
いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めましての方はよろしくお願い致します。サイト管理者のリハビリくんです!
この記事は「痙縮の治療方法」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
治療の目的は、この病態の過程を断ち切ること、すなわち過剰な筋活動を抑制し、筋の短縮および拘縮を予防・軽減することになります。それには、患者や家族を含めた多職種連携チームによる「マネジメント」のもとに、包括的 に「治療」を進めることが必要となります。
- 脳卒中における痙縮の特徴は?
- 痙縮の評価方法について
- 痙縮の治療法はどんなものがあるのか
- 痙縮のリハビリテーションについて(物理療法・運動療法・装具療法)
痙縮の存在はリハビリテーションに大きく関わる重要な問題であり、痙縮について色々と悩む方もいらっしゃると思います。そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!

【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
現在、理学療法士として得意としている分野は「脳卒中」「褥瘡」「栄養」「呼吸」「摂食・嚥下」「フレイル・サルコペニア」についてです。そのため、これらのジャンルの記事が中心となっております。
主な取得資格は以下の通りです
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
脳卒中後遺症による痙縮
痙縮は、緊張性伸張反射の速度依存性増加を特徴とする運動障害で、伸長反射の亢進の結果生じる上位運動ニューロン症候群の一徴候になります。
典型的な痙縮パターンについてですが、上肢の姿勢異常として頻度が多い姿勢パターンは、肩関節の内転・内旋、肘関節の屈曲、前腕の回内、手関節の屈曲、にぎりこぶし状変形、掌中への母指屈曲などが当てはまります。
下肢の姿勢異常として頻度が多い姿勢パターンは、股関節の内転、股関節の屈曲、膝関節の屈曲、膝関節の過伸展、尖足・内反尖足、母趾過伸展などが当てはまります。
これらの痙縮は、更衣動作や歩行などの ADL や QOL を低下させます。また、痙縮に伴う筋の過活動は二次的に筋短縮や関節拘縮を生じます。痙縮の合併頻度は脳卒中発症後の経過とともに増加していき、1 ヶ月.. 3 ヶ月.. 1 年と時間が経つにつれ症状を認める方が増えていきます。
痙縮は運動機能回復の阻害要因と報告されており、急性期から生活期を通して脳卒中患者の痙縮コントロールは重要になります。
痙縮の評価法について
臨床で使用しやすい痙縮の評価法を 2 種類、解説していきます。
modified Ashworth Scale(MAS)
痙縮の臨床的評価法としては、modified Ashworth Scale(MAS)が広く使用されています。
1964 年に Ashworth が考案した半定量的な 5 段階の評価方法(Ashworth Scale)を、1987 年に Bohannonと Smith が 6 段階に変更した(modified Ashworth Scale)ものになっています。

modified Ashworth Scale(MAS)は他動運動による関節可動域内における筋緊張を 6 段階で定性評価するもので、簡便となります。
評価方法は、被験者を端座位(下肢は背臥位でも可)とし、速度依存性の筋緊張亢進をみるため、約 80/sec の速さで各関節の他動運動を行います。
関節拘縮合併時には MAS を過大評価しやすく、その特性を理解して用いる必要があります。
modified Tardieu Scale(MTS)
MTS は MAS と同様に他動的に関節を屈曲・伸展させる手技により痙縮を評価します。1954 年に Tardieu Scale として報告された後、1969 年に修正が加えられ、1999 年に再度修正が加えられました。
MTS は測定肢位と筋の伸張速度が規定されており、関節可動域と筋の反応の質をそれぞれ測定します。

痙縮のメカニズムや評価方法については、他の記事でまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【痙縮のメカニズムと評価方法についての記事はこちらから】
痙縮の治療方法
痙縮に対する治療方法にはさまざまな種類があります。具体的には、以下の方法が選択肢としてあげられます。
- 理学療法・作業療法(持続伸張法、関節可動域訓練、運動療法、バイオフィードバック療法、促通療法)
- 装具療法、スプリント、キャスティング
- 物理療法(温熱、寒冷、振動)
- 電気刺激療法(治療的電気刺激、機能的電気刺激)
- ボツリヌス療法
- ブロック療法
- 経口抗痙縮薬
- バクロフェン髄腔内投与
- 脳神経外科的治療
- 整形外科的治療
痙縮治療のガイドラインによると、痙縮の治療は痙縮の程度に応じて段階的にアプローチするのが一般的であるとされています。
また、痙性麻痺の機能全体を高めるためには、痙縮の抑制だけに注目するのではなく、中枢性運動麻痺肢の随意性の要素を考慮する必要があります。
痙縮の治療は通常、上述した 1 つの治療手段では効果が不十分な場合が多く、痙縮の原因、罹病期間、重症度、その分布を考慮して、いくつかの治療手段を組み合わせて実施すると良いとされています。
持続伸張法
前述したように痙縮治療にはさまざまな方法がありますが、その中でも理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションは重要な治療法の 1 つとなります。
特に痙縮をきたしている筋肉への持続伸張法(ストレッチング)は、導入が容易な上、高い効果を期待することができます。
痙性筋に対する持続的な伸張は Ib 線維や Ⅱ 線維への刺激をもらたします。その結果、γ 運動神経を抑制することにより、他動的関節トルクが低下することが報告されています。
持続伸張法は、筋の短縮や拘縮を予防および改善するうえでも重要であり、徒手的に実施する方法以外でも、装具やキャスティングによって効果を得ることもできます。
装具療法
痙性麻痺における変形は麻痺による筋力の不均衡が原因となります。
麻痺の程度にもよりますが、立位や歩行動作時など動的な場面では、筋力の不均衡が生じることを避けることができないこともあります。
このような場合には、痙縮を低下させる内服薬投与や運動療法と同時に装具処方を検討する必要があります。
痙縮の程度によっては装具療法の適応とはならないこともありますが、装具による姿勢の矯正は有効であり、歩行などの動作能力を向上させることもあります。
装具療法は、拘縮の予防や変形の矯正に有効なだけではなく、持続的な伸張を加えて痙縮を抑制し、痙縮の抑制肢位を保持することなどで効果をもたらすことができます。
物理療法
温熱療法は、筋・靱帯・腱および関節包などの結合組織の柔軟性を向上させるだけではなく、痛覚線維の閾値の上昇による疼痛の軽減や、筋緊張の低下により痙縮を緩和させる効果があります。
寒冷療法では、神経・筋の伝導遅延、筋紡錘の興奮性の低下などにより、痙縮を軽減することができます。
振動刺激は主に整形疾患等に対するリラクゼーションを目的に使用されています。また、最近では半側空間無視などの高次脳機能の改善や麻痺筋の促通効果などで注目を集めています。脳卒中片麻痺患者に対して痙縮抑制を治療目的にした報告は多くありません。
電気刺激療法
電気刺激療法には、治療的電気刺激(TES)、経皮的電気神経刺激(TENS)、機能的電気刺激(FES)などがあります。特に経皮的電気神経刺激(TENS)のエビデンスは高く、TENS を高頻度で行うことで、痙縮を抑制することができると報告されています。
ボツリヌス療法
2010 年に上下肢痙縮に対して適応が拡大し、国内でも数多く実施されている治療法になります。
ボツリヌス毒素は筋内に取り込まれることにより、末梢の神経筋接合部における神経終末内でアセチルコリン放出を抑制する作用があります。
この作用により神経筋伝達を阻害し、筋収縮を抑制します。効果は投与数日後から出現し、約 2 週間で安定します。
神経伝達を阻害された神経は、神経発芽により側副枝が形成され、新たに神経筋接合部を形成するため、数カ月で神経筋伝達は再開し筋弛緩作用は消失します。
ブロック療法
ブロック療法には大きく分けて「フェノールブロック療法」と「神経ブロック療法」があります。
「フェノールブロック療法」は筋肉に入る運動神経に直接フェノール注射液を注射して痙縮の抑制を図ります。
「神経ブロック療法」は神経周囲や神経内に局所麻酔薬を注入して神経に一時的な麻酔をかけたり、高周波の熱やアルコールで長期間神経を麻痺させたりする治療法になります。
経口抗痙縮薬
経口抗痙縮薬にもいくつか種類がありますが、初期治療としては中枢性または末梢性筋弛緩薬が高い確率で選択されています。
筋弛緩薬は伸張反射と逃避反射などの脊髄反射、あるいは筋収縮そのものを種々のレベルで抑制する効果があります。
経口抗痙縮薬による過度の抑制は ADL に直接的に支障を来たす可能性があるため、注意が必要になります。
バクロフェン髄腔内投与
バクロフェン髄腔内投与は英語では intrathecal baclofen となります。略称で ITB と呼ばれています。
バクロフェンは中枢神経系の抑制系伝達物質である γ-アミノ酪酸(GABA)誘導体になります。
ITB 療法はバクロフェンを髄腔内に持続的に投与し、脊髄の受容体に直接作用させることで筋緊張を軽減させる治療法になります。
一般的に、既存の治療で効果が不十分な重度の痙縮に対して使用されています。
整形外科的手術
アキレス腱延長術や後脛骨筋腱移行術などの整形外科的治療により、内反尖足、足趾変形などを直接矯正することができます。
障害が固定期にあり、既存の治療で効果が不十分な症例で、固定性の変形や拘縮がなく、術前に歩行訓練ができている症例に実施されることがあります。
整形外科的手術後にも、手術部位以外に残存する変形や確立した歩行パターンなどが影響して再度痙縮が増強していくことも考えられます。
そのため、定期的に装具のフィッティング調整やボツリヌス毒素治療などを行い、機能維持を図る必要があります。
脳神経外科的手術
末梢神経縮小術は、痙縮などの過活動に陥った筋肉を支配する神経の太さを 20 ~ 40 % 程度に縮小させる治療法になります。
肘屈曲痙縮の例をあげると、筋皮神経の神経束を電気刺激により運動線維と感覚線維に区別し、50 Hz の電気刺激で肘関節が屈曲する分枝の 2/3 ~ 3/4 を凝固切除します。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「痙縮の治療方法」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことで痙縮についての理解が深まり、臨床における痙縮へのアプローチや対策の一助へとなれば幸いです。
参考文献
- 池田巧,栗林正明.リハビリテーション医療における痙縮治療.京一日赤医誌.第1巻,1号,2018年,p4-13.
- 石濱裕規.痙縮に対する薬物療法とリハビリテーション.バイオメカニズム学会誌.Vol.42,No.4,2018,p205-210.
- 松元秀次.最新のリハビリテーション-痙縮のマネジメント-.Jpn J Rehabil Med.2008,45,p591-597.