MSQ(Kahn 1960)10項目とは?SPMSQとの違い

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MSQ(Mental Status Questionnaire)とは?【10 項目の簡便スクリーニング】

MSQ は Kahn らが 1960 年に報告した 10 項目の簡便な認知スクリーニングです。短時間で実施でき、環境・説明・再提示の扱いを一定化すると再現性が高まります。なお「MSQ」という略称は他領域でも用いられるため、本記事では 認知スクリーニングとしての Kahn-Goldfarb 版 MSQ を扱います。混同しやすい SPMSQ(Pfeiffer, 1975) とは別の指標です。

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MSQ の位置づけと注意点

MSQ は 10 項目の回答から 誤答数を把握し、認知機能低下の有無をスクリーニングする古典的ツールです。原著や二次文献でも言及される一方、現在は MMSE や HDS-R、CDR などが臨床で主流となっています。MSQ 単体での診断は行わず、他検査や臨床情報と統合して判断します。

実施の流れを人材育成・配属計画とあわせて整理したい方は、院内教育の導線もまとめた 導入フロー も参考にしてください。

印刷できる記録シート(質問文なし・記入式)

質問文の転載は行わず、質問内容は記入式にした A4 フォーマットを用意しました(採点欄・備考欄付き)。下のリンクからブラウザで開いて印刷できます。

※ 著作権に配慮し、本サイトでは MSQ の原著の質問文そのものは掲載しません。院内での運用は原著・既存資料をご確認ください。

実施手順(現場最適化のコツ)

  1. 環境整備:静かな場所、補聴器・眼鏡など通常使用の補助具は装着。前置きは簡潔にし、雑談から入って注意を向けます。
  2. 統一手順:説明・再提示・ヒントの扱いは施設内で統一し、再提示の有無を記録シートに明記します。
  3. 反応の取り扱い:曖昧な回答はそのまま記録し、面接者が意図を補完しない。時間を区切り、次項目へ。
  4. 安全面:せん妄疑い(急性発症・日内変動・注意障害など)がある場合は、別途 CAM 等のプロトコルで確認します。

採点と所見のまとめ方

基本は 誤答数(エラー数)の合計で把握します。MSQ は研究・運用により解釈が揺れるため、施設の運用基準か原著の記述に合わせて所見を付し、教育歴・聴力・言語など交絡要因をメモ欄に残すと実務での再解釈が容易です。カットオフの定番が明確な SPMSQ とはこの点が異なります。

よくある落とし穴(誤判定を減らすコツ)

  • 感覚器の影響:聴覚・視覚の低下で誤答が増える場合があります。補助具の確認と音量・発話速度の調整を。
  • 教育歴・文化差:一般知識に依存する設問は教育歴の影響を受けます。採点後の所見で必ず補足します。
  • せん妄/抑うつ:急性変動や気分の影響で成績が変わることがあります。必要に応じて他ツールを併用。

MSQ と SPMSQ の違い(混同注意)

MSQ(Kahn 1960)と SPMSQ(Pfeiffer 1975)の比較(成人・臨床向け)
項目 MSQ(Kahn-Goldfarb, 1960) SPMSQ(Pfeiffer, 1975)
設問数 10(原著から識別力の高い項目を抽出) 10
スコアの考え方 主に誤答数で把握(施設運用で解釈差) 誤答数に基づく定番カットオフ(教育歴で補正)
教育歴補正 明確な補正式の定番はなし あり(低学歴は +1、 高学歴は −1 の補正が広く紹介)
代表文献 Kahn RL, 1960(PubMed) Pfeiffer E, 1975(PubMed)
比較研究 Fillenbaum GG, 1980(MSQ と SPMSQ の比較)

FAQ

各項目名をタップ(クリック)すると回答が開きます。もう一度タップで閉じます。

MSQ は何分くらいで終わりますか?

患者さんの反応や説明の長さにもよりますが、準備が整っていれば 3〜5 分程度で終わることが多いです。再提示・説明の長さを統一し、記録シートに「再提示の有無」を残すと安定します。

SPMSQ とどう違いますか?

両方とも 10 項目ですが、SPMSQ は教育歴補正と定番カットオフが広く紹介され、運用が標準化されています。MSQ は古典的で研究・施設により解釈が揺れやすく、結果は他検査(MMSE/HDS-R 等)と併せて解釈します。

質問文を掲載しないのはなぜ?

原著の質問文の転載は権利面の配慮が必要です。記事では質問文を掲示せず、記録用シート(記入式)で運用しています。院内での教育・利用は原著や既存資料をご確認ください。

MMSE や HDS-R、CDR とどう使い分けますか?

MSQ は短時間のスクリーニングとして有用ですが、国内臨床では MMSE/HDS-R/CDR の採用が中心です。疑い例では、いずれかの標準的ツールと併用し、背景要因(せん妄・感覚器・教育歴)に注意します。

参考文献

  • Kahn RL, Goldfarb AI, Pollack M, Peck A. Brief objective measures for the determination of mental status in the aged. Am J Psychiatry. 1960;117:326–328. DOI:10.1176/ajp.117.4.326PubMed
  • Pfeiffer E. A short portable mental status questionnaire for the assessment of organic brain deficit in elderly patients. J Am Geriatr Soc. 1975;23(10):433–441. DOIPubMed
  • Fillenbaum GG. Comparison of two brief tests of organic brain impairment, the MSQ and the Short Portable MSQ. J Am Geriatr Soc. 1980;28(8):381–384. PubMed
  • Takenoshita S, et al. Validation of ACE-III-J for detecting dementia and MCI in Japan(MMSE・HDS-R との比較). Psychogeriatrics. 2019. PMC
  • McDougall GJ. A review of screening instruments for cognition in older adults. J Gerontol Nurs. 1990. PMC
  • Geriatrics & Gerontology International(2023)日本の認知評価の実態レビュー(HDS-R・MMSE が主流)。Link
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