いつも当サイト(rehabilikun blog)の記事をお読みいただき誠にありがとうございます。また、初めて訪問して下さった方はよろしくお願いします。サイト管理者のリハビリくんです!
こちらでは「疼痛を抑制する効果(EIH)」をキーワードに記事を書いていきます!
超高齢社会となった日本では高齢者における医療および福祉が大きな問題となっております。高齢者では運動器の機能障害を抱える人が多く、肩や腰、膝などに生じる運動器慢性疼痛を抱えている方も少なくありません。
運動器慢性疼痛は根本的解決が難しい厄介な症状になると思いますが、近年、運動療法自体に慢性疼痛を改善させる効果が期待できると考えられています。
- EIHとは何か?
- 運動療法と疼痛改善効果の関係性について
- 運動器慢性疼痛ってどんな症状なの?
- 運動器慢性疼痛に対する運動療法について
- 運動療法の処方におけるポイント
疼痛抑制効果(EIH)について様々な疑問を抱えることがあると思います!そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
【リハビリテーション専門職の転職サイト】
医療従事者となる理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったリハビリテーション専門職は超高齢社会を突き進む本邦において必要不可欠な職種になります。
実際に近年では、理学療法士は 10,000 ~ 11,000 人程度、作業療法士は 4,000 ~ 5,000 人程度、言語聴覚士は 1,600 ~ 1,800 人程度、国家試験に合格しており、順調に有資格者数が増え続けています。
このように世の中から必要とされている反面、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の給与は他業界と比較して恵まれてるとはいえません。「賃金構造基本統計調査」から他業界と比較してみても2022 年度のリハビリテーション専門職の初任給平均額は 239,100 円となっており、満足できるものではありません。
また、給与の問題もありながら、リハビリテーション専門職は業界特有の激しい人間関係という荒波に揉まれながら業務にあたることになります。この人間関係で辛い思いをする人はかなり多いと考えられます。
このように、給与や人間関係、また福利厚生などを含めた恵まれた労働環境で働くためには転職が必要になることもあります。1 年目、すなわち始めての職場が恵まれた環境であればいうことありませんが、必ずしもそう上手くはいきません。
最近では転職サイトにも様々な種類のものがあり、どの転職エージェントを選択するか迷うと思います。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士におすすめしたい転職サイトは、他の記事で詳しくまとめています!《【理学療法士転職サイトランキング】おすすめ5選|リハビリ職の転職》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
EIH(疼痛抑制効果)とは
近年、運動により侵害刺激に対する痛覚感受性の低下が惹起することが報告されています。
この現象は名称がつけられており、 exercise-induced hypoalge-sia(EIH)といいます。発生機序は完全には解明されてはおりませんが、内因性疼痛調節系が深く関与していることが報告されています。
運動によって得られる効果には、さまざまなものがあります。イメージしやすいものでいえば、「筋力向上」「持久力向上」「肥満の予防」「気分の改善」などがあげられます。
ここに含まれるものが「EIH(疼痛抑制効果)」になります。これは、運動を行うこと自体に疼痛を抑制する効果があるということになります。
このような背景から、疼痛を抱える患者のマネジメント方法として、運動の重要性は増しています。疼痛治療の選択肢として運動は欠かせないものとなっています。
運動による創傷治癒効果
運動を実施することにより、骨格筋からサイトカインや成長因子が血中に放出され、様々な臓器・組織に多様な影響を与えることが報告されています。
ここで特に注目されているのが、運動がもたらす創傷治癒の促進効果になります。
創傷治癒過程で重要な働きをするマクロファージには、炎症促進に働く M1 型マクロファージと抗炎症性に働く M2 型マクロファージに分類されます。
M1 型マクロファージ は TNF-α、IL-1、IL-6、inducible nitric oxide synthase(iNOS)などを産生して炎症反応に関与します。
M2 型マクロファージは IL-4 や IL-10、vascular endothelial growth factor(VEGF)などの抗炎症性のサイトカインや成長因子を産生し、組織修復や血管新生に働きます。
このうち運動を行うことで、M2 型マクロファージへの極性変化と血管新生が促進され、創傷治癒が早くなることが報告されています。
以上のことより、運動が創傷治癒を促進して傷の痛みを軽減するとともに遷延性術後痛や複合性局所疼痛症候群など慢性痛への移行を予防できる可能性が示唆されています。
受傷後や手術後、褥瘡形成後などの創傷治癒が必要になるタイミングにおける運動は、効果的な治療法であることが示唆されています。
運動とEIH(疼痛抑制効果)
日常の身体活動量を増やすことは、メタボリックシンドロームを含めた循環器疾患、糖尿病、がん、生活習慣病の発症およびこれらを原因として死亡に至るリスクや、加齢に伴う生活機能低下をきたすリスクを低下させることに繋がります。
加えて身体活動は、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果をもたらすことも認められています。
運動療法は薬物治療と比較して、高額な費用を必要とせず、副作用もなく、日常生活における就業中や通勤時に身体活動レベルを増加させたり、余暇にレジャーやレクレーション活動を行ったりするなど、その実行性が容易なことが最大の利点となります。
EIH の出現に有用な運動様式は継続的な有酸素運動になります。例として、ランニング、ウォーキング、スイミングなどがあげられます。
これらの有酸素運動は頸痛,線維筋痛症、慢性腰痛などの慢性運動器疾痛を改善することや、身体活動レベルは線維筋痛症患者におけるうつ症状と逆相関することが報告されています。
運動の内容と強度について
痛みの種類にはもさまざまなものがありますが、どのような痛みに対して、どのような運動を選択するべきなのかについて、明確なエビデンスは存在しません。
具体的な運動の内容は対象者の状態によっても異なると考えられますが、多くの方に適応となる有酸素運動と筋力増強運動について紹介させていただきます。
有酸素運動
1 回当たり 20 ~ 60 分で週 2 回以上の有酸素運動を 6 週間以上継続すると、症状の改善や機能向上が見込まれることが報告されています。
有酸素運動は精神心理的な健康問題、認知や代謝機能の改善にも有効であることが知られています。運動器慢性疼痛患者ではこれらの合併症を有していることが多く、その点からも有酸素運動の処方が推奨されています。
有酸素運動の中でも、歩行(ウォーキング)は最も代表的なエクササイズであり、特別な機器やスキルも不要であり、強度の調節も容易なことから導入しやすいエクササイズとなります。
筋力増強運動
筋力増強運動は身体の一部分に一定以上の負荷をかけて行う運動であるため、有酸素運動と比較すると導入に抵抗を示す方もいると考えられます。
そのため、必ずしも運動療法導入初期から筋力増強運動を行うのでななく、他の運動によって運動に対する心理的抵抗が減り、安心して実施できる自信がついてからの導入が必要になることもあります。
筋力増強運動の具体的方法は様々でありますが、ホームエクササイズとして行う場合には、自重を用いた運動が広く用いられています。適切に回数や方法を調整することで負荷量を段階的に上げていくことも容易となります。
また、痛みを訴える部位とは別の部位の筋力増強運動を行うことでも全身的に疼痛抑制効果を得られることが報告されています。
運動の強度
運動の強度については、有酸素運動および筋力増強運動ともに低強度 ~ 中等度の強度の運動で痛みや機能の改善が得られることが示されています。
慢性の痛みのために長期間不活動となっていたような患者では、健常者で通常推奨されるような強度よりも低い強度で運動を開始することが必要になる場合があります。
ただし、高強度の運動を行った場合にも副反応を伴わずに痛みや機能の改善が得られている報告もあることから、高い身体機能が要求される仕事への復職やスポーツやレジャー活動への復帰を目指す場合には段階的に強度を上げていき、最終的には高強度の運動を処方することが適切となる場合もあります。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「EIH(疼痛抑制効果)」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことで EIH(疼痛抑制効果) についての理解が深まり、臨床における疼痛管理の一助へとなれば幸いです。
痛みの原因は多岐にわたります。痛みの原因のひとつが精神・心理面になります。そのため、精神・心理面の評価も重要になります。このテーマについては、他の記事で詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【HADS(評価法)についての記事はこちらから】
参考文献
- 上勝也,田島文博,仙波恵美子.運動による疼痛抑制とmesocortico-limbic system.PAIN RESEARCH.35(2),p80-91,2020.
- 上勝也,田島文博,仙波恵美子.運動による疼痛抑制 (exercise-induced hypoalgesia) の脳メカニズム.日本運動器疼痛学会誌.11(2),p175-181,2019.