modified Rankin Scale( mRS )とは?脳卒中の「生活自立度」を 0〜6 でそろえる評価
modified Rankin Scale( mRS )は、脳卒中後の障害( disability )を「日常生活でどれだけ自立しているか」という観点で 0〜6 に段階化するアウトカム指標です。退院時の状態把握、外来・訪問での経過確認、研究(臨床試験)の主要評価としても頻用されます。
一方で mRS は“生活のニュアンス”を拾える反面、評価者の主観が入りやすいのが弱点です。面接の聞き方をそろえ、家族・介護者情報で裏取りし、記録をテンプレ化するだけでも再現性が上がります(後述)。
評価が増えてしんどいときほど、環境を変えると一気に楽になることがあります。
転職の判断材料をそろえる「面談準備チェック」と「職場評価シート」もまとめて使えます。
mRS が見ているもの:麻痺そのものではなく「生活上の不自由さ」
mRS は、麻痺や失調などの“機能障害”そのものではなく、生活場面での活動・参加の制限(どれだけ介助が必要か/外出や家事がどれだけ制限されるか)を大まかに 1 つの数字にまとめます。だからこそ「退院先の検討」「介護量の見立て」「予後の共有」に向きます。
逆に、上肢機能や歩行速度など“どこがどれだけ良くなったか”の変化は mRS だけでは追いにくいです。mRS は“全体の結論”として置き、詳細は別の評価(歩行、上肢、 ADL )で補うと、記録と説明が一気に通ります。
mRS スコア 0〜6 の目安と観察ポイント(早見表)
mRS は「症状の有無」よりも「生活にどんな制限があるか」で決めます。迷いやすいのは 2〜4 あたりで、ここは“できる”ではなく“普段している(継続できる)”を基準にするとブレが減ります。
まずは本人の語りで全体像をつかみ、次に家族・介護者から“実際の介助量”を確認し、最後に「歩行は見守りか介助か」「更衣・トイレ・入浴がどの程度必要か」を記録に落とし込みます。
| スコア | 目安(要約) | 臨床での確認ポイント | 記録のコツ |
|---|---|---|---|
| 0 | 症状なし | 神経症状・生活上の制限がない | 「制限なし」を具体例で 1 行(例:通勤・家事・外出) |
| 1 | 症状はあるが、日常活動に支障なし | “困るができる”ではなく“普段どおり”か | 軽いしびれ等があっても生活制限がない根拠を書く |
| 2 | 軽度障害(自立だが以前の活動は制限) | 外出・仕事・家事など「以前と同等か」を確認 | 「自立」+「何ができなくなったか」をセットで |
| 3 | 中等度障害(歩けるが、日常生活に介助が必要) | 歩行は自立(杖・装具含む)か/ IADL に介助が要るか | 介助の内容(見守り/一部介助)を具体で書く |
| 4 | 中等度〜重度障害(歩行や身の回りに介助が必要) | 歩行に介助が要るか/更衣・トイレ・入浴に手が要るか | 「移動」「セルフケア」どちらが介助かを明確に |
| 5 | 重度障害(寝たきりに近く、常時介護が必要) | ベッド上中心/失禁/常時介護の有無 | 看護・介護の“頻度”と“内容”を短く列挙 |
| 6 | 死亡 | アウトカムとしては死亡 | 評価時点(いつの死亡か)だけ明確に |
評価の手順:面接をそろえると「 3 と 4 」が安定する
mRS の肝は「質問の順番」と「裏取り」です。まず“生活の 1 日の流れ”を聞き、次に移動(屋内・屋外)、セルフケア(更衣・トイレ・入浴)、家事・仕事、社会活動の順で確認します。ここまでを 3〜5 分で回せるようになると、記録も短くなります。
さらに、評価者間のブレを減らすには構造化面接が有効です。チーム内で面接項目を共有しておくと、担当が変わっても mRS が“同じ意味の数字”になります。続けて読む:mRS-9Q(構造化面接)のチェックポイント
現場の詰まりどころ:mRS 3 と 4 の線引き( OK / NG 早見)
最も詰まりやすいのは mRS 3 と 4 です。ざっくり言うと「歩行が自立(見守り含む)なら 3 に寄りやすい」「歩行に介助が必要なら 4 に寄りやすい」ですが、セルフケア(更衣・トイレ・入浴)の介助量でも上下します。
迷ったら“普段の安全”で判定します。転倒リスクが高く、介助なしでは日常が回らないなら 4 に寄せ、外出頻度や家事の減少だけなら 2〜3 に寄せるのが実務的です(判断根拠を 1 行残すのがコツ)。
| 観点 | mRS 3 に寄る例 | mRS 4 に寄る例 | 記録ポイント |
|---|---|---|---|
| 歩行 | 屋内は自立(杖・装具可)、屋外は見守り | 屋内でも介助が必要(支持・誘導・体幹保持) | 「自立/見守り/介助」をはっきり書く |
| セルフケア | 更衣・トイレは自立、入浴のみ一部介助 | 更衣やトイレでも介助が必要 | 介助が必要な動作を 2〜3 個に絞って列挙 |
| 生活管理 | IADL(買い物・家事)に支援が必要 | 身の回りも含めて常に支援が必要 | IADL と ADL を混ぜずに分けて書く |
| 安全 | 見守りで安全が担保できる | 見守りでは不十分で、介助が必要 | 転倒歴・ヒヤリの有無を 1 行で |
よくある失敗:mRS が“ただの数字”になってしまうパターン
mRS の記録が弱いと、カンファで「結局どれくらい介助が要るの?」と聞き返されます。数字だけ残しても、次の担当が同じ点数を付けられないからです。ここはテンプレ化で解決します。
- 失敗 1:「歩行自立」とだけ書いて、見守りか介助かが不明
- 失敗 2:IADL の低下(買い物できない)を理由に 4 まで上げてしまう
- 失敗 3:本人の自己申告だけで決め、家族・介護者の裏取りがない
対策はシンプルで、「移動」「セルフケア」「生活管理」の 3 行に分けて 1 行ずつ書くことです。これだけで mRS の説得力が上がり、引き継ぎも楽になります。
よくある質問( FAQ )
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Q1. mRS は急性期でも使えますか?
A. 使えますが、急性期は症状が日々変わるため“評価時点”を必ず書きます(例:発症後 7 日、退院日)。退院時・ 1〜3 か月後など、同じタイミングで反復すると比較しやすいです。
Q2. 介護保険の要否と mRS は一致しますか?
A. 一致しません。mRS は全体像の指標で、介護度は生活環境や支援体制も含めて決まります。mRS は「介助量の目安」として使い、具体の支援内容は別途整理するのが安全です。
Q3. mRS 2 と 3 の違いは何ですか?
A. mRS 2 は基本的に ADL が自立で、以前の活動(仕事・家事・外出など)が制限される状態です。mRS 3 は“日常生活に何らかの介助が必要”がポイントで、見守りや一部介助が継続的に入るなら 3 に寄ります。
Q4. 電話やオンラインでも評価できますか?
A. 可能です。ただし聞き漏れが起きやすいので、質問の順番を固定し、必要に応じて家族からも確認します。評価者間のブレが気になる場合は、構造化面接の導入が有効です。
参考文献
- Rankin J. Scott Med J. 1957;2(5):200-215. DOI: 10.1177/003693305700200504 / PubMed: 13432835
- van Swieten JC, et al. Stroke. 1988;19(5):604-607. DOI: 10.1161/01.STR.19.5.604 / PubMed: 3363593
- Wilson JTL, et al. Stroke. 2002;33:2243-2246. DOI: 10.1161/01.STR.0000027437.22450.BD / PubMed: 12215594
- Banks JL, Marotta CA. Stroke. 2007;38(3):1091-1096. DOI: 10.1161/01.STR.0000258355.23810.c6 / PubMed: 17272767
- Patel N, et al. Neurosurgery. 2012;71(5):971-977. DOI: 10.1227/NEU.0b013e31826a8a56 / PubMed: 22843133
- Bruno A, et al. Clin Rehabil. 2013;27(8):724-727. DOI: 10.1177/0269215512470674 / PubMed: 23411790
- Broderick JP, et al. Stroke. 2017;48(7):2007-2012. DOI: 10.1161/STROKEAHA.117.017866 / PubMed: 28626052
- Saver JL, et al. Stroke. 2021;52(9):3054-3062. DOI: 10.1161/STROKEAHA.121.034480 / PubMed: 34320814
おわりに
mRS は「安全の確保→生活の聞き取り→介助量の裏取り→短い根拠記録→同じタイミングで再評価」という流れが回ると、臨床でも研究でも強い“共通言語”になります。評価と記録で手一杯になりやすい時期は、環境を変える準備も同時に進めておくと気持ちが楽です(面談準備チェック&職場評価シート):/mynavi-medical/#download
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


