リハビリの書類業務が辛いときの時短術|計画書・目標・記録

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リハビリの書類業務が辛いときは「文章力」より先に “型” を固定します

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計画書、目標設定、日々の記録、サマリー。どれも「書く量」が辛いというより、迷い差し戻しで時間が溶けやすいのが本質です。本記事では、臨床の個別性を残しつつ、最短でムラなく整う “型(テンプレ+運用)” を、現場で回る形に落とし込みます。

ポイントは、観察→評価→目標→計画の順を崩さないことと、書類ごとに「最小セット(最低限書く要素)」を決めることです。ここが揃うと、書類は「文章を考える作業」から「情報を配置する作業」に近づきます。

理学療法士の書類業務が辛くなる 3 つの原因

書類が辛い職場ほど、残業の原因は “量” ではなく “やり直し” です。提出してから差し戻しが起きると、内容も言い回しも作り直しになり、同じ 30 分が何度も発生します。まず潰すべきは、文章力ではなくやり直しの発生源です。

典型は ①目的が曖昧で、何を書くか毎回変わる ②観察と評価が混ざって長文化する ③目標が抽象的で、計画( P )が弱くなる、の 3 つです。逆にいえば、この 3 点に “型” を当てれば、書類は一気に軽くなります。

書類を 5 分で整える「書く順番」だけ固定する

最短で整う書き方は、書式よりも先に順番を固定することです。現場で迷いが出るのは「どこから書くか」が決まっていないときなので、以下の流れを “毎回同じ順” で回してください。

観察(事実)→評価(意味づけ)→目標(動作+条件+頻度)→計画(介入+用量+再評価条件)→説明・同意です。順番が一定になると、情報が不足している箇所も見つけやすくなり、診療の中で拾うべき観察が明確になります。

  1. 観察( S / O ):事実を短く。数値、介助量、環境、症状、リスク。
  2. 評価( A ):困っていることを 1 文で言い切る(理由は後で 1 行足す)。
  3. 目標:動作+条件(介助量・環境)+頻度(回数・期間)。
  4. 計画( P ):介入内容+用量(強度・時間・回数)+再評価条件。
  5. 説明・同意:本人・家族の理解と希望、リスク説明、同意の記録。

主要書類ごとの「最小セット」早見表

書類は “全部ちゃんと書こう” とすると詰まります。逆に、書類ごとに最低限そろえる 3〜5 要素を決めてしまうと、迷いが減り、差し戻しも減ります。

下の表は、計画書・目標設定・診療記録・サマリーを「受け手が困らない」最小セットに絞った早見表です。まずはここだけ揃え、必要なら施設ルールに合わせて 1 行ずつ追加してください。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

主要書類ごとの最小セット( PT / OT / ST 共通の考え方)
書類 目的 まず書く最小セット よくある NG 時短のコツ
リハ総合実施計画書 方針の共通化 現状(要約)/課題/目標/計画/同意 評価が散らばり、目標が抽象的 現状は「できる/できない」を先に書く
目標設定等支援・管理シート 本人目標の具体化 本人希望/優先動作/条件/頻度(期間) 「 ADL 自立」など曖昧 条件を 1 つ足す(介助量 or 環境)
診療記録( SOAP ) 短く伝える S / O(事実)→A(意味づけ 1 文)→P(次の一手) 観察と評価が混ざり長文化 A は 1 文、P は「やること+用量」
サマリー/施設間連絡票 連携の質 結論(現状)/できる・できない/配慮/継続課題 経過を詰め込み、要点が消える 経過は診療録へ寄せ、要点だけ残す
カンファ資料 意思決定 論点 1 行/現状/選択肢/提案/依頼事項 情報羅列で決まらない 「今日決めたいこと」を先頭に置く

計画書は「集め方」を決めると速くなります

計画書が遅い人ほど、書く前に “情報を集める時間” が長くなっています。先に拾う観察の枠を決めて、診療の中で短い表現で溜めると、計画書は入力作業に近づきます。

おすすめは、観察を「動作(何ができるか)」「条件(介助量・環境)」「反応(症状・安全)」の 3 枠で集めることです。これだけで、後から文章を考える量が減り、評価と目標がつながりやすくなります。

  • 動作:起立、移乗、歩行、段差、トイレ、更衣など “場面” で拾う
  • 条件:見守り/軽介助、手すり、車椅子、装具、酸素、環境調整
  • 反応:疼痛、息切れ、疲労、ふらつき、血圧、 SpO2 、注意低下

目標設定は「動作+条件+頻度」で 1 行に落とします

目標が抽象的になると、計画( P )が曖昧になり、結果として診療記録が長くなります。目標は “かっこいい文章” より、第三者が再現できる 1 行が強いです。

基本は「動作+条件(介助量や環境)+頻度(回数・期間)」です。たとえば「歩行自立」ではなく「病棟内 30 m を T 字杖・見守りで 1 日 3 回、 1 週以内に実施できる」のように、条件を 1 つ足すだけで目標は具体化します。

  • 例:移乗:ベッド⇄車椅子をスライディングボード使用で見守り、日中 5 回
  • 例:歩行:廊下 20 m を 4 点杖・軽介助で、 SpO2 92% 以上を保ち 2 往復
  • 例:更衣:上衣更衣を座位で自力、時間は 5 分以内(環境:椅子+手すり)

診療記録( SOAP )は「短く伝える型」で残業を減らします

カルテが長くなる原因は、観察と評価が混ざることです。まず観察(事実)評価(意味づけ)を分けてください。観察は短く、評価は 1 文で言い切る。これだけで読み手も書き手も楽になります。

特に O が散らばる人は、観察の “拾い方” を固定すると速いです。続けて読む:SOAP の O を絞る 3 点ルール。診療中に拾う観察が揃うと、 A と P が自動的に短くなります。

SOAP を短くする書き方(例)

  • S:「歩くと息切れが強い」「家ではトイレが不安」など主観を 1 行
  • O:事実(距離、介助量、環境、数値)を 2〜3 行
  • A:困りごとを 1 文+理由 1 行(長くしない)
  • P:次回やること+用量+再評価条件

サマリーは “次の現場が困らない情報” に絞ります

サマリーは、丁寧に書くほど読みづらくなることがあります。理由は、受け手が欲しいのは “経過の羅列” ではなく、現状と次の一手だからです。経過は診療録へ寄せ、サマリーは要点だけ残すほど連携が進みます。

型は「結論(現状の要点)→できること/できないこと→必要な配慮→継続課題」です。これを固定すると、情報量の多い症例でも “必要な行” に目が止まり、申し送りの質が安定します。

現場の詰まりどころ:差し戻しが起きる “あるある” と潰し方

差し戻しが起きるポイントは、だいたい決まっています。ここを先につぶすと、提出後の修正が減り、書類業務の体感が一気に軽くなります。

下の表は “やり直しの発生源” をまとめたものです。施設ごとのローカルルールはありますが、共通するのは「空欄」「抽象目標」「観察と評価の混在」です。

※スマホでは表を左右にスクロールできます。

差し戻しが起きやすいポイントと、最短の潰し方
詰まりポイント 起きやすい場面 潰し方(型) 提出前の一言チェック
空欄・日付・署名の抜け 退勤前に一気に仕上げる 最後に “ 3 点だけ” を相互チェック 「空欄 0、日付 OK、署名 OK」
目標が抽象的 時間がなく言い回しで済ませる 動作+条件+頻度で 1 行化 「第三者が再現できる?」
所見の長文化 観察と評価が混ざる 観察は事実、評価は 1 文の意味づけ 「評価を 1 文で言える?」
P が弱い 「様子見」で終わる 介入+用量+再評価条件をセット化 「次回、何を増減する?」

テンプレ導入の最短手順:個人の頑張りより “運用” を 1 つ決めます

書類は “テンプレを作る” だけだと失敗しやすいです。重要なのは、誰がいつ更新し、何を確定情報として扱うか、という運用です。運用が決まると、差し戻しが減り、個人の努力に依存しなくなります。

最短手順は 5 ステップです。まずは小さく回し、うまく回ったら範囲を広げてください。

  1. 書類の最小セットを決める(本記事の早見表をそのまま採用でも OK )
  2. 用語を揃える(介助量、環境、評価指標、期間表現など)
  3. 版管理を決める(最新のテンプレ 1 つだけを共有)
  4. 提出前の 3 点チェックを固定(空欄、日付、署名)
  5. 再評価の条件を固定(同条件で比較できるように)

よくある質問

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

理学療法士の実施計画書は、どこから手を付けると速いですか?

最初は「観察(事実)→評価(意味づけ)→目標(動作+条件+頻度)→計画(介入+用量+再評価条件)→同意」の順を固定してください。迷いが出るのは観察が散らばっているときなので、診療の中で短い表現で拾い、計画書は “配置する作業” に近づけると速くなります。

目標設定が毎回同じになってしまいます

原因は条件が書けていないことが多いです。「動作+条件(介助量や環境)+頻度」を 1 行に落とすと、同じ言葉でも中身が変わります。抽象的になったら、条件を 1 つ足すだけで改善します。

カルテが長くなり、書くのに時間がかかります

観察と評価を分けてください。観察は事実を短く、評価は 1 文の意味づけにします。特に A が長い場合は「いま困っていることは何か」を 1 文で言い切ると、全体が締まります。

サマリー(施設間連絡票)の情報量が多すぎると言われます

サマリーは “次の現場が困らない情報” を優先します。結論(現状の要点)→できること/できないこと→必要な配慮→継続課題の順で固定し、細かな経過は診療録に寄せると読みやすさが上がります。

おわりに

書類業務を軽くするコツは、版管理→観察→評価→目標→説明→同意→記録→再評価の “リズム” を崩さないことです。まずは「書く順番の固定」と「最小セットの早見表」だけでも回し始めると、差し戻しが減って体感が出ます。

面談準備チェックと職場評価シートも一緒に揃えておくと、働き方の見直しが進めやすいので、必要なら 面談準備チェック&職場評価シート(ダウンロード) も活用してください。

参考文献

  1. Weed LL. Medical records that guide and teach. N Engl J Med. 1968;278(11):593-600. doi: 10.1056/NEJM196803142781105 / PubMed: PMID: 5637758
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  3. Kang E, Kim MY, et al. Person-Centered Goal Setting: A Systematic Review of Intervention Components and Level of Active Engagement in Rehabilitation Goal-Setting Interventions. Arch Phys Med Rehabil. 2022;103(1):121-130.e3. doi: 10.1016/j.apmr.2021.06.025 / PubMed: PMID: 34375632
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  6. 上岡裕美子. 目標設定と目標達成度評価の考え方. 理学療法学. 2022;49(3):258-262. doi: 10.15063/rigaku.49-3kikaku_Kamioka_Yumiko

著者情報

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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