糖尿病( DM )リハで最初に押さえる評価(この記事の結論)
臨床の抜け漏れを減らすなら、まずは「学べる環境」を選ぶのが近道です。 PT の転職ロードマップを見る 糖尿病は「運動で良くなる」一方で、低血糖・足病変・合併症の見落としがあると介入が止まります。最初に評価の型を作ると、継続支援が楽になります。
糖尿病( DM )のリハでは、①低血糖リスク(薬剤・症状・自己対処)、②足(末梢神経障害/ PAD /皮膚・爪・靴)、③合併症(網膜症・腎症・自律神経)を先に押さえると、運動処方と教育がスムーズです。 ADA の Standards of Care は毎年更新され、評価とケアの枠組みを示しています。
本記事は、 PT が初回〜継続で使えるように、5〜10 分スクリーニング→深掘り評価→運動処方→記録までを 1 本に整理しました。小記事(低血糖/フットスクリーニング/運動時の注意点)へ分岐できる “親記事” として使えます。
まず読む:糖尿病( DM )リハの重要 3 本(本記事の子記事)
現場で詰まりやすいのは「低血糖が怖くて運動が進まない」「足のリスク評価が曖昧」「注意点が多くて処方が決まらない」です。ここは子記事で深掘りしています。
5〜10 分で終わる初回スクリーニング( PT 向け)
初回は “全部やる” より、外せない項目を短時間で拾うほうが継続につながります。特に足リスク( LOPS / PAD )は頻度設計にも直結するため、 IWGDF の枠組みを参考に早めに層別化します。
下の表を “初回テンプレ” にして、赤旗が出たら子記事へ分岐(深掘り)→主治医や看護師へ共有、という流れが最短です。
| 順番 | 見ること(最小セット) | 具体例 | 次の一手 |
|---|---|---|---|
| 1 | 低血糖リスク | インスリン/ SU 薬の有無、直近の低血糖、自己対処の可否 | 高リスクは「運動前後の測定・補食・同伴」前提に設計(子記事へ) |
| 2 | 足(皮膚・靴・痛み) | 発赤・胼胝・亀裂・爪・靴ずれ、痛み/しびれ | 異常があれば足病変対応へ(子記事へ) |
| 3 | LOPS (防御感覚低下) | 10 g モノフィラメント、振動覚( 128 Hz など) | 層別化→荷重量・歩数増加のペースを調整 |
| 4 | PAD 兆候 | 間欠性跛行、冷感、皮膚色、脈拍、既往 | 疑いが強ければ ABI / TBI 等の情報確認+負荷を慎重に設計 |
| 5 | 合併症(運動制限に直結) | 増殖網膜症、腎機能、起立性低血圧(自律神経) | 強度・種目(いきみ/高負荷)を調整 |
評価で見るべき指標( PT が押さえる “最短リスト” )
糖尿病の評価は「血糖の数値だけ」では決まりません。 PT は、運動で起きる不利益(低血糖・足の損傷・血圧変動)を避けつつ、続けられる処方に落とし込む役割があります。
迷ったら、①薬剤と症状(低血糖)、②足の構造と感覚( LOPS )、③循環( PAD / 血圧)、④運動耐容能(歩行・持久)の順で揃えると、記録も説明も一気に整います。
血糖関連: PT が “聞く・見る・記録する”
- 治療:インスリン/ SU 薬/ GLP-1 受容体作動薬/ SGLT2 阻害薬 など(低血糖・脱水・体調変化の見立てに関与)
- 低血糖の既往:頻度、時間帯、誘因(運動・食事・入浴)、自己対処(補食の準備)
- 自己管理:測定の可否( SMBG / CGM )、記録の習慣、同居者の協力
足: LOPS / PAD / 皮膚(フットリスクの層別化)
IWGDF のガイドラインは、足潰瘍予防のためにリスクに応じたスクリーニング頻度を推奨しています。低リスクは年 1 回、高リスクはより高頻度での評価が推奨されます。
- LOPS : 10 g モノフィラメント、振動覚など(単一検査の限界も踏まえ、複数所見で判断)
- PAD :症状(跛行)、皮膚温・色、末梢脈、既往、必要に応じて ABI / TBI 情報
- 皮膚・爪・靴:胼胝、亀裂、爪トラブル、靴ずれ、インソールの適合
運動耐容能:処方に直結する最低限
- 主観強度: Borg / RPE 、息切れ、疲労、痛み
- 歩行・持久: 6 分間歩行、屋内外の歩行量、座位時間
- 筋力・バランス:立ち上がり、片脚立位、転倒歴(足リスクが高いほど重要)
現場の詰まりどころ(よくある失敗→立て直し)
糖尿病( DM )リハは “知識はあるのに進まない” が起きがちです。原因は、低血糖の不安と、足のリスク評価が曖昧なまま強度を上げてしまうことです。
下の表のように、失敗パターンを先に潰すと、患者さんの自己管理(補食・靴・セルフチェック)が育ち、介入が継続します。
| 失敗パターン | 何が起きる? | 立て直し | 記録の一言例 |
|---|---|---|---|
| 血糖の話が曖昧 | 運動が怖くて中断/指導が毎回ブレる | 薬剤(インスリン/ SU )と低血糖既往を固定項目にする | 「低血糖既往:週 0 回、自己対処:可(補食携帯)」 |
| 足を見ない | 靴ずれ→痛み→歩行量が落ちる | 皮膚・胼胝・靴のチェックを毎回 30 秒だけでも入れる | 「足部:発赤なし/胼胝軽度、靴ずれ予防を説明」 |
| 歩数を急に増やす | 足部トラブル/疼痛で継続不能 | リスク層別化→増やし方(頻度・量)を調整 | 「活動量:+ 500 歩/日から開始、反応で再設定」 |
| 強度の言語化がない | “頑張りすぎ” と “やらなさすぎ” の往復 | Borg / RPE と息切れをセットで共有 | 「運動強度: RPE 11〜13 で実施」 |
運動処方の考え方(まず決める 3 つ)
運動療法は効果が大きい一方、合併症や低血糖リスクで “やり方” が変わります。 ACSM の糖尿病に関するコンセンサスは、糖尿病の合併症がある場合に配慮が必要であることを強調しています。
PT は、①頻度(週何回)、②強度( RPE )、③足への負担(荷重/靴/歩数)を先に決め、反応を見て調整するのが現実的です。
| 状況 | 起きやすい問題 | 変更の方向性 | 共有先 |
|---|---|---|---|
| 低血糖リスクが高い(インスリン/ SU ) | 運動後〜夜間の低血糖 | 運動前後の測定、補食計画、時間帯調整(子記事へ) | 医師/看護師/家族 |
| 増殖網膜症など眼合併症が疑われる | いきみ・高負荷で不利益の懸念 | 息こらえを避け、負荷を段階化(有酸素中心→漸増) | 医師(眼科含む) |
| 足リスクが中〜高い( LOPS / PAD ) | 靴ずれ、潰瘍、痛み | 歩数増加は小刻みに、フットケアと靴の最適化(子記事へ) | 足病変チーム/看護 |
| 腎機能低下・脱水傾向 | 体調変動、血圧変動 | コンディション優先、 RPE で上限を明確化 | 医師 |
足(フット)評価を “運動の前提条件” にする
糖尿病関連足病変は、運動介入の継続を止める最大の要因の 1 つです。 IWGDF のガイドラインは、リスクに応じたスクリーニング頻度や教育、適切なフットウェアなどを推奨しています。
PT は “足を診て、歩行量を決める” をセットにすると、運動処方がぶれにくくなります。スクリーニングの具体は子記事にまとめています。
低血糖(運動前後)を “怖いもの” から “管理できるもの” へ
運動が続かない最大の心理的バリアは低血糖です。 ADA の Standards of Care は、低血糖を含む糖尿病ケアの枠組みを毎年更新し、教育と自己管理の重要性を示しています。
まずは「どの薬が関係するか」「どのタイミングで起きやすいか」「補食を準備できるか」を固定項目にし、運動の設計に組み込みます。具体的な確認と対応は子記事で使える形にしました。
記録(カルテ)に残す最小テンプレ( PT 用)
糖尿病( DM )は “説明したつもり” が残りにくい領域です。記録を型化すると、患者教育の継続と多職種連携が一気に楽になります。
下の 6 点だけでも固定化すると、介入の一貫性が出ます(コピペ運用で OK )。
- 治療(インスリン/ SU など)と低血糖既往(頻度・自己対処)
- 足所見(皮膚・胼胝・爪・靴)
- LOPS / PAD 所見(実施した検査と要約)
- 運動内容(種目・時間・頻度)と強度( RPE )
- 当日の反応(症状・血圧・疲労・疼痛)
- 教育(補食/靴/セルフチェック)と次回の確認点
よくある質問( FAQ )
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
Q1. まず “何を見ればいいか” 迷います。最優先は?
最優先は 低血糖リスク と 足( LOPS / PAD / 皮膚・靴) です。ここが曖昧だと運動強度の調整ができず、継続が止まりやすくなります。初回は本記事の「 5〜10 分スクリーニング」をテンプレ化し、赤旗が出たら子記事で深掘りしてください。
Q2. モノフィラメント( 10 g )だけで LOPS を判断していい?
単独検査だけで決め打ちするのは避けたいです。 10 g モノフィラメントは臨床で有用ですが、メタ解析では感度が限定的であることも報告されています。そのため、振動覚や足所見、既往などと合わせて “総合的に層別化” するのが現実的です。
Q3. 歩数を増やすときの考え方は?
足リスクが低〜中等度なら “小刻みに増やして反応を見る” が基本です。 IWGDF の潰瘍予防ガイドラインでは、低〜中等度リスクの人に対し、足・足関節の運動や活動量の増加を検討すること、また体重負荷活動の増加(例:歩数増加)を行う場合の考え方も示されています。高リスクの場合はフットケアと靴の最適化を優先し、増やし方を慎重に設計します。
Q4. 運動の強度は何で揃えるのが簡単?
現場では RPE( Borg ) が一番揃えやすいです。数値(例: RPE 11〜13 )+息切れ・会話のしやすさをセットにしておくと、患者さん自身も自己調整しやすくなります。
参考文献( DOI / PubMed )
- American Diabetes Association Professional Practice Committee for Diabetes*. Diabetes Care. 2026;49(Suppl 1):S13-S26. doi: 10.2337/dc26-S001(PubMed: 41358887)
- Kanaley JA, Colberg SR, Corcoran MH, et al. Med Sci Sports Exerc. 2022;54(2):353-368. doi: 10.1249/MSS.0000000000002800(PubMed: 35029593)
- Colberg SR, Sigal RJ, Yardley JE, et al. Diabetes Care. 2016;39(11):2065-2079. doi: 10.2337/dc16-1728(PubMed: 27926890)
- Bus SA, Sacco ICN, Monteiro-Soares M, et al. Diabetes Metab Res Rev. 2024;40(3):e3651. doi: 10.1002/dmrr.3651(PubMed: 37302121)
- Feng Y, Schlösser FJ, Sumpio BE. J Vasc Surg. 2009;50(3):675-682.e1. doi: 10.1016/j.jvs.2009.05.017(PubMed: 19595541)
- Wang F, Zhang J, Yu J, et al. J Diabetes Res. 2017;2017:8787261. doi: 10.1155/2017/8787261(PubMed: 29119118)
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下
おわりに
糖尿病( DM )リハは、低血糖リスク→足の層別化→強度( RPE )で段階化→教育と記録→再評価の “リズム” を作ると、介入が止まりにくくなります。まずは本記事のスクリーニング表を固定化して、必要時に子記事へ分岐してください。
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