筋力測定の使い分けと記録|MMT・HHD・10RM【PDF付】

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筋力測定の使い分け| MMT ・ HHD ・ 10RM で迷わない

まずは「目的に対して主役の手法を 1 つ決める」と、筋力評価は回りやすくなります。

評価ハブで全体像を確認する

関連: MMT のやり方・書き方
関連: HHD の手順を固定する

筋力測定で止まりやすいのは、「どの方法を選ぶか」と「前回と同じ条件で追えているか」が曖昧なときです。結論として、初回は MMT で当たりを付け、追う筋は HHD で数値化し、負荷設定は 10RM を入口にすると、評価 → 介入 → 再評価がつながりやすくなります。

この記事では、筋力測定の使い分け・記録・再評価に絞って整理します。つまり「何を使うか」「何を残すか」「次回どう比較するか」を決めるページです。記事内にはA4 1 枚の筋力測定 記録シート PDFも付けたので、明日からの記録テンプレとしてそのまま使えます。

結論:迷わない 3 ステップ

測定法を増やすより、選び方の順番を固定した方が運用は安定します。

① MMT で弱点を絞る → ② 追う筋は HHD で数値化 → ③ トレーニング負荷は 10RM から決めるが、病棟・外来・訪問で回しやすい基本形です。

筋力測定の基本運用:目的 → 手法 → 記録を 1 セットで揃える
目的 まず選ぶ手法 現場で揃える条件 記録の最小セット
スクリーニング MMT 姿勢、近位固定、代償の抑え方 Grade + 代償 + 疼痛 + ROM
経時変化 HHD 角度、固定(ベルト)、回数、単位 最大値 + 条件(角度・固定・回数・単位)
負荷処方 10RM(推定) 種目、可動域、テンポ、休憩 重量 + 回数 + フォーム可否 + 疼痛

MMT ・ HHD ・ 1RM / 10RM の使い分け早見

選び方は「何が知りたいか」で決まります。全体を素早く見るなら MMT 、左右差や経時変化を追うなら HHD 、負荷を決めるなら 1RM 系です。実務では、まず 10RM を入口にした方が安全に回しやすい場面が多いです。

筋力測定の代表 3 手法:向いている場面・弱点・記録のコツ
手法 向く場面 弱点 記録のコツ おすすめ運用
MMT 全体の当たりを付ける/麻痺・神経所見の整理 Grade 4 以上が曖昧になりやすい(検者依存) 姿勢・代償・疼痛・可動域を併記 初回は MMT → 重点筋を決める
HHD 経時変化を追う/左右差を定量化 固定が弱いと「被検者の力」より「固定力」になる 角度・固定(ベルト)・回数・単位を固定 同一条件で 2〜3 回測って最大値
1RM / 10RM 筋トレ負荷の設定/自主トレの処方 フォーム崩れ・代償が入りやすい(関節痛にも注意) 種目・可動域・テンポ・休憩を固定 まず 10RM から推定 → 反応で微調整

現場の詰まりどころ:筋力が「測れていない」 3 パターン

筋力測定が崩れる原因は、だいたい「条件が揃っていない」「固定が弱い」「記録が曖昧」の 3 つです。ここを先に潰すと、再現性が上がります。

先に戻る場所を固定しておくと運用が安定します。測定手順記録シート PDF / 実務手順は HHD(ハンドヘルドダイナモメーター)筋力測定の手順 を確認してください。

筋力測定が崩れる原因と、その場でできる修正
詰まりポイント 起きやすいこと その場の修正 記録に残す項目
条件が揃っていない 前回より姿勢・角度・ウォームアップが違い、数値がブレる 姿勢と角度を文章で固定(座面高、膝角度など) 姿勢、関節角度、ウォームアップ有無
固定が弱い HHD の値が固定力に引っ張られる ベルト固定/支持物(ベッド脚・椅子脚)を使う 固定方法(ベルト位置・支点)
記録が曖昧 「良くなった気がする」で止まり、説明できない 最大値・回数・左右・単位を統一して残す 最大値、回数、単位( N / kgf )、左右

MMT(徒手筋力検査)を「評価」として使い切るコツ

MMT の強みは、短時間で全身をスクリーニングしやすいことです。一方で、Grade 4〜5 帯は検者の抵抗の入れ方や固定の差が結果に乗りやすいため、経時変化の主役にしすぎるとブレが残りやすくなります。

実務では、MMT で弱点を見つける → 重点筋だけ HHD で追うの組み合わせが噛み合います。記録は Grade だけで終わらせず、代償・疼痛・可動域制限・近位固定の有無まで短く添えると、多職種へ共有しやすくなります。

MMT の記録を強くする最小セット( Grade だけにしない )
残す項目 この一言が効く
姿勢 座位、体幹支持あり 「姿勢固定」
代償 体幹側屈で代償あり 「代償あり」
疼痛 疼痛 3 / 10 で制限 「疼痛で制限」
ROM 終末域で制限 「 ROM 制限」

HHD(ハンドヘルドダイナモメーター)で「経時変化」を追うコツ

HHD は、条件を揃えれば左右差と経時変化を追いやすい方法です。逆に、固定が弱いと値は簡単に崩れます。コツは、角度・固定・回数・単位をテンプレ化して、毎回同じ条件に戻せるようにすることです。

特に MMT の Grade 4〜5 帯で迷いやすい症例では、HHD を 1 本入れるだけで「良くなったか」の説明がしやすくなることが多いです。

セットアップの要点(膝伸展の例)

膝伸展は座位で実施することが多く、ベルト固定の基本は「当てる位置を固定する」ことと、「支点を近づけて、たわみを減らす」ことです。角度と固定が揃うだけで、数値のブレはかなり減ります。

HHD(膝伸展)セットアップ早見:固定と角度を揃える
項目 推奨 よくあるズレ 直し方
姿勢 座位で体幹を起こし、上肢支持は一定 体幹後傾で代償が増える 座面高を調整し、骨盤を立てやすくする
膝角度 膝 90°屈曲位を基本に固定 前回と角度がズレる 座面高・下腿位置を毎回メモ
当て位置 下腿遠位を基本に固定 毎回位置が変わる 目印(テープ)で位置を統一
固定 ベルト固定でたわみを最小化 ベルトが斜め/支点が遠い 支点を近づけ、直線で引ける位置へ

測定手順(実務で迷わない最短フロー)

現場では「人によってやり方が違う」ことが最大の誤差になります。次の 4 点を固定すると、再評価が成立しやすくなります。

  1. 練習 1 回:最大努力の感覚を合わせる(本番扱いにしない)
  2. 本測定:最大努力 3〜5 秒 × 2〜3 回(休憩 30〜60 秒を固定)
  3. 採用:原則は最大値(代償・疼痛が出た試行は除外)
  4. 記録:数値より先に条件(角度・固定・回数・単位)を残す

単位の扱い( kgf と N を混ぜない )

HHD は機種により表示単位が異なります。kgf と N を混在させると経時比較が崩れるので、施設内で統一すると運用がラクです。

単位換算(目安): kgf → N
表示 換算式
kgf → N N = kgf × 9.80665 30 kgf ≒ 294 N

1RM / 10RM をリハで使う考え方

1RM 系は「どれくらいの負荷で筋トレするか」を決めるのに便利です。ただし、関節痛やフォーム崩れがあると、筋力ではなく代償の上手さを測ってしまいます。

現場では、いきなり 1RM を取りに行くより、10RM( 10 回できる重さ )を基準にして、疲労・疼痛・フォームを見ながら微調整する方が扱いやすいです。測定種目を固定すると、負荷処方だけでなく経時比較にも使えます。

10RM を「評価として」成立させる条件(フォームが数値の前提)
固定するもの 崩れると起きること
種目 レッグプレス、シットトゥスタンド等 別筋群の比較になりやすい
可動域 膝屈曲角度、深さを固定 回数は同じでも負荷が変わる
テンポ 上げ下げの速度を一定 反動で達成してしまう
休憩 休憩時間を固定 疲労の混入で誤差が増える

筋力測定 記録テンプレ(後から再現できる形)

記録で残すべきなのは、「後から同じ条件で再現できる情報」です。最低限、姿勢・角度・固定・回数・単位があれば、次回の比較が成立します。

筋力測定 記録テンプレ(例: HHD / MMT / 10RM )
日付 部位 方法 条件(姿勢・角度・固定・単位) 試行 1 試行 2 試行 3 採用値 メモ(疼痛・代償など)
____/__/__ 膝伸展(右) HHD 座位、膝 90°、固定:ベルト、単位:kgf、5 秒 × 3 回 ____ ____ ____ ____ 疼痛 __ / 10、代償:有/無
____/__/__ 肩外転(左) MMT 座位、支持:あり/なし Grade __ Grade __ 代償:体幹側屈、有/無
____/__/__ レッグプレス 10RM 深さ ○○、テンポ一定、休憩 ○○ 重量 ____ kg 10 回達成 フォーム崩れ:有/無

筋力測定 記録シート PDF

A4 1 枚で、患者情報・測定条件・採点記録・再評価メモをまとめて残せる記録シートです。HHD の再現条件や MMT の補足所見を一緒に残したい場面で使いやすい形にしています。

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プレビューが表示されない場合は、筋力測定 記録シート PDF を開いてご利用ください。

よくある質問( FAQ )

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

Q1. どれを優先して覚えるべきですか?

まずは MMT → HHD → 10RM の順が回りやすいです。MMT で弱点を絞り、追いたい筋だけ HHD で数値化し、介入量は 10RM を入口に決めると、評価 → 介入 → 再評価 がつながります。

Q2. HHD は何回測るのが基本ですか?

臨床では 2〜3 回に固定し、休憩も固定(例: 30〜60 秒 )する運用が扱いやすいです。回数を増やすより、角度・固定・単位・回数が「前回と同じ」であることを優先してください。

Q3. MMT だけではダメですか?

スクリーニングとしては十分役立ちます。ただし、経時変化や左右差を説明する場面では、条件を揃えた HHD が強みを発揮します。MMT → 重点筋だけ HHD が、現場では最も回しやすい組み合わせです。

Q4. 1RM は危なくないですか?

疼痛やフォーム崩れがあるとリスクが上がります。現場では、いきなり 1RM を取りに行くより、10RM を基準にして反応を見ながら微調整する方が安全で実務に乗せやすいです。

Q5. 疼痛がある日はどう記録すればいいですか?

数値だけでなく、疼痛部位・痛みの強さ・どの局面で痛いかを一緒に残してください。痛みで途中中止した場合は「中止」も結果です。次回比較のために、無理に通常条件へ合わせず、その日の条件を明記する方が役立ちます。

次の一手

このページで「何を使うか」が決まったら、次は 1 本だけ各論を深めると運用が安定します。


参考文献

  • Martins J, da Silva JR, da Silva MR, Bevilaqua-Grossi D. Reliability and validity of the belt-stabilized handheld dynamometer in hip- and knee-strength tests. J Athl Train. 2017;52(9):809-819. DOI / PubMed
  • Hirano M, Katoh M, Gomi M, Arai S. Validity and reliability of isometric knee extension muscle strength measurements using a belt-stabilized hand-held dynamometer: a comparison with the measurement using an isokinetic dynamometer in a sitting posture. J Phys Ther Sci. 2020;32(2):120-124. DOI / PubMed
  • Katoh M. Reliability of isometric knee extension muscle strength measurements made by a hand-held dynamometer and a belt: a comparison of two types of device. J Phys Ther Sci. 2015;27(3):851-854. DOI / PubMed
  • Baschung Pfister P, de Bruin ED, Sterkele I, Maurer B, de Bie RA, Knols RH. Manual muscle testing and hand-held dynamometry in people with inflammatory myopathy: an intra- and interrater reliability and validity study. PLoS One. 2018;13(3):e0194531. DOI / PubMed
  • American College of Sports Medicine. Progression models in resistance training for healthy adults. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(3):687-708. DOI / PubMed
  • Fragala MS, Cadore EL, Dorgo S, Izquierdo M, Kraemer WJ, Peterson MD, Ryan ED. Resistance Training for Older Adults: Position Statement From the National Strength and Conditioning Association. J Strength Cond Res. 2019;33(8):2019-2052. DOI / PubMed

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rehabilikun(理学療法士)

rehabilikun blog を 2022 年 4 月に開設。医療機関/介護福祉施設/訪問リハの現場経験に基づき、臨床に役立つ評価・プロトコルを発信。脳卒中・褥瘡などで講師登壇経験あり。

  • 脳卒中 認定理学療法士
  • 褥瘡・創傷ケア 認定理学療法士
  • 登録理学療法士
  • 3 学会合同呼吸療法認定士
  • 福祉住環境コーディネーター 2 級

専門領域:脳卒中、褥瘡・創傷、呼吸リハ、栄養(リハ栄養)、シーティング、摂食・嚥下

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