PDQ-39(Parkinson’s Disease Questionnaire-39)は、パーキンソン病の健康関連QOLを 8領域・39項目で評価する質問票です。各項目は0–4点の5段階で、領域スコアを0–100へ変換、領域の平均をPDQ-39 Summary Index(SI)として用います(高いほどQOL低下)。
実務運用は PDQ-39/PDQ-8 実装ガイド にまとめています(採点テンプレ・MCID)。
新人PT向けの評価テンプレはハブに集約しています。
PDQ-39の概要(8領域)
領域は ①移動(Mobility)②ADL ③感情的幸福(Emotional Wellbeing)④スティグマ ⑤社会的支援 ⑥認知 ⑦コミュニケーション ⑧身体的不快 の8つ。過去数週間の経験に照らして回答します。スコアは症状の重さだけでなく、生活への影響を反映し、薬物調整・リハ・生活支援の優先順位づけに有用です。
注意:質問票の設問文は著作物のため本稿では掲載しません。評価用紙の取り扱いは所属機関の手順に従い、必要に応じて配布元の指示・許諾に従ってください。
配点・スコア変換・SI算出
各項目は0–4(0=なし/4=いつも)で採点。領域スコアは「(各項目の合計)÷(最大得点)×100」で0–100に変換します。PDQ-39 SI は8領域スコアの平均(0–100)。数値が高いほどQOLが低い点に注意してください。
領域 | 項目数 | 合計点 | 最大得点 | 0–100変換 |
---|---|---|---|---|
移動 | 10 | 28 | 40 | 70.0 |
ADL | 6 | 15 | 24 | 62.5 |
感情的幸福 | 6 | 8 | 24 | 33.3 |
スティグマ | 4 | 6 | 16 | 37.5 |
社会的支援 | 3 | 2 | 12 | 16.7 |
認知 | 4 | 7 | 16 | 43.8 |
コミュニケーション | 3 | 3 | 12 | 25.0 |
身体的不快 | 3 | 6 | 12 | 50.0 |
PDQ-39 SI | — | — | — | 上記8領域の平均 |
解釈(ドメイン別に“意味”を読む)
領域ごとの高さは介入のボトルネックを示唆します。例:移動・ADLが高い→歩行耐容能やすくみ足、転倒不安の介入(6MWT・転倒リスク評価へ接続)。感情的幸福・スティグマ→心理的支援・当事者会の紹介。認知・コミュニケーション→家族・多職種での環境調整が先行、など。
経時比較は同じ服薬タイミング・同じ期間設定で行い、他尺度(FIM/Barthel・IADL・歩行距離)と併読すると臨床像が立体化します。
実施・記録テンプレ
実施:静かな場所で自己記入または面接。過去“数週間”の経験で回答。欠測は所属施設のルールに従い処理(全欠領域はSIから除外)。
記録例:「PDQ-39 SI 42.0。移動70・ADL62.5が高く、感情的幸福33.3。歩行耐容能改善と不安対処を併行。4週後に同条件で再評価。」
よくある誤り(OK/NG)
場面 | OK | NG/要修正 | 理由/対策 |
---|---|---|---|
期間 | 同じ基準期間での比較 | 毎回ちがう期間 | ぶれ大→期間を冒頭で明示 |
SI | 領域の平均として使用 | 合計点に変換 | 定義逸脱→領域平均を採用 |
解釈 | 領域別×他尺度で併読 | SI単独で判断 | 介入に落ちない→他尺度と接続 |
設問 | 原文を改変せず使用 | 独自に意訳・短縮 | 信頼性低下→正規の様式を使用 |
まとめ
PDQ-39は“患者さんの生活への影響”を8領域で可視化します。0–100変換→SIの流れをテンプレ化し、領域別の高値を介入計画へ直結させましょう。ADL/IADL・歩行耐容能と併読することで、目標設定と説明の質が上がります。
6MWT|ATS準拠プロトコル 歩行耐容能の標準評価で併読。 |
Barthel vs FIM|違いと使い分け ADLの内訳とゴール設計に。 |
よくある質問(FAQ)
Q. PDQ-39 SI はどう計算?
A. 8領域スコア(0–100)の単純平均です。数値が高いほどQOL低下です。
Q. 欠測があるときは?
A. 施設ルールに従って補完/除外。全欠の領域はSIから除外します。
Q. 公式の配布・利用は?
A. PDQは Oxford University Innovation 管理のライセンス対象です。利用条件を確認してください。
参考文献
- Peto V, Jenkinson C, Fitzpatrick R, Greenhall R. The development and validation of a short measure of functioning and well being for individuals with Parkinson’s disease. Qual Life Res. 1995.
- 日本語版運用・領域構成に関する各種資料(所属機関の手順に準拠)