【リハビリに必要な糖尿病の評価項目とは】理学療法士に求められる事

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リハビリくん
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いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!

この記事は「糖尿病の評価項目」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。

    

糖尿病患者のリハビリテーションを実施するうえで重要なことは、糖尿病の病態、糖尿病評価のポイント、運動療法の効果と注意点を理解することが重要になります。

   

糖尿病患者のリハビリテーションを安全に実施するためには、低血糖症状を始めとした様々な糖尿病の症状を正しく理解する必要があります。血糖値という目に見えない症状に立ち向かうためには、病態理解と問診、フィジカルアセスメントを組み合わせリスク管理に努めることが求められています。

     

糖尿病のリハビリテーションは現在の医療・福祉に欠かすことができないものとなりますが、医療従事者側の視点から言わせれば、リスク管理が非常に難しい疾患の 1 つとなります。こちらの記事を読むことで、国民病である糖尿病についての理解が深まり、今後の糖尿病の診療やリハビリテーションに貢献することができれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!

リハビリくん
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【簡単に自己紹介】

30代の現役理学療法士になります。

理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。

現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。

臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。

そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。

  

理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです

登録理学療法士

脳卒中認定理学療法士

褥瘡 創傷ケア認定理学療法士

3学会合同呼吸療法認定士

福祉住環境コーディネーター2級

【理学療法士の転職はマイナビコメディカル】

理学療法士は 2013 年頃より毎年 10,000 人程度が国家試験に合格し続けています。これは医療系の専門職の中では看護師に次ぐ有資格者の増加率となっており、1966 年にはじめての理学療法士が誕生した歴史の浅さを考えれば異例の勢いと言えます。

人数が増えることは組織力の強化として良い要素もありますが、厚生労働省からは 2019 年の時点で理学療法士の供給数は需要数を上回っていると報告されており、2040 年度には理学療法士の供給数は需要数の約 1.5 倍になると推測されています。このような背景もあり、理学療法士の給与、年収は一般職と比較して恵まれているとはいえず、多くの理学療法士の深刻な悩みに繋がっています。

しかし、給与や年収などは職場や企業に大きく左右されるものです。今、働いている環境よりも恵まれた、自分が納得できる労働環境は高い確率で身近にあります。100 歳まで生きるのが当たり前といわれる時代を豊かに生きるためには、福利厚生や退職金制度なども考慮して就職先を決定するべきです。しかし、理学療法士が増え続けていくことを考慮すると恵まれた労働環境も次第に少なくなっていくことが予想されます。だからこそ、今のうちに自分が理学療法士として働く上で納得できるような就職先を探すべきではないでしょうか?

こちらで紹介する「マイナビ」は人材紹介サービスとして超大手企業であり、誰しもが耳にしたことがあると思います。「マイナビ」は一般職向けの転職支援だけではなく、医療従事者を対象にした「マイナビコメディカル」を手掛けております。個人情報の取り扱いなども含めて厚生労働省に認可された「マイナビコメディカル」には安心感と信頼性がありますし、転職支援の質も確かなものになります。1分で登録可能であり、住んでいる地域の周辺の転職先情報を簡単に確認することもできるため、今の自分の待遇と比較してみる目的も含めて、一度ご利用してみるのはいかがでしょうか?

マイナビコメディカル

マイナビコメディカルについては、他の記事で詳しくまとめています!《【マイナビコメディカルの評判と退会方法】理学療法士の転職おすすめ》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 

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糖尿病とは?糖尿病の種類と病態

糖尿病とは、「インスリンの作用不足により高血糖が慢性的に続く病気」になります。

糖尿病は 1 型と 2 型の 2 種類に分類されます。

1 型糖尿病では自己抗体やウイルス感染などにより、インスリンを分泌する膵臓の β 細胞が破壊され、インスリンを産生することができなくなります。そのため、高血糖を是正し生存するためには、注射によってインスリンを補う治療が必須となります。

続いて 2 型糖尿病になりますが、糖尿病を患う多くの人は、この 2 型糖尿病になります。割合でいえば全糖尿病患者の 95 %以上は 2 型糖尿病といわれています。

2 型糖尿病は遺伝的な要因に運動不足や食生活の乱れなどの生活習慣が加わって発症すると考えられておりますが、明確な原因まではわかっていない状況にあります。

病態としても 2 型糖尿病は 2 つのタイプに分類されており、1 つがインスリンは分泌されているものの、分泌されたインスリンを臓器(肝臓・脂肪組織・骨格筋など)で利用することができない状態になります。このケースはインスリン抵抗性とも呼ばれています。

もう 1 つはインスリンの分泌量が低下しているケースになり、日本人はこのタイプの糖尿病が多いと考えられています。

1 型糖尿病との違いとしては、2 型糖尿病はインスリン注射が必須ではなく、必要がない場合もあります。

治療の第一選択としては、運動療法や食事療法になり、それでも高血糖が是正できないケースには薬やインスリン注射による治療が必要となります。

低血糖とは

糖尿病の症状として注意しなければならない症状の 1 つに低血糖があげられます。

上述したように、糖尿病とは「インスリンの作用不足により高血糖が慢性的に続く病気」となります。しかし、何故血糖が低くなるのでしょうか?

その理由としては、インスリンを使用して血糖値を下げることがあげられます。高血糖状態が続くと口渇、多飲、多尿、体重減少、易疲労感などの症状が出現したり、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

そのため、糖尿病の重症度によっては血糖を下げる飲み薬やインスリンを使用して血糖値を是正する必要があります。

しかし、糖尿病の血糖値のコントロールは非常に難しく、血糖値を正常値に是正しようとした結果、インスリンや薬が効き過ぎてしまい、血糖値が正常値よりも低くなってしまうことがあります。これが、低血糖になります。

特に高齢者では、薬を分解する肝臓、薬を排出する腎臓の働きが低下するため、血糖を下げる薬が効き過ぎて低血糖を引き起こしやすくなるため、注意が必要になります。

血液中のブドウ糖の量(血糖値)が正常値より低くなると、個人差がありますが低血糖症状という発作が出現する可能性があります。

血糖値がいくつまで低下すると低血糖症状が出現するのかについては、個人差がありますので一概にはいえませんが、一般的に以下のような目安があります。糖尿病患者のリハビリテーションを実施する場合には、必ず頭に入れておく必要があります。

【血糖値 70 mg/dL 程度→交感神経症状】

  • 強い空腹感
  • 体がだるい
  • 冷や汗をかく
  • 脈が速くなる
  • 不安な気持ち
  • ふるえ
  • 吐き気

【血糖値 50 mg/dL 程度→中枢神経症状】

  • めまい、頭痛
  • 眠気、生あくび
  • 言葉が出ない
  • 集中力の低下
  • 物が見えにくい、目がかすむ

【血糖値 30 mg/dL 程度】

  • 意識朦朧
  • 異常行動
  • けいれん
  • 深い昏睡状態

リハビリ介入に必要な糖尿病の評価項目

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が糖尿病患者のリハビリテーションを実施するときに気をつけたいことは、いくつかありますが、その中でも気をつけたいことが前項で説明した低血糖になります。

低血糖の評価方法としては、血糖自己測定(self-monitoring of blood glucose:SMBG)が最も効果的で即時性もありますが、残念ながらリハビリテーション専門職はこちらの検査を行うことができません。

そのため、その他の評価方法を駆使して糖尿病患者のアセスメントをすることがリスク管理に直結します。

リハビリテーション専門職が行うことができる糖尿病の評価方法について項目ごとに説明していきます。

問診

交感神経症状、中枢神経症状の自覚症状から今現在、低血糖状態にないかどうかを予測します。また、食事を行った時間、摂取状況なども血糖値に関わる重要な情報となるため、確認しておきます。

アキレス腱反射

糖尿病神経障害では下肢の腱反射、特にアキレス腱反射が低下もしくは消失する可能性が高いことが示唆されています。

両側アキレス腱反射が低下あるいは消失している場合には、糖尿病神経障害による影響が考えられるため、より重症度が高い糖尿病であると考えることができます。

振動覚検査

糖尿病神経障害では振動覚、特に内果の振動覚が低下する可能性が高いことが示唆されています。

音叉をハンマー等で叩いて振動させ、柄の部分を被検者の内果に当てます。被検者に「振動が感じられなくなった時点」で合図してもらい、振動が感じられなくなるまでの時間を測定し、10 秒以下だった場合、振動覚低下と判断します。

両側内果の振動覚が低下している場合には、糖尿病神経障害による影響が考えられるため、より重症度が高い糖尿病であると考えることができます。

シェロング試験

糖尿病による自律神経障害の評価方法になります。

自律神経障害を認める場合、座位から立位への姿勢変換時に生じる血圧低下を代償できずに起立性低血圧が発生しやすくなります。

姿勢変換前後で血圧を測定して、以下の 2 点に該当するか確認します。

  • 起立後 3 分以内に収縮期血圧 20 mmHg 以上の低下または収縮期血圧の絶対値 90 mmHg 未満への低下を認める
  • 拡張期血圧 10 mmHg 以上の低下を認める

上記 2 点に該当する場合には、糖尿病による自律神経障害が影響を来している可能性があるため、より重症度が高い糖尿病であると考えることができます。

血糖値の正常値、基準値とは

血糖値とは常に一定の値を保っているものではなく、健康な人であっても、空腹時には低くなり、食後には高くなります。

そのため、血糖値の正常値については、空腹時と食後を含めた一律のものはなく、空腹時と食後の血糖値を含めて総合的に考える必要があります。

空腹時

  • 70 ~ 99 mg/dl :正常型
  • 100 ~ 109 mg/dl:正常高値(糖尿病になる可能性が高い状態)
  • 110 ~ 125 mg/dl:境界型(糖尿病予備軍)
  • 126 mg/dl 以上:糖尿病型

食後 2 時間

一般的に食後に血糖値を測定するタイミングは食事をしてから 2 時間後になります。

また、糖尿病を診断・精査する方法の 1 つとして、経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)という検査があるため、参考程度に説明します。

経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)とは、空腹時(10 時間以上の絶食後)に 75 g のブドウ糖が溶けた砂糖水を飲み、その後 30 分後、1 時間後、2 時間後に血糖値がどのように変動するのかを評価する試験になります。

  • 70 ~ 140 mg/dl :正常型
  • 140 ~ 200 mg/dl:境界型(糖尿病予備軍)
  • 126 mg/dl 以上:糖尿病型

糖尿病の評価で血糖測定は欠かすことができない指標になりますが、血糖値以外では HbA1c の値が重要となります。

ヘモグロビン(Hb)は赤血球内のタンパク質の一種であり、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。血液中のブドウ糖がヘモグロビンとくっつくと糖化ヘモグロビンになります。

血糖値が高いほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなり、HbA1c の値が高くなります。ヘモグロビンの寿命は 120 日程度となりますが、一度糖化したヘモグロビンは赤血球の寿命が尽きるまで元に戻らないという特徴があります。

つまり HbA1c は、直近の食事や運動の影響を受けずに、過去 1 ~ 2 か月間の平均的な血糖の状態を反映する指標となります。

HbA1c の正常値・基準値としては以下のような報告があります。

  • 4.6 ~ 6.2 %(糖尿病治療ガイドライン)
  • 5.6 %未満(特定保健指導)
  • 6.0 ~ 6.4 %:糖尿病の可能性が否定できない(日本糖尿病学会)
  • 6.5 %以上:糖尿病が強く疑われる(日本糖尿病学会)

糖尿病にリハビリが必要な理由

糖尿病は世界的に増加の一途を辿っています。本邦においても糖尿病を患う人の数は多く、2018 年の国民健康・栄養調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」は約 1,000 万人、「糖尿病の可能性を否定できない人」が約 1,000 万人いることがわかっております。

これら両者を合わせると、国民の約 2 割近くが糖尿病の可能性があるということになります。この割合から糖尿病は確かな国民病であるといえます。

糖尿病が問題と言われる要因は、糖尿病による血糖異常により発生する可能性がある合併症になります。血糖コントロールが不良であれば、それにより機能的予後、生命予後へ重大な影響を及ぼすことになります。

合併症を予防するためや合併症の進行を抑制するためには、適切な血糖コントロールに加えて、血圧・脂質代謝・体重のコントロールが重要になります。

これらを達成するために重要となるものがリハビリテーションになります。リハビリテーション、すなわち運動療法には血糖値を下げる効果が認められており、血圧や体重などのコントロールにも大きく貢献することができます。

また、リハビリテーション専門職は糖尿病患者の身体機能やライフスタイルを良く把握しているため、適切な生活指導や経過の観察を行うことができます。

リハビリテーションには糖尿病になることの予防、既に糖尿病を来している患者の進行抑制のどちらに対しても貢献することが求められています。

現代の豊かな食生活を含めたライフスタイルを考慮すると糖尿病患者を急減させることは難しいと考えられます。食事療法とリハビリテーションを組み合わせながら糖尿病と向き合っていくことが重要になると考えられます。

糖尿病による合併症

糖尿病の合併症というと、糖尿病特有の合併症(細小血管障害)となる網膜症・腎症・神経障害の 3 大合併症がまず頭に浮かびますが、糖尿病による合併症はこれらだけではなく様々な障害をもたらします。

特に生命予後に重大な影響を及ぼす糖尿病性大血管病については、注意が必要になるため、網膜症・腎症・神経障害の 3 大合併症を含めて説明していきます。

糖尿病性大血管病

糖尿病がもたらす身体への弊害の 1 つに動脈硬化があります。動脈硬化は全身のさまざまな病気の引き金になる生命予後に関わる病態になります。その中でも特に注意しなければならないのが、脳血管疾患、冠動脈疾患、末梢動脈疾患になります。以下で詳しく説明していきます。

脳や心臓に酸素や栄養を供給する脳動脈や冠動脈が動脈硬化の進行により閉塞すると、脳血管疾患や冠動脈疾患を引き起こします。

脳血管疾患を発症させる要因の中で最も関係性が深いのは高血圧と糖尿病になります。

血糖値に異常がない人と血糖値に異常がある人で比較した場合、血糖値に異常がない人の 3 倍以上、脳卒中を発症する可能性が高いことが報告されています。

冠動脈疾患は死に直結する重篤な病気になります。成人糖尿病患者の死因で最も多いのは狭心症・心筋梗塞になります。

脳血管疾患と同様に、糖尿病のない人と比較すると、糖尿病を有する人は 3 倍程度冠動脈疾患を発症しやすいことが報告されています。

また、下肢に向かう血管が動脈硬化により閉塞すると末梢動脈疾患となる閉塞性動脈硬化症を引き起こします。

閉塞性動脈硬化症は糖尿病患者の 1 割程度に発症する病気になります。初発症状としては足が痺れたり、冷たく感じたりするところから始まり、徐々に痛みが出たり、足に潰瘍ができることがあります。

進行していくと足を切断しないといけなくなる場合もあるため、症状を見逃さず早期に対応する必要があります。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症とは、糖尿病が原因で目の中の網膜という組織が障害を受け、視力が低下する病気になり、成人における中途失明原因の代表的な病気になります。

糖尿病網膜症の症状は、病気の進行とともに変化していきます。初期の段階では、自覚症状が伴わないことがほとんどであり、目の中の血管に小さな出血がみられたり、微細な異常が現れはじめます。

その段階から進行していくと、視界がかすむなどの症状が出現するようになります。このとき目の中では、血管がつまるなどの障害が起きています。

さらに進行していくと、視力低下や飛蚊症を来します。場合によっては失明に至ることもあります。

糖尿病神経障害

糖尿病神経障害とは、糖尿病によって引き起こされる神経障害のことを表します。

原因として、高血糖による神経細胞の変化、動脈硬化からくる神経細胞への血流不足があげられます。

症状の種類については多岐に渡り、代表的なものとしては感覚神経障害や自律神経障害になります。

感覚神経障害の例としては、四肢末端の知覚鈍麻・自発痛・しびれ感・灼熱感などの異常感覚を示すことがあります。

自律神経障害では、発汗異常・起立性低血圧・便秘や下痢などの消化管運動障害・膀胱の機能障害・勃起障害などを引き起こし、患者の QOL を低下させます。

また、発症率は高くありませんが、外転筋麻痺や顔面神経麻痺が生じる可能性も考えられます。

腎症

糖尿病腎症とは、糖尿病によって引き起こされる合併症の 1 つであり、上昇した血糖値が腎臓の機能を低下させる病気になります。

腎臓の中には血液を濾過する装置となる糸球体という構造物があります。通常 1 個の腎臓に約 100 万個の糸球体があり、糸球体の働きによって体内の老廃物を排泄しています。

しかし、糖尿病によって血糖値が高い状態が続くと糸球体の働きが低下してしまいます。すると、本来は老廃物のみを濾過するはずの糸球体が、身体にとって必要なタンパク質なども濾過してしまい、尿にタンパクが排出されるようになります。

更に病状が進行していくと、糸球体が機能しなくなり濾過ができなくなり、身体に老廃物や水分が貯留するようになり、腎不全や尿毒症に陥ります。

糖尿病腎症は本邦における透析導入原因の 第 1 位ともなっています。

糖尿病に対する運動療法の効果

運動療法は、食事療法・薬物療法とともに糖尿病治療の基本となります。運動を行うことは、血糖値を下げるだけではなく肥満の解消や動脈硬化の予防などにも効果が認められています。

運動療法の効果についてはアメリカスポーツ医学会が提唱している「Exercise is Medicine:EIM®」がわかりやすく合理的であると考えます。

「Exercise is Medicine:EIM®」とは、「そもそも、運動療法の目的は、血糖改善のみではない。EIM である」という標語になります。

詳しくいうと、「運動そのものが、血糖改善のみならず、良眠をきたし、血圧改善・動脈硬化予防・筋力低下予防・サルコペニア予防・骨粗鬆症改善・認知症予防・がん予防をもたらすマジックピル、ミラクルピルである。」というものになります。

「Exercise is Medicine:EIM®」による運動療法の効果は以下の 9 項目になります。

  1. 血糖低下作用
  2. 体重減少
  3. 血圧降下作用
  4. 筋力低下、フレイル、サルコペニアの予防
  5. 骨粗鬆症予防
  6. 若々しくいられる、認知症の予防
  7. 良眠をうながす
  8. がん・動脈硬化予防
  9. QOL の向上

これらのように運動療法には糖尿病患者にとって絶大な効果をもたらしますが、糖尿病患者および、その支援者が、運動療法に取り組むうえで最も意識するべきことは「決して安静にしないこと、させないこと」になります。

身体不活動は糖尿病患者にとって、最も良くないことになります。

「死に至る危険因子」として高血圧、喫煙、高血糖、「身体不活動」が 2009 年に WHO から提唱されており、「日常生活において座位の時間が長いほど、死亡率と心血管疾患が増加する。1 日ほとんど座りっぱなしの人が最も生存率が低い」ことが判明しています。

糖尿病を来したとしても、身体不活動の時間を減らし、少しでも活動的な時間を増やしていくことが、健康維持のためには重要となります。

具体的には「30 分ごとに 5 分間立ち上がる」だけでも血糖降下作用が証明されているため、入院患者や施設の入居者などに対しても、隙間時間で立位練習などの運動療法を行うことは効果的な介入へと繋がります。

糖尿病 リハビリ 禁忌

糖尿病患者にとって運動療法の効果は絶大なものとなりますが、糖尿病の症状によっては運動療法を中止あるいは制限したほうが良い場合もあります。

リスク管理の視点からも、どのような症状の時にはリハビリテーションの実施を制限するべきなのか、その理解は重要になります。

リハビリテーション、運動療法を制限する必要を考慮するべき病態として以下のものがあげられます。

  1. 糖尿病の代謝コントロールが極端に悪い場合
  2. 増殖前網膜症以上の場合
  3. 腎不全の状態にある場合
  4. 虚血性心疾患や心肺機能に障害のある場合
  5. 下肢閉塞性動脈硬化症
  6. 骨・関節疾患がある場合
  7. 急性感染症
  8. 糖尿病壊疽
  9. 高度の糖尿病自律神経障害

糖尿病 リハビリ ガイドライン

糖尿病のガイドラインについては、一般社団法人日本糖尿病学会のホームページで糖尿病診療ガイドライン 2019 を無料で閲覧することができます。

運動療法、食事療法、合併症(大血管病・網膜症・腎症・神経障害)等の項目別で閲覧できるようになっているため、大変わかりやすく参考になります。

糖尿病 理学療法士 資格

理学療法士が取得することができる糖尿病関係の資格の 1 つに日本糖尿病療養指導士(CDEJ)という認定資格があります。

日本糖尿病療養指導士とは、日本糖尿病療養指導士認定機構が認定する資格になり、CDEJ とも呼ばれております。こちらの認定資格は 2001 年 3 月に第 1 回認定試験が実施され、日本糖尿病療養指導士(CDEJ)が誕生しております。

日本糖尿病療養指導士(CDEJ)は、糖尿病治療において最も重要となる自己管理(療養)を患者に指導する役割を担うことができます。CDEJ に認定されることは、糖尿病の臨床における生活指導のエキスパートであることを意味します。

日本糖尿病療養指導士認定機構のホームページには、日本糖尿病療養指導士カリキュラムの抜粋資料がございます。興味がある方はご確認ください。

受験資格

日本糖尿病療養指導士を取得するには、以下の 4 つの条件を満たす必要があります。

  1. 看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士のいずれかの資格を有する
  2. 定められた医療施設において、過去 10 年以内に継続 2 年以上(通算 1,000 時間以上)の糖尿病療養指導を実施している
  3. 上記の期間に自分が携わった糖尿病療養指導の自験例が 10 例以上ある
  4. 日本糖尿病療養指導士認定機構が開催する講習会を受講し、受講修了証を取得している

受験料

受講料:33,000 円

受験料:22,000 円

合格率

日本糖尿病療養指導士(CDEJ)の過去 3 年間の合格率は、2020 年度 95.0 %、2021年度 95.2 %、2022 年度 95.0 %となっております。

他の資格と比較しても合格率が非常に高くなっています。合格率が高いから試験の難易度が低い訳ではなく、受験資格の条件が厳しいため、糖尿病療養におけるプロフェッショナルが受験している結果だと考えられます。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます!

この記事では「糖尿病 評価項目」をキーワードに解説させて頂きました。

こちらの記事を読むことで、糖尿病についての理解が深まり、今後の糖尿病の診療やリハビリテーションに貢献することができれば幸いです。

参考文献

  1. 原田卓.糖尿病のリハビリテーション.Jpn J Rehabil Med.2016,53,p845-850.
  2. 上月正博.糖尿病とリハビリテーション医療総論.Jpn J Rehabil Med.2022,59,p1188-1194.
  3. 上月正博.リハビリテーション医療における糖尿病理学療法の重要性.理学療法学.第40巻,第8号, p669-675,2013.
  4. 細井雅之,薬師寺洋介,元山宏華.糖尿病の運動療法―有酸素運動かレジスタンス運動か―.Jpn J Rehabil Med.2022,59,p1202-1208.
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