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この記事は「統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
多系統萎縮症とは、自律神経系や運動系などの複数の神経系が変性することで起こる疾患になります。多系統萎縮症は「オリーブ橋小脳萎縮症」「線条体黒質変性症」「シャイ・ドレーガー症候群」の 3 つのタイプに分かれるともあり、症状が多岐に渡る疾患となります。
このような背景もあり、多系統萎縮症の重症度評価における統一された評価尺度というものは世界的に定まっていないというところが現状になります。しかし、疾患に対する統一された評価尺度については重要性が高く、リハビリテーションや治療効果、進行度を判定するためにも必要になります。
そこで、この記事では、多系統萎縮症の症状や原因、そして、その重症度や生活機能を評価するための尺度である統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)について解説していきます。
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士として働いていると、一般的な会社員とは異なるリハビリ専門職ならではの苦悩や辛いことがあると思います。当サイト(rehabilikun blog)ではそのような療法士の働き方に対する記事も作成し、働き方改革の一助に携わりたいと考えております。
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多系統萎縮症とは?
多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)とは進行性の神経変性疾患であり、パーキンソニズム、小脳失調、自律神経不全、錐体路徴候などの症状を経過中に種々の程度で認める疾患になります。
多系統萎縮症(MSA)の平均発症年令は 55 ~ 60 歳、予後は 6 年から 10 年であり、15 年以上生存する症例もあります。
多系統萎縮症(MSA)は進行性の難病であり、国からは指定難病 17 として認定されています。現在のところ根本的な治療法は確立されておらず、対症療法やリハビリテーションなどで、症状の緩和や悪化の遅延を図ることがケアの中心となります。
多系統萎縮症の分類については、「初発症状による分類」と「Gilman分類」の 2 通りあります。混在してしまうことがあるため、ここは注意が必要になります。
初発症状による分類
多系統萎縮症という病名は「オリーブ橋小脳萎縮症」「線条体黒質変性症」「シャイ・ドレーガー症候群」の 3 つの病名の総称になります。この 3 つの疾患は前景に立つ症状が異なりますが、脳の病理変化が共通していることから、まとめて多系統萎縮症と呼ばれています。
- オリーブ橋小脳萎縮症:小脳症候で初発し、小脳性運動失調が主要症候となる
- 線条体黒質変性症:パーキンソニズムで初発し、パーキンソニズムが主要症候となる
- シャイ・ドレーガー症候群:自律神経障害で初発し、自律神経障害が主要症候となる
初発症状として 3 つのタイプに分類されますが、最終的には、小脳性運動失調、パーキンソニズム、自律神経障害のいずれも認めるようになると考えられています。
Gilman分類
多系統萎縮症(MSA)は、診察時に現れる症状によって、以下の 2 種類に分類されます。
- MSA-C:協調運動障害とバランス維持が困難になることを特徴とし、小脳の機能障害(cerebellar dysfunction)が示唆される
- MSA-P:しばしば振戦がみられず、レボドパで症状が軽減しない場合が多いことを除けば、パーキンソン病と非常によく似た症状を示す
MSA-C、MSA-P どちらのタイプであっても自律神経障害は認められると考えられています。初発症状としては、協調運動障害や小脳性運動失調、パーキンソニズムの一方の症状からはじまりますが、最終的にはもう一方のタイプの症状もみられるようになります。5 年経過すれば、どちらのタイプであったとしても、症状は同様のものになる傾向があります。
多系統萎縮症 臨床症状
多系統萎縮症の症状は、さまざまなものがあり、人によって進行速度や症状の重症度も異なるため、対象者ごとの症状を適切にアセスメントしてケアを図ることが重要になります。
小脳症候
MSAのうち、小脳性運動失調による構語障害や歩行不安定が前景にたつ場合をMSA-Cと呼びます。
構語障害には、いわゆるロレツが回らない、あるいは音と音がつながってしまうといった特徴があります。
また、歩行時に腰部の位置が定まらずゆらゆらと揺れる体幹動揺や足を左右に広げて歩く失調性歩行がみられます。進行すると転倒しやすくなるため注意が必要になります。
上肢には、後述するパーキンソニズムによるミオクローヌス様振戦とは別に、動作に伴うふるえや拙劣さが出現します。
パーキンソニズム
筋強剛を伴う動作緩慢、姿勢反射障害(姿勢保持障害)が主な症状になります。
パーキンソン病によるパーキンソニズムの違いとして、多系統萎縮症では安静時振戦などの不随意運動が生じることは稀となります。
安静時振戦の代わりに、手指にミオクローヌス様振戦(myoclonic tremor)と呼ばれる、手指の不規則で小さなふるえを認めることが特徴的となります。
また、多系統萎縮症によるパーキンソニズムは本態性パーキンソン病と比較してレボドパへの反応に乏しく、進行が早いのが特徴になります。
パーキンソン病の場合、パーキンソニズム発症後緩やかに症状が進行していきますが、多系統萎縮症の場合は進行速度がより早い傾向があります。
パーキンソン病だと思っていても、パーキンソニズム発症後 1 年で姿勢保持ができなくなったり、3 年程度で嚥下障害を来した場合には、「実は多系統萎縮症であった」なんてことも考えられます。
自律神経障害
排尿障害と起立性低血圧を中心に、発汗低下、体温調節障害、陰萎といった自律神経症状が先行します。
排尿障害は最も頻度が高く、頻尿や尿失禁から始まります。進行期には、残尿や突然の尿閉が起こる可能性があります。
残尿や尿閉は、尿は作られるが排泄できない状態で、感染を伴うと尿路を上行して腎盂腎炎の原因となります。腎盂腎炎は高熱が出て、重症化につながるため、多系統萎縮症患者の排尿状態には留意しておく必要があります。
起立性低血圧も合併しやすい症状の 1 つになります。軽度の起立性低血圧では日常生活において支障はなく、診察室で起立テストを行って初めて気付くこともあります。
重症の起立性低血圧では、起立直後に失神したり、長く椅子に腰かけているだけでも血圧が下がって意識が遠のいたりすることがあります。入浴後、食後、排泄前後などには特に注意が必要になります。
錐体路徴候
腱反射亢進、バビンスキー徴候・チャドック反射陽性、他人の手徴候/把握反射/反射性ミオクローヌス
認知機能低下、精神症状
幻覚(非薬剤性)、失語、失認、失行(肢節運動失行以外)、記憶力の低下、判断力の低下、注意力の低下、うつ病
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)とは
神経変性疾患である多系統萎縮症は進行性の疾患であり、ADL や生活の質(QOL)の低下をもたらします。
多系統萎縮症に対する新たな治療法や医療ケアといった医学的介入の効果を検証するためには、多系統萎縮症の臨床徴候を測定し、評価するための評価尺度が必要になりますが、多彩な臨床的病態を呈する多系統萎縮症において、適切な臨床評価尺度を開発することは難しいと考えられていました。
一方、小脳性運動失調の評価尺度として ICARS が、パーキンソニズムの評価尺度として UPDRS が開発され、多系統萎縮症の評価に応用することができるようになりました。しかし、いずれも多系統萎縮症の多彩な臨床病態の一部を評価することしかできず、総合的な判定には至りませんでした。
このような背景がありながらも、1999 年から活動している欧州多系統萎縮症研究グループ「Eur opean multiple system atrophy study group(EMSA-SG)」が中心となり、2004 年に多系統萎縮症の臨床評価尺度として、統一多系統萎縮症評価尺度(Unified Multiple System Atrophy Rating Scale:UMSARS)が発表され、今日までに、統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)の信頼性や妥当性が報告されています。
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)は、以下の 4 つの大項目により構成されています。
- 第Ⅰ部:病歴による日常生活動作の評価(12項目)
- 第Ⅱ部:診察による運動機能の評価(14項目)
- 第Ⅲ部:自律神経機能の評価
- 第Ⅳ部:全体的障害度の評価
第Ⅰ部と第Ⅱ部については各設問に対し 0 点から 4 点までの 5 段階で判定します。0 点が正常で 4 点は最も重度の症状であることを示します。合計点が高いほど、多系統萎縮症が重症であること、生活機能が低下していることを示します。
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS) 評価項目
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)は、4 つの大項目により構成されています。
第Ⅰ部で ADL、すなわち生活機能について評価し、第Ⅱ部では運動機能の詳細な機能評価を行います。第Ⅲ部では多系統萎縮症の代表的な症候となる自律神経機能を評価し、第Ⅳ部で総合的に現在の多系統萎縮症の状態を捉える 4 部構成となっております。
第Ⅰ部:病歴による日常生活動作の評価(12項目)
本人及び介助者への聞き取りにより過去2週間の平均的な状況を評価します。
12 項目の設問について各 0 点~ 4 点の 5 件法にて評価します。得点範囲は 0 点~ 48 点となり、得点が高いほど日常生活動作の重症度が高いという判定になります。
会話
- 正常
- 軽度障害 :理解ができる
- 中等度障害:時折(半分以下)、言葉を聞き返す必要がある
- 重度障害 :頻繁に(半分以上)、言葉を聞き返す必要がある
- 理解することが困難である
嚥下
- 正常
- 軽度障害 :週に一回程度、息が詰まる感じがある
- 中等度障害:週に一回以上、食事の際の誤嚥がある
- 重度障害 :頻繁に誤嚥がある
- 経鼻もしくは胃瘻による栄養摂取をしている
書字
- 正常
- 軽度障害 :書いた字がすべて判読できる
- 中等度障害:書いた字の半分程度が判読できる
- 重度障害 :書いた字の殆どが判読できない
- 書字できない
食事動作
- 正常
- やや拙速ではあるが、介助なしに可能
- 拙速で、ほとんどの食べ物をナイフで切れず、介助を要する
- 食べ物を切るのは介助を要するが、ゆっくり自分で摂食することはできる
- 自分で食べることができない
更衣
- 正常
- やや拙速ではあるが、介助なしに可能である
- 時折ボタンや袖通しの介助を要する
- 多くの介助を要するが、自分でできる事もある
- 全介助
衛生
- 正常
- やや拙速だが、介助なしに可能である
- シャワーや入浴に介助を要するか、非常に時間がかかる
- 洗体、歯磨き、髪をとかす、トイレの使用に介助を要する
- 全介助
歩行
- 正常
- 軽度障害 :自立しており、補助具も必要ない(無関係の疾患を除く)
- 中等度障害:時折、介助や補助具を要する
- 重度障害 :頻繁に介助を要する
- 介助なしには歩行することはできない
易転倒性
- なし
- 滅多に転倒しない(月に1回未満)
- 時折転倒する(週に1回未満)
- 週に一回以上の転倒
- 少なくとも一日一回の転倒(歩行不可の場合も含む)
起立による徴候
- 全く見られない
- 頻繁ではなく、日常生活動作に制限はない
- 頻繁に起こり、少なくとも週に一度悪化する。日常生活に制限をきたす
- 多くの状況で悪化する。一分以上の立位は可能な事が多いが、日常生活はかなり制限される
- 持続的に症状が出現している。意識消失や眩暈などが生じるため、1分未満しか立てない
排尿機能
- 正常
- 尿意切迫および(または)頻尿があるが、服薬は必要ない
- 尿意切迫および(または)頻尿があり、服薬が必要である
- 切迫性尿失禁および(または)残尿により導尿を要する
- 尿失禁のため留置カテーテルを要する
性的能力
- 正常
- 健常時に比べて軽度の障害がある
- 健常時に比べて中等度の障害がある
- 健常時に比べて重度の障害がある
- 性的不能
排便
- 病前と変化なし
- 時折便秘があるが、緩下剤は必要ない
- 頻繁に便秘があり、緩下剤が必要である
- 慢性的に便秘で、緩下剤や浣腸が必要である
- 自発的な排泄を行うことはできない
第Ⅱ部:診察による運動機能の評価(14項目)
各設問四肢の中で最も症状の重い肢で評価します。
14 項目の設問について各 0 点~ 4 点の 5 件法にて評価します。得点範囲は 0 点~ 56 点となり、得点が高いほど運動機能障害の重症度が高いという判定になります。
顔の表現
- 正常
- やや乏しいが、正常に近い(ポーカーフェイス)
- 表情に、わずかではあるが明らかな乏しさがある
- かなり無表情で、唇が開いている
- 面様顔貌か、表情が殆どか全くない強張った状態で、口が 6.35 mm 以上開いている
発語
基本文を何度か読んでもらい評価します。
- 正常
- わずかに遅く、不明瞭あるいは発声障害があるが、繰り返さなくてもわかる
- かなり遅く、不明瞭あるいは発声障害があり、時折聞き返さないとわからない
- 非常に遅く、不明瞭あるいは発声障害があり、頻繁に聞き返さないといけない
- 理解不能
眼球運動障害
検査者の指の水平な動きを追試させている時の眼球運動を観察したり、30°程度離した2本の指を見せ、衝動性運動誘発の有無を評価します。下記の 4 項目のうち異常所見がいくつ認めるのかを判定します。
- なし
- 1つの異常所見あり
- 2つの異常所見あり
- 3つの異常所見あり
- 4つの異常所見あり
安静時振戦
- なし
- ごく軽度に、少ない頻度で出現する
- 軽度の振幅で持続するか、中等度の振幅で間歇的に出現する
- 中等度の振幅で、多くの時間で出現する
- 著明な振幅で、多くの時間で出現する
動作時振戦
(A)伸張した上肢での姿勢保持振戦及び、(B)指差しにおける動作時振戦を評価します。
(A)伸張した上肢での姿勢保持振戦、(B)指差しにおける動作時振戦の重度な方で判定します。
- なし
- (A)小さな振幅でごく軽度に出現する (B)指差しに支障なし
- (A)中等度の振幅で出現する (B)指差しにいくらかの支障あり
- (A)重度の振幅で出現する (B)指差しに重度の支障あり
- (A)かなり重度の振幅で出現する (B)指差し不可
筋緊張亢進
被験者に座位で楽にしてもらい大関節の他動運動で判断します。歯車現場は無視します。
- なし
- ごく軽度、あるいは反射的にか他の動作によってのみ活動する
- 軽度~中等度
- 著明だが、最大可動域まで容易に伸張できる
- 重度で、可動域の制限を認める
手の素早い交互運動
手の回内外の運動を、垂直位または水平位にて、できるだけ大きな動きで左右別々に実施します。
- 正常
- 軽度障害
- 中等度障害
- 重度障害
- ほぼ不可能
指のタッピング
少なくとも15~20秒、母指と示指でできるだけ速く大きくタッピングを行います。
- 正常
- 軽度障害
- 中等度障害
- 重度障害
- ほぼ不可能
下肢の敏捷性
座位で下肢全体を地面から 10 cm程度持ち上げながら踵で地面をタッピングします。
- 正常
- 軽度障害
- 中等度障害
- 重度障害
- ほぼ不可能
踵膝脛試験
下肢を挙上して、伸ばしている対側の膝に乗せ、そのまま足関節まで脛の上を滑らせます。足関節まで到達したら空中を 40 cmほど浮かせて膝に戻します。正確な評価のため、同じ動作を少なくとも3回実施します。
- 正常
- 軽度の測定障害及び運動失調
- 中等度の測定障害及び運動失調
- 重度の測定障害及び運動失調
- ほぼ不可能
椅子からの立ち上がり
背もたれが真っすぐの、木製か金属製の椅子に胸の前で腕を組んで座り、そこから立ち上がります。
- 正常
- ぎこちないか、一回では立ち上がれない
- ひじ掛けに手をついて立ち上がる
- 後ろへ倒れがちで、2 回以上行うが介助なしで立ち上がれる
- 介助なしでは立ち上がれない
姿勢
- 正常
- 直立ではなくわずかに前方へ傾斜しているが、高齢者では正常範囲である
- 中等度の前傾があり、明らかな異常。わずかに一側に傾くことがある
- 脊柱後弯を伴う重度の前傾があり、どちらか一側へ倒れそうになる
- 極度の姿勢異常で、顕著な屈曲を認める
体幹の動揺
被験者に伝えた上で少し足を開き開眼して直立位をとってもらい、自発的な動揺や、検者が素早く強めに肩を引いた際の姿勢変化への応答を評価します。
- 正常
- わずかな身体の動揺、あるいは自己修正できる程度の後方へ動揺がある
- 中等度の身体の動揺、あるいは姿勢反射が低下していてサポートがないと倒れる
- 重度の身体の動揺があり非常に不安定である。立っていてもバランスを崩す事がある
- 介助なしでは立位不可能である
歩行
- 正常
- 軽度障害
- 中等度障害、介助はわずかに要するか不要な程度
- 重度障害、介助を要する
- 介助があっても歩行不可能
第Ⅲ部:自律神経機能の評価
下記の 2 つの条件で血圧と脈拍を測定し比較します。また、起立時の自律神経症状として「意識もうろう・めまい・眼のかすみ・脱力・疲労・認知機能低下・嘔気・動悸・震え・頭痛・頸部痛・肩こり」の症状の有無を確認します。2 条件は以下の通りになります。
- 安静後:2 分間臥位をとってから測定する
- 立位後:2 分間立位をとってから測定する
第Ⅳ部:全体的障害度の評価
第Ⅰ部、第Ⅱ部、第Ⅲ部の結果も踏まえ、第Ⅳ部で全体的障害度の評価を行います。下記の 1 ~ 5 のいずれかで判定することになります。
- 完全自立で、日常雑務を殆ど困難や障害なく行える。本質的に正常で、困難さを感じない。
- 完全な自立には至らず、いくらかの介助を要する。
- 依存度がやや高く、日常雑務の半分に介助を要し、一日の多くをそれに費やす。
- 非常に依存度が高く、わずかな日常雑務は自分で行えるのみで、大部分に介助を要する。
- 全般的に介助を要する。寝たきり状態となる。
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS) 評価用紙
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)の評価用紙は、「訪問看護ステーションわかばによって作成された PDF ファイル」が公開されています。PDF のリンクをこちらに添付させて頂きます。統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)の評価用紙を確認したい方は、上記リンクより閲覧をお願いします。
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS) 評価方法
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)のスコアを計算する方法は、以下のようになります。
- 第Ⅰ部:病歴による日常生活動作の評価(12項目)の各項目に 0 から 4 のスコアを付け、その合計を求めます。最高点は 48 点となります。
- 第Ⅱ部:診察による運動機能の評価(14項目)の各項目に 0 から 4 のスコアを付け、その合計を求めます。最高点は 56 点となります。
- 第Ⅲ部では安静臥位の状態での血圧、脈拍と起立後の血圧、脈拍の変化を比較します。また、上記の評価中に生じる自律神経症状の有無を確認します。
- 第Ⅳ部では全体的障害度を評価します。第Ⅰ部、第Ⅱ部、第Ⅲ部の結果も踏まえ、第Ⅳ部で 1 ~ 5 の選択肢から全体的障害度を判定します。
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS) カットオフ値
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)のカットオフ値とは、多系統萎縮症の診断や予後の判定に役立つスコアの目安となります。
様々な研究結果によってカットオフ値が異なるため、統一にまでは至っておりませんが、一般的には、以下のようなカットオフ値が提案されています。
- 第Ⅰ部:合計点が 10 点以上
- 第Ⅱ部:合計点が 25 点以上
- 第Ⅲ部:収縮期血圧の変化が 30 mmHg 以上かつ起立性症状があること
これらのカットオフ値を超えた場合には、多系統萎縮症の可能性が高いことを示します。しかし、カットオフ値は、あくまで参考値であり、最終的な診断は、医師の判断になります。
治療効果の判定に繋がる
統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)は、多系統萎縮症の重症度や生活機能を評価するための尺度であり、治療法そのものではありません。
しかし、統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)は、多系統萎縮症の診断や治療効果の判定に役立つことが期待されています。例えば、統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)のスコアを用いて、患者の症状の変化や治療の必要性を判断したり、新しい治療法の有効性や安全性を検証したりすることができます。
現在、多系統萎縮症の根本的な治療法はありませんが、症状に応じて対症療法やリハビリテーションなどが行われています。また、新たな治療法の開発に向けて、ウイルス療法や遺伝子治療などの研究が進められています。
ウイルス療法とは、がん細胞を攻撃するウイルスを利用して、多系統萎縮症の原因となる神経細胞の変性を防ぐ治療法になります。遺伝子治療とは、多系統萎縮症に関連する遺伝子の異常を修復する治療法になります。
これらの治療法は、まだ臨床試験の段階であり、その効果や安全性についての根拠は不十分な状態にあります。しかし、統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)を用いることで、これらの治療法の効果を評価することができると考えられます。
多系統萎縮症 リハビリの方法 ガイドライン
多系統萎縮症については、「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」で詳しくまとめられています。このガイドラインでは、多系統萎縮症のリハビリテーションについても記載があるため、その内容を紹介させていただきます。
多系統萎縮症に対するリハビリテーション(理学療法)の効果については情報量が不足しており、現時点では明確なエビデンスがありません。臨床においては、多系統萎縮症の症状に応じて小脳失調やパーキンソニズムに対して行われるような運動療法を実施するのが良いのではないかと考えられています。
また、多系統萎縮症の症状が進行すると、声帯や呼吸筋の運動障害により随意的な咳嗽力が低下することが多いため、症状の進行を見計らい呼吸理学療法や機械的排痰補助の導入を検討する必要があります。
多系統萎縮症では小脳失調の症状が不随するケースが多く、歩行や日常生活動作における転倒事故の危険性が高くなります。転倒リスクを軽減させるためには補助具の活用や環境設定が有効な対策となり、具体的には、支持基底面を増やすための杖や歩行器の使用、動線に沿った手すりの設置、プロテクターの着用や柔らかい床材の使用などがあげられます。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)」をキーワードに考えを述べさせていただきました。
こちらの記事が統一多系統萎縮症評価尺度(UMSARS)についての理解を深めることに繋がり、臨床における多系統萎縮症の診療に少しでもお力添えになれば幸いです。