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この記事は「食欲チェックリストである CNAQ-J」をキーワードに内容を構成しております。こちらのテーマについて、もともと関心が高く知識を有している方に対しても、ほとんど知識がなくて右も左も分からない方に対しても、有益な情報がお届けできるように心掛けております。それでは早速、内容に移らせていただきます。
「食欲」とは「睡眠欲、性欲」と並んで人間が生きていくために必要不可欠となる三大欲求の 1 つになります。この「食欲」ですが、歳をとったり、疾病の影響などで食欲が低下することがあります。
そうすると、食べる量が減るだけではなく、低栄養を招き、サルコペニア、転倒、虚弱、免疫能の低下、感染症(肺炎)、現病悪化のリスク要因となります。食欲の低下は生命や健康に大きく関わる症状となります。このような食欲を評価する指標となる食欲チェックリスト(CNAQ-J)について解説させていただきます。
こちらの記事を読むことで食欲チェックリスト(CNAQ-J)についての理解が深まり、低栄養リスクの早期発見や栄養管理への一助となれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!
【簡単に自己紹介】
30代の現役理学療法士になります。
理学療法士として、医療保険分野と介護保険分野の両方で経験を積んできました。
現在は医療機関で入院している患者様を中心に診療させていただいております。
臨床では、様々な悩みや課題に直面することがあります。
そんな悩みや課題をテーマとし、それらを解決するための記事を書かせて頂いております。
理学療法士としての主な取得資格は以下の通りです
登録理学療法士
脳卒中認定理学療法士
褥瘡 創傷ケア認定理学療法士
3学会合同呼吸療法認定士
福祉住環境コーディネーター2級
【理学療法士の転職はマイナビコメディカル】
理学療法士は 2013 年頃より毎年 10,000 人程度が国家試験に合格し続けています。これは医療系の専門職の中では看護師に次ぐ有資格者の増加率となっており、1966 年にはじめての理学療法士が誕生した歴史の浅さを考えれば異例の勢いと言えます。
人数が増えることは組織力の強化として良い要素もありますが、厚生労働省からは 2019 年の時点で理学療法士の供給数は需要数を上回っていると報告されており、2040 年度には理学療法士の供給数は需要数の約 1.5 倍になると推測されています。このような背景もあり、理学療法士の給与、年収は一般職と比較して恵まれているとはいえず、多くの理学療法士の深刻な悩みに繋がっています。
しかし、給与や年収などは職場や企業に大きく左右されるものです。今、働いている環境よりも恵まれた、自分が納得できる労働環境は高い確率で身近にあります。100 歳まで生きるのが当たり前といわれる時代を豊かに生きるためには、福利厚生や退職金制度なども考慮して就職先を決定するべきです。しかし、理学療法士が増え続けていくことを考慮すると恵まれた労働環境も次第に少なくなっていくことが予想されます。だからこそ、今のうちに自分が理学療法士として働く上で納得できるような就職先を探すべきではないでしょうか?
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マイナビコメディカルについては、他の記事で詳しくまとめています!《【マイナビコメディカルの評判と退会方法】理学療法士の転職おすすめ》こちらの記事もご覧になって頂けると幸いです☺️
「食べれない?」「食べたくない?」
食べ物を思うように食べたり、飲んだりできなくなることは「(食べたいのに)食べることができない」と「(そもそも)食べたくない」に大別されます。
「(食べたいのに)食べることができない」と「(そもそも)食べたくない」にはそれぞれ特有の原因があり、対処法および介入方法も異なります。
これらは高齢者が多く入院する医療機関では日常的に遭遇する症状となります。効果的な介入が施されないと栄養状態の増悪、合併症の発症にも繋がるため、直接的に生命予後にも関わる重大な問題となります。
以下に「(食べたいのに)食べることができない」と「(そもそも)食べたくない」の原因をあげます。
【(食べたいのに)食べることができない】
- 摂食嚥下障害
- 日常生活動作能力(ADL)の低下
- 社会的要因(介護力不足、経済的要因等)
- 消化管の問題
【(そもそも)食べたくない】
- 味覚や嗅覚の低下
- 視力の低下
- 口腔内のトラブル
- 活動量の低下に伴う必要エネルギー量の低下
- 認知機能の低下
- 精神面の影響
- 薬の多剤服用
- 疼痛
「(食べたいのに)食べることができない」場合の原因の大半は摂食嚥下障害となります。
摂食嚥下障害は単に摂取量の低下を引き起こすだけではなく、誤嚥による肺炎発症リスクを上昇させるため、生命予後にも大きく関わります。
社会的要因では介護力や経済力が関係します。昨今、高齢者世帯の貧困が深刻化していると社会問題になっていますが、日常生活動作能力(ADL)が低下している高齢者に介護力や経済力がなければ食事摂取量は低下すると考えられます。
「(そもそも)食べたくない」要因は加齢に伴う食欲の減退が基盤に存在すると考えられます。歳をとるとさまざまな薬を服用する可能性が高くなりますが、多剤服用も食欲を減退させる原因になると報告されています。
また、加齢は食欲の減退だけに留まらず、味覚や嗅覚の機能低下、視力の低下、口腔内にトラブルが発生しやすくなります。
これらの要因が絡み合い、結果的に空腹感をあまり感じなくなったり、すぐに満腹感を感じたりするようになると、「(そもそも)食べたくない」という状態を引き起こします。
高齢者の食欲低下
基本的な考えとして、歳を取ると若い時と比較して活動性が低下するため、消費するエネルギー量が減少します。そうすると、食欲自体も低下していき、それに伴い食事量も減少します。
また、活動性の低下によるものだけではなく、味覚や嗅覚、視覚の低下、うつ状態、基礎疾患、服薬薬剤などによっても食欲は低下すると考えられます。
高齢者の食欲の低下は、低栄養を招き、サルコペニア、転倒、虚弱、免疫能の低下、感染症(肺
炎)、現病悪化のリスク要因となり、短期間のうちに死亡に至るようなこともあります。
これらのことから、栄養介入を「する」「しない」に関わらず、高齢者の食欲を評価することは重要な評価の 1 つになります。
しかし、食欲の評価方法としては、単に食欲の「有り・無し」を尋ねるか、関連した 2、3 個程度の質問項目のみで構成されたものがほとんどであり、信頼性・妥当性が認められた質問票が見当たらないということが課題となっていました。
そこで、2005 年に Margaret-Mary GW Wilson et al が食欲に関連深い 8 項目の質問から構成された Council on Nutrition Appetite Questionnaire(CNAQ)を開発しました。
CNAQ(Council on Nutrition Appetite Questionnaire)は 8 項目という簡便さを持ち合わせながら、妥当性が認められた質問票になります。
CNAQ-J とは?食欲チェックリスト
2005 年に Margaret-Mary GW Wilson et al によって開発された CNAQ ですが 2017 年には Tokudome らによって CNAQ-J(日本語版CNAQ)が開発されています。
先行研究によると、「CNAQ-J で食欲低下ありと判定された者は 3 か月間の体重減少者の割合が有意に高い」「CNAQ-J による食欲の評価は、要介護高齢者の 1 年累積生存率と有意に関連している」と報告されています。
これらのことから、 CNAQ-J は低栄養や体重減少が起こる前段階である「食欲低下」を早期に判定することが可能であり、かつその妥当性が証明されたスクリーニング法といえます。
CNAQ-J により食欲を評価することは、要介護高齢者の生活の質の維持向上、ならびに予後の改善に繋がる可能性があります。
CNAQ-J 評価項目
CNAQ-J は食欲に関連深い以下の 8 項目の質問から構成されています。
基本的には質問紙に対し自己記入で回答することを第一選択としますが、認知機能が低下している対象者においては、主たる介護者が評価することもできます。
- 食欲
- 満腹感
- 空腹感
- 食べ物の味
- 若い頃と比較した食べ物の味
- 食事回数
- 食事をした際の気分
- 普段の気分
各質問に対し、1 から 5 の 5 つの選択肢から最も当てはまるものを選択し、8 項目の合計点により状態を判定します。
CNAQ-J 使い方、評価方法
CNAQ-J の使い方についてわかりやすく説明していきます。
【最初の説明】
最近、1ヵ月間の食生活を思い出し、A ~ H の 8 つの質問に対し、1 ~ 5 の 5 つの選択肢から適当なものを 1 つ選択してください。
【A.:食欲はありますか?】
- ほとんどない
- あまりない
- ふつう
- ある
- とてもある
【B:食事をどのくらい食べると満腹感を感じますか?】
- 数口で満腹
- 3 分の 1 ほどで満腹
- 半分ほどで満腹
- ほとんど食べて満腹
- 満腹になることはほとんどない
【C:空腹感がありますか?】
- めったに感じない
- たまに感じる
- 時々感じる
- よく感じる
- いつも感じる
【D:食事の味はいかがですか?】
- とてもまずい
- おいしくない
- ふつう
- おいしい
- とてもおいしい
【E:若い頃と比べて食事の味はどうですか?】
- とてもまずい
- おいしくない
- 変わらない
- おいしい
- とてもおいしい
【F:食事は 1 日何回食べますか?】
- 1 日 1 回未満
- 1 日 1 回
- 1 日 2 回
- 1 日 3 回
- 1 日 4 回以上
【G:食事中に気分が悪くなったり、吐き気を感じることがありますか?】
- いつも感じる
- よく感じる
- 時々感じる
- まれに感じる
- まったく感じない
【H:普段、どのような気持ちですか?】
- とても沈んでいる
- 沈んでいる
- 沈んでもなく、楽しくもない
- 楽しい
- とても楽しい
CNAQ-J は全 8 項目を 1 ~ 5 点の 5 段階で判定する評価尺度になります。そのため、最高得点は 60 点となり、得点が高いほど食欲不振のリスクは低いという解釈になります。
一方、最低得点は 0 点となり、得点が低いほど食欲不振のリスクは高くなります。
CNAQ-J カットオフ値
CNAQ-J は 8 つの質問に回答するだけの簡単な質問票であり、該当する選択肢をチェックし、それに応じて合計点を算出します。
CNAQ-J の合計点は、得点が高いほど食欲不振のリスクは低く、得点が低いほど食欲不振のリスクが高いという解釈になりますが、カットオフ値としては以下のようなものが報告されています。
- 28 点以下:6 ヶ月以内に少なくとも 5 % の体重減少のリスクを示す
- 17 ~ 28 点:頻繁な再評価を必要とする
- 8 ~ 16 点:食欲不振の危険があり栄養カウンセリングを必要とする
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます!
この記事では「食欲チェックリスト(CNAQ-J)」をキーワードに解説させて頂きました。
こちらの記事を読むことで食欲チェックリスト(CNAQ-J)についての理解が深まり、低栄養リスクの早期発見や栄養管理への一助となれば幸いです。是非、最後までご覧になってください!
参考文献
- 井尻吉信.栄養スクリーニングの有用性と課題.臨床栄養.Vol.141,No.4,2022.9(臨時増刊号),p422-427.
- 渡邊裕.徳留裕子.高齢者を対象とした日本語版食欲調査票(CNAQ-J)の信頼性および妥当性の検討.厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合事業)分担研究報告書.
- 要介護高齢者の口腔・栄養管理のガイドライン2017.p41-43.
- 葛谷雅文.“食べない老人”への対応.日本老年医学会雑誌.46巻,1号,2009:1,p15-17.