観比較 | 介入前後の比較 | QMG | 「QMG 14 → 11(同条件)」 |
| ④ 介入後の状態名 | 退院時要約・治療反応 | MGFA-PIS | 「PIS: MM、MG-ADL 6(午前・内服後)」 |
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記録の順番をそのまま現場で使えるように、MG 重症度評価 記録シートを用意しました。最重症時の分類、経時変化、再評価メモを 1 枚で揃えたいときに使いやすい構成です。
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MGFA(分類)を「最重症時」に固定する
MGFA は、 MG の病勢を臨床像で分類し、医療者間で共有しやすくする枠組みです。実務では「今の状態を毎回更新する」よりも、最重症時の分類を固定して共通言語にする方が、転院・急変・カンファレンスでブレにくくなります。
特に大事なのは a / b の併記です。四肢・体幹優位か、球・呼吸優位かが揃うだけで、 ST 連携や呼吸管理の優先順位が一気に見えやすくなります。
| クラス | ざっくり何が中心? | PT / OT / ST が見る観察ポイント |
|---|---|---|
| I | 眼症状が中心 | 複視・眼瞼下垂の増悪パターン(疲労で変わるか) |
| II | 軽い全身型 | 起立・歩行での疲労、食事でのむせ増加、発話の崩れ |
| III | 中等度の全身型 | 反復での動作破綻、嚥下疲労、息継ぎの変化 |
| IV | 高度の全身型 | ベッド上でも疲労が強い、会話・嚥下の持続困難 |
| V | 換気補助が必要な状態 | 離床より先に連携:呼吸管理・気道クリアランス方針の共有 |
MG-ADL(症状追跡)は「条件をそろえる」ほど強い
MG-ADL は、日常生活での困りごとを本人の訴えベースで追跡しやすい指標です。短時間で実施しやすく、病棟経過や外来フォローに乗せやすいのが強みです。
一方で、 MG は日内変動と疲労の影響が大きいため、時間帯・内服との関係・活動直後かどうかが揃わないと点数がブレます。運用を整えれば、変化の向きが読みやすくなります。
| 運用ポイント | なぜ必要? | 現場メモ例 |
|---|---|---|
| 時間帯を固定 | 日内変動を拾いすぎない | 「午前(内服後)で統一」 |
| 内服との関係を一言残す | 薬効の波で点が動く | 「内服 1 時間後」 |
| 活動直後は避ける(難しければ明記) | 疲労の上乗せで過大評価になりやすい | 「歩行練習直後のため条件差あり」 |
| 合計だけでなく増えた領域も残す | 介入方針が立てやすい | 「発話と嚥下の訴えが増」 |
QMG(客観評価)は「同条件」で比較する
QMG は、臨床家が観察・測定して点数化する客観寄りの重症度評価です。介入前後の比較、評価会議、治療反応の説明に向いています。
ただし、 QMG は「やり方が違う」と別物になります。体位・手順・休憩・評価者をできる範囲で揃えることが重要です。完全に揃わない場合でも、条件差を残すだけで比較可能性は上がります。
| 固定すること | ねらい | 一言メモ |
|---|---|---|
| 評価者(可能なら同一) | 観察の癖を減らす | 「担当 PT が実施」 |
| 体位・環境 | 力発揮の条件差を減らす | 「端座位で統一」 |
| 休憩(反復の間隔) | 疲労の上乗せを揃える | 「各テスト間に 1 分休憩」 |
| 呼吸・球症状の観察 | 点数外の赤旗を拾う | 「会話で息継ぎ増/むせ増」 |
MGFA-PIS(介入後の状態名)で要約が短くなる
MGFA-PIS( Postintervention Status )は、治療後の状態を状態名で整理する枠組みです。実務では、最重症時 MGFA とセットにして、退院時要約や治療変更後のまとめに使うと崩れにくくなります。
代表的な状態名は、 CSR 、 PR 、 MM 、そのほか I 、 U 、 W 、 E 、 D です。状態名を先に置き、残る弱化領域や追跡指標を後ろに添えると、サマリーが短くなります。
| 書き方 | 意図 | 例 |
|---|---|---|
| 状態名を先に書く | 要点を先出しする | 「PIS: MM」 |
| 残る領域を補足する | 次の介入が立ちやすい | 「頸部屈曲の弱化が残存」 |
| 追跡指標を 1 つ添える | 次回比較がしやすい | 「MG-ADL 6(午前・内服後)」 |
中止基準:呼吸・嚥下が絡むときの見落とし防止
MG は「筋力」だけでなく、球症状(構音・嚥下)と呼吸が絡むと急に危険度が上がります。ここはスケールの点数だけで追わず、急な変化を言語化して連携することが大切です。
| 変化 | 現場での見え方 | まずやること |
|---|---|---|
| 会話の息継ぎが増える | 文が短い/声量が落ちる | 介入を止め、呼吸状態とバイタルを確認して共有する |
| 食事でむせが増える | 一口量が減る/食後に痰が増える | 食形態・姿勢・時間帯の条件を揃え、 ST /医師へ共有する |
| 反復で動作が急に崩れる | 立ち上がりが途中で止まる | 負荷と休憩を下げ、条件を整えて再評価する |
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. MGFA は毎回つけ直した方がいいですか?
A. 実務では、 MGFA は最重症時を固定し、経過は MG-ADL / QMG で追う方が情報が揃います。毎回 MGFA を更新すると、「分類」と「追跡」が混ざって比較しにくくなります。
Q2. MGFA の a / b は何を見れば判断しやすいですか?
A. まず球症状と呼吸を先に見ます。食事でのむせ増、会話の持続困難、息継ぎ増が前に出るなら b を疑いやすく、四肢・体幹の反復動作で崩れるなら a が軸になりやすいです。
Q3. MG-ADL がブレてしまうのはなぜですか?
A. MG は日内変動と疲労の影響を受けやすく、時間帯・内服・活動直後が揃わないと点数が動きます。条件を固定し、難しい場合でも「条件差」を一言残すと追跡しやすくなります。
Q4. QMG は何を固定すると比較しやすいですか?
A. まずは体位、休憩、可能なら評価者です。完全に揃わない場合でも、実施条件を記録すると「病勢の変化」と「条件差」を切り分けやすくなります。
Q5. PIS はどんな場面で使うと便利ですか?
A. 退院時要約、治療変更後のまとめ、紹介状の一文で特に便利です。最重症時 MGFA とセットで書くと、「どこまで改善したか」が短く伝わります。
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参考文献
- Jaretzki A, Barohn RJ, Ernstoff RM, et al. Myasthenia gravis: recommendations for clinical research standards. Task Force of the Medical Scientific Advisory Board of the Myasthenia Gravis Foundation of America. Neurology. 2000;55(1):16-23. doi: 10.1212/WNL.55.1.16 / PubMed: 10891897
- Wolfe GI, Herbelin L, Nations SP, Foster B, Bryan WW, Barohn RJ. Myasthenia gravis activities of daily living profile. Neurology. 1999;52(7):1487-1489. doi: 10.1212/WNL.52.7.1487 / PubMed: 10227640
- Bedlack RS, Simel DL, Bosworth H, Samsa G, Tucker-Lipscomb B, Sanders DB. Quantitative myasthenia gravis score: assessment of responsiveness and longitudinal validity. Neurology. 2005;64(11):1968-1970. doi: 10.1212/01.WNL.0000163988.28892.79 / PubMed: 15955957
- Myasthenia Gravis Foundation of America (MGFA). MGFA Post-intervention Status (MGFA-PIS). PDF
- Narayanaswami P, Sanders DB, Wolfe G, et al. International Consensus Guidance for Management of Myasthenia Gravis: 2020 Update. Neurology. 2021;96(3):114-122. doi: 10.1212/WNL.0000000000011124 / PubMed: 33144515
- Myasthenia Gravis Foundation of America (MGFA). Resources for Professionals. 公式ページ
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


