Borg スケール実務ガイド| CR10 / 6–20 の使い分けと運動療法の強度設定
Borg は「強度の言語化」です。目標レンジと取得タイミングを固定すると、処方と再評価が一気にラクになります。 評価 → 介入 → 再評価の流れを 3 分で復習する( PT キャリアガイド )
本ページは Borg( RPE )を現場で“そのまま使う”ための実務ガイドです。CR10 と 6–20 の違い、場面別の目標 RPE、取得タイミング、記録のコツ、患者説明の定型文までを 1 ページ感覚で整理します。
ポイントは 3 つだけです。①同一患者は同一スケールで固定、②「息切れ」と「下肢疲労」を分けて聞く、③ HR / SpO₂ とセットで“時系列”に残す。この 3 点が揃うと、強度設定と再評価が再現性を持ちます。
Borg スケールの基本| CR10 と 6–20 を 30 秒で
Borg は運動中の“主観的強さ(自覚的運動強度)”を数値化する尺度です。息切れ(呼吸困難)と疲労は同じ数字でも意味が違うため、「息切れ / 下肢疲労」の 2 本立てで運用するとズレが減ります。
6–20 は運動生理の慣習として 値 × 10 ≒ HR の目安に寄せやすく、心リハの HR 管理と相性がよい一方、薬剤や疾患で乖離しやすい場面があります。CR10 は 0〜10( 0.5 含む )で直感的に説明しやすく、呼吸リハや導入期の教育で強いです。
Borg( 6–20 )とは
6〜20 の 15 段階で強度を自己評価します。運動負荷試験や心リハで HR と合わせて扱いやすい一方、β 遮断薬などで HR 反応が鈍ると、HR と RPE が噛み合わないことがあります。そういう時は症状( RPE )優先で減量・中止の判断に寄せるのが安全です。
修正 Borg( CR10 )とは
CR10( Category-Ratio 10 )は 0〜10( 0.5 含む )で強度を表す尺度です。「 3=中等度」「 5=きつい」など言葉が直感的で、“いまこの場の息切れ”を共有しやすいのが利点です。
使い分けの結論|迷ったら「 CR10 を標準」にする
迷ったら CR10 を標準にすると、導入・教育・記録が揃いやすいです。心リハなどでHR 目標が主役のときは 6–20 を選び、HR と RPE の両方で安全域を作ります。
| 観点 | CR10( 0–10 ) | 6–20 |
|---|---|---|
| 向く場面 | 呼吸リハ、導入期、病棟での運動療法、 6MWT / ISWT | 心リハ、運動負荷試験、 HR 目標が明確な処方 |
| 患者説明 | 直感的(「 3〜4 を目標」などが伝わりやすい) | 慣れが必要(数字の意味づけが難しいことがある) |
| 運用のコツ | 「息切れ / 下肢疲労」を分けて聞く( 2 本立てが強い) | HR と合わせて解釈(薬剤・条件差で乖離しやすい) |
| 落とし穴 | “過小申告”が起きやすい(体感デモで補正) | HR と一致しないときに迷う(症状優先で安全側へ) |
場面別の目標 RPE|ひと目で決める早見表
目標は「一律」ではなく、目的と安全域で決めます。導入期は上げすぎを避け、継続できるレンジ(会話が保てる)から固定すると再現性が上がります。
実務では目標レンジ+補助指標( HR / SpO₂ / 会話テスト )のセット運用が最短です。スケールは 1 セッション 1 本で固定し、同一患者は同一スケールで比較します。
| 場面 | 第一選択 | 目標 RPE | 補助指標 | 現場メモ |
|---|---|---|---|---|
| 外来初回・導入期 | CR10 | 3〜4 | HR、SpO₂、会話テスト | 過小申告を防ぐため、最初に 30〜60 秒の“体感デモ”で感覚合わせ |
| 呼吸リハ(有酸素) | CR10 | 3〜5 | HR、SpO₂、症状推移 | SpO₂ の落ち込みと回復遅延(終了後 1〜2 分)を併記すると判断が速い |
| 心リハ(有酸素) | 6–20 | 11〜13 | HR(目標 HR など) | 薬剤影響(β 遮断薬 など)を前提に、症状優先で安全域を確保 |
| 筋トレ(下肢・体幹) | CR10 | 息切れ 2〜4 / 下肢疲労 4〜6 | 反復回数、フォーム、回復時間 | “息切れは軽め、局所疲労は中等度”の分離が安全(呼吸器・循環器は特に) |
| 6 分間歩行( 6MWT ) | CR10 | 前後取得(終了時 3〜5 目安) | SpO₂ ドロップ、息切れ / 疲労 | 前回比(距離・ SpO₂ ・ Borg )の“セット比較”を最優先 |
| 間欠的シャトル歩行( ISWT ) | CR10 | 段階上昇に応じ取得 | HR、SpO₂、歩行速度 | 中止基準は施設 SOP・主治医指示を優先(迷ったら安全側) |
取得タイミングとワークフロー|“聞く順番”を固定する
聞くタイミングが揃うと、データが比較可能になります。特に導入期は「いつ聞いた数字か」がズレると、同じ 4 でも意味が変わります。
おすすめは導入(感覚合わせ)→定点取得→終了時→回復の 4 点セットです。数が多いほど良いのではなく、同じ場所で同じ方法が効きます。
- 導入( 30 秒 ):目的の説明 → 「 CR10 の 3 / 5 はこのくらい」を体感デモで合わせる
- セッション中(定点):例) 1 分、 3 分、 5 分、以降 5 分ごとに CR10(息切れ / 下肢疲労)を聴取し、同時に HR / SpO₂ を記録
- 終了時:終了直後の Borg + バイタルを記録(“いちばんきつい瞬間”が残る)
- 回復:終了後 1〜2 分で Borg がどこまで戻るか(回復遅延は次回処方のヒント)
現場の詰まりどころ|よくある失敗と直し方
順位が上がりにくい記事は「実務の落とし穴」が薄いことが多いです。Borg も同じで、失敗パターンが分かると読者の滞在が伸びやすくなります。
以下は臨床で頻出の “あるある” です。ミスを潰すだけで、強度設定の再現性が上がります。
| NG(起きがち) | なぜダメ? | OK(修正) | 記録に残す一言 |
|---|---|---|---|
| セッション途中で CR10 と 6–20 を混ぜる | 比較不能になり、前回比が崩れる | 1 セッション 1 スケール(同一患者は固定) | 「本日は CR10 で統一」 |
| “息切れ”だけ聞いて下肢疲労を聞かない | 筋疲労が主因なのに、呼吸だけで判断してしまう | 息切れ / 下肢疲労の 2 本立てで聴取 | 「CR10(息切れ/疲労)= 3 / 5 」 |
| 数字だけ書いて、いつ聞いたか分からない | “同じ 4 ”の意味がズレる(途中なのか終了時なのか) | 定点(分時)+終了時+回復で固定 | 「 5 分= 3 、終了時= 5 、 2 分後= 2 」 |
| HR / SpO₂ を別紙で管理し、紐づかない | 安全域の判断が遅れる | 同じ行に Borg + HR + SpO₂を並べる | 「 3 / HR 96 / SpO₂ 93% 」 |
| “過小申告”をそのまま採用する | 強度が上がりやすく、リスク管理が崩れる | 導入で体感デモ( 30〜60 秒)→ラベルで再説明 | 「体感デモ後に再評価」 |
CR10 と 6–20 の“合わせ方”|施設内でズレを減らす
教育用に「だいたいの対応」を共有すると、患者とスタッフの混乱が減ります。ただし厳密な換算ではなく、あくまで教育用の目安として扱います。
実務のコツは対応表よりも“固定ルール”です。①スケール固定、②定点取得、③症状優先(迷ったら減量)を共通言語にします。
- スケール固定: 1 セッション 1 スケール( CR10 を使うなら最後まで CR10 )
- 教育用の目安: CR10= 3〜4 ≒ 6–20= 11〜13(あくまで“説明用”)
- HR と合わないとき:薬剤・睡眠不足・疼痛・不安・条件差を確認し、症状優先で減量 / 中止
記録方法と読み方|テンプレで“時系列”を残す
記録の主役は「推移」です。単発の数字より、上がり方・下がり方(回復)が次回処方の根拠になります。
同一患者は同一環境で取り、介入の変更点(速度・負荷・休憩)を必ず併記します。これで “なぜ今日は 5 なのか” が説明できます。
記録例:「 CR10(息切れ/疲労)= 4 / 3 、 HR 96 、 SpO₂ 93% 、平地速歩 6 分。 4 分で一時減速。終了後 2 分で CR10= 2 まで回復 」
患者説明の定型文|伝え方で数値が安定する
説明が揃うと、同じ患者の数値がブレにくくなります。最初の 1 回だけ丁寧に合わせると、その後が速いです。
以下はそのまま使える言い回しです(施設に合わせて調整してください)。
- 「いまの息切れを 0〜10 で言うと、どのくらいですか? 0 は全くなし、 10 はこれ以上ないくらいです。」
- 「同じように、脚の疲れは 0〜10 でどのくらいですか?」
- 「今日は 3〜5 を目標に動きます。 6 以上が続くなら、いったん強さを下げます。」
ダウンロード( A4 / クリックで開きます )
印刷推奨: A4 、余白 10–12 mm 、ヘッダー / フッター非表示。
おわりに
臨床で迷いにくい順番は、安全の確保 → 目標レンジ設定 → 定点取得 → 記録(時系列) → 再評価です。Borg は「数字を取る」より、同じ取り方で比較できる形にすることが成果に直結します。
見学や情報収集の段階でも使えるように、面談準備チェック( A4 ・ 5 分 )と職場評価シート( A4 )を無料公開しています。印刷してそのまま使えます。
FAQ
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
CR10 と 6–20、どちらを使えば良いですか?
患者教育のしやすさは CR10、 HR 管理との整合は 6–20 が得意です。迷ったら CR10 を標準にし、心リハなど HR 目標が主役の場面だけ 6–20 にすると、運用が崩れにくいです。
RPE と HR が一致しません
β 遮断薬など薬剤、疼痛や不安、睡眠不足、条件差が影響します。症状( RPE )優先で強度を調整し、次回は導入・ウォームアップ・取得タイミング(定点)を見直します。
6MWT ではいつ取得しますか?
原則、実施前と終了時に CR10(息切れ / 疲労)を取得し、 SpO₂ の変動と合わせて解釈します。前回比(距離・ SpO₂ ・ Borg )の“セット比較”が最重要です。 [oai_citation:0‡PubMed](https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30237659/?utm_source=chatgpt.com)
“過小申告”が多くて、数字が信用できません
導入で 30〜60 秒の体感デモを入れると改善しやすいです。「このくらいが 3 、このくらいが 5 」を共有してから聴取すると、同一患者内の比較が安定します。
参考文献
- Borg GA. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc. 1982;14(5):377–381. PubMed
- ATS Committee. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111–117. DOI:10.1164/ajrccm.166.1.at1102 / PubMed
- Holland AE, et al. An official ERS/ATS technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir J. 2014;44(6):1428–1446. DOI:10.1183/09031936.00150314 / PubMed
- Zinoubi B, et al. Relationships between rating of perceived exertion, heart rate and blood lactate during continuous and alternated-intensity cycling exercises. Biol Sport. 2018;35(1):29–37. DOI:10.5114/biolsport.2018.70749 / PubMed
- Ekström M, et al. Normative Reference Equations for Breathlessness Intensity during Incremental Cardiopulmonary Cycle Exercise Testing. Ann Am Thorac Soc. 2024;21(1):56–67. DOI:10.1513/AnnalsATS.202305-394OC / PubMed
著者情報
rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


