こんにちは!リハビリくんです!
こちらでは「悪液質(カヘキシア)」をキーワードに記事を書いていきます!
悪液質はがんに限らず、COPD、AIDS、うっ血性心不全などの慢性消耗性疾患に伴う病態であり、がん患者ではほぼ半数にみられる状態になります。
悪液質の臨床所見は、体重減少、除脂肪体重の減少、食欲不振、早期満腹感、倦怠感、免疫能の低下、活動量の低下など生命に関わる兆候であり、悪液質に気づかず放置することで重篤な状態へと繋がっていく可能性があります。
また、悪液質の理解は医療従事者であってもまだまだ乏しく、筆者も恥ずかしながら、カヘキシアと呼ぶことを存じておりませんでした。医療の世界における悪液質の理解を拡げていくことも今後更に必要になってくると考えられます。
- 悪液質(カヘキシア)とは?
- 悪液質の診断基準について
- 前悪液質(プレカヘキシア)とは?
悪液質は医療のアウトカムや生活の質に悪影響を与えることがわかってきています!しかし、悪液質については最近になって理論が深まってきたものなので、よくわからないよ!という方も、いらっしゃると思います。そんな方のために、こちらの記事を読むことで上記の疑問が解決できるようにしたいと思います!是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
埼玉県の医療機関で働いている理学療法士です
現在、院内にて入院患者様へのリハビリテーションと、介護保険サービスの方で利用者様への訪問リハビリテーションを行わせて頂いています!
主な取得資格は以下の通りになります
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
「医療や介護に関わる人の力になるため」「患者様や利用者様に根拠のある適切なリハビリテーションを実施するため」をモットーに働く二児の父です!
ここ近年はコロナ禍の影響もあり、外部の研修会などにも気軽に参加できなくなりましたよね。私の勤務先では、職場内での勉強会も規模が縮小していまいました。あらゆる方面で、以前と比較して自己研鑽する機会が減少してしまったように感じております。
そのような状況ではありますが、医療職として知識のアップデートは必要不可欠になります!
そこで、私自身も活用しており、大変役立っているのが下記の「リハノメ」です!
↓↓↓
悪液質(カヘキシア)とは
悪液質(カヘキシア)は、がんや慢性心不全、慢性腎不全、自己免疫疾患などの慢性疾患を背景とした低栄養で骨格筋量の低下を特徴とします。
骨格筋量の減少や衰えは、生活の質や生命予後に悪影響を与えることが報告され、近年ではサルコペニアとして広く知られるようになってきています。
慢性消耗性疾患患者の日常臨床において悪液質の頻度は高いですが、医療者の認識が低いために悪液質の診断が成されないまま栄養状態が悪化し、骨格筋量や身体機能の低下をきたしている症例が少なくありません。
21世紀になり、悪液質が医療のアウトカムや生活の質に悪影響を与えることが知られるようになっきてましたが、悪化した栄養状態や骨格筋量の低下を根本的に改善する薬剤や対策は未だ発見されておりません。
早期栄養介入、多方面からの集学的ケアが悪液質に対する基本戦略であり、必要栄養量の充足と、アナボリックレジスタンスの要因を最小限にすることにより、栄養状態の悪化や骨格筋量の低下を最小限に抑える予防的ケアが求められております。
サルコペニアの原因は複数にわかれますが、そのうちの1つに悪液質があります。サルコペニアについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【サルコペニアの原因4つと対応方法についての記事はこちらから】
悪液質診断の歴史
悪液質は、栄養状態が悪化し、衰弱した状態を指す言葉として古くから用いられてきました。悪液質を意味する英語 “cachexia” は、ギリシャ語の kakosと hexisに由来し、紀元前 1 世紀のローマの医師の記述に登場しています。
しかし、最近まで悪液質には明確な定義がなく、悪液質に対する医療者の認識が低いために悪液質の診断が成されないまま栄養状態が悪化し、骨格筋量や身体機能の低下をきたす症例が少なくありませんでした。
2006 年末に米国ワシントンで行われた、Evans ら欧米のエキスパートによるコンセンサス会議で「悪液質は基礎疾患によって引き起こされ、脂肪量の減少の有無にかかわらず、骨格筋量の減少を特徴とする複合的代謝異常の症候群である。臨床症状として、成人では体重減少、小児では成長障害がみられる。食欲不振、炎症、インスリン抵抗性、筋蛋白分解を高頻度に認める。悪液質は、飢餓、加齢による筋肉量の減少、うつ病、吸収障害や甲状腺機能亢進とは異なる病態で、疾患罹患率を増加させる」と定義されました。
その後、2011 年に Fearon らによって、がんに特化した悪液質の定義が提唱され、これらの定義が過去約 10 年における悪液質研究の基礎となりました。
また 2017 年に、欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)から出された栄養不良の分類では、悪液質は “炎症を伴う慢性疾患関連性の栄養不良” と同義であると位置づけられました。
疾患に起因しない栄養不良である飢餓や、疾患がもたらすものの炎症を伴わない吸収障害などとは異なる病態であることが示されています。
悪液質の診断基準が作成されていない理由
悪液質の診断基準は、前述の Evans らの定義の際に提唱された基準など、いくつかのものが発表 されていますが、日常診療において広く活用されているものは未だありません。
- 悪液質の本態である骨格筋量の減少を正確に評価することが容易でない
- 古典的に悪液質診断に用いられてきた体重やBMIは、近年増えているサルコペニア肥満患者や浮腫患者では骨格筋量と解離するため、悪液質の状態が反映されない
- 骨格筋量やBMI は、欧米とアジアでは分布や標準値が異なり、人種に応じた基準が必要である
- 悪液質の成因は複雑で、背景となる疾患によって表現型、進展の速度などが異なるといったようなものがある。近年、がんやリウマチといった基礎疾患ごとに、いくつかの診断基準が提唱されている
前悪液質について
明らかな低栄養状態である悪液質に陥る前の段階として、前悪液質(precachexia)という概念が提唱されています。
前悪液質は軽度の体重減少および炎症反応と食欲不振のある状態とされています。
- 5%以下の体重減少
- 食欲不振
- 代謝異常
以上の3つを診断基準として提案されていますが、十分なコンセンサスは得られていないというのが現状になります。
前悪液質は、悪液質のリスクの高い患者に対して、早期からの栄養ケアにより栄養不良の進展を予防することを目的に提唱さ れた重要なコンセプトになります。
しかし、低栄養の所見や徴候が顕著ではないこの段階を捉えることは難しいため、生物学的指標の探究が続いています。
医療従事者でも悪液質の認知度が低い
Farkas らは、がんで 28 〜 57%、慢性心不全で 16 〜 42%、慢性腎不全で 30 〜 60%の頻度で悪液質がみられると報告しています。
悪液質は臨床現場で遭遇する頻度が高いにもかかわらず、あまり認識されず、十分な対応がされていないと考えられています。
最近行われた本邦のがん患者とその家族、および医療従事者を対象とした悪液質の認知度調査では、悪液質を知っている患者あるいは家族は少なく、病院に勤める医療従事者においても、よく理解されていないという結果が報告されています。
悪液質とサルコペニア リハビリテーション栄養アプローチ [ 荒金英樹 ] 価格:4,180円 |
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「悪液質(カヘキシア)」をキーワードに考えを述べさせていただきました
悪液質の国際的な定義が提唱されてから 10 年余が経過し、メカニズムの解明や対策も少しずつ進んでいます。
今後、臨床現場で悪液質の認知と早期栄養ケアが浸透し、慢性疾患の治療と共に、栄養状態が悪化する前から適切な栄養ケアが行われることにより、骨格筋量の低下が予防され、予後を含めた医療のアウトカムや QOL が向上していくことが期待されています。
高齢者の低栄養の診断や分類には、疾患や炎症の合併を常に考慮する必要性があります。このテーマについては、他の記事で更に詳しくまとめておりますので、こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️ 【疾患関連低栄養(DRM)についてについての記事はこちらから】
参考文献
- 赤水尚史.がん悪液質の病態.静脈経腸栄養.Vol.23,No.4,2008,p607-611.
- 髙山浩一,田中理美.がん悪液質の診断と治療.Japanese Journal of Lung Cancer.Vol 62,No3,Jun 20,2022,p180-187.