Borg スケールの使い方| CR10 ・ 6–20 ・ 記録法【 A4 PDF 付き 】
まずは全体像を押さえると、このページの役割がつかみやすいです。 評価ハブで全体像を確認する 関連:呼吸困難スケール総論 / Borg と mMRC の違い【比較】
本ページは Borg スケールを臨床でそのまま使うための実務ページです。CR10 と 6–20 の違い、場面別の目標 RPE、取得タイミング、記録の型、患者説明の言い回し、さらに A4 PDF 記録シートまで 1 ページで整理します。
このページで答えるのは、「 Borg をどう選び、いつ聞き、どう残すか 」です。mMRC を含む呼吸困難スケール全体の整理や、mMRC との詳しい比較は別記事に譲り、ここでは Borg の運用に絞って解説します。
Borg スケールの基本| CR10 と 6–20 を 30 秒で
Borg は運動中の主観的強さ(自覚的運動強度)を数値化する尺度です。息切れと筋疲労は同じ数字でも意味が違うため、実務では「息切れ / 下肢疲労」の 2 本立てで聴取すると判断が速くなります。
6–20 は心拍との対応をイメージしやすく、心リハや運動負荷試験と相性がよい一方、薬剤や不整脈、体調差でズレることがあります。CR10 は 0〜10( 0.5 含む )で説明しやすく、病棟・外来・呼吸リハの導入で使いやすいのが強みです。
Borg( 6–20 )とは
6〜20 の 15 段階で運動強度を自己評価します。値 × 10 ≒ HR の目安として扱われることがあり、HR 管理を併用する場面で使いやすいのが特徴です。ただし、β 遮断薬などで HR 反応が鈍い場合は、HR と RPE が噛み合わないことがあります。そのときは数値合わせより、症状優先で安全側に寄せるのが基本です。
修正 Borg( CR10 )とは
CR10( Category-Ratio 10 )は 0〜10( 0.5 含む )で強度を表す尺度です。「 3=中等度 」「 5=きつい 」など、患者への説明が直感的で、“いまこの場の息切れ”を共有しやすいのが利点です。
使い分けの結論|迷ったら CR10 を標準にする
迷ったら CR10 を標準にすると、導入・教育・記録がそろいやすいです。患者説明がしやすく、病棟・外来・呼吸リハ・歩行試験まで運用を統一しやすいからです。
一方で、HR 目標が主役の心リハや運動負荷試験では 6–20 が合います。結論は、CR10=日常の実務標準、 6–20=HR と合わせたい場面で使い分けるのが実践的です。
| 観点 | CR10( 0–10 ) | 6–20 |
|---|---|---|
| 向く場面 | 呼吸リハ、導入期、病棟での運動療法、 6MWT / ISWT | 心リハ、運動負荷試験、 HR 目標が明確な処方 |
| 患者説明 | 直感的で伝えやすい(「 3〜4 を目標 」など) | 慣れが必要(数字の意味づけがやや難しい) |
| 運用のコツ | 「息切れ / 下肢疲労」を分けて聞く | HR と症状をセットで解釈する |
| 落とし穴 | 過小申告が起きやすい | HR と一致しない場面で迷いやすい |
場面別の目標 RPE|ひと目で決める早見表
目標 RPE は一律ではなく、目的と安全域で決めます。導入期は上げすぎず、会話が保てるレンジから始めると再現性が高くなります。
実務では目標レンジ+補助指標( HR / SpO₂ / Talk test )のセット運用が最短です。スケールは 1 セッション 1 本で固定し、同一患者は同一スケールで比較します。
| 場面 | 第一選択 | 目標 RPE | 補助指標 | 現場メモ |
|---|---|---|---|---|
| 外来初回・導入期 | CR10 | 3〜4 | HR、SpO₂、Talk test | 最初に 30〜60 秒の体感デモで感覚合わせをする |
| 呼吸リハ(有酸素) | CR10 | 3〜5 | HR、SpO₂、症状推移 | 終了後 1〜2 分の戻り方まで見ると次回調整しやすい |
| 心リハ(有酸素) | 6–20 | 11〜13 | HR、症状、血圧 | 薬剤影響を前提に、迷ったら症状優先で安全側へ |
| 筋トレ(下肢・体幹) | CR10 | 息切れ 2〜4 / 下肢疲労 4〜6 | 反復回数、フォーム、回復時間 | 息切れと局所疲労を分けると負荷調整しやすい |
| 6 分間歩行( 6MWT ) | CR10 | 前後取得(終了時 3〜5 目安) | SpO₂ ドロップ、HR、疲労感 | 前回比は距離・ SpO₂ ・ Borg をセットでみる |
| 間欠的シャトル歩行( ISWT ) | CR10 | 段階上昇に応じ取得 | HR、SpO₂、歩行速度 | 中止基準は施設 SOP・主治医指示を優先する |
取得タイミングとワークフロー|聞く順番を固定する
聞くタイミングが揃うと、データが比較可能になります。同じ「 4 」でも、途中なのか終了時なのかで意味が変わるため、まず順番を固定します。
おすすめは導入 → 定点取得 → 終了時 → 回復の 4 点セットです。回数を増やすより、毎回同じ場所で同じ聞き方を守る方が有効です。
- 導入( 30 秒 ):目的の説明 → 「 CR10 の 3 / 5 はこのくらい 」を体感デモで共有する
- セッション中(定点):例) 1 分、 3 分、 5 分、以降 5 分ごとに CR10(息切れ / 下肢疲労)を聴取し、同時に HR / SpO₂ を記録する
- 終了時:終了直後の Borg + バイタルを記録する
- 回復:終了後 1〜2 分で Borg がどこまで戻るかを確認する
現場の詰まりどころ|よくある失敗と直し方
Borg は尺度そのものより、運用のズレで失敗しやすいです。以下 3 本だけ押さえると、強度設定の再現性がかなり上がります。
- よくある失敗だけ先に見る
- 記録の型だけ先に見る
- mMRC との役割分担は Borg と mMRC の違い【比較・使い分け】 で整理できます
| NG(起きがち) | なぜダメ? | OK(修正) | 記録に残す一言 |
|---|---|---|---|
| セッション途中で CR10 と 6–20 を混ぜる | 前回比ができず、判断の根拠が崩れる | 1 セッション 1 スケールで最後まで統一する | 「本日は CR10 で統一」 |
| 息切れだけ聞いて下肢疲労を聞かない | 筋疲労が主因なのに、呼吸だけで負荷調整してしまう | 息切れ / 下肢疲労の 2 本立てで聴取する | 「 CR10(息切れ/疲労)= 3 / 5 」 |
| 数字だけ書いて、いつ聞いたか分からない | 同じ数値でも意味が変わり、比較不能になる | 定点+終了時+回復で固定する | 「 5 分= 3 、終了時= 5 、 2 分後= 2 」 |
| HR / SpO₂ を別紙で管理して紐づかない | 安全域の判断が遅れる | 同じ行に Borg + HR + SpO₂を並べて記録する | 「 3 / HR 96 / SpO₂ 93% 」 |
| 過小申告をそのまま採用する | 強度が上がりやすく、安全管理が崩れる | 導入で体感デモを入れ、ラベルを再説明する | 「体感デモ後に再確認」 |
CR10 と 6–20 の合わせ方|施設内でズレを減らす
教育用に「だいたいの対応」を共有すると、患者とスタッフの混乱が減ります。ただし厳密な換算ではなく、教育用の目安として扱います。
実務で効くのは換算表そのものより、①スケール固定、②定点取得、③症状優先の 3 ルールです。これだけでスタッフ間のブレがかなり減ります。
- スケール固定: 1 セッション 1 スケール
- 教育用の目安: CR10= 3〜4 は、 6–20= 11〜13 の説明に近いことが多い
- HR と合わないとき:薬剤・不安・疼痛・睡眠不足・条件差を確認し、症状優先で調整する
記録方法と読み方|テンプレで時系列を残す
記録の主役は単発の数値ではなく、推移です。上がり方・下がり方・戻り方が見えると、次回の処方根拠になります。
同一患者は同一環境で取り、介入の変更点(速度・負荷・休憩・酸素条件)を必ず併記します。これで「なぜ今日は 5 なのか」が説明できます。
記録例:「 CR10(息切れ/疲労)= 4 / 3 、 HR 96 、 SpO₂ 93% 、平地速歩 6 分。 4 分で一時減速。終了後 2 分で CR10= 2 まで回復 」
患者説明の定型文|伝え方で数値が安定する
説明が揃うと、同じ患者の数値がブレにくくなります。最初の 1 回だけ丁寧に合わせると、その後が速くなります。
以下はそのまま使いやすい言い回しです。施設の説明文に合わせて微調整してください。
- 「いまの息切れを 0〜10 で言うと、どのくらいですか? 0 は全くなし、 10 はこれ以上ないくらいです。」
- 「同じように、脚の疲れは 0〜10 でどのくらいですか?」
- 「今日は 3〜5 を目標に動きます。 6 以上が続くなら、いったん強さを下げます。」
ダウンロード( A4 PDF / プレビュー付き )
Borg 記録シート( A4 PDF )を配布しています。セッション中の Borg / HR / SpO₂ / メモを 1 枚で時系列管理したい場面で使いやすい形式です。
印刷推奨: A4 / 余白 10〜12 mm / ヘッダ・フッタ非表示
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FAQ
各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。
CR10 と 6–20、どちらを使えば良いですか?
患者説明のしやすさと病棟・外来での運用のしやすさは CR10 が優位です。心リハなどで HR と合わせて強度管理したい場面は 6–20 が使いやすいため、迷ったら CR10 を標準にし、必要な場面だけ 6–20 を使うと崩れにくいです。
RPE と HR が一致しません
β 遮断薬などの薬剤、疼痛、不安、睡眠不足、測定条件の違いでズレます。そういう時は 症状( RPE )優先で強度を調整し、次回はウォームアップ、取得タイミング、条件固定を見直します。
6MWT ではいつ取得しますか?
原則は実施前と終了時です。必要に応じて終了後 1〜2 分の回復も見て、距離、 SpO₂ 、 HR 、 Borg をセットで比較すると解釈しやすくなります。
mMRC とは何が違いますか?
mMRC は生活場面での息切れ制限をみる尺度、Borg は運動中のその瞬間のきつさをみる尺度です。層別化は mMRC、運動中の負荷調整は Borg と考えると整理しやすいです。
過小申告が多くて、数字が信用できません
導入で 30〜60 秒の体感デモを入れると改善しやすいです。「このくらいが 3 、このくらいが 5 」を共有してから聴取すると、同一患者内の比較が安定します。
次の一手
- 呼吸困難スケール総論:mMRC ・ Borg ・ NRS / VAS ・ D-12 まで全体像を整理したいときに向きます
- Borg と mMRC の違い【比較・使い分け】:層別化と負荷調整の役割分担だけを短時間で確認したいときに使えます
参考文献
- Borg GA. Psychophysical bases of perceived exertion. Med Sci Sports Exerc. 1982;14(5):377–381. PubMed
- ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(1):111–117. DOI:10.1164/ajrccm.166.1.at1102 / PubMed
- Holland AE, Spruit MA, Troosters T, et al. An official European Respiratory Society/American Thoracic Society technical standard: field walking tests in chronic respiratory disease. Eur Respir J. 2014;44(6):1428–1446. DOI:10.1183/09031936.00150314 / PubMed
- Zinoubi B, Zbidi S, Vandewalle H, Chamari K, Driss T. Relationships between rating of perceived exertion, heart rate and blood lactate during continuous and alternated-intensity cycling exercises. Biol Sport. 2018;35(1):29–37. DOI:10.5114/biolsport.2018.70749 / PubMed
- Brown TM, Pack QR, Aberegg E, et al. Core Components of Cardiac Rehabilitation Programs: 2024 Update: A Scientific Statement From the American Heart Association and the American Association of Cardiovascular and Pulmonary Rehabilitation. Circulation. 2024;150(18):e328–e347. DOI:10.1161/CIR.0000000000001289 / PubMed
著者情報

rehabilikun(理学療法士)
rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。
- 脳卒中 認定理学療法士
- 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
- 登録理学療法士
- 3 学会合同呼吸療法認定士
- 福祉住環境コーディネーター 2 級
専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下


